社会保険
東京23区の国民健康保険料の計算方法と、上限が4段階で来る理由
東京23区の国民健康保険料は「旧ただし書き所得×料率+均等割」で決まります。令和8年度の料率で事業所得別に計算した内訳と、賦課限度額が区分ごとに別々にあるため頭打ちが4回に分けて来る仕組みを、実データで示します。
東京23区の国民健康保険料は、所得割と均等割の合計で決まります。区が違っても料率は同じで、区ごとに損得は生じません。
ただし計算に使う「所得」が、確定申告で最後に出てくる課税所得とは別物です。ここを取り違えると、所得控除を積んだのに保険料が下がらない、という事態になります。
この記事では、令和8年度の料率で実際に計算した内訳を示しながら、計算式と、高所得帯で保険料が頭打ちになる仕組みを整理します。
計算式は3ステップで終わる
東京23区は「特別区統一保険料率」を採用しているため、23区内であればどの区でも同じ料率で計算します。手順は3つです。
1. 旧ただし書き所得 = 事業所得 − 43万円
2. 各区分の保険料 = 旧ただし書き所得 × 所得割率 + 均等割 × 加入人数
3. 合計 = 医療分 + 後期高齢者支援金分 + 子ども・子育て支援金分(+ 介護分)
令和8年度の東京23区の料率は次のとおりです。
| 区分 | 所得割率 | 均等割(1人あたり年額) | 賦課限度額 |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 7.51% | 47,600円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.80% | 17,600円 | 26万円 |
| 子ども・子育て支援金分(国保に新設された区分) | 0.27% | 1,873円 | 3万円 |
| 介護分(40〜64歳のみ) | 2.43% | 17,800円 | 17万円 |
40歳未満なら所得割は3区分の合計で10.58%、均等割は1人あたり年67,073円になります。
手順1の43万円は、所得税の基礎控除ではない
つまずきやすいのがここです。手順1で引く43万円は、国民健康保険料を計算するためだけの控除です。所得税の基礎控除(令和8年分は最大104万円)や住民税の基礎控除とは別の数字で、金額も連動しません。
引いた後の金額を「旧ただし書き所得」と呼びます。旧ただし書き所得には、次の控除が一切反映されません。
- 扶養控除・配偶者控除
- 社会保険料控除(国民年金保険料を払っていても引けない)
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoや小規模企業共済の掛金)
- 医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税を含む)
所得税を下げる目的で控除を積んでも、国民健康保険料は1円も動きません。国民健康保険料に効くのは、事業所得そのものを下げる経費と青色申告特別控除だけです。
事業所得600万円・単身の場合の実際の計算
40歳未満・単身・東京23区の例で、最後まで計算してみます。
旧ただし書き所得 = 600万円 − 43万円 = 557万円
医療分 557万円 × 7.51% + 47,600円 = 465,907円
後期高齢者支援金分 557万円 × 2.80% + 17,600円 = 173,560円
子ども・子育て支援金分(国保) 557万円 × 0.27% + 1,873円 = 16,912円
年間保険料 = 656,379円
この上に国民年金保険料が年215,040円(月17,920円)乗ります。国民健康保険料と国民年金保険料を合わせると年87万円で、事業所得600万円に対して**14.5%**が社会保険で出ていく計算です。
なお、支払った国民健康保険料と国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税の側では課税所得を下げます。国民健康保険料の算定に効かないだけで、税金には効きます。
所得別の内訳と、頭打ちが4回に分けて来る仕組み
事業所得を変えて計算すると、こうなります。
| 事業所得 | 医療分 | 後期高齢者支援金分 | 子ども・子育て支援金分 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 24.1万円 | 9.0万円 | 0.9万円 | 33.9万円 |
| 400万円 | 31.6万円 | 11.8万円 | 1.2万円 | 44.5万円 |
| 600万円 | 46.6万円 | 17.4万円 | 1.7万円 | 65.6万円 |
| 800万円 | 61.6万円 | 23.0万円 | 2.2万円 | 86.8万円 |
| 900万円 | 67.0万円 | 25.8万円 | 2.5万円 | 95.3万円 |
| 1,000万円 | 67.0万円 | 26.0万円 | 2.8万円 | 95.8万円 |
| 1,100万円 | 67.0万円 | 26.0万円 | 3.0万円 | 96.0万円 |
