インボイス・消費税

海外向け売上は消費税1,000万円の判定に入る?不課税と輸出免税で逆

結論

海外向けの売上でも、日本国内で作業した役務の提供は国内取引です。非居住者に対する役務の提供として輸出免税になり、基準期間の課税売上高1,000万円の判定に入ります。入らないのは国外取引(不課税)だけで、代表例は海外の相手向けの電気通信利用役務の提供です。

  • 消費税法基本通達1-4-2は、輸出免税により消費税が免除される課税資産の譲渡等の対価の額を課税売上高に含めると明記している
  • 国外取引は不課税なので、課税売上割合の分母にも分子にも入らない(国税庁 No.6209)
  • 売上に消費税が乗らない以上、法人化の2年免税に価値はない。事業所得1,000万〜1,800万円で年68.0万〜115.5万円の差になる

海外のクライアントから受け取る報酬は、消費税の扱いが1つに決まりません。国外取引(不課税)と輸出免税の2つに割れ、どちらに当たるかで基準期間の課税売上高1,000万円の判定に入るかどうかが逆になります。

分かれ目は取引先の所在地ではなく、役務の提供が行われた場所です。日本国内で作業して納品する仕事は、相手が海外の会社でも国内取引であり、不課税ではなく輸出免税になります。

この違いは「法人化すれば2年間消費税が免除される」という判断に直結します。売上に消費税が乗らない事業では、この免除に価値がありません。当サイトの計算エンジンで並べると、事業所得1,000万〜1,800万円の帯で年68.0万〜115.5万円の差になりました。

海外向けの売上は、不課税と輸出免税のどちらかに割れる

国税庁のタックスアンサー No.6210 は、内外判定の原則を2つに分けています。資産の譲渡または貸付けは「その譲渡または貸付けが行われる時においてその資産が所在していた場所」、役務の提供は「その役務の提供が行われた場所」で判定します。

そして国外取引については、消費税は課税されません(不課税)。

問題は、役務の提供が行われた場所がどこかです。消費税法基本通達5-7-15 は、この場所を「現実に役務の提供があった場所として具体的な場所を特定できる場合にはその場所」とし、特定できなくても契約に役務の提供場所が明らかにされていればその場所によるとしています。

日本の自宅やオフィスで設計・開発・デザイン・翻訳を行い、成果物を海外の会社へ納める場合、現実に役務の提供があった場所は日本です。つまり国内取引になります。相手が海外の会社であることは、内外判定そのものを変えません。

国内取引になったうえで、輸出免税に当たるかを見る

国内取引だとしても、そこで終わりではありません。No.6551 は、免税される輸出取引等の範囲として次の4つを挙げています。

  1. 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
  2. 国内と国外との間の通信または郵便もしくは信書便
  3. 非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け
  4. 非居住者に対する役務の提供

海外のクライアント向けの受託開発や記事執筆は、4に当たります。ここでいう非居住者とは、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に規定する非居住者で、本邦内に住所または居所を有しない自然人および本邦内に主たる事務所を有しない法人です。

ただし例外があります。非居住者に対する役務の提供であっても、国内に所在する資産に係る運送や保管、国内における飲食や宿泊のほか、これらに準ずるものでその非居住者が国内において直接便益を享受するものは免税になりません。来日した海外の顧客を国内で案内する仕事は、相手が非居住者でも消費税が課されます。

電気通信利用役務の提供だけは判定基準が違う

内外判定の原則を離れる取引が1つあります。電子書籍・音楽・広告の配信など、インターネットを介して行われる役務の提供(電気通信利用役務の提供)です。

消費税法基本通達5-7-15の2 は、この判定を「電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地」が国内にあるかどうかで行うと定めています。作業した場所ではなく、受け手の所在地で決まります。

したがって、海外の利用者に配信するアプリ・電子書籍・オンライン講座は**国外取引(不課税)**です。同じ「海外からの入金」でも、受託で書いたコードの納品とは扱いが分かれます。

