税金の基礎

住宅取得資金の贈与の非課税は所得2,000万円以下。社長は役員報酬で判定

結論

住宅取得等資金の贈与の非課税(省エネ等住宅1,000万円・その他500万円)は、贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が2,000万円以下でないと使えません。個人事業主は売上−経費2,065万円で事業所得が2,000万円に達しますが、法人化して手取りが最大になる役員報酬(月90万〜100万円)を取ると給与所得は885万〜1,005万円に収まります。非課税が使えないと、1,000万円の贈与で177万円の贈与税がかかります。

  • 判定は贈与を受けた年分の所得税の合計所得金額。床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下が条件になる
  • 役員報酬が月100万円だと給与所得は1,005万円で、40〜50㎡の住宅の線を5万円超える。月99万円なら993万円で収まり、手取りの差は年1.6万円
  • この非課税の特例は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象。令和9年以降は税制改正で延長されるかどうかによる

親から住宅資金の援助を受けるとき、多くの人が使うのが住宅取得等資金の贈与税の非課税です。この特例には、受け取る側の所得の上限があります。高所得の個人事業主ほどこの線に近く、そして法人化すると、判定に乗る所得の形が変わります。

非課税の条件は「受贈者の合計所得金額」

国税庁 No.4508 によると、令和6年1月1日から令和8年12月31日までに、父母や祖父母など直系尊属から住宅の新築・取得・増改築等のための金銭の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば次の額まで贈与税が非課税になります。

住宅の種類非課税限度額
省エネ等住宅1,000万円
それ以外の住宅500万円

受贈者の要件の1つが所得です。

  • 贈与を受けた年分の所得税の合計所得金額が2,000万円以下
  • 新築等をする住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満なら、1,000万円以下

合計所得金額は、個人事業主なら青色申告特別控除後の事業所得、会社の役員なら給与所得控除後の給与所得が中心です。法人に残した利益は入りません。

個人事業主は売上−経費2,065万円で線を越える

計算エンジンで、個人事業主のままの事業所得と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取ったときの給与所得を並べました。

売上−経費個人:事業所得2,000万円以下か法人化:最適な役員報酬法人化:給与所得2,000万円以下か
1,500万円1,435万円○月54万円474.4万円○
2,000万円1,935万円○月90万円885万円○
2,065万円2,000万円○(ちょうど上限)月90万円885万円○
2,500万円2,435万円×月100万円1,005万円○
3,000万円2,935万円×月100万円1,005万円○

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)65万円・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。最適な役員報酬は月5万〜100万円の範囲で探索した計算エンジンの出力。年金や配当など他の所得はないものとする

個人事業主のままなら、売上−経費が2,065万円を超えたところで事業所得が2,000万円を超え、非課税は使えなくなります。法人化して最適な報酬を取ると、給与所得は1,005万円までにとどまります。同じ事業の利益でも、法人化すると2,000万円の線から大きく離れます。

非課税が使えない場合の贈与税は、直系尊属から18歳以上の子への贈与に使う特例税率で計算すると次のとおりです。

贈与額基礎控除後贈与税
500万円390万円48.5万円
1,000万円890万円177万円

※ 暦年課税・特例税率(国税庁 No.4408)。同じ年に他の贈与がない場合

40〜50㎡の住宅は、役員報酬月100万円で5万円はみ出す

床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅(都市部のコンパクトなマンションに多い広さです)は、所得の線が1,000万円に下がります。ここで、計算エンジンが出す最適な報酬がちょうど線をまたぎます。

役員報酬給与所得1,000万円以下か手取り合計(売上−経費2,500万円)
月100万円1,005万円×(5万円超)1,551.1万円
月99万円993万円○1,549.5万円
月98万円981万円○1,547.9万円

※ 前提は上の表と同じ。売上−経費3,000万円でも給与所得は同じで、手取りの差も年1.6万円

月100万円と月99万円の手取りの差は年1.6万円です。40〜50㎡の省エネ等住宅で1,000万円の援助を受けるなら、非課税が使えるかどうかで177万円が動きます。ただし、役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決める定期同額給与が原則なので、贈与を受ける年の報酬は期首の時点で決めておく必要があります。期中の変更の扱いは役員報酬を期中に増やした場合で扱いました。

