税金の基礎

寡婦控除27万円は、夫と死別なら子がいなくても使える。法人化で残る線

結論

寡婦控除は所得税27万円・住民税26万円で、夫と死別した女性は扶養親族がいなくても、合計所得金額500万円以下なら対象です。売上−経費が565万円を超えると個人事業主のままでは外れますが、法人化して役員報酬(40〜64歳・東京23区で最適な月45万円以下)を受け取る形にすると、売上−経費1,000万円でも給与所得388万円で要件の内側に残ります。控除の価値は年4万円前後です。

  • 対象は女性だけ。夫と離婚した人は扶養親族が必要で、死別した人は不要。生計を一にする子がいてひとり親に当たる人は、ひとり親控除(35万円)が優先する
  • 遺族基礎年金・遺族厚生年金は非課税で、合計所得金額に入らない。夫の事業を継いだ妻は、事業所得や役員報酬の給与所得だけで500万円の線を判定する
  • 寡婦は前年の合計所得金額135万円以下なら住民税がかからない。個人事業主は売上−経費200万円まで、法人化後は役員報酬の年収208.8万円までが目安

寡婦控除はひとり親控除の陰に隠れがちですが、対象になる人の形がまったく違います。子がいなくても、子がすでに独立していても使える控除で、夫の事業を継いで個人事業主になった妻が典型的な対象者です。そしてこの控除は、法人化したあとのほうが長く残ります。

寡婦控除とひとり親控除は、要件の組み立てが違う

国税庁の説明では、寡婦とは12月31日の現況で「ひとり親」に当たらず、次のどちらかに当てはまる人です。どちらも、事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいる場合は対象外です。

  1. 夫と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下
  2. 夫と死別した後に婚姻をしていない人(夫の生死が明らかでない一定の人を含む)で、合計所得金額が500万円以下。扶養親族の要件はない

ひとり親控除と並べると、違いは次のとおりです。

項目ひとり親控除寡婦控除
所得税の控除額35万円27万円
住民税の控除額30万円26万円
性別問わない女性のみ(「夫」と死別・離婚した人)
生計を一にする子必要(総所得金額等62万円以下)不要
扶養親族—離婚の場合だけ必要。死別なら不要
本人の合計所得金額500万円以下500万円以下
事実婚の相手がいる場合対象外対象外

※ 子の所得要件62万円は令和8年分から(令和8年12月1日施行)。住民税の控除額は地方税法314条の2

令和2年分の改正で、未婚のひとり親と男性のひとり親を同じ扱いにするためにひとり親控除が新設されました。寡婦控除はその外側に、子がいない女性のための控除として残っています。男性向けだった寡夫控除は廃止されたため、妻と死別した男性は、子がいなければどちらの控除も受けられません。

子が独立すると、ひとり親控除から寡婦控除に切り替わる

ひとり親控除の「生計を一にする子」は、総所得金額等が62万円以下(令和8年分)で、他の人の扶養親族になっていない子に限られます。子が就職して給与を受け取り始めると、多くの場合この線を超えます。

そのとき何が起きるかは、本人の立場で分かれます。

本人子の所得が62万円を超えた年
夫と死別した女性寡婦控除へ切り替わる(所得税35万円→27万円、住民税30万円→26万円)
夫と離婚した女性・扶養親族あり寡婦控除へ切り替わる
夫と離婚した女性・扶養親族なし控除なし
男性控除なし
未婚の親控除なし

控除の額は所得税で8万円、住民税で4万円減りますが、死別した女性はゼロにはなりません。 扶養親族には子以外も入るため、離婚した女性が自分の親を扶養している場合も寡婦控除が残ります。

ひとり親控除の500万円の線と、役員報酬でその線がどう動くかはひとり親控除の500万円ラインと法人化で扱いました。この記事では、その先の「子がいない・独立した」側を見ます。

遺族年金は、合計所得金額に入らない

夫と死別した妻の収入には、遺族基礎年金や遺族厚生年金が含まれることがあります。これらは合計所得金額に入りません。厚生年金保険法41条2項は、租税その他の公課は保険給付として支給を受けた金銭を標準として課すことができないと定め、ただし書きで老齢厚生年金だけを除いています。国民年金法25条も、老齢基礎年金と付加年金を除いて同じ定めを置いています。

つまり、遺族年金は非課税で、所得の判定にも乗りません。夫の事業を継いだ妻の場合、500万円の線は事業所得(法人化後なら役員報酬の給与所得)だけで判定します。遺族厚生年金を年100万円受け取っていても、合計所得金額は増えません。

一方、本人が65歳以上で自分の老齢年金を受け取っている場合は、老齢年金は公的年金等の雑所得として合計所得金額に入ります。遺族年金と老齢年金のどちらを受け取っているかで、同じ受取額でも判定が変わります。

法人化すると、寡婦控除が残る帯が広がる

40〜64歳の寡婦が、個人事業主のままの場合と法人化して手取りが最大になる役員報酬を取る場合で、合計所得金額と寡婦控除による税の減少額を計算しました。控除の価値は、計算エンジンが出した課税所得から27万円・26万円を差し引いて所得税・住民税を計算し直した差額です。

