インボイス・消費税

輸入消費税の控除はインボイスでなく輸入許可書。免税・簡易課税と法人化

結論

輸入消費税は、税関長から交付を受けた輸入許可書等を保存すれば仕入税額控除できます(消費税法30条9項5号)。海外の売手がインボイス登録をしている必要はありません。ただし控除できるのは輸入申告者本人の一般課税だけで、免税事業者・簡易課税・2割特例では戻りません。売上1,500万円・国内の課税仕入100万円の物販では、輸入原価率が73.3%を超えると一般課税の納付額が簡易課税(小売80%)を下回りました。

  • 控除の根拠書類は輸入許可書。課税価格20万円以下の郵便物は「国際郵便物課税通知書」と領収証書が代わりになる
  • 控除できるのは輸入申告者(仕入書の荷受人)。通関業者が立て替えても、法人成り後に個人名義で輸入しても、法人では控除できない
  • 経費のうち課税仕入の割合を60%から95%にすると、法人化1〜2期の消費税免税の価値は年84.0万円から45.5万円に縮んだ(判定エンジン)

海外から商品を仕入れて国内で売る事業では、商品が日本に着いたとき、税関で関税と一緒に消費税を払います。この「輸入消費税」は、国内の仕入れと同じように売上の消費税から差し引けます。ただし、使う書類も、控除できる人も、国内の仕入れとは別の決まりで動きます。

この記事では、輸入消費税を控除するための書類と名義を法令で確認し、計算方式ごとに輸入消費税がどう効くかを数字で比べます。最後に、法人化したときの「設立2期の消費税免税」が、輸入物販ではどれだけ小さくなるかを判定エンジンで確かめます。

輸入消費税は誰でも払い、控除できるのは一般課税の課税事業者だけ

国税庁のタックスアンサーNo.6133・No.6563によると、輸入品の消費税の納税義務者は、貨物を保税地域から引き取る人、つまり輸入申告者です。国内取引と違って事業者に限らず、事業者免税点制度もありません。免税事業者でも、会社員でも、輸入すれば税関で消費税を払います。

税率は国内と同じです。標準税率なら消費税7.8%と地方消費税2.2%で、合計10%になります(税関 カスタムスアンサー1111)。課税標準は、関税の課税価格(いわゆるCIF価格)に関税と、消費税以外の個別消費税を足した額です。商品代だけでなく、日本までの運賃・保険料と関税にも消費税がかかります。

一方、払った輸入消費税を差し引けるかどうかは、その人の消費税の計算方式で決まります。

申告の状態税関で払った輸入消費税
一般課税の課税事業者売上の消費税から控除できる。控除しきれなければ還付
簡易課税個別には控除しない。売上の消費税×みなし仕入率で控除額が決まる
2割特例・3割特例個別には控除しない。売上の消費税の2割・3割を納める
免税事業者控除も還付もない。払った分はそのまま仕入原価になる

消費税法30条1項は、仕入税額控除を受ける事業者から免税事業者を除いています。また、国税庁No.6375は、免税事業者は税込経理方式で所得を計算するとしています。免税事業者が払った輸入消費税は、消費税の計算では戻らず、所得税・法人税の計算で仕入れの一部として経費になるだけです。

控除の証拠はインボイスではなく輸入許可書

インボイス制度のもとでも、輸入消費税の控除にインボイスは使いません。消費税法30条9項は、控除に必要な「請求書等」を種類ごとに並べています。輸入については5号で、税関長から交付を受ける輸入の許可があったことを証する書類と定めています。

海外の売手は日本のインボイス登録をしていないことがほとんどです。それでも、輸入許可書を保存していれば、輸入消費税は控除できます。売手の登録の有無は、この控除には関係しません。

輸入許可書等に書かれている事項

消費税法30条9項5号は、輸入許可書等に次の事項が記載されていることを求めています。

記載事項内容
税関長納税地を所轄する税関長
引取りの日課税貨物を保税地域から引き取ることができることとなった年月日
貨物の内容課税貨物の内容
税額消費税の課税標準である金額と、引取りに係る消費税額・地方消費税額

帳簿にも、課税貨物を保税地域から引き取った年月日、課税貨物の内容、引取りに係る消費税額・地方消費税額(またはその合計額)を記載します(消費税法30条8項3号)。

輸入許可書の代わりになる書類

消費税法施行令49条8項は、輸入許可書のほかにも控除の根拠になる書類を定めています。たとえば、輸入許可前に引取りの承認を受けた場合の承認書類、郵便物の課税通知、輸入許可後の修正申告書や更正通知書です。同条9項は税関長が関税法102条に基づいて交付する証明書類を、10項はこれらの書類の電磁的記録を含めています。

