税金の基礎

休眠会社の均等割はかからない?3市の公式回答が割れる

休眠会社の法人住民税均等割は、休眠届を出せば止まるとは限りません。京都市・神戸市・名古屋市の公式回答は非課税・届出ベース・2分の1減免に割れます。年7万円の内訳と、休眠を続けた場合に残る固定費を計算エンジンの数字で示します。

会社を畳むほどではないが、しばらく事業を止めたい。そのときに出てくるのが「休眠にすれば毎年の均等割7万円は止まる」という話です。この説明は、住んでいる自治体によっては成り立ちません。

実際に3つの市の公式Q&Aを読むと、休業中の均等割の扱いは非課税・届出ベース・2分の1減免の3通りに割れています。しかも減免が認められても、7万円のうち消えるのは市町村側の一部だけです。

「休眠届を出せば均等割は止まる」がどこから来たか

法人住民税の均等割は、事務所又は事業所を有する法人に課されます。所得ではなく、事務所等の存在が課税の入口です。ここから、「事業を止めて事務所の実態がなくなれば、納税義務者に当たらないのではないか」という理屈が出てきます。

この理屈自体は間違っていません。京都市は次の基準を公表しています。

休業状態が継続し、再開する見通しが明確でないような場合は、事務所等がないものとして取扱い、法人市民税の課税を行わない

ただし京都市は同時に、一時的な休業の場合や再開に係る準備業務を行っている場合は課税されるとも書いています。つまり判断されているのは「届出を出したかどうか」ではなく、事務所等の実態が消えたと言えるかどうかです。

ここが、ネット上の説明で最も抜けやすい部分です。休眠届という名前の書類を出す行為が課税を止めるのではありません。届出は現況の報告であって、課税をやめる申請ではないのです。

3市の公式回答を並べると、扱いが割れる

休業中の取扱いを公式サイトで説明している3市から、その内容を抜き出して並べます。

自治体公表されている扱い必要な手続き均等割はどうなるか
京都市休業状態が継続し、再開の見通しが明確でない場合は事務所等がないものとして取り扱う法人等設立・解散・変更届出書の「休業の場合」欄に記入し、法人の現況申立書(原本)を添付課税を行わない。ただし一時的な休業や再開の準備業務があれば課税
神戸市休業=法人登記を残したまま一切の事業活動を休止した状態法人市民税の異動届の「4 休業のとき」の欄に記載して提出届出をした場合も、調査等で法人の活動が確認されれば課税される場合がある
名古屋市課税標準の算定期間の末日において6か月以上引き続いて事業を中止中の法人を減免対象とする減免申請書に「現況届」等の現状がわかる書類を添付市民税の均等割額の2分の1を減免。法人税割が生じる場合は減免の対象外

同じ「休眠」でも、京都市は課税しない、神戸市は届出を受け付けたうえで実態次第、名古屋市は課税したうえで半分を減免する、という設計になっています。

神戸市は、この差を自ら注記しています。

なお、休業中の均等割の取扱いは課税庁(地方団体)によって異なるため、他団体についてはご確認ください。

課税庁が自分の扱いを説明したうえで、他の自治体では違うと明記しているわけです。休眠と均等割の関係を一般論で語れない理由が、ここに表れています。

なお、当サイトの計算が既定とする東京23区については、東京都主税局が休業中の均等割の取扱いを公表していません。同局が案内しているのは、事務所又は事業所を廃止した場合などに、廃止又は変更の日から10日以内に異動届出書を所管の都税事務所へ提出する、という手続きです。休業中どう扱われるかは、都税事務所に個別に確認する必要があります。

減免されても、消えるのは市町村分だけ

もう一つ見落とされやすいのが、均等割が1つの税ではないことです。法人住民税は道府県民税と市町村民税に分かれ、それぞれの課税庁に納めます。よく言われる年7万円は、この2つの合計です。

名古屋市が案内しているのは市民税の均等割の減免なので、道府県民税の均等割は別の課税庁の判断になります。市の減免が認められても、自動的に全体が半分になるわけではありません。

3つの扱いを、金額に置き直します。

休業中の扱い市町村民税の均等割道府県民税の均等割年間合計3年間5年間
休業中も課税される5.0万円2.0万円7.0万円21.0万円35.0万円
市町村民税の均等割が2分の1減免される2.5万円2.0万円4.5万円13.5万円22.5万円
事務所等を有しないものとして課税されない0円0円0円0円0円

※ 資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下の標準的な一人会社(年7.0万円)の場合 ※ 市町村民税の均等割と道府県民税の均等割は課税庁が別。市の減免が道府県に及ぶとは限らない ※ 最下行の道府県民税0円は、都道府県も同じ判断をした場合の金額 ※ 税額は令和8年4月1日以後に開始する事業年度の基準による

減免型の自治体で市町村分の2分の1が認められても、年4.5万円は残ります。5年間眠らせれば22.5万円です。「休眠にすれば7万円がゼロになる」と「4.5万円に減る」では、5年で12.5万円の差が出ます。均等割の金額の決まり方そのものは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で扱っています。

