社会保険

国民健康保険料は自治体でどれだけ違うか。政令市20市区を実データで比較

事業所得600万円の単身なら、最も高い大阪市80.8万円と最も安い福岡市56.2万円で年24.6万円の差があります。政令指定都市と東京23区、20自治体の令和8年度の実際の料率で比較し、世帯人数や所得帯で順位が入れ替わる理由まで示します。

国民健康保険料は市区町村ごとに決まるため、同じ所得でも住む場所で金額が変わります

どれくらい変わるのか。令和8年度の実際の料率を使って、政令指定都市と東京23区の20自治体で計算しました。事業所得600万円の単身なら、最も高い大阪市と最も安い福岡市で年24.6万円の差があります。

保険料の決まり方

国民健康保険料は、次の4区分をそれぞれ計算して合算します。令和8年度から「子ども・子育て支援金分」が加わり、3区分から4区分になりました。

区分誰が払うか
医療分加入者全員
後期高齢者支援金分加入者全員
子ども・子育て支援金分加入者全員(令和8年度新設)
介護分40歳以上65歳未満のみ

そして各区分が、次の3つの組み合わせで計算されます。

  • 所得割:旧ただし書所得(総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 料率
  • 均等割:加入者1人あたりの定額
  • 平等割:1世帯あたりの定額(採用していない自治体もある)

この3つの配分が自治体ごとに違うため、同じ所得でも金額が変わります。

1つの自治体について最後まで計算する手順は、東京23区の国民健康保険料の計算方法と、上限が4段階で来る理由で示しています。

所得別の比較

所得別の年間保険料(単身・40歳未満)

自治体事業所得300万円事業所得600万円事業所得1,000万円
大阪市42.3万円80.8万円94.9万円
堺市42.3万円80.8万円94.9万円
北九州市38.0万円74.0万円95.9万円
名古屋市36.8万円71.8万円95.7万円
札幌市36.6万円71.0万円96.0万円
岡山市36.1万円70.3万円96.0万円
仙台市36.5万円70.2万円95.8万円
川崎市35.5万円69.9万円96.0万円
横浜市34.6万円68.5万円96.0万円
京都市34.6万円67.2万円95.9万円
神戸市35.3万円67.1万円95.7万円
東京23区33.9万円65.6万円95.8万円
さいたま市33.3万円65.2万円95.7万円
新潟市32.8万円65.2万円95.7万円
千葉市33.7万円64.9万円96.0万円
浜松市32.2万円61.8万円94.4万円
相模原市32.0万円61.4万円95.9万円
静岡市31.7万円60.4万円95.9万円
熊本市31.6万円60.3万円93.9万円
福岡市29.2万円56.2万円86.1万円

※ 40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分基準 ※ 介護分(40〜64歳のみ)は含まない

福岡市が全所得帯で最も安く、事業所得600万円では大阪市より24.6万円低くなっています。

一方で所得1,000万円の行を見ると、福岡市を除く19市区が93.9万〜96.0万円の範囲に収まっています。高所得帯では差がほとんど消えます。理由は後述します。

なぜ差が出るのか

料率の内訳を見ると、構造の違いがはっきりします。

料率の内訳(医療分+後期高齢者支援金分+子ども子育て支援金分の合計。介護分は除く)

自治体所得割の合計均等割の合計(1人)平等割(1世帯)
東京23区(特別区統一保険料率)10.58%67,073円なし
横浜市11.29%55,940円なし
大阪市12.84%47,926円44,753円
名古屋市11.67%68,146円なし
札幌市11.46%27,980円43,550円
福岡市9.00%31,287円29,413円
神戸市10.61%48,490円31,370円
京都市10.88%41,550円24,770円
さいたま市10.63%59,900円なし

※ 医療分・後期高齢者支援金分・子ども子育て支援金分の合計。介護分は含まない

所得割は福岡市の9.00%から大阪市の12.84%まで、3.84ポイントの開きがあります。所得600万円なら約20万円の差です。福岡市の安さは、ほぼこの所得割の低さで説明できます。

均等割と平等割の配分も自治体ごとに違います。 札幌市は均等割が27,980円と最も低い代わりに、平等割を43,550円取っています。逆に名古屋市・東京23区・さいたま市は平等割がなく、そのぶん均等割が高くなっています。