小口の輸入で迷いやすいのが国際郵便です。東京税関の案内によると、課税価格の合計額が20万円を超える郵便物は輸入申告を行い、輸入許可書が出ます。20万円以下は賦課課税方式で、輸入許可書は発行されません。税金がかかる場合は「国際郵便物課税通知書」が届き、この通知書と納付時の領収証書の2点が輸入を証する書類になります。課税価格1万円以下などで免税になったものは、そもそも控除する消費税がありません。

控除できるのは輸入申告者。名義を間違えると誰も控除できない

国税庁の質疑応答事例「輸入取引に係る輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱いについて」は、輸入代行者が輸入消費税を立て替え、後日精算する例を扱っています。回答は、控除するのは輸入申告者である会社で、立て替えた代行者は控除できないというものです。そして、限定申告が必要な場合などを除き、輸入申告を行うのは仕入書(インボイス)に記載されている荷受人です(関税法基本通達6-1(1))。

ここが法人成りの手続きで抜けやすいところです。個人事業から法人へ切り替えた後も、海外の仕入先の請求書(仕入書)の荷受人が個人の名前のままなら、輸入申告者は個人です。その輸入消費税は法人の申告で控除できません。

法人成りのときは、少なくとも次の3点を法人名義にそろえると、輸入許可書の名義と帳簿が一致します。

  • 海外の仕入先に登録している請求先・荷受人
  • 通関業者・国際宅配便の取引口座
  • 関税・消費税の支払い(立替精算の請求先)

個人の契約や口座が法人に自動で移らない点は、法人成りで個人の資産をどう引き継ぐかと同じです。

計算方式で、輸入消費税の効き方が変わる

一般課税では、輸入消費税は1円単位で控除に効きます。簡易課税と2割特例・3割特例は、売上の消費税だけから納付額が決まるため、輸入原価がいくらでも納付額は変わりません。輸入原価率が高いほど、一般課税の納付額が下がっていきます。

売上1,500万円(税抜)、国内の課税仕入(送料・倉庫・広告など)100万円の輸入物販で、輸入の課税標準の割合だけを変えて計算しました(scripts/yunyu-shohizei-kojo.mjs で再計算できます)。

輸入の課税標準(売上比)輸入時に税関へ払った消費税一般課税簡易課税(小売80%)簡易課税(卸売90%)2割特例3割特例免税事業者
600万円(40%)60万円80万円30万円15万円30万円45万円0円(60万円は戻らない)
900万円(60%)90万円50万円30万円15万円30万円45万円0円(90万円は戻らない)
1,050万円(70%)105万円35万円30万円15万円30万円45万円0円(105万円は戻らない)
1,200万円(80%)120万円20万円30万円15万円30万円45万円0円(120万円は戻らない)

※ 標準税率10%、課税売上割合100%。一般課税は輸入許可書とインボイスをすべて保存している前提。みなし仕入率は国税庁No.6505。2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間まで(個人は令和8年分まで)、3割特例は個人の令和9年分・10年分のみで法人は使えない(国税庁No.6375)。各方式の適用要件を満たしているかは別に確認が必要です。

この条件では、一般課税と簡易課税(小売80%)の納付額が並ぶのは輸入原価率**73.3%**でした。卸売(90%)なら83.3%です。消費者に売るネット販売は小売、事業者に売る卸は卸売の区分になるのが基本で、どちらに当たるかで境目が10ポイントずれます。

簡易課税を選んでいる物販事業者が、為替や運賃の上昇で輸入原価率が上がると、いつの間にか一般課税のほうが納付額が少ない状態になります。みなし仕入率の考え方は簡易課税のみなし仕入率と選び方で整理しています。

在庫を積み増す年は、一般課税だけ還付がある

輸入消費税は、売れたときではなく、課税貨物を引き取った日の属する課税期間に控除します(消費税法30条1項)。在庫を大きく積み増した年は、売上の消費税より輸入消費税のほうが多くなり、一般課税なら差額が還付されます。

売上600万円・国内の課税仕入100万円の年に、輸入額だけを変えた結果です。

輸入の課税標準一般課税簡易課税(小売80%)2割特例免税事業者
400万円10万円12万円12万円0円(40万円は戻らない)
600万円▲10万円(還付)12万円12万円0円(60万円は戻らない)
800万円▲30万円(還付)12万円12万円0円(80万円は戻らない)

