社会保険
大阪市の国民健康保険料はなぜ高いのか。880万円で逆転する
大阪市の国民健康保険料は所得割12.84%で政令市20市区の最高。事業所得600万円の単身なら東京23区より年15.2万円高くなります。ただし880万円を超えると逆転します。理由と、法人化の分岐点への影響を実データで示します。
大阪市の国民健康保険料は、当サイトが実データを持つ20市区のなかで最も高い水準です(大阪府は令和6年度から統一保険料率のため、堺市も同額です)。**所得割の合計は12.84%**で、東京23区の10.58%を2.26ポイント上回ります。
ただし「大阪市はずっと高い」わけではありません。事業所得880万円を超えると、東京23区より安くなります。
高い理由は2つある
| 大阪市 | 東京23区 | |
|---|---|---|
| 所得割の合計 | 12.84% | 10.58% |
| 均等割の合計(加入者1人) | 47,926円 | 67,073円 |
| 平等割の合計(1世帯) | 44,753円 | なし |
| 賦課限度額(40歳未満) | 95万円 | 96万円 |
※ 医療分+後期高齢者支援金分+子ども子育て支援金分の合計。介護分は除く/令和8年度
理由は所得割の高さと、平等割があることの2つです。均等割は東京23区より2万円近く低いので、そこが原因ではありません。
平等割は1世帯あたりの定額で、世帯人数に関係なくかかります。東京23区・横浜市・名古屋市・さいたま市には平等割がなく、大阪市・札幌市・福岡市・神戸市・京都市にはあります。採用している自治体としていない自治体で構造が違います。
令和8年度の料率
令和8年度から「子ども・子育て支援金分」が加わり、区分は4つになりました。
- 医療分:所得割9.50%+均等割34,990円+平等割33,908円(賦課限度額66万円)
- 後期高齢者支援金分:所得割3.06%+均等割11,191円+平等割10,845円(賦課限度額26万円)
- 介護分(40歳以上65歳未満のみ):所得割2.60%+均等割18,682円(賦課限度額17万円)
- 子ども・子育て支援金分:所得割0.28%+均等割1,745円+18歳以上の加入者1人につき96円(賦課限度額3万円)
所得割を掛ける相手は旧ただし書所得です。
旧ただし書所得 = 総所得金額等 − 43万円
所得控除はこの計算に反映されません。 配偶者控除も扶養控除も社会保険料控除も関係ありません。一方、青色申告特別控除は事業所得を計算する段階で引かれるので反映されます。
実際に計算してみる
事業所得(青色申告特別控除後)600万円・単身・40歳未満の場合です。
旧ただし書所得 = 600万円 − 43万円 = 557万円
| 区分 | 所得割 | 均等割 | 平等割 | 小計 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 529,150円 | 34,990円 | 33,908円 | 598,048円 |
| 後期高齢者支援金分 | 170,442円 | 11,191円 | 10,845円 | 192,478円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 15,596円 | 1,745円+96円 | — | 17,437円 |
| 合計 | 715,188円 | 48,022円 | 44,753円 | 807,963円 |
年80万7,963円です。これに国民年金保険料が加わります。令和8年度の国民年金保険料は月17,920円なので、年21万5,040円です。社会保険の負担は合計で年102万3,003円になります。
同じ条件の東京23区は65万6,379円なので、差は年15万1,584円です。
880万円を超えると東京23区より安くなる
所得を上げていくと、この関係は逆転します。
| 事業所得 | 大阪市 | 東京23区 | 差 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 42.3万円 | 33.9万円 | +8.4万円 |
| 500万円 | 68.0万円 | 55.1万円 | +12.9万円 |
| 600万円 | 80.8万円 | 65.6万円 | +15.2万円 |
| 700万円 | 90.3万円 | 76.2万円 | +14.1万円 |
| 800万円 | 93.7万円 | 86.8万円 | +6.9万円 |
| 900万円 | 94.6万円 | 95.3万円 | −0.7万円 |
| 1,000万円 | 94.9万円 | 95.8万円 | −0.9万円 |
| 1,100万円 | 95.0万円 | 96.0万円 | −1.0万円 |
※ 単身・40歳未満・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分 基準
逆転するのは事業所得880万円です。理由は賦課限度額にあります。
大阪市は所得割が高いぶん、限度額に早く到達します。単身・40歳未満なら事業所得1,050万円で年95万円に張り付き、それ以上は増えません。 東京23区は所得割が低いため、頭打ちになるのは1,090万円です。
しかも大阪市の医療分の限度額は66万円で、東京23区の67万円より1万円低く設定されています。上限に達したあとは、大阪市のほうが年1万円安い状態が続きます。