この違いは、世帯の人数によって有利不利が入れ替わることを意味します。

世帯人数で順位が変わる

配偶者と子ども2人、計4人世帯で同じ所得600万円を計算すると、順位が動きます。

自治体単身4人世帯順位の変化
大阪市80.8万円90.9万円1位 → 1位
堺市80.8万円90.9万円2位 → 2位
名古屋市71.8万円89.9万円4位 → 3位
川崎市69.9万円88.0万円8位 → 4位
東京23区65.6万円85.8万円12位 → 5位
横浜市68.5万円85.3万円9位 → 6位
北九州市74.0万円84.2万円3位 → 7位
さいたま市65.2万円83.2万円13位 → 8位
岡山市70.3万円82.2万円6位 → 9位
仙台市70.2万円82.0万円7位 → 10位
神戸市67.1万円81.6万円11位 → 11位
京都市67.2万円79.7万円10位 → 12位
札幌市71.0万円79.4万円5位 → 13位
千葉市64.9万円75.0万円15位 → 14位
相模原市61.4万円74.0万円17位 → 15位
熊本市60.3万円73.3万円19位 → 16位
浜松市61.8万円73.2万円16位 → 17位
静岡市60.4万円72.9万円18位 → 18位
新潟市65.2万円72.2万円14位 → 19位
福岡市56.2万円65.6万円20位 → 20位

※ 事業所得600万円・40歳未満・配偶者と子2人(いずれも無収入)/2026年(令和8年)分基準

札幌市は単身では5番目に高いのに、4人世帯では13番目まで下がります。新潟市も14位から19位へ落ちます。 どちらも均等割が安く平等割が高い構成なので、人数が増えても保険料の伸びが小さいためです。

逆に東京23区(12位→5位)とさいたま市(13位→8位)は、平等割がないぶん均等割が高く、人数が増えると順位が上がります。川崎市はさらに極端で、平等割を一切採用せず医療分の均等割が43,261円と20市区で最も高いため、8位から4位へ上がります。

住んでいる自治体の保険料を「高い・安い」で語るときは、世帯構成とセットで見る必要があるということです。

なお国民健康保険には扶養という考え方がなく、配偶者や子どもの分も人数に応じてかかります。この点は配偶者がいると法人化の分岐点は250万円下がるで詳しく扱っています。

高所得だと差が消える理由

各区分には賦課限度額があり、所得がいくら高くてもそれ以上は増えません。医療分は67万円(大阪市は66万円)、後期高齢者支援金分は26万円、子ども・子育て支援金分は3万円です。

限度額に到達する事業所得を計算すると、こうなります。

自治体医療分が限度額に達する事業所得
大阪市・堺市670万円
名古屋市745万円
札幌市760万円
北九州市790万円
横浜市800万円
川崎市・岡山市805万円
仙台市820万円
京都市830万円
さいたま市865万円
東京23区875万円
神戸市880万円
千葉市・新潟市905万円
浜松市910万円
静岡市965万円
相模原市970万円
熊本市1,030万円
福岡市1,175万円

※ 40歳未満・単身/2026年(令和8年)分基準

所得割が高い自治体ほど、早く限度額に到達します。 大阪市・堺市は670万円で頭打ちになる一方、福岡市は1,175万円まで上がり続けます。

その結果、所得1,030万円を超えたあたりから、福岡市以外は横並びになります。「大阪の国保は高い」という感覚は所得600万円前後では正しいのですが、所得1,000万円では成立しません。

法人化の分岐点は自治体でどう変わるか

ここが本題です。国保料が高い自治体ほど法人化が有利になりそうですが、実際は逆です。

自治体損益分岐となる事業所得協会けんぽの健康保険料率
札幌市1,284万円10.28%
大阪市1,283万円10.13%
堺市1,283万円10.13%
神戸市1,279万円10.12%
福岡市1,277万円10.11%
北九州市1,277万円10.11%
仙台市1,277万円10.10%
熊本市1,276万円10.08%
岡山市1,274万円10.05%
横浜市1,272万円9.92%
名古屋市1,270万円9.93%
川崎市1,269万円9.92%
相模原市1,269万円9.92%
東京23区1,266万円9.85%
京都市1,266万円9.89%
千葉市1,260万円9.73%
さいたま市1,257万円9.67%
静岡市1,255万円9.61%
浜松市1,255万円9.61%
新潟市1,237万円9.21%