減免は申請しないと始まらない点にも注意が必要です。名古屋市は減免申請書と現況届等の提出を求めています。申告書を出しただけでは減免の判断は行われません。

均等割が止まっても、法人を維持する不利は残る

ここまでは均等割だけの話です。しかし休眠を検討する局面では、そもそも法人を持ち続けること自体のコストが問題になります。

法人が個人事業より有利になる境目は、条件によって次の位置にあります。

条件損益分岐となる事業所得
基本(独身・インボイス登録済み)1,266万円
株式会社で設立1,266万円
配偶者あり(無収入)1,016万円
配偶者あり+扶養1人1,066万円
インボイス未登録1,266万円
40〜64歳(介護保険あり)1,243万円
大阪市1,283万円
名古屋市1,269万円
白色申告793万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 表示した条件以外は基本条件と同じ。実質差額がプラスに転じる事業所得 ※ いずれも3年目以降の定常状態。設立1〜2期の消費税免税(インボイス未登録の場合のみ)は含まない

休眠を考える段階の法人は、この境目をかなり下回っています。そこで実際にいくら不利なのかを、売上が落ちた帯まで下げて計算しました。

事業所得個人のまま法人を維持実質差額(年)うち固定費固定費の割合
100万円71.3万円64.2万円−27.1万円27.0万円100%
200万円156.4万円139.7万円−36.7万円27.0万円74%
300万円232.2万円206.5万円−45.7万円27.0万円59%
400万円303.1万円274.5万円−48.6万円27.0万円56%
600万円427.3万円409.7万円−37.6万円27.0万円72%
800万円540.7万円536.6万円−24.1万円27.0万円112%

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 固定費は均等割7.0万円+税理士報酬の差20.0万円。所得が動いても変わらない部分

直感に反する形をしています。**法人を維持する不利は、所得が下がるほど大きくなるのではありません。**事業所得400万円で年47.8万円と最大になり、そこから所得が落ちると差はむしろ縮んで、100万円では26.8万円になります。

縮む理由は単純で、所得が小さければ税額そのものが小さく、動く余地が減るからです。しかし内訳を見ると、縮んでいるのは変動部分だけです。固定費27.0万円は所得がいくらでも変わりません。事業所得100万円の行では固定費の割合が101%になっており、これは税と社会保険料の面では法人がわずかに有利で、不利をつくっているのが固定費だけであることを意味します。事業所得800万円の119%も同じ読み方です。

売上が消えても消えないのは、この固定費のほうです。均等割を止められるかどうかは、そのうち7万円分の話にすぎません。3年目以降の比較は所得別の比較にも載せています。計算の前提は計算の根拠にまとめています。

眠らせるか、畳むか

休眠の利点は、事業を再開するときに設立し直さなくてよいことです。取引先との契約や許認可、法人口座を維持できる場合もあります。再開の予定があるなら、この価値は小さくありません。

一方で、法人が存続する限り次のものは残ります。

京都市の基準にある「再開する見通しが明確でない」状態が続くなら、それは休眠ではなく清算に近い状態です。会社を閉じる側の費用と期間は会社の解散・清算にかかる費用で計算しています。眠らせ続ける費用と、一度で畳む費用を並べて比べる価値があります。

判断が僅差になる場合や、再開時期の見通しが立たない場合は、所管の自治体への確認と、個別条件を専門家に確認する価値があります。ここに出した数字は一般的な条件での概算です。一般論の7万円ではなく、自分の売上と経費、そして本店所在地の扱いで確かめてください。

まとめ

  • 均等割の課税は事務所又は事業所の有無で決まります。休眠届という書類を出す行為が課税を止めるわけではありません
  • 3市の公式回答は割れています。京都市は事務所等がないものとして課税せず、神戸市は届出後も調査で活動が確認されれば課税、名古屋市は6か月以上事業中止で市民税の均等割額の2分の1を減免します
  • 法人住民税は道府県民税と市町村民税に分かれます。年7万円の内訳は道府県民税2万円と市町村民税5万円で、市の減免だけでは全体が消えません
  • 名古屋市型の2分の1減免が認められても年4.5万円が残り、5年で22.5万円になります
  • 法人を維持する不利は事業所得400万円で年47.8万円と最大になり、所得が落ちると縮みます。ただし縮むのは変動部分だけで、固定費27.0万円は残ります
  • 再開の見通しが立たないなら、眠らせ続ける費用と清算費用を並べて比べる場面です

よくある質問

休業の届出を出したのに、均等割の納税通知が届くことはありますか?

あります。神戸市は、休業の届出をした場合も調査等で法人の活動が確認されたときは法人市民税が課税される場合がある、と案内しています。届出は課税をやめる申請ではなく、現況の報告です。届出を出した事実だけで課税が止まるとは限りません。

名古屋市の「6か月以上」はいつ時点で数えるのですか?

名古屋市の減免要件は「課税標準の算定期間の末日において6か月以上引き続いて事業を中止中の法人」です。期末時点で休業していても、そこから遡って6か月に満たなければ対象外になります。あわせて、法人税割が生じる場合は減免の対象になりません。

市の減免が認められれば、法人住民税はゼロになりますか?

法人住民税は道府県民税と市町村民税の2つに分かれており、課税庁も別です。名古屋市が案内しているのは市民税の均等割の減免なので、道府県民税の均等割については都道府県への別の確認が必要です。市の減免だけで均等割全体が消えるとは限りません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。