税金の基礎

リフォーム減税の所得要件は2,000万円。耐震だけ線の外、社長は報酬で判定

結論

省エネ・バリアフリー・多世帯同居・長期優良住宅化・子育て対応のリフォーム税額控除は、工事をして住み始めた年の合計所得金額が2,000万円以下でないと使えません。耐震改修の10%部分(最大25万円)だけは所得要件がありません。個人事業主は売上−経費2,065万円を超えると対象外になり、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取ると給与所得は1,005万円までにとどまります。

  • 耐震改修特別控除は工事の期限が、他の改修は居住開始の期限が、いずれも令和10年12月31日まで(令和8年4月1日現在の法令)
  • 控除はその年分の所得税額が限度。法人化後の役員報酬が月54万円だと所得税額は18万2,600円で、控除25万円のうち6万7,400円は引けない
  • 令和8年以後に住み始めた40〜50㎡の住宅は所得の線が1,000万円。役員報酬月100万円の給与所得1,005万円は5万円超える

リフォームの税額控除は、工事の種類ごとに6つに分かれています。所得の要件がかかる部分と、かからない部分が混在しています。線の位置は住宅取得の特例と同じ2,000万円ですが、判定に乗るのは個人の所得だけです。法人化して利益を会社に残すと、線から大きく離れます。

ただし、税額控除は所得税額から引くものです。法人化して役員報酬を低めに設定していると、引く先の所得税額が控除額に足りないことがあります。

6つの改修のうち、所得要件がないのは耐震の10%部分だけ

国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令)で、改修ごとの要件を並べると次のとおりです。

改修の種類控除対象限度額10%部分の上限所得の要件期限
耐震(No.1222)250万円25万円10%部分はなし。5%部分は2,000万円以下令和10年12月31日までの工事
バリアフリー(No.1220)200万円20万円2,000万円以下令和10年12月31日までの居住
省エネ(No.1219)250万円(太陽光を含むと350万円)25万円(35万円)2,000万円以下同上
多世帯同居(No.1224)250万円25万円2,000万円以下同上
耐久性向上=長期優良住宅化(No.1227)250万〜500万円(太陽光を含むと最大600万円)25万〜50万円(最大60万円)2,000万円以下同上
子育て対応(No.1228)250万円25万円2,000万円以下同上

※ 耐震以外は、工事後の床面積が40㎡以上50㎡未満で令和8年1月1日以後に住み始めた場合、所得の線は1,000万円以下になる

控除額はどれも同じ式です。**標準的な費用の額(控除対象限度額まで)の10%に、限度額を超える部分や併せて行う増改築などの費用の5%**を足します。5%部分の対象は、10%部分と合わせて1,000万円が上限です。

耐震だけが違うのは、根拠の条文が分かれているためです。耐震改修は租税特別措置法41条の19の2、それ以外の改修は41条の19の3に置かれています。41条の19の2の10%部分には所得の要件がなく、41条の19の3の5%部分を併せて受けるときにだけ2,000万円の線がかかります。合計所得金額が2,000万円を超えていても、耐震の10%部分(最大25万円)は残ります。

期限は令和7年12月31日までとされていましたが、令和8年の税制改正で令和10年12月31日まで延びました。現行の条文(e-Gov法令検索、令和8年10月1日施行時点)でも令和10年12月31日です。

要件は「工事」と「人」の両方にある

所得のほかにも、主な要件があります。

  • 標準的な費用の額が50万円を超えること(耐震以外)
  • 工事の日から6か月以内に住み始めること(耐震以外)
  • バリアフリーは、本人が50歳以上・要介護等・障害者か、65歳以上などの親族と同居していること
  • 子育て対応は、本人が40歳未満で配偶者がいる、配偶者が40歳未満、または19歳未満の扶養親族がいること
  • 同じ住宅で同じ種類の控除を直前の年分に受けていないこと(耐震以外。多くは前年以前3年内、子育て対応は令和8年以後に住み始めた場合は前年と前々年)