| 1,500万円 | 67.0万円 | 26.0万円 | 3.0万円 | 96.0万円 |
※ 東京23区・単身・40歳未満・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分 基準
900万円の行から、医療分が67.0万円で止まっているのが分かります。ここが賦課限度額です。
見落とされやすいのは、限度額が世帯の合計額に対してではなく、区分ごとに別々に設定されていることです。医療分が上限に達しても、後期高齢者支援金分と子ども・子育て支援金分はまだ増え続けます。
区分ごとに所得割率と均等割が違うので、上限に届く所得も区分ごとに違います。
| 区分 | 賦課限度額 | 限度額に達する事業所得 |
|---|---|---|
| 介護分(40〜64歳のみ) | 17万円 | 670万円 |
| 医療分 | 67万円 | 875万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 | 910万円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 3万円 | 1,085万円 |
※ 東京23区・単身/5万円刻みで判定
国民健康保険料の頭打ちは、1回ではなく4回に分けて来ます。 40〜64歳なら事業所得670万円で介護分が止まり、875万円で医療分が止まり、最後に1,085万円で完全に固定されます。上限は40歳未満で年96.0万円、40〜64歳で年113.0万円です。
この段差があるため、事業所得900万円から1,100万円のあたりでは、所得が100万円増えても国民健康保険料は5,000円前後しか増えません。所得税・住民税だけが増えていく帯になります。
自治体を横断した比較は国民健康保険料は自治体でどれだけ違うか。主要9市区を実データで比較で扱っています。所得割率が高い自治体ほど早く限度額に到達するため、高所得帯では自治体差が消えます。
青色申告特別控除の効き目は、所得帯で10倍以上変わる
青色申告特別控除は所得控除ではなく、事業所得を計算する段階で引かれます。だから旧ただし書き所得が直接下がり、国民健康保険料にも効きます。
では、いくら効くのか。控除65万円の有無で計算しました。
| 事業所得(控除後) | 65万円の控除あり | 控除なし | 差 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 44.5万円 | 51.4万円 | 6.9万円 |
| 600万円 | 65.6万円 | 72.5万円 | 6.9万円 |
| 800万円 | 86.8万円 | 93.7万円 | 6.9万円 |
| 900万円 | 95.3万円 | 95.7万円 | 0.4万円 |
| 1,000万円 | 95.8万円 | 95.9万円 | 0.2万円 |
| 1,100万円 | 96.0万円 | 96.0万円 | 0万円 |
※ 東京23区・単身・40歳未満/2026年(令和8年)分 基準
事業所得800万円までは、控除65万円がそのまま年6.9万円の保険料減につながります。65万円に所得割10.58%を掛けた額です。
ところが900万円では0.4万円、1,100万円ではゼロになります。医療分がすでに限度額に張り付いていて、控除で旧ただし書き所得を下げても限度額の側が動かないためです。
同じ65万円の控除が、所得帯によって価値を変えます。 青色申告特別控除の節税効果を「所得税+住民税+国保で◯万円」と一律に説明している記事は、高所得帯では国保の分を過大に見積もっていることになります。
世帯人数が増えると、均等割がそのまま乗る
均等割は加入者1人あたりで課されます。収入のない配偶者や子どもも人数に数えられます。
事業所得600万円・40歳未満で、世帯構成だけを変えると次のようになります。
| 世帯 | 年間保険料 |
|---|---|
| 単身 | 65.6万円 |
| 配偶者あり(無収入) | 72.3万円 |
| 配偶者+子2人 | 85.8万円 |
1人増えるごとに67,073円ずつ増えています。これは所得とは無関係な、人数に比例する固定部分です。
ここが健康保険との最大の違いです。法人化して協会けんぽに加入した場合、被扶養者の保険料は発生しません。扶養家族が多い世帯ほど、国民健康保険から健康保険に移ったときの差が大きくなります。配偶者の扶養については配偶者がいると法人化の分岐点は250万円下がる。扶養に入れる仕組みで扱っています。
なお、収入のない配偶者は国民年金の第1号被保険者として、別途年215,040円の国民年金保険料を自分で納めます。上の表には含まれていません。
令和8年度から子ども・子育て支援金分が加わった
令和8年度から、国民健康保険料に「子ども・子育て支援金分」という区分が新設されました。東京23区では所得割0.27%・均等割1,873円で、事業所得600万円の単身なら年16,912円です。
金額そのものは大きくありませんが、保険料の区分が3つから4つに増えたという構造の変化があります。制度の中身は子ども・子育て支援金はいくら引かれるのか。個人事業主も払っていますで扱っています。