法人化した年は、事業所得と給与所得を足して判定する

判定は「贈与を受けた年分」の合計所得金額で行います。法人化した年は、法人化するまでの個人事業の事業所得と、法人化した後の役員報酬の給与所得が同じ年に並びます。

たとえば売上−経費2,500万円の事業を7月に法人化した場合、1〜6月の事業所得と、7〜12月の月100万円の報酬(給与収入600万円)の給与所得の合計が判定の対象です。事業所得が半年分でも1,000万円を超えれば、40〜50㎡の住宅の線は越えてしまいます。法人化の年の所得の組み立ては法人成りした年の確定申告にまとめています。

贈与を受ける年と法人化する年を同じにしないことが、線をまたがないためのいちばん単純な方法です。

同じ親からの資金援助でも、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税は、受け取った年ではなく前年の合計所得金額(1,000万円以下)で判定します。法人化した年の所得は翌年の拠出に効きます(結婚・子育て資金の一括贈与と所得の要件で計算しました)。

同じ年に、住宅ローン控除の2,000万円の線も来る

親から住宅資金の援助を受けて家を買う年は、多くの場合、住宅ローン控除を受け始める年と重なります。住宅ローン控除にもその年分の合計所得金額が2,000万円以下という要件があり、超えた年は控除が0円になります。

つまり売上−経費が2,065万円を超える個人事業主は、同じ年に2つの線を同時に越えます。

制度所得の要件個人事業主(売上−経費2,500万円)法人化(役員報酬月100万円)
住宅取得等資金の贈与の非課税(省エネ等住宅)合計所得金額2,000万円以下使えない(贈与1,000万円で贈与税177万円)使える
住宅ローン控除(省エネ基準適合住宅・令和8年入居)合計所得金額2,000万円以下その年は0円年14万円を上限に控除

※ 住宅ローン控除の控除限度額は住宅ローン控除と法人化の令和8年入居の表による。住宅ローン控除は年ごとに判定するため、所得が2,000万円以下の年は控除を受けられる

贈与の非課税は贈与を受けた年の1回だけの判定ですが、住宅ローン控除は控除期間の毎年判定します。法人化で役員報酬を調整できる立場にあると、どちらの線にも毎年手が届きます。

期限は令和8年12月31日。延長は税制改正次第

この非課税の特例は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象です。令和9年以降の贈与に使えるかどうかは、税制改正で延長されるかどうかによります。財務省が公開している令和9年度の税制改正要望には、国土交通省などによる「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等に係る所要の措置」が含まれています(要望段階で、決定ではありません)。要望の全体像は令和9年度税制改正要望の6項目で扱いました。

所得の要件で非課税が使えない場合は、住宅取得等資金について相続時精算課税を選ぶ方法もあります(国税庁 No.4503)。こちらは受贈者の所得の要件がなく、贈与時の税負担は抑えられますが、将来の相続時に相続財産に加えて精算する仕組みです。どちらが有利かは家族全体の財産の状況で変わるため、援助を受ける前に専門家に確認する価値があります。

法人化した場合の最適な役員報酬と手取りは、判定ツールで自分の売上と経費から確かめられます。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 住宅取得等資金の贈与の非課税(省エネ等住宅1,000万円・その他500万円)は、受贈者の合計所得金額2,000万円以下(40〜50㎡は1,000万円以下)が条件
  • 個人事業主は売上−経費2,065万円で事業所得が2,000万円に達する。法人化して最適な報酬を取ると給与所得は885万〜1,005万円にとどまる
  • 非課税が使えないと、1,000万円の贈与で177万円、500万円で48.5万円の贈与税(特例税率)
  • 40〜50㎡の住宅は、役員報酬月100万円(給与所得1,005万円)で線を5万円超える。月99万円なら993万円で、手取りの差は年1.6万円
  • 特例は令和8年12月31日までの贈与が対象。法人化した年は事業所得と給与所得の合計で判定する

よくある質問

法人に残した利益は、合計所得金額に入りますか。

入りません。合計所得金額は受贈者個人の所得税の計算上の金額で、法人の所得は含みません。役員報酬の給与所得や、法人から受け取る配当所得などが入ります。

法人化した年に贈与を受けた場合はどう判定しますか。

その年分の合計所得金額で判定するため、法人化するまでの個人事業の事業所得と、法人化した後の役員報酬の給与所得を合計した額で判定します。法人化の年は両方が同じ年に並ぶ点に注意が必要です。

合計所得金額が2,000万円を超えたら、贈与税はかかるしかありませんか。

住宅取得等資金については、相続時精算課税を選ぶ方法もあります。こちらには受贈者の所得の要件はなく、特別控除2,500万円などの範囲で贈与時の課税が抑えられますが、将来の相続時に相続財産に加算して精算されます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。