法人化の判断

40代・妻と子2人の法人化試算事例。損益分岐は740万円だが、600万〜1,000万円はほぼ互角

結論

名古屋市・43歳の個人事業主(年商900万円・経費120万円、無収入の妻と小学生2人)は、個人のまま手取り503.1万円、法人化で523.7万円で、税理士報酬の増加を引くと3期目以降は年0.6万円の有利です。損益分岐は事業所得740万円と低いものの、事業所得600万〜1,000万円では差が年−3.7万〜+2.5万円にとどまり、はっきり有利になるのは1,100万円(+12.2万円)からです。

  • 40代・配偶者あり・15歳以下の子ありの3条件が重なると、法人化で消える負担(配偶者の国民年金21.5万円、国保の介護分、子の均等割)が大きく、損益分岐が下がる
  • 同じ人が39歳以下なら損益分岐は1,016万円、子がいなければ966万円。条件1つで200万円以上動くが、差額そのものは数万円しか変わらない
  • 差額がゼロ付近で平らに続く帯では、損益分岐の数字は大きく動く。分岐点より、事業所得ごとの差額の大きさを見たほうが判断を誤らない

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

法人化の目安として「所得800万円」がよく出てきます。このケースでは、その数字よりさらに低い事業所得740万円が損益分岐になりました。40代・妻・子という条件が、法人化を後押しする方向にそろっているからです。ただ、差額を事業所得ごとに並べると、分岐点の数字とは違う姿が見えます。

このケースの条件

項目内容
職種店舗向けのWeb・SNS運用代行
年齢・家族43歳・妻(無収入)・子2人(小学生)
住所名古屋市
年商(税抜)900万円
経費120万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種広告業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は780万円です。

個人事業主のまま:社会保険料だけで年152.8万円

項目金額
事業所得(売上−経費)780.0万円
国民健康保険(4人・介護分を含む)109.8万円
国民年金(本人+妻)43.0万円
所得税50.7万円
住民税48.9万円
個人事業税24.5万円
手取り503.1万円

※ 名古屋市・43歳・妻(無収入)・15歳以下の子2人・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

国保は、医療分が上限の67万円に達し、介護分も上限の17万円です。国民年金は本人と妻の2人分で43.0万円。社会保険料の合計は、事業所得の2割にあたる年152.8万円になります。

法人化した場合:手取り合計は523.7万円

項目金額
役員報酬(月48万円・年額)576.0万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)84.8万円
所得税・住民税35.5万円
個人に入る手取り455.6万円
法人税等(均等割を含む)32.1万円
会社に残る額85.1万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)523.7万円

※ 合同会社・愛知県(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

法人化すると、妻は健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者になり、保険料はかかりません。子も被扶養者です。国保(109.8万円)と国民年金(43.0万円)がなくなり、代わりに社会保険料(本人分84.8万円・会社分86.9万円)がかかります。

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)+20.6万円+20.6万円+20.6万円
設立費用・税理士報酬の増加−30.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−9.4万円+0.6万円+0.6万円

3つの条件が、それぞれ損益分岐を下げている

同じ年商・経費で、家族と年齢の条件を1つずつ外しました。

条件個人の国保個人の国民年金3期目以降の実質差額損益分岐(事業所得)
単身・39歳以下85.2万円21.5万円−20.5万円1,270万円
単身・40代102.2万円21.5万円−15.2万円1,247万円
妻・39歳以下89.6万円43.0万円−6.4万円1,016万円
妻・40代106.6万円43.0万円−1.7万円966万円
妻子2人・39歳以下92.8万円43.0万円−4.2万円1,016万円
妻子2人・40代(このケース)109.8万円43.0万円+0.6万円740万円

