インボイス・消費税

法人税・消費税が払えないときの換価の猶予。延滞税は年9.1%から1.3%へ

結論

売上1,500万円・経費300万円の一人会社が決算後に税務署へ納める約204万円を10回に分けて払う場合、猶予なしなら延滞税は76,700円、納期限に換価の猶予を申請すれば14,000円です。申請は納期限から6か月以内ですが、納期限から申請日の前日までは延滞税が軽減されないため、5か月後の申請では50,500円になります。

  • 令和8年の延滞税は、納期限の翌日から2か月まで年2.8%、それ以降は年9.1%。換価の猶予を受けた期間は年1.3%まで下がる
  • 猶予する金額が100万円以下、または期間が3か月以内なら担保は要らない。100万円を超えると財産目録と収支の明細書が必要
  • 消費税と法人税は税務署、法人住民税と事業税は都道府県・市区町村。猶予の申請も別々に出す

法人の決算後に最初に資金が詰まるのは、多くの場合消費税です。インボイス登録済みの一人会社では、預かった消費税を事業の運転資金として使ってしまい、納期限に一度に払えなくなることがあります。

払えないまま放置すると、延滞税は納期限の2か月後から年9.1%になります。税務署に換価の猶予を申請すれば、分割で納める間の延滞税が年1.3%まで下がります。ただし、申請が遅れた期間は軽減されません。いくら変わるのかを計算しました。

決算後に納める額は、消費税が半分以上を占める

判定ツールで最適な役員報酬を選んだ場合に、決算後に納める税額を売上別に出しました。

売上経費ツールの最適報酬消費税・地方消費税法人税・地方法人税税務署へ納める合計都へ納める額(法人住民税・事業税等)
1,000万円200万円月54万円88.0万円9.4万円97.4万円10.3万円
1,200万円200万円月54万円108.0万円41.0万円149.0万円21.5万円
1,500万円300万円月54万円132.0万円72.4万円204.4万円33.5万円
2,000万円400万円月54万円176.0万円135.0万円311.0万円64.8万円

※ 東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・原則課税(経費の6割が課税仕入)/2026年(令和8年)分基準。中間申告による前払いはないものとする

役員報酬で利益の大半を個人に移しているので、法人税は小さくなります。一方、消費税は利益ではなく売上に対してかかるため、役員報酬をいくらにしても減りません。売上1,000万円では、税務署へ納める額の9割が消費税です。

消費税の納付額が年48万円を超えると、翌期から中間申告による前払いが始まります(消費税の中間申告はいくらから)。前払いで一度に納める額は小さくなりますが、法人成り2期目は、前期分の確定申告と当期分の中間申告が同じ年に重なります。

延滞税は2か月を過ぎると年9.1%になる

国税庁によれば、令和8年の延滞税の割合は次のとおりです。

期間割合
納期限の翌日から2か月を経過する日まで年2.8%
それ以降年9.1%
換価の猶予を受けた期間年1.3%まで軽減

2.8%と9.1%は、銀行の短期貸出金利の平均(平均貸付割合)に、それぞれ1.8%・8.1%を足した水準です。令和4年から令和7年までは2.4%・8.7%でした。金利が上がった分、延滞税も上がっています。

猶予期間中の割合は、国税庁の事務運営指針で「猶予特例基準割合」とされています。平均貸付割合に0.5%を加えた割合で、同じ算式の利子税特例基準割合は令和8年が**1.3%**と公表されています。

延滞税は法人の損金になりません。国税庁のNo.5300は、延滞税・延滞金・加算税を損金の額に算入されないものとして挙げています。年9.1%の延滞税は、税引後の資金からそのまま出ていくことになります。

猶予の有無で、延滞税は5分の1になる

3月決算の法人が、令和8年6月1日の納期限(5月31日が日曜日のため)に払えず、7月末から毎月末に分割で納めた場合の延滞税を計算しました。「5か月後に猶予を申請」は、納期限から申請日の前日までは通常の延滞税がかかり、申請日以降だけが軽減される場合です。

売上延滞税の計算の基礎(1万円未満切捨て)分割回数猶予なしで分割納期限に猶予を申請5か月後に猶予を申請猶予で減る額
1,000万円97.0万円6回(毎月17.0万円)21,800円4,500円19,200円17,300円
1,000万円97.0万円10回(毎月10.0万円)36,400円6,600円24,000円29,800円
1,200万円148.0万円6回(毎月25.0万円)34,400円7,100円29,800円27,300円
1,200万円148.0万円10回(毎月15.0万円)56,400円10,200円36,900円46,200円
1,500万円204.0万円6回(毎月34.0万円)48,000円9,900円41,300円38,100円
1,500万円204.0万円10回(毎月21.0万円)76,700円14,000円50,500円62,700円
2,000万円310.0万円6回(毎月52.0万円)72,500円15,000円62,700円57,500円
2,000万円310.0万円10回(毎月31.0万円)119,700円21,700円77,600円98,000円

※ 3月決算・納期限令和8年6月1日。7月末から毎月末に均等額を納付。延滞税は令和8年の割合(2か月まで年2.8%、以後年9.1%、猶予期間中は年1.3%)で計算し、令和9年にかかる部分も同じ割合とした。延滞税は損金にならない

