設立の手続き
法人の確定申告は決算から2か月。初年度も延びない
法人税と消費税の確定申告は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。3月決算・12月決算の期限、設立初年度、申告期限延長の違いを整理します。
個人の確定申告は原則3月15日ですが、法人は会社ごとの決算日から数えます。法人税の確定申告は、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。設立初年度が3か月しかなくても、申告準備が4か月に延びるわけではありません。
しかも2か月以内に終えるのは申告書作成だけではありません。帳簿を締め、在庫や固定資産を確定し、法人税・地方税・消費税を申告し、原則同じ日までに納付します。決算日から逆算して準備します。
決算月別の期限
| 決算日 | 原則の申告・納付期限 |
|---|---|
| 3月31日 | 5月31日 |
| 6月30日 | 8月31日 |
| 9月30日 | 11月30日 |
| 12月31日 | 翌年2月末日 |
期限が土曜・日曜・祝日などに当たれば、その翌日が期限です。法人税だけでなく地方法人税、防衛特別法人税も同じ申告に含まれます。地方税は自治体側の法人住民税・事業税申告も別に必要です。
国税と地方税の提出先は同じではない
| 税目 | 主な提出先 | 原則期限 |
|---|---|---|
| 法人税・地方法人税・防衛特別法人税 | 税務署 | 決算日の翌日から2か月以内 |
| 消費税・地方消費税 | 税務署 | 課税期間終了後2か月以内 |
| 法人都道府県民税・法人事業税 | 都道府県税事務所等 | 原則2か月以内 |
| 法人市町村民税 | 市区町村 | 原則2か月以内 |
e-Taxで法人税を送信しても、地方税申告が自動で完了するわけではありません。地方税はeLTAX等を使い、事務所が複数自治体にある場合は提出先も増えます。
赤字会社でも法人税の申告は必要です。地方税では均等割が生じます。税務署への法人税が0円だったことだけで、地方税の申告・納付まで0円と判断できません。
「2か月」は60日ではない
3月31日決算なら5月31日、4月30日決算なら6月30日です。決算日の翌日から暦で2か月を数えます。単純に60日を加えると月の日数によってずれます。
月末決算でない会社も同じです。たとえば8月20日決算なら原則10月20日です。申告期限が休日なら翌日になりますが、社内の支払予約は休日繰越を前提にせず、前営業日に完了させるほうが安全です。
初年度は短くても2か月以内
7月に会社を設立して9月決算にすれば、初年度は約3か月です。それでも9月30日の翌日から2か月以内に申告します。短い事業年度は取引量が少ない反面、設立費用、資産引継ぎ、役員報酬、社会保険の開始処理が集中します。
短期決算で集まりやすい初年度項目
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 創立費・開業費 | 個人が立て替えた費用を含めて整理 |
| 資本金 | 払込日、設立日、法人通帳への移動 |
| 役員報酬 | 決定日、支給開始、未払の有無 |
| 社会保険料 | 資格取得日と会社負担分 |
| 個人からの資産引継ぎ | 売買日、時価、代金決済、消費税 |
| 売上・経費の帰属 | 設立日前は個人、設立日後は法人が原則 |
初年度が3か月なら資料が少ない、とは限りません。個人事業と法人の境界を決める資料が初年度だけ増えます。個人口座で受け取った設立後の売上や、個人カードで立て替えた法人経費も締め日までに洗い出します。
法人化のタイミングと決算期は免税期間や均等割にも影響します。申告準備の時間だけで決算月を決めるのではなく、繁忙期を避けられるかも見ます。
決算後2か月を4週間ずつに分ける
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 決算直後〜2週 | 通帳・カード・請求書を回収、売掛・買掛を締める |
| 3〜4週 | 棚卸、減価償却、役員貸借、未払費用を確定 |
| 5〜6週 | 税額計算、申告書レビュー、納税資金を移動 |
| 7〜8週 | 国税・地方税を申告し、納付を完了 |
資料がそろうまで何もしないと、最後の2週間に判断が集中します。毎月の月次締めで通帳残高、売掛金、役員貸付金・借入金を合わせておけば、決算後は例外項目の確認に時間を使えます。
税理士へ依頼する場合も期限は変わりません。資料提出日、質問への回答期限、納税額の連絡日を契約時に決めます。決算日直前に依頼先を探すと、受任枠がないこともあります。
消費税も原則2か月、延長は別手続き
法人の消費税確定申告も、原則として課税期間終了後2か月以内です。法人税の申告期限延長を受けている会社が、消費税申告期限延長届出書を出すと1か月延長できる制度があります。