※ 年商900万円・経費120万円・名古屋市・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準

効いているのは次の3つです。

  • 配偶者:妻の国民年金(年21.5万円)と国保の均等割が、法人化で消える
  • 40歳以上:国保の介護分(このケースで年17万円)が、健康保険の介護保険料(1.62%・労使折半)に置き換わる
  • 15歳以下の子:子の国保の均等割が消える。子には扶養控除がないので、税金の側で個人のままを有利にする効果がない

損益分岐の数字が大きく動くのは、差額が平らな帯にあるから

表を見ると不思議なことがあります。子の有無で、損益分岐は966万円から740万円へ226万円動きます。ところが実質差額は−1.7万円から+0.6万円へ、2.3万円しか変わっていません。

事業所得ごとに差額を並べると理由が分かります。

事業所得妻のみ・40代妻子2人・40代
500万円−21.5万円−10.2万円
600万円−14.3万円−3.7万円
700万円−7.2万円−1.8万円
800万円−1.6万円+0.6万円
900万円−1.3万円+0.4万円
1,000万円+2.5万円+2.5万円
1,100万円+12.2万円+12.2万円
1,200万円+14.5万円+14.5万円

※ 3期目以降の実質差額。経費120万円・名古屋市・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準

妻子2人のケースは、事業所得600万円から1,000万円まで、差額が年−3.7万〜+2.5万円の間をほとんど動きません。差額がゼロのすぐ近くを平らに進むので、わずかな条件の違いで、ゼロをまたぐ位置(損益分岐)が左右に大きくずれます。

事業所得1,000万円を超えると、子の有無で差がなくなります。個人のままの国保が上限に達し、子の均等割が増えても保険料が増えなくなるためです。

このケースで「損益分岐740万円だから法人化が有利」と読むのは早計です。実際には、事業所得1,000万円まではどちらを選んでも年数万円の差で、はっきり有利になるのは1,100万円からです。損益分岐の考え方と一般的な目安は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

差がない帯では、お金以外の条件で決める

単年の手取りがほぼ同じなら、判断の材料は金額以外になります。

法人化で増えるもの法人化で増える負担
本人の厚生年金(将来の年金の上乗せ)決算・申告の事務と税理士報酬
傷病手当金・出産手当金の対象になる役員報酬を期中に変えられない
妻が第3号被保険者になる社会保険の手続きが毎年発生する

家族のいる人の法人化の効果は、妻子ありデザイナーの試算事例や、子の年齢で結論が動く子ども2人を扶養する開発者の試算事例でも扱っています。

まとめ

  • 名古屋市・43歳・妻と小学生2人・年商900万円は、法人化で3期目以降年0.6万円の有利。ほぼ互角
  • 40代・配偶者・15歳以下の子の3条件が重なり、損益分岐は事業所得740万円まで下がる
  • ただし事業所得600万〜1,000万円では差が年±4万円に収まる。分岐点の数字は平らな帯で大きく動く
  • はっきり有利になるのは事業所得1,100万円から。それまではお金以外の条件で決める帯

判定ツールは損益分岐だけでなく、売上を変えたときの差額も出します。分岐点の数字より、自分の売上での差額の大きさを確かめてください。

よくある質問

妻が40歳以上の場合、介護保険料はどうなりますか?

この試算は介護保険料を本人分だけで計算しています。妻も40〜64歳なら、個人のままでは国保の介護分が妻の分も増えます。法人化して妻が被扶養者になれば、妻の介護保険料は別にかからないので、法人化がさらに有利な方向に動きます。

子が16歳になると結論は変わりますか?

16歳以上の子は扶養控除の対象になり、控除は税率の高い個人のままの方で大きく効くため、法人化の有利は小さくなる方向に動きます。子の年齢で損益分岐がどう動くかは、岡山の開発者の試算事例で扱っています。

ほぼ互角なら、法人化しないほうがよいのですか?

単年の手取りでは差がなくても、法人化すると本人は厚生年金に入り、傷病手当金の対象にもなります。逆に、法人の事務負担や設立の手間は増えます。金額で決まらない帯なので、お金以外の条件で判断することになります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。