個人事業主は売上−経費2,065万円で対象外になる

所得の要件は「控除を受ける年分の合計所得金額」で判定します。個人事業主なら青色申告特別控除後の事業所得、会社の役員なら給与所得控除後の給与所得が中心です。法人に残した利益は入りません。

計算エンジンで、個人のままの事業所得と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取ったときの給与所得を並べました。

売上−経費個人:事業所得2,000万円以下か個人:所得税額法人化:最適な役員報酬法人化:給与所得2,000万円以下か法人化:所得税額
800万円735万円○71.6万円月54万円474.4万円○18.3万円
1,000万円935万円○110.3万円月54万円474.4万円○18.3万円
1,500万円1,435万円○260.7万円月54万円474.4万円○18.3万円
2,000万円1,935万円○425.7万円月90万円885万円○97万円
2,065万円2,000万円○448.6万円月90万円885万円○97万円
2,500万円2,435万円×634.6万円月100万円1,005万円○123.2万円
3,000万円2,935万円×847.4万円月100万円1,005万円○123.2万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)65万円・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。最適な役員報酬は月5万〜100万円の範囲で探索した計算エンジンの出力。所得税額は復興特別所得税を含まない本体の額。年金や配当など他の所得はないものとする。表は scripts/jutaku-reform-kojo-shotoku.mjs で再生成できる

売上−経費が2,065万円を超えると、個人事業主のままでは事業所得が2,000万円を超えます。耐震の10%部分を除き、リフォームの税額控除は使えません。法人化して最適な役員報酬を取った場合、給与所得は1,005万円までにとどまります。

法人化すると、引く先の所得税額が足りない帯がある

税額控除は、その年分の所得税額が限度です。耐震改修の条文(41条の19の2第4項)も、他の改修の条文(41条の19の3)も、控除額が所得税額を超えるときは所得税額までとする所得税法92条2項を準用しています。

そこで、控除額ごとに実際に引ける額を比べました。標準的な費用の額が控除対象限度額ちょうどで、5%部分がない場合です。

売上−経費個人:所得税額法人化:所得税額省エネ 控除25万円:個人/法人化省エネ+太陽光 控除35万円:個人/法人化耐震+省エネ+耐久性向上 控除50万円:個人/法人化
800万円71.6万円18.3万円25万円/18.3万円35万円/18.3万円50万円/18.3万円
1,000万円110.3万円18.3万円25万円/18.3万円35万円/18.3万円50万円/18.3万円
1,500万円260.7万円18.3万円25万円/18.3万円35万円/18.3万円50万円/18.3万円
2,000万円425.7万円97万円25万円/25万円35万円/35万円50万円/50万円
2,500万円634.6万円123.2万円0万円/25万円0万円/35万円0万円/50万円
3,000万円847.4万円123.2万円0万円/25万円0万円/35万円0万円/50万円

※ 前提は上の表と同じ

売上−経費800万〜1,500万円の帯では、最適な役員報酬が月54万円で止まり、所得税額は18万2,600円です。省エネ改修の控除25万円のうち6万7,400円、長期優良住宅化の50万円なら31万7,400円が引けません。この帯では、個人のままのほうがリフォーム減税を使い切れます。

逆に売上−経費2,500万円以上の帯では、個人のままだと控除はゼロです。法人化して月100万円の報酬を取ると、所得税額が123.2万円あるので50万円の控除も全額引けます。リフォーム減税は、法人化の判定に対して帯によって逆向きに働きます。

役員報酬そのものの決め方は役員報酬はいくらが最適かにまとめています。判定ツールは役員報酬を月5万〜100万円で総当たりしますが、リフォーム減税は計算に入れていません。

40〜50㎡の住宅は1,000万円の線。月100万円で5万円はみ出す

令和8年1月1日以後に住み始めた床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は、耐震以外の改修で所得の線が1,000万円に下がりました。上の表で、売上−経費2,500万円以上の帯の最適な役員報酬は月100万円、給与所得は1,005万円です。線を5万円超えます。