なお、国内と国外の双方で行われる役務の提供で、対価が契約上で合理的に区分されていない場合は、役務の提供を行う者の事務所等の所在地で内外判定を行います(No.6210)。

取引の例内外判定消費税1,000万円の判定
日本で開発して海外法人へ納品国内取引輸出免税(税率0%)入る
日本で書いた記事を海外媒体へ納品国内取引輸出免税(税率0%)入る
海外の利用者向けアプリ・電子書籍の配信国外取引不課税入らない
海外に所在する資産の譲渡(三国間貿易)国外取引不課税入らない
来日中の非居住者を国内で案内国内取引課税(10%)入る

1,000万円の判定に入るのは輸出免税だけ

ここが実務でいちばん取り違えられます。輸出免税は「税金がかからない取引」ではなく、税率0%で課税される取引です。

消費税法基本通達1-4-2 は、基準期間における課税売上高および特定期間における課税売上高について、法第7条《輸出免税等》などの規定により消費税が免除される場合の課税資産の譲渡等に係る対価の額を含むと明記しています。

一方、国外取引は消費税の課税の対象になりません。No.6209 は、不課税取引について「そもそも消費税の適用の対象にならない取引ですから、分母にも分子にも算入しません」としています。課税売上割合の計算で、非課税取引が分母だけに入るのとは扱いが違います。

課税売上割合の分子である課税売上高の定義も、No.6405 が「国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額」であり、「輸出による免税売上高が含まれます」と書いています。

結果として、同じ年商1,200万円でも結論が分かれます。

  • 全額が海外法人向けの受託開発(輸出免税)→ 課税売上高1,200万円。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるので、2年後は課税事業者
  • 全額が海外利用者向けのアプリ配信(国外取引)→ 課税売上高0円。何年続けても納税義務は免除されたまま

納税義務の免除そのものの条件は No.6501 のとおりで、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であること、および特定期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超えないことです。海外向け売上でも、この判定の入口に立つかどうかが取引の種類で変わります。

「法人化して2年間免税」は、海外向け売上には効かない

法人化の記事でよく見る「設立から2期は消費税が免除される」は、売上に消費税が乗っていることを前提にした話です。免税事業者が受け取った消費税は納付せずに手元へ残るため、その分だけ利益が増えます。

売上が輸出免税または国外取引なら、そもそも受け取る消費税がありません。免除されても残る額は0円です。

当サイトの計算エンジンで、国内向け売上(インボイス未登録)と海外向け売上100%を並べました。

事業所得年間売上(税抜)国内向け売上海外向け売上100%差
400万円600万円−49.3万円−48.6万円+0.7万円
600万円800万円−33.0万円−37.6万円−4.7万円
800万円1,000万円−19.1万円−24.1万円−5.0万円
1,000万円1,200万円+53.3万円−14.7万円−68.0万円
1,200万円1,400万円+72.1万円−6.6万円−78.7万円
1,500万円1,700万円+115.2万円+23.9万円−91.3万円
1,800万円2,000万円+162.5万円+47.0万円−115.5万円

※ 法人化2年目までの実質差額。経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額 ※ 国内向けはインボイス未登録として計算しています

事業所得1,000万円の行を見てください。国内向けなら年+53.3万円で「法人化が有利」に見えますが、海外向け売上100%では年−14.7万円です。プラスに見えていた53.3万円は、受け取った消費税がそのまま利益になっていた分でした。

差は所得が上がるほど開き、事業所得1,800万円では年115.5万円になります。売上が大きいほど預かる消費税も大きいので、その不在の影響も比例して大きくなるためです。

