税金の基礎

法人住民税の均等割は赤字でも年7万円。誰がいくら払うのか

法人住民税の均等割は所得がゼロでも赤字でも課税されます。東京23区で年7万円、資本金1,000万円を超えると18万円。金額の決まり方と、法人化の判断にどう効くかを実際の数字で示します。

法人化の記事でよく目にする「赤字でも年7万円かかります」という一文。これは事実ですが、7万円で済むとは限りません。

金額は資本金の額と従業員数で決まり、資本金を1,000万円にした瞬間に18万円へ跳ね上がります。設立時の資本金をいくらにするかという、一見ささいな判断が毎年の固定費を左右します。

均等割とは何か

法人住民税は2階建てです。

  • 法人税割:法人税額に一定の率を掛けたもの。赤字なら法人税がゼロなので、こちらもゼロ
  • 均等割:所得に関係なく、法人の規模に応じて定額で課されるもの

このうち均等割は、所得がゼロでも、赤字であっても課税されます。「法人は存在しているだけで自治体の行政サービスを受けている」という考え方にもとづく、いわば会費のような性格の税です。

個人事業主にはこれに相当するものがありません。廃業していれば所得税も住民税所得割もゼロで、住民税の均等割5,000円がかかるだけです。法人化するとこの構造が変わります。

金額は資本金と従業員数で決まる

東京23区の場合、法人都民税として都に一括で納めます。標準的な区分は次のとおりです。

資本金等の額従業者50人以下従業者50人超
1,000万円以下7万円14万円
1,000万円超 1億円以下18万円20万円
1億円超 10億円以下29万円53万円

ひとり社長の会社であれば、従業者数は自分1人なので左の列です。資本金1,000万円以下なら年7万円、これが実質的な下限になります。

注目すべきは1,000万円を超えた瞬間の跳ね上がり方です。7万円から18万円へ、2.5倍以上になります。資本金を1,000万円ちょうどにするか1,001万円にするかで、毎年11万円の差が生まれます。

「資本金等の額」は資本金と同じではない

区分の基準になるのは資本金ではなく資本金等の額です。資本金に資本準備金などを加えた金額を指します。

たとえば1,000万円を出資して、うち500万円を資本金、500万円を資本準備金とした場合、資本金は500万円ですが資本金等の額は1,000万円です。「資本金を抑えたつもりが区分が変わらなかった」という事故が起きやすい部分なので、設立時に確認してください。

資本金1,000万円には、もう一つの壁がある

均等割だけの話ではありません。資本金1,000万円以上で設立した法人は、設立1期目から消費税の課税事業者になります

通常、新設法人は基準期間(2期前)が存在しないため、設立から2期は免税事業者になれます。しかしこの特例には「事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円未満であること」という要件があります。

つまり資本金1,000万円は、次の2つを同時に失う分岐点です。

資本金均等割設立1〜2期の消費税
1,000万円未満年7万円免税になりうる
1,000万円以上年18万円初年度から課税

ひとり社長の法人で資本金を1,000万円以上にする実務上の理由は、ほとんどありません。特別な事情がなければ1,000万円未満にする、と考えて差し支えありません。

なおインボイス発行事業者として登録すると、資本金にかかわらず初年度から課税事業者になります。この分岐についてはインボイス登録済みなら、法人化しても消費税の2年間免税は受けられないで扱っています。

法人化の判断にどう効くか

均等割7万円は、それ単体では大きな金額に見えないかもしれません。しかし法人化には、もうひとつ避けにくい固定費があります。税理士報酬です。

個人の確定申告と違い、法人は決算書と法人税申告書の作成が必要で、自力で完結させる人はごく少数です。個人時代より年20万円程度は上乗せになるのが一般的です。

法人化で毎年増える固定費金額の目安
法人住民税 均等割7万円
税理士報酬の増加分20万円前後
合計27万円前後

この27万円は、利益が出ようが出まいが毎年出ていきます。法人化によって税と社会保険が年30万円軽くなっても、手元に残るのは3万円という計算です。

損益分岐点の話で「税率が逆転する所得」と「手取りが逆転する所得」がずれるのは、この固定費のためです。当サイトの試算では、東京23区・40歳未満・独身・青色申告という条件で、法人化が有利に転じるのは事業所得1,252万円あたりでした。

詳しくは法人化の目安は「所得800万円」?その数字が当てにならない3つの理由をご覧ください。

均等割は経費にならない

もう一点、見落とされやすい性質があります。

会計上は「租税公課」として費用に計上しますが、法人税の計算上は損金に算入できません。法人住民税は法人税額を基準に計算される税なので、損金算入を認めると計算が循環してしまうためです。

同じ地方税でも法人事業税は損金に算入できます。扱いが違うので混同しないでください。

税目損金算入
法人税できない
法人住民税(法人税割・均等割)できない
法人事業税・特別法人事業税できる(原則として支払った期)

つまり均等割7万円は、税金を減らす効果がまったくないまま、そのまま出ていきます。7万円の支出は7万円の負担だと考えてください。

事業年度が12か月未満なら月割

設立1期目や決算期を変更した期など、事業年度が12か月に満たない場合、均等割は月割で計算されます。

均等割額 × 事業年度の月数 ÷ 12

月数は暦にしたがって計算し、1か月未満の端数は切り捨てます(ただし全体が1か月未満なら1か月とします)。

7月1日設立で12月31日決算なら6か月なので、7万円 × 6 ÷ 12 = 3万5,000円です。

設立初年度を短くすれば均等割は減ります。ただし消費税の免税期間も同じだけ短くなるため、免税のメリットを取りたい場合は逆効果です。設立月と決算月の組み合わせは、均等割・消費税・繁忙期の3つを見て決めるのが実務です。

まとめ

  • 均等割は所得がゼロでも赤字でも課税される。東京23区・資本金1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円
  • 資本金等の額が1,000万円を超えると18万円に跳ね上がる。基準は資本金ではなく資本準備金等を含めた「資本金等の額」
  • 資本金1,000万円以上だと設立1期目から消費税の課税事業者にもなる。ひとり社長なら1,000万円未満にする
  • 均等割は損金に算入できない。7万円の支出は7万円の負担そのもの
  • 税理士報酬の増加分と合わせると、法人化の固定費は年27万円前後
  • 事業年度が12か月未満なら月割。ただし消費税の免税期間も短くなる

この固定費を差し引いた「実質の差額」がいくらになるかは、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

売上がまったくない休眠会社でも均等割はかかりますか?

原則としてかかります。ただし自治体によっては、事業活動を完全に停止していることを届け出れば免除される取扱いがあります。東京都でも休眠の届出を受け付けています。ただし届け出れば自動的に免除されるわけではなく、預金利息が入るだけでも事業活動とみなされる場合があります。事前に都道府県税事務所・市区町村へ確認してください。

設立1期目が12か月に満たない場合はどうなりますか?

月割で計算されます。たとえば7月設立で12月決算なら6か月なので、年7万円の場合は3万5,000円です。1か月未満の端数は切り捨てます。設立初年度は事業年度を短く設定すると均等割も安くなりますが、消費税の免税期間も短くなるため、そちらとの兼ね合いで判断してください。

均等割は経費になりますか?

会計上は「租税公課」として費用計上しますが、法人税の計算では損金に算入できません。法人住民税は法人税額を基準に課される税なので、損金算入を認めると循環してしまうためです。同じ地方税でも法人事業税は損金に算入できるので、扱いが違います。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。