法人化の判断

妻子ありデザイナーの法人化試算事例。大阪・年商1,000万円で差は年4万円

結論

大阪市・38歳のWebデザイナー(年商1,000万円・経費200万円、無収入の妻と15歳以下の子2人)は、個人のままの手取りが526.8万円、法人化(役員報酬月54万円)で542.5万円です。税理士報酬の差20万円を引くと3期目以降は年4.3万円の不利で、独身なら年17.4万円の不利でした。

  • 差を縮めたのは妻の国民年金21.5万円。法人化すると妻は第3号被保険者になり、保険料がかからなくなる
  • 子ども2人を足しても差は1.1万円しか動かない。大阪市の国保が賦課限度額に達していて、子の均等割が上乗せされないため
  • 妻がいると損益分岐は事業所得1,283万円から1,016万円へ下がる。年商1,300万円なら3期目以降年6.5万円の有利

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

「家族がいると法人化は有利になる」とよく言われます。方向は合っています。ただ、効いているのは配偶者で、子どもではありません。このケースでそれを確かめます。

このケースの条件

項目内容
職種フリーランスのWebデザイナー(制作会社・企業から受託)
年齢・家族38歳・妻(専業主婦・無収入・30代)・子2人(10歳と7歳)
住所大阪市
年商(税抜)1,000万円
経費200万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種デザイン業(第3種・5%)

デザイン業は個人事業税の法定業種で、第3種事業の5%です。事業所得(売上−経費)は800万円になります。

個人事業主のまま:家族4人の国保と、妻の国民年金がかかる

項目金額
事業所得(売上−経費)800.0万円
国民健康保険(4人分)94.3万円
国民年金(本人+妻)43.0万円
所得税(配偶者控除あり)58.0万円
住民税52.4万円
個人事業税25.5万円
手取り526.8万円

※ 大阪市・38歳・妻(無収入)と15歳以下の子2人・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・デザイン業5%/2026年(令和8年)分基準

個人事業主の国民健康保険は、世帯の加入者ごとに均等割がかかります。国民年金も、妻は第1号被保険者として自分の分を納めます。妻の国民年金だけで年21.5万円です。

法人化した場合:妻の分の保険料が消える

役員報酬を月5万〜100万円まで試すと、手取り合計が最大になったのは月54万円でした。

項目金額
役員報酬(年額)648.0万円
社会保険料・本人負担91.1万円
所得税(配偶者控除あり)14.7万円
住民税31.0万円
個人に入る手取り511.2万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)93.4万円
法人の利益(税引前)58.6万円
法人税等(均等割7万円を含む)19.5万円
会社に残る額39.1万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)542.5万円

※ 合同会社・大阪府(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準

社長が健康保険と厚生年金に入ると、無収入の妻と子は被扶養者になります。健康保険料は本人の報酬だけで決まり、家族が何人いても増えません。妻は国民年金の第3号被保険者になり、保険料を自分で納める必要がなくなります。

1期目・2期目・3期目以降の実質差額

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)+15.7万円+15.7万円+15.7万円
設立費用(合同会社)−10.0万円——
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−14.3万円−4.3万円−4.3万円

手取りだけなら法人化が年15.7万円多くなります。税理士報酬の増加を引くと、3期目以降は年4.3万円の不利です。判定ツールの区分では「ほぼ互角」です。

家族のうち、誰が差を動かしているか

同じ大阪市・同じ年商で、家族構成だけを変えて比べました。

家族構成国保国民年金個人の手取り法人化の手取り実質差額(3期目以降)損益分岐(事業所得)
独身91.5万円21.5万円532.7万円535.3万円−17.4万円1,283万円
妻(無収入)92.8万円43.0万円527.9万円542.5万円−5.4万円1,016万円
妻+15歳以下の子2人(このケース)94.3万円43.0万円526.8万円542.5万円−4.3万円1,016万円

※ 年商1,000万円・経費200万円・大阪市・38歳・デザイン業5%・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分基準

独身から妻ありに変えると、差は12.0万円縮みます。妻ありに子2人を足しても、1.1万円しか動きません。

子どもの分がほとんど効かない理由

国保の均等割は子ども1人ずつにかかりますが、大阪市の国保は医療分・後期高齢者支援金分とも、このケースの所得ですでに賦課限度額に達しています。上限に当たった区分には、子の均等割が上乗せされません。残る子ども・子育て支援金分は18歳年度末までの子が軽減されます。

所得がもっと低く、国保が上限に届かない世帯なら、子の均等割の分だけ法人化の効果は大きくなります。所得別の国保の動きは国民健康保険料の自治体別比較で確認できます。

年商が増えると、妻ありの側が先に逆転する

年商独身妻+子2人
1,000万円−17.4万円−4.3万円
1,300万円−15.0万円+6.5万円
1,600万円+11.9万円+31.2万円

※ 3期目以降の実質差額。経費200万円・大阪市・デザイン業5%

妻がいる世帯は、独身より事業所得で267万円早く損益分岐に届きます。家族構成による差の全体は個人事業主の法人化の目安でも整理しています。

子どもが16歳以上になると、結論が戻る

注意したいのは、子どもが高校生になったときです。16歳以上の子は扶養控除の対象になります。個人のままでも所得税・住民税が下がるため、法人化の効果が相対的に小さくなります。

同じ条件で子2人を16歳以上にすると、3期目以降の差は年13.3万円の不利、損益分岐は事業所得1,280万円まで戻りました。独身とほとんど変わりません。子どもの年齢で判定がどう動くかは、子ども2人を扶養する開発者の試算事例で詳しく追っています。

この試算に入っていないもの

  • 妻の将来の年金。第3号被保険者の期間は、保険料を納めなくても国民年金の納付済期間として扱われる
  • 社長本人の厚生年金の上乗せと、傷病手当金
  • 妻を役員や従業員にして報酬を払う選択。この場合は妻の社会保険加入の有無で計算が変わる

数字に出ない部分も含めると、年4万円程度の差は、家族の保障をどう見るかで結論が変わる幅です。

まとめ

  • 大阪市・年商1,000万円・妻子ありのデザイナーは、個人のまま526.8万円、法人化で542.5万円
  • 税理士報酬の増加20万円を引くと、3期目以降は年4.3万円の不利。独身なら年17.4万円の不利
  • 差を縮めたのは妻の国民年金21.5万円と国保の世帯分。子ども2人の効果は1.1万円にとどまる
  • 妻がいると損益分岐は事業所得1,016万円。年商1,300万円で逆転する
  • 子が16歳以上になると扶養控除が効き、損益分岐は1,280万円に戻る

家族構成は判定ツールの入力欄で切り替えられます。自分の家族と売上で確かめてください。

よくある質問

妻を役員にして報酬を払ったほうが得になりますか?

このケースでは妻は無収入の被扶養者として計算しています。妻に役員報酬を払うと、金額によっては妻自身が社会保険に加入し、扶養から外れます。報酬を分ける場合の試算は別に必要です。

子どもが高校生以上だと結果は変わりますか?

変わります。16歳以上の子は扶養控除の対象になり、個人のままでも所得税・住民税が下がります。同じ条件で16歳以上の子2人にすると、3期目以降の差は年13.3万円の不利に広がりました。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。