同じ構造は、親からの住宅取得等資金の贈与の非課税でも起きます。月100万円と月99万円の手取りの差は年1.6万円で、月99万円なら給与所得は993万円に収まります(住宅取得資金の贈与と所得の要件で計算しました)。役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決める定期同額給与が原則です。工事をして住み始める年の報酬は、期首の時点で決めておく必要があります。

法人化した年は、事業所得と給与所得を足して判定する

判定は「控除を受ける年分」、つまり工事をして住み始めた年の合計所得金額です。法人化した年は、法人化するまでの個人事業の事業所得と、法人化した後の役員報酬の給与所得が同じ年に並びます。

たとえば売上−経費3,000万円の事業を7月に法人化すると、1〜6月の事業所得だけで1,000万円を超えることがあり、40〜50㎡の住宅の線は越えてしまいます。そこに7〜12月の給与所得が乗るので、事業の利益がさらに大きければ2,000万円の線もまたぎます。法人化の年の所得の組み立ては法人成りした年の確定申告で扱いました。リフォームして住み始める年と、法人化する年を分けるのが、線をまたがない単純な方法です。

ローンを組むなら住宅ローン控除(増改築)との選択になる

リフォームでローンを組む場合は、住宅ローン控除の増改築等の枠も候補になります(No.1211-4)。

項目リフォームの税額控除住宅ローン控除(増改築等)
ローン不要返済期間10年以上の借入れが必要
控除の期間住み始めた年の1年分10年
控除額標準的な費用の額の10%+5%部分年末残高等×0.7%(年14万円が限度)
所得の要件2,000万円以下(耐震の10%部分はなし)各年2,000万円以下(40〜50㎡は1,000万円以下)
工事費の要件標準的な費用の額50万円超(耐震以外)増改築等の額100万円超

バリアフリーなどの改修で両方の要件を満たす場合は、どちらか一方を選びます。耐震改修の特別控除は、住宅ローン控除(増改築等)と両方を受けられます。住宅ローン控除は控除期間の毎年、2,000万円の線で判定されます。法人化で役員報酬にしたときの受け皿の変化は住宅ローン控除と法人化で計算しました。

法人化した場合の最適な役員報酬と手取りは、判定ツールで自分の売上と経費から確かめられます。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 省エネ・バリアフリー・多世帯同居・長期優良住宅化・子育て対応のリフォーム税額控除は、住み始めた年の合計所得金額2,000万円以下(令和8年以後に住み始めた40〜50㎡は1,000万円以下)が条件。期限は令和10年12月31日
  • 耐震改修の10%部分(最大25万円)だけは所得の要件がない
  • 個人事業主は売上−経費2,065万円で対象外になる。法人化して最適な報酬を取ると給与所得は885万〜1,005万円
  • 控除は所得税額が限度。売上−経費800万〜1,500万円の帯では法人化後の所得税額が18万2,600円で、控除25万円でも6万7,400円が引けない
  • 法人化した年は事業所得と給与所得の合計で判定する

よくある質問

リフォーム減税は住宅ローンを組まなくても使えますか。

使えます。省エネ・バリアフリー・多世帯同居・耐久性向上・子育て対応の住宅特定改修特別税額控除と、耐震改修の住宅耐震改修特別控除は、いずれも住宅ローンの利用を要件にしていません。自己資金で工事をしても、要件を満たせばその年分の所得税額から控除できます。

合計所得金額が2,000万円を超えると、耐震改修の控除もまったく使えませんか。

耐震工事の標準的な費用の額(250万円が限度)の10%部分には所得の要件がありません。2,000万円以下という要件がかかるのは、限度額を超える部分や併せて行う工事に対する5%部分です。合計所得金額が2,000万円を超えていても、最大25万円は控除できます。

リフォームの税額控除は翌年以降も続きますか。

続きません。住み始めた年分(耐震改修は工事をした年分)の所得税額から1回だけ控除します。控除しきれなかった額が出ても、その年の所得税額が限度です。返済期間10年以上のローンを組むなら、10年間続く住宅ローン控除(増改築等)も候補になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。