法人化の判断

法人化の試算で入力を取り違えた事例。税込売上・経費の国保・インボイスで結論がずれる

結論

東京23区・33歳のWebエンジニア(年商1,300万円・経費150万円・インボイス登録済み)の正しい試算は、3期目以降年11.8万円の不利です。売上を税込1,430万円で入れると年1.5万円の有利に符号が変わり、経費に国保・国民年金・住民税・個人事業税を足すと年18.6万円の不利に広がります。インボイスを未登録と入れると、1期目は年21.8万円の不利が年52.7万円の有利に見えます。

  • 売上は税抜、経費には社会保険料・税金・税理士費用を含めない。判定ツールはそれらを自分で計算するので、入れると二重に数える
  • 損益分岐は青色申告特別控除の前の事業所得(売上−経費)で示している。確定申告書の「所得金額」は控除後なので、65万円低く出る
  • インボイス登録済みの人が未登録と入れると、新設法人の2年間の免税(このケースで年121万円の消費税)が効く計算になり、1〜2期目の結論が逆になる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

法人化の試算は、入れる数字が1つずれるだけで結論が変わります。とくに損益分岐の近くにいる人ほど、わずかなずれで「有利」と「不利」が入れ替わります。このケースでは、同じ1人の条件で、よくある取り違えを4つ再現しました。

正しい入力での結論:3期目以降は年11.8万円の不利

項目内容
職種・年齢Webエンジニア・33歳・単身
住所東京23区
年商(税抜)1,300万円
経費(社会保険料・税金を除く)150万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
項目金額
個人のままの手取り748.6万円
法人化(役員報酬月54万円)の手取り合計756.8万円
実質差額(3期目以降・税理士報酬の増加20万円を引く)−11.8万円
損益分岐(青色申告特別控除前の事業所得)1,266万円

※ 東京23区・33歳・単身・合同会社・東京都(協会けんぽ)/2026年(令和8年)分基準

事業所得(売上−経費)は1,150万円で、損益分岐の1,266万円に届いていません。判定は「ほぼ互角」で、わずかに個人のままが有利です。この人の個人のままの負担は、国保96.0万円・国民年金21.5万円・所得税148.2万円・住民税92.7万円・個人事業税43.0万円です。

取り違え1:売上を税込で入れる → 有利に符号が変わる

インボイス登録済みの人は、売上と一緒に消費税を受け取っています。年商1,300万円なら税込で1,430万円です。請求書の合計額や入金額から年商を拾うと、税込の数字を入れてしまいます。

入力売上3期目以降の実質差額
正しい(税抜)1,300万円−11.8万円
税込で入力1,430万円+1.5万円

売上を130万円多く入れたことになり、事業所得は損益分岐を超えて1,280万円に見えます。結論は**−11.8万円から+1.5万円へ符号が変わりました**。受け取った消費税は納める分なので、手取りの比較に入れてはいけません。

取り違え2:経費に国保・年金・税金を入れる → 不利が広がる

確定申告の準備で「出ていったお金」をまとめると、国保や住民税も一緒に経費として数えがちです。判定ツールはこれらを個人・法人それぞれについて計算するので、経費に入れると二重に引くことになります。

入力経費3期目以降の実質差額
正しい150.0万円−11.8万円
国保・国民年金を足す267.5万円−14.2万円
さらに住民税・個人事業税も足す403.2万円−18.6万円

経費を多く入れるほど事業所得が小さく見え、損益分岐から遠ざかります。この人の場合、不利が年11.8万円から18.6万円に広がりました。実際より「法人化は早い」と結論しやすくなる取り違えです。

税理士報酬も同じです。判定ツールは個人の税理士報酬と法人の税理士報酬の差を別に差し引いているので、経費には入れません。

取り違え3:確定申告書の「所得金額」と損益分岐を比べる → 65万円ずれる

入力ではなく、結果の読み方の取り違えです。当サイトが示す損益分岐は、青色申告特別控除を引く前の事業所得(売上−経費)です。確定申告書の「所得金額」の欄は、65万円の控除を引いた後の金額です。

比べる数字このケースの金額損益分岐1,266万円との比較
売上−経費(控除前)1,150万円116万円届かない
確定申告書の所得金額(控除後)1,085万円181万円届かない

この人はどちらで比べても届いていないので結論は同じです。ところが、事業所得(控除前)が1,300万円の人なら、申告書の所得金額は1,235万円です。損益分岐を超えているのに、申告書の数字で比べると**「まだ届いていない」と読んでしまいます**。控除前と控除後の数字は、記事や他のサイトでも混ざりやすい点です。損益分岐がどう決まるかは個人事業主の法人化の目安で整理しています。

経費に青色申告特別控除の65万円を足して入力した場合も、同じずれが起きます。このケースでは実質差額が−11.8万円から−13.4万円に動きました。

取り違え4:インボイスの登録状況を逆に入れる → 1〜2期目が逆転する

いちばん影響が大きいのはこれです。インボイスに登録している人が「未登録」と入れると、判定ツールは新設法人の2年間の免税が使える前提で計算します。

入力1期目2期目3期目以降
正しい(登録済み)−21.8万円−11.8万円−11.8万円
未登録と入力+52.7万円+62.7万円−11.8万円

※ 1期目は設立費用10万円を含む。未登録と入力した場合は、消費税(年121万円)が設立1〜2期に免除される計算になる

登録済みの法人は、設立1期目から課税事業者です。免税は使えません。それなのに未登録と入れると、1〜2期目は年74.5万円も有利に見えます。インボイスと法人化の免税の関係はインボイス登録済みなら法人化しても消費税の免税は受けられないで扱っています。

4つの取り違えをまとめると

取り違え結論が動く方向このケースでの3期目以降の差額
正しい入力—−11.8万円
売上を税込で入れる法人化が有利に見える+1.5万円
経費に国保・年金・税金を入れる法人化が不利に見える−18.6万円
経費に青色控除65万円を足す法人化が不利に見える−13.4万円
インボイスを未登録と入れる1〜2期目だけ大きく有利に見える−11.8万円(1期目は+52.7万円)

向きが逆の取り違えが重なると、結果が偶然正しく見えることもあります。入力するときは、売上は税抜、経費は事業のための支出だけ、インボイスは公表サイトで確かめた登録状況、の3点を確認してください。

まとめ

  • 年商1,300万円・経費150万円のWebエンジニアの正しい結論は、3期目以降年11.8万円の不利
  • 売上を税込で入れると有利に符号が変わり、経費に社会保険料や税金を入れると不利が広がる
  • 損益分岐は青色申告特別控除の前の事業所得。確定申告書の所得金額とは65万円ずれる
  • インボイスの登録状況を逆に入れると、1〜2期目の差が年74.5万円ずれる

判定ツールの入力欄には、税抜か、何を含めないかを書いてあります。自分の売上と経費を、その定義どおりに入れて確かめてください。

よくある質問

経費に入れてよいもの・いけないものの境目は?

事業のために使った費用(仕入れ・外注費・家賃・通信費・減価償却費など)は入れます。国民健康保険料・国民年金保険料・所得税・住民税・個人事業税・税理士報酬は入れません。判定ツールが個人と法人の両方について別に計算するためです。

売上は入金ベースと請求ベースのどちらで入れますか?

1年間に計上する売上(税抜)を入れます。確定申告書の収入金額は、税込経理か税抜経理かで消費税を含む場合があるので、税抜に直してから入れてください。

インボイスに登録しているか分からない場合は?

国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで、自分の氏名や登録番号を検索すると確認できます。登録していれば、法人を作っても新設法人の免税は使えない前提で試算する必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。