簡易課税と2割特例は、仕入が売上を上回っても還付になりません。免税事業者は申告自体がないので、80万円の輸入消費税はすべて原価に入ります。

新しく作った法人が設立直後に大量の在庫を輸入する場合、免税のままでは輸入消費税が戻りません。還付を受けるために課税事業者を選ぶと、一定期間は免税に戻れなくなります(課税事業者選択の3年縛り)。設備投資の例で還付の境目を計算した新設法人の消費税還付と設備投資と考え方は同じです。

法人化2期の免税は、輸入物販では小さくなる

法人化のメリットとしてよく挙がる「設立2期の消費税免税」は、インボイス登録をしていない場合にだけ使えます。その価値は、本来納めるはずだった消費税、つまり売上の消費税から仕入れの消費税を引いた額です。輸入物販では仕入れの大半が輸入消費税なので、この差が小さくなります。

当サイトの判定エンジンで、売上1,500万円・経費1,100万円・インボイス未登録の条件のまま、「経費のうち課税仕入の割合」だけを変えました。

経費のうち課税仕入の割合設立1〜2期の消費税免税の価値(年)実質差額(2年目)実質差額(3年目以降)
60%84.0万円+7.4万円−48.6万円
80%62.0万円−7.4万円−48.6万円
95%45.5万円−18.3万円−48.6万円
95%(インボイス登録あり)0.0万円−48.6万円−48.6万円

※ 東京23区・単身・40歳未満・青色65万円(e-Tax)・物品販売業(第1種)・合同会社・最適役員報酬時。免税の価値は「売上×10%−経費×課税仕入の割合×10%」の一般課税ベース。実質差額は税理士報酬の差を引いた値で、2年目は免税が効く期。概算です。

判定ツールの「経費のうち課税仕入の割合」の初期値は60%です。輸入物販で経費の大半が輸入原価なら、この割合は90%台になり得ます。初期値のまま判定すると、この条件では免税の価値を年38.5万円多く見積もり、2年目の実質差額の符号まで変わりました。

もう1つの注意は、免税期間中も輸入消費税そのものは税関で払い続けることです。免税で得をするのは「売上の消費税を納めなくてよい」部分だけで、輸入時の資金の流出は変わりません。インボイス登録をしている場合は、そもそもこの免税が使えません。その仕組みはインボイス登録済みなら法人化しても消費税は免税にならないで説明しています。

輸入物販で法人化を考えるときは、判定ツールの「経費のうち課税仕入の割合」に輸入原価を含めた実際の割合を入れてから、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 輸入消費税は免税事業者でも税関で払う。控除できるのは一般課税の課税事業者だけ
  • 控除の根拠は輸入許可書。20万円以下の郵便物は国際郵便物課税通知書と領収証書
  • 控除できるのは輸入申告者(荷受人)。法人成りでは仕入書・通関業者の名義を法人にそろえる
  • 売上1,500万円・国内の課税仕入100万円の物販では、輸入原価率73.3%超で一般課税の納付額が簡易課税(小売)を下回った
  • 課税仕入の割合を60%から95%にすると、法人化1〜2期の免税の価値は年84.0万円から45.5万円に縮んだ

よくある質問

輸入許可書をなくしてしまいました。控除はできませんか?

消費税法施行令49条9項は、税関長が関税法102条1項に基づいて交付する証明書類も、輸入許可書等に含めています。紛失に気づいたら、通関を依頼した通関業者か税関に確認してください。電子で受け取った許可書のデータも保存の対象になります(同条10項)。

海外のネットショップから郵便で届いた商品の消費税は控除できますか?

課税価格の合計額が20万円以下の郵便物には輸入許可書が出ず、税関から「国際郵便物課税通知書」が届きます。東京税関は、この通知書と税金を納めた際の領収証書の2点を輸入を証する書類として保管するよう案内しています。課税価格1万円以下などで免税になったものには、そもそも控除する消費税がありません。

通関業者が立て替えた輸入消費税は、通関業者に払った時点で控除できますか?

控除するのは輸入申告者です。国税庁の質疑応答事例では、輸入代行者が輸入消費税を一時的に負担して後日精算する場合でも、仕入書上の荷受人として輸入申告をした会社が控除し、代行者は控除できないとしています。控除の時期は精算した日ではなく、課税貨物を引き取った日の属する課税期間です(消費税法30条1項)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。