売上−経費個人:合計所得金額個人:控除の価値(年)法人化:最適な役員報酬法人化:給与所得法人化:控除の価値(年)
300万円235万円40,200円月20万円160万円36,700円
400万円335万円40,300円月28万円227.2万円40,300円
500万円435万円53,600円月34万円282.4万円40,300円
565万円500万円67,400円月39万円330.4万円40,300円
600万円535万円対象外月42万円359.2万円39,800円
700万円635万円対象外月45万円388万円44,800円
1,000万円935万円対象外月45万円388万円44,800円

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40〜64歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。控除の価値は所得税(復興特別所得税を含む)と住民税所得割の減少額の合計

2つの傾向が読み取れます。

1つ目は、個人事業主のままでは、控除の価値が最も高くなる直前に要件から外れることです。所得が上がるほど税率が上がり、27万円の控除で減る税額は大きくなります。売上−経費565万円では年67,400円ですが、そこを超えると合計所得金額が500万円を超えて0円になります。

2つ目は、法人化すると、売上−経費1,000万円でも要件の内側に残ることです。40〜64歳では介護保険料が加わるため、手取りが最大になる役員報酬は月45万円で頭打ちになり、給与所得は388万円にとどまります。控除の価値は年4万円前後で個人の上の帯より小さいものの、事業が伸びても途切れません。

当サイトのシミュレーターは寡婦控除を計算に入れていません。この表の控除の価値は、判定ツールが出す法人化の差額に自分で足して読んでください。

住民税が0円になる135万円の線

寡婦には、500万円とは別の線がもう1本あります。地方税法295条1項2号は、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下の人には、市町村民税を課することができないと定めています。所得割だけでなく均等割もかかりません。

形態135万円の線に当たる額寡婦でない場合の住民税寡婦の住民税線を1万円超えた寡婦の住民税
個人事業主売上−経費200万円(事業所得135万円)52,500円0円26,900円
法人化役員報酬の年収208.8万円(給与所得134.8万円)63,700円0円36,600円

※ 経費200万円・東京23区・40〜64歳・独身・青色申告(e-Tax)・合同会社。法人化は役員報酬月17.4万円(線を超えた側は月17.5万円)。給与所得控除は令和8年分の最低保障額74万円で計算/2026年(令和8年)分基準

線をわずかに超えると、住民税が0円から2万〜3万円台へ一段で上がります。 135万円以下での非課税は住民税だけの制度で、所得税にはありません。所得税側は基礎控除と社会保険料控除でこの帯はもともと0円に近いため、効いてくるのは住民税です。

この線は、事業を縮小しながら遺族年金で暮らしを支えている人に関係します。遺族年金は合計所得金額に入らないので、事業所得を135万円以内に収めれば住民税は0円です。法人化した場合でも、役員報酬の年収で208.8万円が目安になります。ただし住民税の非課税は、国民健康保険料の軽減や各種の給付の判定とは別の制度なので、それぞれの基準で確かめる必要があります。

ここまでの数字は、東京23区・40〜64歳・経費200万円という条件での概算です。法人化した場合の手取りと最適な役員報酬は、判定ツールに自分の売上と経費を入れて確かめてください。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 寡婦控除は所得税27万円・住民税26万円。夫と死別した女性は扶養親族がいなくても、合計所得金額500万円以下なら対象。離婚した場合は扶養親族が必要
  • 子が独立してひとり親控除の要件(子の所得62万円以下)を外れると、死別・離婚して扶養親族のいる女性は寡婦控除へ切り替わる。男性と未婚の親は控除がなくなる
  • 遺族基礎年金・遺族厚生年金は非課税で合計所得金額に入らない。夫の事業を継いだ妻は、事業所得か役員報酬の給与所得だけで判定する
  • 個人事業主は売上−経費565万円を超えると要件から外れるが、法人化すると40〜64歳では給与所得が388万円で頭打ちになり、売上−経費1,000万円でも控除が残る(年4万円前後)
  • 寡婦は前年の合計所得金額135万円以下なら住民税が0円。個人事業主は売上−経費200万円、法人化後は役員報酬の年収208.8万円が目安

よくある質問

妻と死別した男性は寡婦控除を受けられますか。

受けられません。寡婦控除の対象は夫と死別・離婚した人に限られます。令和元年分までの寡夫控除は令和2年分から廃止され、男性は生計を一にする子がいてひとり親に当たる場合に限り、ひとり親控除35万円の対象になります。

再婚はしていないが、事実婚の相手がいる場合はどうなりますか。

寡婦控除の対象外です。国税庁は、納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象とならないとしています。ひとり親控除も同じ扱いです。

寡婦かどうかはいつの時点で判定しますか。

原則としてその年の12月31日の現況で判定します。年の途中で夫と死別した場合も、12月31日に婚姻をしておらず、合計所得金額が500万円以下なら、その年分から寡婦控除の対象になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。