税金の基礎
法人住民税の均等割は自治体で違う。主要9市を実額で比較
「均等割は年7万円」は標準税率の話です。横浜市は74,500円、神戸市は72,000円。主要9市の実額を官公庁の公表資料で確認し、上乗せが市町村側ではなく道府県側に集中している理由と、判定への影響を計算しました。
法人住民税の均等割は「赤字でも年7万円」と説明されます。ただしこの7万円は地方税法の標準税率であって、全国共通の金額ではありません。
自治体は条例で標準税率を超える税率を定められます。主要9市を公表資料で確認したところ、横浜市は年74,500円、神戸市は年72,000円でした。同じ資本金・同じ従業員数の一人会社でも、本店をどこに置くかで年間4,500円の差が出ます。
そして上乗せは、市町村側ではなく道府県側に集中していました。
主要9市の実額
資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下、令和8年度の額です。各自治体の公表資料から拾いました。
| 自治体 | 市町村民税分 | 道府県民税分 | 合計(年) | 標準との差 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜市 | 54,500円 | 20,000円 | 74,500円 | +4,500円 |
| 神戸市 | 50,000円 | 22,000円 | 72,000円 | +2,000円 |
| 福岡市 | 50,000円 | 21,000円 | 71,000円 | +1,000円 |
| 名古屋市 | 50,000円 | 21,000円 | 71,000円 | +1,000円 |
| さいたま市 | 50,000円 | 20,000円 | 70,000円 | — |
| 京都市 | 50,000円 | 20,000円 | 70,000円 | — |
| 札幌市 | 50,000円 | 20,000円 | 70,000円 | — |
| 大阪市 | 50,000円 | 20,000円 | 70,000円 | — |
| 東京23区 | — | 都民税に一本化 | 70,000円 | — |
※ 標準税率は70,000円(道府県20,000円+市町村50,000円)。東京23区は都の特例で市町村民税相当分もあわせて都民税として課税されるため、内訳を分けていません。
均等割は所得と無関係に、資本金等の額と従業者数だけで決まります。赤字でも課税される点は自治体を問わず同じです。この仕組みそのものは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で扱っています。
上乗せしているのは市ではなく県
9市のうち、市町村民税の均等割に上乗せがあったのは横浜市だけでした。横浜みどり税として、均等割額の9%相当が加算されます。50,000円の9%で4,500円、合計54,500円です。緑地の保全を目的に平成21年度から実施されており、令和11年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。
残りの上乗せはすべて道府県側です。
| 道府県 | 均等割 | 上乗せの中身 |
|---|---|---|
| 兵庫県 | 22,000円 | 県民緑税。均等割額の10%相当(2,000円) |
| 愛知県 | 21,000円 | あいち森と緑づくり税。均等割額の5%相当(1,000円) |
| 福岡県 | 21,000円 | 森林環境税(県税)。均等割額に5%を乗じた額 |
| 東京都・神奈川県・大阪府・京都府・埼玉県・北海道 | 20,000円 | 上乗せなし |
※ 東京都は23区の場合、市町村民税相当分を含めて70,000円。
いずれも森林や緑地の保全を目的にした税です。 個人住民税だけに上乗せする自治体が多いなか、法人にも同率で課している県が神戸市・名古屋市・福岡市の所在県にあたっていた、という並びになっています。京都府にも「豊かな森を育てる府民税」がありますが、こちらは個人府民税のみ(年600円)で法人は対象外です。
超過課税があっても、一人会社には効かない自治体がある
大阪府と福岡市にも均等割の超過課税はあります。ただしどちらも資本金等の額が1,000万円を超える区分だけが対象です。
大阪府の場合、資本金等1,000万円超1億円以下の区分は年75,000円で、標準の50,000円を25,000円上回ります。しかし1,000万円以下の区分は20,000円のままです。福岡市も同じで、1億円超10億円以下が192,000円(標準160,000円)と上振れする一方、1,000万円以下は50,000円です。
つまり「その自治体に超過課税があるか」ではなく、「自分の資本金の区分に超過課税が及ぶか」で見る必要があります。資本金1,000万円以下で設立する一人会社は、超過課税の対象から外れていることが多いということです。
資本金を1,000万円以下に抑える理由は均等割だけではありません。設立1期目からの消費税の課税事業者判定も動きます。詳しくは法人化の資本金は1,000万円未満?で扱っています。
判定に効くのは年数千円ぶんだけ
均等割の差が法人化の判定をどれだけ動かすか、計算エンジンで確かめました。均等割を全国一律7万円としたときと、実額を入れたときの損益分岐点を比べています。
| 自治体 | 均等割 | 7万円固定なら | 実額なら | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜市 | 74,500円 | 1,269万円 | 1,272万円 | +3万円 |
| 神戸市 | 72,000円 | 1,277万円 | 1,279万円 | +2万円 |
| 名古屋市 | 71,000円 | 1,269万円 | 1,270万円 | +1万円 |
| 福岡市 | 71,000円 | 1,277万円 | 1,277万円 | +0万円 |