1,000万円以下の帯では、向きが逆になる

表の上3行は様子が違います。事業所得600万円・800万円では、海外向けのほうが年4.7万〜5.0万円だけ法人化に不利へ動いています。

この帯では年間売上が1,000万円以下なので、個人事業のままでも免税事業者です。国内向けなら、個人でいる間も受け取った消費税が手元に残ります。法人化するとその益税は法人側へ移りますが、役員報酬と社会保険を経由するぶん取り出し方が変わり、個人のままのほうが有利に働きます。海外向けにはその益税が最初からないため、比較の土台そのものが変わります。

事業所得400万円の行だけは+0.7万円で向きが逆になります。益税が乗ると個人側の事業所得も上がり、所得税・住民税・国民健康保険料が増えます。手取りへの効き方は所得帯で一定しません。

3年目以降で見ると、国内向けと同じ土台に戻る

設立1〜2期を過ぎれば、国内向けの法人も課税事業者になります。ここから先は、海外向けかどうかで実質差額が変わりません。

事業所得国内向け売上海外向け売上100%差
400万円−49.3万円−48.6万円+0.7万円
600万円−33.0万円−37.6万円−4.7万円
800万円−19.1万円−24.1万円−5.0万円
1,000万円−14.7万円−14.7万円+0.0万円
1,200万円−6.6万円−6.6万円+0.0万円
1,500万円+23.9万円+23.9万円+0.0万円
1,800万円+47.0万円+47.0万円+0.0万円

海外向け売上が中心なら、法人化の判断は初年度のボーナス抜きで、この定常状態だけを見て決めることになります。土台になるのは次の表です。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

判定ツールで自分の条件を入れるときは、海外向け売上が中心なら「インボイス登録済み」を選んでください。登録しているかどうかにかかわらず、売上に消費税が乗らない資金の動きはこちらと同じになります。計算の前提は計算の考え方にまとめています。

インボイス登録をしている人が法人化しても免税に戻れない仕組みはインボイス登録済みなら法人化しても消費税は免税にならないで、設立2期の免税が崩れる条件は新設法人の「2期免税」が崩れる4つの条件で扱っています。

売上に消費税が乗らなくても、経費の消費税は払っている

海外向け売上が中心でも、国内で支払う経費には消費税が含まれています。サーバー代、ソフトウェアの利用料、外注費、通信費などです。

No.6551 は、輸出取引の場合であっても課税仕入れに含まれる消費税および地方消費税の額について、申告の際に仕入税額を控除することができるとしています。棚卸資産の購入代金だけでなく、事務用品の購入や交際費、広告宣伝費などの経費も含まれます。

国外取引の場合も、消費税法基本通達11-2-11 が「国外において行う資産の譲渡等のための課税仕入れ等がある場合は、当該課税仕入れ等について法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用される」と定めています。

つまり、免税事業者のままでいると、この控除を受ける機会がありません。

年間経費(税抜)課税仕入れとみなす額(60%)そこに含まれる消費税
100万円60万円6.0万円
200万円120万円12.0万円
300万円180万円18.0万円
500万円300万円30.0万円
800万円480万円48.0万円

※ 経費のうち課税仕入れの割合60%は当サイトの計算エンジンの既定値です。実際の比率は事業により異なります

輸出免税の売上は課税売上割合の分子に入るので(No.6405)、輸出免税の売上しかない事業者の課税売上割合は100%になります。No.6401 によれば、課税期間中の課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除できます。

ただし課税事業者になるには消費税課税事業者選択届出書が必要で、No.6629 のとおり原則として適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめる届出書を提出できません。調整対象固定資産を取得すると、この期間はさらに延びます。条件は消費税の課税事業者選択には3年縛りに整理しました。

また、2割特例(令和8年9月30日を含む課税期間で終了)は納付税額を売上に係る消費税額の2割とする計算方法です。売上に係る消費税がない事業では納付が0円になる一方、還付も出ません。終了後の取扱いは2割特例はいつまで?3割特例と法人化の関係を参照してください。

