法人化の判断

子ども2人を扶養する開発者の法人化試算事例。子の年齢で損益分岐が582万円動く

結論

岡山市・46歳のシステム開発者(年商1,500万円・経費300万円、無収入の妻と高校生の子2人)は、個人のまま手取り778.7万円、法人化で799.2万円、3期目以降は年0.5万円の有利でほぼ互角です。子が2人とも15歳以下だった3年前なら年14.1万円有利、2人とも大学生になれば年4.5万円の不利で、損益分岐は752万円から1,334万円まで動きます。

  • 16歳以上の子は扶養控除(所得税38万円・住民税33万円)、19〜22歳は特定扶養控除(所得税63万円・住民税45万円)の対象。15歳以下の子は対象外
  • 扶養控除は税率の高い人ほど効く。個人のままの税率のほうが、法人化後の役員報酬にかかる税率より高いので、子が扶養控除の年齢になると個人側が有利になる
  • 法人化を判断した年の家族構成は数年で変わる。損益分岐が動く方向を知っておくと、判断の見直し時期が分かる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

家族がいると法人化は有利になる、と一般に言われます。配偶者については当たっています。ただ子どもについては、年齢によって逆の方向に効きます。このケースでは、同じ家族を3年前・いま・1年後・3年後で比べます。

このケースの条件

項目内容
職種システム開発者(地元企業の業務システムを受託)
年齢・家族46歳・妻(無収入)・子2人(高校3年と高校1年)
住所岡山市
年商(税抜)1,500万円
経費300万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種請負業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は1,200万円です。子は2人とも16歳以上なので、扶養控除の対象です。

個人事業主のまま:手取りは778.7万円

項目金額
事業所得(売上−経費)1,200.0万円
国民健康保険(4人・介護分を含む)113.0万円
国民年金(本人+妻)43.0万円
所得税(配偶者控除・扶養控除2人)132.5万円
住民税87.2万円
個人事業税45.5万円
手取り778.7万円

※ 岡山市・46歳・妻(無収入)・16〜18歳の子2人・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

法人化した場合:手取り合計は799.2万円

項目金額
役員報酬(月54万円・年額)648.0万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)96.0万円
所得税(配偶者控除・扶養控除2人)8.2万円
住民税23.9万円
個人に入る手取り519.9万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)98.3万円
法人の利益(税引前)453.7万円
法人税等(均等割7万円を含む)104.5万円
会社に残る額349.2万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)799.2万円

※ 合同会社・岡山県(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)+20.5万円+20.5万円+20.5万円
設立費用(合同会社)−10.0万円——
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−9.5万円+0.5万円+0.5万円

2期目以降の差は年0.5万円で、判定ツールの区分は「ほぼ互角」です。

同じ家族を、3年前・いま・3年後で比べる

子どもの年齢だけを変えて、同じ年商・経費で計算しました。

時点子の年齢区分個人のままの手取り法人化の手取り合計最適な役員報酬実質差額(3期目以降)損益分岐(事業所得)
3年前2人とも15歳以下752.6万円786.6万円月54万円+14.1万円752万円
いま2人とも16〜18歳778.7万円799.2万円月54万円+0.5万円1,127万円
1年後16〜18歳1人と19〜22歳1人785.8万円802.7万円月72万円−3.1万円1,302万円
3年後2人とも19〜22歳792.9万円808.4万円月76万円−4.5万円1,334万円

※ 年商1,500万円・経費300万円・岡山市・46歳・妻(無収入)・個人事業税5%・青色申告(e-Tax)/2026年(令和8年)分基準

3年前なら法人化は年14.1万円有利、3年後には年4.5万円の不利です。損益分岐は事業所得752万円から1,334万円まで582万円動きます。家族構成以外は何も変わっていません。

扶養控除は、税率の高い側で大きく効く

16歳以上の子は扶養控除(所得税38万円・住民税33万円)、19〜22歳の子は特定扶養控除(所得税63万円・住民税45万円)の対象です。15歳以下の子には扶養控除がありません。

控除で軽くなる税金は「控除額×その人の税率」です。個人のままだと事業所得1,200万円に対して高い税率がかかっているので、控除の効きが大きくなります。法人化すると、所得は役員報酬648万円と法人の利益に分かれ、個人の税率は下がります。同じ38万円の控除でも、軽くなる税金は小さくなります。

つまり子が扶養控除の年齢になるほど個人のままが相対的に有利になり、損益分岐は上に動きます。大学生の子がいる年は、役員報酬を月72万〜76万円に上げて控除を生かす形が最適になりました。

配偶者は逆向きに効く

配偶者は、法人化で国民年金(年21.5万円)と国保の負担がなくなるので、法人化を有利にする方向に効きます。配偶者がいる場合の事例は大阪・妻子ありのデザイナーの試算事例で扱っています。家族の中でも、配偶者と子では向きが違います。

判断の見直し時期

このケースのように差が小さい家族は、子の進学のたびに結論が動きます。

子の状況の変化損益分岐が動く方向
子が16歳になる上がる(個人のままが有利な方向)
子が19歳になる(大学進学など)さらに上がる
子が就職して扶養から外れる下がる(法人化が有利な方向)

一度法人化すると、個人に戻すにも手間と費用がかかります。法人化の判断は、いまの家族構成だけでなく、数年先の家族構成でも確かめておくと、結論がぶれる年を読めます。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

まとめ

  • 岡山市・年商1,500万円・妻と高校生2人を扶養する開発者は、法人化で3期目以降年0.5万円の有利。ほぼ互角
  • 同じ家族でも、子が15歳以下なら年14.1万円有利、2人とも大学生なら年4.5万円の不利
  • 損益分岐は子の年齢区分だけで事業所得752万〜1,334万円まで動く
  • 扶養控除は個人のままの高い税率で大きく効くため、子が扶養控除の年齢になると個人側が有利になる
  • 配偶者は法人化を有利にし、16歳以上の子は不利にする。向きが逆

判定ツールには子の人数を年齢区分ごとに入れる欄があります。数年先の家族構成でも確かめてください。

よくある質問

子どもを社会保険の扶養に入れると、保険料はどうなりますか?

法人化して社長が健康保険に入ると、収入の少ない子は被扶養者になり、保険料は増えません。個人のままなら国保は子の分の均等割がかかりますが、このケースの所得では国保が賦課限度額に達しているため、子の分で国保は増えていません。

大学生の子がアルバイトをしている場合はどうなりますか?

子の所得が一定額を超えると扶養控除の対象から外れます。令和7年分からは、19〜22歳の子の給与収入が一定の範囲なら特定親族特別控除を受けられる仕組みもできました。子の収入によって、この試算の扶養控除の額は変わります。

子どもが就職して扶養から外れたら、どうなりますか?

扶養控除がなくなるので、個人のままの税負担が増え、法人化の有利幅は大きくなる方向に動きます。妻だけを扶養する状態に戻ると、このケースでは損益分岐が事業所得867万円まで下がります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。