法人税と消費税は別々に延長判定する
| 状況 | 法人税 | 消費税 |
|---|---|---|
| 延長手続きなし | 原則2か月 | 原則2か月 |
| 法人税だけ延長申請 | 延長後の期限 | 2か月のまま |
| 法人税延長+消費税延長届出 | 延長後の期限 | 1か月延長 |
消費税の延長制度を使えるのは、法人税の申告期限延長の特例を受ける法人が所定の届出をした場合です。消費税だけを「決算が間に合わない」という理由で自由に延ばせる制度ではありません。
期限が延びても、延長期間に対応する利子税が生じます。納税額の概算が出ているなら、見込納付をして利子税を抑える運用も検討します。延長は帳簿整理を後回しにするための無利息期間ではありません。
ただし法人税の延長だけで消費税が自動的に延びるわけではありません。消費税の納付を延長した期間には利子税が伴います。中間納付が必要になる水準は消費税の中間申告で確認できます。
申告と納付は同じ期限
書類だけ期限内に出して、納税は後日でよいわけではありません。原則として申告期限が納付期限でもあります。決算日の時点で納税見込額を出し、2か月の間に現金を確保します。
納税資金は利益と一致しない
会計上の利益が出ていても、売掛金が未回収なら現金はありません。反対に借入金が口座へ入っていても、借入は利益ではありません。納税資金は損益計算書ではなく、入出金予定から確認します。
| 決算時の項目 | 税額・資金への影響 |
|---|---|
| 未回収の売掛金 | 利益には入るが現金はまだない |
| 借入金の入金 | 現金は増えるが利益ではない |
| 固定資産購入 | 現金は減るが全額が当期経費とは限らない |
| 法人税等の中間納付 | 確定税額から差し引く |
| 消費税の預り分 | 利益と別に納税資金を残す |
決算月の翌月に大きな支払いを予定しているなら、法人税・地方税・消費税の概算額を先に分離します。インボイス登録会社は、法人税が赤字でも消費税納付が生じる場合があります。
期限後になった場合の影響
期限後申告や期限後納付では、無申告加算税、延滞税などが生じることがあります。青色申告の承認にも影響し得ます。赤字で納付税額がない場合でも、欠損金を翌期以降へ繰り越すためには申告を継続することが重要です。額の目安は法人の期限後申告、無申告加算税はいくら?で、税目別に計算しています。
期限前に正確な申告が間に合わないと気づいた場合、何も出さずに放置するのではなく、延長制度の適用可否や現時点で可能な手続きを税務署・税理士へ確認します。期限を過ぎてから延長届を出して過去へさかのぼることはできません。
決算日を決めるチェックリスト
- 売上の繁忙期と決算作業が重ならないか
- 決算後2か月に大型連休や長期出張がないか
- 棚卸を実施しやすい月か
- 税理士・経理担当者が対応できる時期か
- 納税月に賞与・仕入代金など大口支出が重ならないか
- 設立初年度が短すぎて準備期間を失わないか
赤字でも法人住民税の均等割と申告事務は残ります。自分の売上・経費で概算税額を確認し、決算後2か月の現金予定へ反映してください。
赤字でも法人住民税の均等割と申告事務は残ります。税額0円だから申告不要、という判断はできません。
3月決算法人の具体的な進行例
3月31日決算、申告期限延長なしの一人会社なら、5月31日が原則期限です。
| 日程例 | 作業 |
|---|---|
| 3月31日 | 銀行残高・現金・在庫を確定 |
| 4月10日まで | 3月分の請求書・カード明細を回収 |
| 4月末まで | 売掛買掛、固定資産、役員貸借を締める |
| 5月上旬 | 法人税・地方税・消費税の概算を確認 |
| 5月中旬 | 申告書レビュー、納税資金を口座へ移動 |
| 5月末まで | 国税・地方税を申告・納付 |
5月の大型連休を除くと、実働日は2か月より少なくなります。4月末に資料回収を始めるのではなく、3月中に請求漏れや未払費用を確認します。
決算後に役員報酬をさかのぼって変更して利益を調整することはできません。役員報酬は原則として期首から一定期間内に決めます。決算直前の対策では、未計上取引の確認、必要な修繕や購入の実行時期、納税資金の確保を区別します。
まとめ
- 法人税申告は事業年度終了日の翌日から2か月以内
- 設立初年度が短くても期限は同じ
- 申告期限と納付期限は原則同日
- 法人税の期限延長は消費税へ自動連動しない
- 決算直後に資料整理と納税資金の確保を始める
よくある質問
3月決算の法人税申告はいつまでですか?
原則は5月31日までです。期限が土日祝日に当たる場合は、その翌日が期限になります。
法人税の申告期限を延長すれば消費税も自動で延びますか?
自動ではありません。消費税は別の届出により1か月延長する制度があり、延長期間には利子税がかかります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。