国外取引しかなかった法人が国内売上を始めたとき

消費税法基本通達1-4-7 には、覚えておく価値のある一文があります。「事業を開始した日の属する課税期間」には、国外取引のみを行っていた法人が新たに国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した課税期間も含まれる、という扱いです。

海外向け配信だけで始めた会社が、数年後に国内のクライアントを取り始めた場合、その課税期間は新規開業と同じ枠に入ります。No.6629 の注釈のとおり、事業を開始した日の属する課税期間から選択する場合は、その課税期間の終了の日までに届出書を提出すれば間に合います。前の期のうちに出しておく必要はありません。

証明書類を7年間保存しないと、輸出免税は使えない

輸出免税は自動的に適用されるものではありません。No.6551 は、輸出取引等である証明が必要であるとし、輸出取引等の区分に応じた書類を納税地等に7年間保存することを求めています。

非居住者に対する役務の提供(前掲4)の場合、保存すべきものは「契約書その他の書類で一定事項が記載されたもの」です。物品の輸出のような輸出許可書は存在しないため、相手が非居住者であること、役務の内容、対価の額が分かる契約書やインボイス(請求書)を残すことになります。

海外のプラットフォーム経由で報酬を受け取っている場合、契約書の形が整っていないことがあります。支払明細のダウンロードだけで済ませず、取引条件を示す書面を保存しておく必要があります。

なお、令和8年10月1日以後に非居住者に対して行う国内に所在する不動産等の売買、交換または貸借の代理または媒介といった役務の提供等は、役務の提供等を受ける者の居住地にかかわらず課税対象となり、輸出免税の対象から外れます。令和8年3月31日までに締結された契約に基づくものには改正前の消費税法が適用されます。

まとめ

  • 海外向けの売上は、日本国内で作業した役務の提供なら国内取引で、非居住者に対する役務の提供として輸出免税になります。国外取引(不課税)に当たるのは、海外の相手向けの電気通信利用役務の提供や三国間貿易などです
  • 消費税法基本通達1-4-2 により、輸出免税の売上は基準期間・特定期間の課税売上高に含まれます。国外取引は課税の対象外なので含まれません
  • 売上に消費税が乗らない事業では、法人化の「2年間免税」に価値がありません。事業所得1,000万〜1,800万円で年68.0万〜115.5万円の差になります
  • 年間売上1,000万円以下の帯では向きが逆で、海外向けのほうが年4.7万〜5.0万円ほど法人化に不利へ動きます
  • 経費に含まれる消費税は控除の対象です。課税事業者を選べば還付になり得ますが、2年間は戻れません
  • 輸出免税には証明書類の7年間保存が必要です

一般論の数字ではなく、自分の売上と経費、そして売上の中身で確かめてください。海外向けが中心なら、条件は「インボイス登録済み」で試算するのが実態に近くなります。

よくある質問

海外の会社からの入金は消費税の課税売上高に入りますか?

取引の種類によります。日本国内で作業した役務の提供は国内取引で、非居住者に対する役務の提供として輸出免税になり、課税売上高に入ります。海外の相手に対する電気通信利用役務の提供は国外取引(不課税)なので入りません。

輸出免税の売上しかなくても、消費税の申告は必要ですか?

課税事業者に該当すれば必要です。輸出免税は税率0%で課税される取引なので、納税義務そのものがなくなるわけではありません。売上に係る消費税がない一方で課税仕入れがあるため、申告の結果が還付になることがあります。

国外取引のための経費にかかった消費税は控除できますか?

消費税法基本通達11-2-11は、国外において行う資産の譲渡等のための課税仕入れ等にも法第30条の仕入税額控除の規定が適用されると定めています。ただし控除の計算方法は課税売上割合によって変わります。

海外向け売上が中心の場合、判定ツールではどの条件を選べばよいですか?

「インボイス登録済み」を選ぶと実態に近くなります。売上に消費税が乗らない以上、免税事業者でいても手元に残る消費税は0円で、これは課税事業者と同じ資金の動きになるためです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。