法人化すると、この計算式は使われなくなる
法人化して役員報酬を受け取ると、健康保険は協会けんぽに切り替わります。計算の仕組みが根本から変わります。
| 国民健康保険 | 協会けんぽ(法人) | |
|---|---|---|
| 算定基礎 | 旧ただし書き所得 | 標準報酬月額(役員報酬) |
| 扶養家族 | 均等割が人数分かかる | 保険料は増えない |
| 負担者 | 全額本人 | 労使折半(法人負担分は経費) |
| 上限 | 区分ごとの賦課限度額 | 標準報酬月額139万円(健康保険) |
役員報酬をいくらにするかで保険料が決まるため、国民健康保険のように所得が決まれば自動的に決まる、という関係ではなくなります。
東京23区在住・40〜64歳で試算すると次のようになります。
| 事業所得 | 個人のまま | 法人化(最適報酬) | 最適な役員報酬 | 実質差額(年) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 295.5万円 | 271.3万円 | 月28万円 | −44.3万円 | 個人のまま有利 |
| 600万円 | 417.8万円 | 404.9万円 | 月42万円 | −32.9万円 | 個人のまま有利 |
| 800万円 | 528.9万円 | 531.2万円 | 月45万円 | −17.7万円 | ほぼ互角 |
| 1,000万円 | 645.8万円 | 657.0万円 | 月45万円 | −8.8万円 | ほぼ互角 |
| 1,200万円 | 764.7万円 | 781.8万円 | 月54万円 | −2.9万円 | ほぼ互角 |
| 1,500万円 | 918.6万円 | 966.1万円 | 月54万円 | +27.6万円 | 法人化が有利 |
| 1,800万円 | 1072.5万円 | 1139.7万円 | 月90万円 | +47.2万円 | 法人化が有利 |
| 2,100万円 | 1223.7万円 | 1322.8万円 | 月95万円 | +79.1万円 | 法人化が有利 |
| 2,500万円 | 1386.7万円 | 1541.2万円 | 月100万円 | +134.6万円 | 法人化が有利 |
| 3,000万円 | 1591.2万円 | 1806.9万円 | 月100万円 | +195.6万円 | 法人化が有利 |
※ 経費200万円・東京23区・40〜64歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額
国民健康保険料が上限に張り付く1,085万円を超えても、判定が「法人化が有利」に変わるのは1,500万円付近です。国民健康保険料の高さだけでは法人化の判断はつきません。この点は国民健康保険が高いから法人化、は所得次第で逆効果になるで詳しく扱っています。
上の表は経費200万円・独身・40〜64歳という一組の条件にすぎません。扶養家族の人数と年齢区分で国民健康保険料は大きく動くので、判定ツールに自分の売上と経費、世帯構成を入れて確かめてください。計算の前提は計算の根拠に載せています。
まとめ
- 東京23区は特別区統一保険料率のため、区による保険料の差はない
- 算定基礎は旧ただし書き所得(事業所得−43万円)。扶養控除・社会保険料控除・iDeCoの掛金などの所得控除は反映されない
- 賦課限度額は区分ごとに別々にあり、頭打ちは介護分670万円・医療分875万円・後期高齢者支援金分910万円・子ども・子育て支援金分1,085万円の4段階で来る
- 青色申告特別控除65万円が国民健康保険料を下げる効果は、事業所得800万円までは年6.9万円、900万円では年0.4万円まで落ちる
- 均等割は1人あたり年67,073円(40歳未満)。扶養家族が多いほど、健康保険に移ったときの差が大きくなる
よくある質問
国民健康保険料は区によって違いますか?
東京23区は特別区統一保険料率を採用しているため、どの区でも同じ料率が使われます。所得と世帯人数が同じなら、区をまたいで引っ越しても保険料はほぼ変わりません。23区以外の市区町村へ移る場合は、料率が自治体ごとに異なるため金額が変わります。
確定申告で所得控除を増やせば国民健康保険料も下がりますか?
下がりません。国民健康保険料の算定に使われるのは「旧ただし書き所得」で、基礎控除43万円を引いた後の金額です。扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除などの所得控除は反映されません。ただし青色申告特別控除は事業所得の段階で引かれるため、算定基礎そのものが下がります。
世帯に子どもが増えると保険料は上がりますか?
上がります。均等割は加入者1人あたりで課されるため、扶養している子どもも人数に数えられます。東京23区では40歳未満1人あたり年67,073円(令和8年度)です。健康保険では扶養家族の保険料が増えない点が、国民健康保険との大きな違いです。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。