猶予を受けると、延滞税はおおむね5分の1になります。金額にすると数万円で、事業が止まるほどの差ではありません。

むしろ大きいのは、延滞税の額より差押えを止められることです。猶予の申請の手引によれば、督促状を受けてもなお納付しないと、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。法人の預金や売掛金が差し押さえられれば、残りの税金を払う原資そのものがなくなります。換価の猶予が認められると、差押えや換価が猶予され、すでに差し押さえられた財産の換価も止まります。

国税庁の猶予制度FAQは、申請日から延滞税が軽減されると答えています。許可が出た日ではありません。一方で、納期限を過ぎてから申請すると、納期限の翌日から申請日の前日までは軽減されません。表の「5か月後に猶予を申請」の列が猶予なしに近いのはこのためです。

換価の猶予を受けるための5つの要件

換価の猶予は、次の5つをすべて満たす場合に認められます。

  1. 国税を一時に納付すると、事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがある
  2. 納税について誠実な意思がある
  3. 猶予を受けようとする国税以外に、国税の滞納がない
  4. 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書を出している
  5. 原則として、猶予を受ける金額に相当する担保を出す

「事業の継続が困難になるおそれ」とは、手引の定義では、不要不急の資産を処分するなど経営を合理化した後でも、一度に納めると事業を休止・廃止させるおそれがある状態を指します。赤字である必要はありません。

担保は、次のいずれかに当てはまれば要りません。

  • 猶予を受ける金額が100万円以下
  • 猶予を受ける期間が3か月以内
  • 担保として出せる種類の財産がないなど、特別の事情がある

猶予期間は1年以内で、財産と収支の状況から最も早く完納できる期間に限られます。やむを得ない理由があれば、当初と合わせて最長2年まで延長できる場合があります。

添付書類は、猶予を受ける金額で分かれます。100万円以下なら「財産収支状況書」1枚で済みます。100万円を超えると「財産目録」と「収支の明細書」が必要です。上の表では、売上1,000万円のケースが100万円以下に収まります。納期限までに一部でも払い、残りを100万円以下にすれば、担保も書類も軽くなります。

災害・病気・事業の休廃業・著しい損失があった場合は、別に「納税の猶予」があります。こちらは延滞税が免除または軽減され、申請期限も換価の猶予とは異なります。

地方税と社会保険料は、窓口が別

国税庁の猶予制度FAQは、窓口を次のように分けています。

税・保険料相談・申請先
法人税、地方法人税、消費税・地方消費税、源泉所得税所轄の税務署(徴収担当)
法人住民税、法人事業税、固定資産税など都道府県・市区町村
健康保険料・厚生年金保険料日本年金機構
労働保険料都道府県労働局

地方消費税は国に納めるので税務署の猶予に含まれます。特別法人事業税は国税ですが、法人事業税と一緒に都道府県へ納める税なので、都道府県の窓口になります。

社会保険料にも換価の猶予があり、申請期限は同じく納期限から6か月以内です。ただし延滞金の割合が上がるのは納期限から3か月後で、国税の2か月とは区切りが違います(社会保険料が払えないとき、法人に免除はない)。国税の猶予申請では、地方税や社会保険料で出した申請書・財産収支状況書の写しを付ければ、一部の記載や添付を省けます。

まとめ

  • 一人会社が決算後に税務署へ納める額の半分以上は消費税。役員報酬を調整しても消費税は減らない
  • 令和8年の延滞税は2か月まで年2.8%、以後年9.1%。換価の猶予を受けた期間は年1.3%まで下がり、延滞税はおおむね5分の1になる
  • 延滞税が軽減されるのは申請日から。申請期限は納期限から6か月だが、遅れた期間は軽減されない
  • 100万円以下なら担保不要で、添付書類も財産収支状況書だけで済む
  • 法人住民税・事業税は都道府県・市区町村、社会保険料は日本年金機構に別に申請する

消費税の納付額は、売上と経費の構成でほぼ決まります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で決算後に納める額を出し、預かった消費税を分けて置いておけるかを確かめてください。

よくある質問

赤字でなくても換価の猶予は受けられますか?

受けられます。国税庁の猶予制度FAQは、黒字であっても要件を満たせば猶予が受けられると答えています。要件は、一時に納付すると事業の継続が困難になるおそれがあること、納税について誠実な意思があること、ほかの国税の滞納がないこと、納期限から6か月以内に申請することなどです。

無理をして期限内に払った税金を、あとから猶予に切り替えられますか?

できません。猶予は期限後に分割して納める制度で、納付済みの税金を返してもらう仕組みはありません。資金繰りが苦しいと分かっている場合は、納付する前に税務署の徴収担当へ相談する必要があります。

猶予を受けると納税証明書に記載されますか?

国税庁の猶予制度FAQでは、猶予の適用を受けている国税の納税証明書の取扱いを別に定めています。金融機関からの借入や入札で納税証明書を使う予定がある場合は、申請前に税務署で記載のされ方を確認しておくと安全です。

猶予の申請は税理士に頼めますか?

頼めます。e-Taxを含め、税理士による代理申請ができます。ただし、スマートフォンやタブレットのe-Taxソフト(WEB版)からは、税理士の代理申請に対応していません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。