差が最大になるのは事業所得600万円あたりで、そこから所得が上がるほど縮んでいく構造です。
単身世帯ほど平等割が効く
平等割は1世帯あたりの定額なので、世帯人数で割ると単身世帯がいちばん重くなります。
| 世帯 | 事業所得300万円 | 500万円 | 700万円 | 1,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 単身・40歳未満 | 42.3万円 | 68.0万円 | 90.3万円 | 94.9万円 |
| 夫婦・40歳未満 | 47.1万円 | 72.8万円 | 91.6万円 | 95.0万円 |
| 夫婦+子2人・40歳未満 | 56.7万円 | 82.3万円 | 94.2万円 | 95.0万円 |
| 単身・40〜64歳 | 50.8万円 | 81.7万円 | 107.3万円 | 111.9万円 |
※ 大阪市・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分 基準
家族が1人増えても保険料は4.8万円程度しか増えません。平等割44,753円は世帯で1回しかかからないためです。東京23区では同じ条件で家族1人あたり6.7万円増えるので、世帯人数が多いほど大阪市の不利は縮みます。
40歳になると介護分が乗ります。単身・事業所得700万円で比べると、40歳未満の90.3万円に対して40〜64歳は107.3万円。年17万円の増加です。
法人化の分岐点は東京23区より17万円高い
国民健康保険料が高いなら法人化が有利になりそうですが、実際には逆です。
| 条件 | 損益分岐となる事業所得 |
|---|---|
| 東京23区・協会けんぽ東京支部 | 1,266万円 |
| 大阪市の国民健康保険のみ(協会けんぽは東京支部) | 1,257万円 |
| 大阪市・協会けんぽ大阪支部 | 1,283万円 |
※ 経費200万円・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準
分岐点は17万円上がります。片方だけを大阪に変えて測ると、国民健康保険の違いによる分が4万円、協会けんぽの料率差による分が11万円です。単純に足しても17万円にならないのは、両方が同時に効くと分岐点の位置そのものがずれ、そこでの保険料も変わるためです。
理由は2つあります。
1つ目。分岐点の付近では、国民健康保険料はすでに限度額に張り付いています。 事業所得1,250万円は、大阪市も東京23区も上限を超えている領域です。そこでは大阪市のほうが年1万円安いので、個人のままでいる側がわずかに有利になります。
2つ目。法人側の保険料は大阪のほうが高くなります。 協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違い、令和8年度は大阪支部10.13%、東京支部9.85%です。法人化すると、この差がそのまま毎年の負担になります。
つまり**大阪では「個人のままの負担は上限で頭打ち、法人化後の負担は東京より高い」**という組み合わせになり、法人化のハードルが上がります。都道府県別の料率は協会けんぽの健康保険料率、都道府県で年9万円違うにまとめています。
「国保が高いから法人化」という判断が成り立たない理由は国民健康保険が高いから法人化、は所得次第で逆効果になるで詳しく検証しています。
まとめ
- 大阪市の所得割は12.84%で20市区の最高(堺市も同率)。加えて平等割44,753円がある。均等割は東京23区より低い
- 事業所得600万円・単身・40歳未満で年80万7,963円。東京23区より年15万1,584円高い
- 差が最大になるのは事業所得600万円あたり。880万円を超えると東京23区より安くなる
- 賦課限度額は40歳未満で年95万円。事業所得1,050万円で頭打ち(東京23区は1,090万円)
- 平等割は1世帯あたりなので、単身世帯ほど重い。世帯人数が増えるほど不利は縮む
- 法人化の分岐点は1,283万円で東京23区より17万円高い。協会けんぽ大阪支部の料率が高いため
保険料が重いと感じていても、法人化が答えとは限りません。自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
大阪市内で区が変わると保険料は変わりますか?
変わりません。大阪市の国民健康保険料は市全体で同じ料率です。ただし大阪府内でも他の市町村へ移ると変わります。府内で保険料水準を統一する方向で調整が進んでいますが、令和8年度時点では市町村ごとに差があります。
平等割は世帯人数が増えても変わりませんか?
変わりません。平等割は1世帯あたりの定額なので、単身でも4人世帯でも同額です。そのため単身世帯ほど1人あたりの負担が重くなります。均等割のほうは加入者1人ごとにかかります。
保険料が高くて払えないときはどうすればよいですか?
大阪市には所得が一定以下の世帯に対する均等割・平等割の軽減(7割・5割・2割)があります。また災害や失業など特別な事情がある場合の減免制度もあります。滞納すると延滞金がつき、保険証の扱いにも影響するため、まず区役所の窓口へ相談してください。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。