※ 経費200万円・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準

分岐点の順位が、協会けんぽの料率の順位とほぼ一致しています。 料率の順と入れ替わっているのは横浜市と名古屋市だけで、これは健康保険ではなく法人住民税の均等割の超過課税によるものです。

国保料が最安の福岡市(1,277万円)と最高の大阪市(1,283万円)で、分岐点の差はわずか6万円。一方、協会けんぽの料率が最も低い新潟市が1,237万円で最も法人化しやすく、最も高い札幌市の1,284万円とは47万円離れています。

理由は2つです。

第一に、分岐点は1,270万円前後にあり、そこでは国保がすでに限度額に張り付いています。 個人事業主側の自治体差は、この所得帯では消えています。

第二に、協会けんぽの料率には限度額のような頭打ちがありません。 法人側の負担差だけが最後まで残ります。

つまり法人化の判断に効くのは、住んでいる市区町村の国保料ではなく、事業所を置く都道府県の協会けんぽ料率だということです。都道府県別の料率は協会けんぽの健康保険料率、都道府県で年9万円違うで全47都道府県を掲載しています。

国保と法人化の関係については国民健康保険が高いから法人化、は所得次第で逆効果になるもあわせてご覧ください。

引っ越しで保険料は変わるか

変わります。国民健康保険料は住民票のある市区町村で決まります。

年度の途中で引っ越した場合は月割で精算されます。転出した月の前月分までが旧自治体、転入した月分からが新自治体です。二重に払うことはありません。

ただし保険料の安さだけを理由に引っ越す判断は現実的ではありません。事業所得600万円で最大24.6万円の差は確かに大きいのですが、引っ越し費用と生活の変化を考えると、他の理由と重なったときに検討する程度でしょう。

自治体ごとの計算過程は、東京23区の国民健康保険料の計算方法大阪市の国民健康保険料はなぜ高いのかで個別に追っています。

なお、住民票を移さずに料率の安い自治体の保険に入ることはできません。実際に居住していない自治体に住民票だけを置くことは住民基本台帳法に反します。

まとめ

  • 国民健康保険料は市区町村ごとに決まる。令和8年度から子ども・子育て支援金分が加わり4区分になった
  • 事業所得600万円の単身で、最高の大阪市80.8万円と最安の福岡市56.2万円で年24.6万円の差
  • 差の主因は所得割の料率。福岡市9.00%〜大阪市12.84%で3.84ポイントの開き
  • 世帯人数で順位が入れ替わる。 平等割が高く均等割が安い札幌市は、単身3位→4人世帯8位まで下がる
  • 賦課限度額があるため、所得880万円を超えると福岡市以外はほぼ横並びになる
  • 法人化の分岐点は国保料ではなく協会けんぽの料率でほぼ決まる。 分岐点の順位が協会けんぽ料率の順位と一致する
  • 保険料は住民票のある自治体で決まる。引っ越せば月割で切り替わる

自分の自治体を選んで、法人化の損得がどう変わるか確かめてください。20自治体は実データ、それ以外はこの20自治体の平均による概算で計算します。

よくある質問

引っ越すと保険料はいつから変わりますか?

転出した月の前月分までが旧自治体、転入した月分からが新自治体の保険料になります。月割で精算されるため、二重に払うことはありません。年度の途中で引っ越した場合、旧自治体から精算の通知が届き、新自治体からは残りの期間分の通知が届きます。

住民票を移さずに料率の安い自治体の保険に入れますか?

できません。国民健康保険は住民票のある市区町村で加入します。実際に居住していない自治体に住民票だけを置くことは住民基本台帳法に反します。保険料のために住所を偽ることは想定しないでください。

保険料が高すぎて払えない場合はどうすればよいですか?

まず市区町村の窓口に相談してください。前年より所得が大きく減った場合の減免、災害や失業による減免、分割納付など、自治体ごとに制度があります。放置すると延滞金が付き、保険証が短期証や資格証明書に切り替わることがあります。連絡すること自体に不利益はありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。