※ 経費200万円・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。分岐点は実質差額がプラスに転じる事業所得
最も差が大きい横浜市でも3万円です。 均等割は損金に算入できないため4,500円がまるごと負担として残りますが、それでも分岐点を動かす力はこの程度にとどまります。
比較のために言うと、同じ9市の分岐点は1,257万円から1,284万円まで27万円の幅があります。その幅を作っているのは主に協会けんぽの都道府県別料率で、均等割の寄与は一部です。自治体差の全体像は国民健康保険料は自治体でどれだけ違うかにまとめています。
それでも、当サイトの判定ツールは自治体ごとの実額を使うようにしました。年4,500円は判定を覆しませんが、資金繰りに置く固定費としては実額のほうが正確だからです。
政令指定都市では、区の数だけ均等割がかかる
自治体差より効く可能性があるのが、こちらです。政令指定都市の均等割は、市単位ではなく区単位で課税されます。
横浜市・札幌市・福岡市・さいたま市は、いずれも公表資料で「均等割額は区ごとに課税する」「2以上の区に事務所等を有する場合は区ごとに算定して合計する」と明記しています。
一人会社では、これが次のような形で表に出ます。
- 登記上の本店を自宅(A区)に置いたまま、仕事場としてB区にレンタルオフィスを借りた
- 自宅(A区)とは別に、B区の物件を倉庫や作業場として継続的に使っている
いずれも事務所等が2つあると判定されれば、均等割は2区分になります。横浜市なら54,500円が2つで109,000円、これに神奈川県分20,000円が加わります。
事務所等とみなされるかどうかは、人的設備と物的設備があり、そこで継続して事業が行われているかで判断されます。横浜市は研修所や社内診療所も含むとしており、自己所有かどうかは問いません。一方で2〜3か月程度の一時的な現場事務所・仮小屋は該当しないと明示しています。
年数千円の自治体差を気にするより、事務所等を無自覚に増やしていないかを確認するほうが金額としては大きくなります。
事業年度が12か月に満たないときは月割になる
設立初年度や決算期を変えた年は、均等割も月割です。「年額×事務所等を有していた月数÷12」で計算し、100円未満の端数は切り捨てます。
東京都主税局は、事業年度の途中でA区からB区へ移転した場合の計算例を公表しています。資本金等1,000万円・決算期12月・7月13日移転のケースです。
| 計算 | 金額 | |
|---|---|---|
| A区分 | 70,000円 × 6/12 | 35,000円 |
| B区分 | 70,000円 × 5/12 | 29,100円 |
| 合計 | 64,100円 |
※ 東京都主税局の公表例。月数は暦にしたがい、1月に満たない端数は切り捨て(ただし全期間が1月未満なら1月)
移転月の扱いで6か月と5か月に分かれ、合計が11か月ぶんになっている点に注意してください。年額の70,000円がそのまま2回かかるわけではありませんが、1年ぶんちょうどにもなりません。
設立初年度の月割については法人化のタイミングと決算期の決め方でも扱っています。
本店をどこに置くかで決めるほどの差ではない
均等割は事務所等のある区市町村ごとに課税されます。2つの市に事務所を置けば、それぞれで均等割が発生します。逆に言えば、本店を隣の市に移せば均等割は変わります。
ただし年数千円のために本店所在地を選ぶ判断は現実的ではありません。移転には本店移転の登記が必要で、登録免許税と手続きの手間がかかります。年4,500円の差を取り戻すには何年もかかる計算になります。
自治体で本当に効くのは、法人側の均等割ではなく個人事業主のままでいる場合の国民健康保険料のほうです。こちらは自治体間で年数十万円の差が出ます。
まとめ
- 「均等割は年7万円」は地方税法の標準税率。自治体の条例で上乗せがある
- 主要9市では横浜市74,500円が最も高く、神戸市72,000円、名古屋市・福岡市71,000円と続く
- 上乗せは市町村側ではなく道府県側に集中している。市町村で上乗せがあるのは横浜市のみ
- 大阪府・福岡市の超過課税は資本金等1,000万円超の区分だけで、一人会社には及ばない
- 分岐点への影響は最大でも3万円。本店所在地を選ぶ理由になるほどの差ではない
自分の自治体でいくらになるかは、売上と経費を入れて確かめてください。
よくある質問
法人住民税の均等割は全国どこでも年7万円ですか?
いいえ。7万円は地方税法の標準税率です。自治体は条例で超過課税ができるため、実額は自治体によって違います。主要9市では横浜市74,500円、神戸市72,000円、名古屋市・福岡市71,000円、それ以外は70,000円でした(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の場合)。
均等割が高い自治体はどこですか?
主要9市では横浜市が最も高く年74,500円です。横浜みどり税として市民税均等割に9%が上乗せされています。次いで神戸市の72,000円で、こちらは兵庫県の県民緑税が県民税均等割に10%上乗せされたものです。
大阪府や福岡市にも均等割の超過課税があると聞きました。
あります。ただしどちらも資本金等の額が1,000万円を超える区分だけが対象です。資本金1,000万円以下で設立する一人会社には適用されないため、実額は標準税率のままになります。
均等割の差は法人化の判定を変えますか?
ほとんど変えません。当サイトの試算では、均等割が4,500円高い横浜市でも損益分岐点は3万円しか後ろへ動きませんでした。国民健康保険料や協会けんぽの料率差のほうが桁で大きく影響します。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。