税金の基礎
法人税は15%では済まない|利益別の実効税率を計算
中小法人の法人税率15%だけでは、会社の税負担を判断できません。地方法人税、法人住民税、法人事業税まで含めた利益別の税額と実効負担率を2026年の税率で示します。
「法人化すれば税率15%」という説明は、半分だけ正しいです。15%なのは中小法人の年800万円以下の所得部分にかかる法人税だけです。会社が実際に払う税金には、地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税もあります。
当サイトの計算エンジンで合計すると、東京23区の小規模法人では、税引前利益300万円に対する税負担は**23.7%**です。利益が0円でも、均等割7万円は残ります。法人化の比較で見るべきなのは15%という見出しの数字ではなく、すべての法人税等を引いた後の金額です。
15%は「法人税の一部分」にすぎない
資本金1億円以下などの要件を満たす中小法人では、年800万円以下の所得部分に法人税15%の軽減税率が適用されます。800万円を超える部分は23.2%です。
ここで注意したいのは、「利益800万円まで会社の税金が15%」という意味ではないことです。法人税額を基準に計算する税や、所得を基準に別の率で計算する税が加わります。
| 税目 | 計算の基礎 | このサイトの前提 |
|---|---|---|
| 法人税 | 法人の課税所得 | 800万円以下の部分15%、超過部分23.2% |
| 地方法人税 | 法人税額 | 10.3% |
| 法人住民税の法人税割 | 法人税額 | 東京23区7.0% |
| 法人住民税の均等割 | 資本金・従業者数など | 最低年7万円 |
| 法人事業税 | 所得 | 3.5%・5.3%・7.0%の段階税率 |
| 特別法人事業税 | 基準法人所得割額 | 37% |
法人事業税と特別法人事業税は、支払った事業年度の損金になります。当サイトでは毎年同程度の利益が続く定常状態として、当期発生額を当期の損金とみなす近似で計算しています。計算方法の前提は当サイトについてでも公開しています。
利益別に計算すると、税負担はこうなる
東京23区、資本金等1,000万円以下、従業者50人以下、12か月の事業年度という条件で計算しました。税引前利益は、役員報酬と会社負担の社会保険料などを引いた後、法人税等を引く前の利益です。
| 税引前利益 | 法人税等の合計 | 利益に対する割合 | 税引後に残る額 |
|---|---|---|---|
| 0万円 | 7.0万円 | 算出不可 | −7.0万円 |
| 100万円 | 28.3万円 | 28.3% | 71.7万円 |
| 300万円 | 71.1万円 | 23.7% | 228.9万円 |
| 500万円 | 115.2万円 | 23.0% | 384.8万円 |
| 800万円 | 184.8万円 | 23.1% | 615.2万円 |
| 1,000万円 | 246.9万円 | 24.7% | 753.1万円 |
| 1,500万円 | 414.8万円 | 27.7% | 1,085.2万円 |
※ 2026年(令和8年)分の税率。東京都・資本金1億円以下・外形標準課税対象外の普通法人を前提に、当サイトの計算エンジンで算出。端数処理により単純な税率の掛け算とは一致しません。
利益100万円で割合が28.3%と高いのは、年7万円の均等割が固定で乗るためです。利益が300万〜800万円では固定費の影響が薄まり、23%前後になります。800万円を超えると法人税と法人事業税の高い税率帯が加わるため、割合が再び上がります。
つまり、実効的な負担率は一直線ではありません。低利益では均等割、高利益では段階税率の影響を受けます。
平均税率と「追加の利益にかかる率」は違う
表の「利益に対する割合」は平均税率です。納税額の合計を税引前利益で割っています。もう一つ、役員報酬や経費を変えたときに重要なのが、追加で生じた利益に対して税金がいくら増えるかという限界的な負担率です。
当サイトの計算結果から、利益帯ごとの増加額を取り出すと次のようになります。
| 税引前利益の増加 | 増えた利益 | 法人税等の増加 | 増加分に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 100万円→300万円 | 200万円 | 42.7万円 | 21.4% |
| 300万円→500万円 | 200万円 | 44.2万円 | 22.1% |
| 500万円→800万円 | 300万円 | 69.5万円 | 23.2% |
| 800万円→1,000万円 | 200万円 | 62.2万円 | 31.1% |
| 1,000万円→1,500万円 | 500万円 | 167.9万円 | 33.6% |
※ 前表と同じ条件。各行の法人税等の差額を、税引前利益の差額で割った値です。
800万円を超えた途端、利益全体に23.2%がかかるわけではありません。高い税率は超えた部分にだけ適用されます。そのため、利益が799万円から801万円になって手取りが急に減ることはありません。
ただし超過部分には、法人税23.2%だけでなく、それを基準にする地方法人税と法人住民税法人税割、さらに高い区分の法人事業税が重なります。利益800万円から1,000万円までの追加200万円では、法人税等が62.2万円増えました。役員報酬を下げて会社に利益を残す判断では、この追加負担を見る必要があります。
この限界的な負担率は、損金不算入になった支出のコストを見積もるときにも使います。たとえば交際費が年800万円の定額控除限度額を超えると、超えた分だけ課税所得が水増しされます。その影響は交際費800万円の上限があるのは法人だけで計算しました。
利益1,000万円の税額246.9万円を分解する
税引前利益1,000万円のケースでは、法人税等の合計は246万9,200円です。内訳は次のとおりです。
| 税目 | 税額 |
|---|---|
| 法人税 | 152万1,300円 |
| 地方法人税 | 15万6,600円 |
| 法人住民税の法人税割 | 10万6,400円 |
| 法人住民税の均等割 | 7万円 |
| 法人事業税 | 44万8,900円 |
| 特別法人事業税 | 16万6,000円 |
| 合計 | 246万9,200円 |
法人税だけなら152万1,300円ですが、ほかの税が94万7,900円あります。「15%」だけで資金繰りを組むと、この差がそのまま納税資金の不足になりかねません。
なお、法人事業税と特別法人事業税は損金算入の時期がほかの税と異なります。初年度の実際の申告額と定常状態の概算にはずれが出ます。資金繰りでは、申告を担当する税理士の試算も確認する必要があります。
個人の所得税率と、そのまま比べてはいけない
個人の所得税は5〜45%の累進税率です。一方、法人の税負担は複数税目の合計です。「個人は所得税23%、法人は15%だから8ポイント得」という比較は成立しません。
さらに法人化すると、会社から役員報酬を受け取る個人側にも所得税と住民税がかかり、健康保険と厚生年金は会社負担分を含めて発生します。会社に利益を残せば、そのお金は個人が自由に使える預金ではありません。後で配当や退職金などとして取り出す段階まで考える必要があります。
法人化の目安が所得800万円とは限らない理由で扱っている分岐点が、単純な税率比較より高くなるのはこのためです。法人税等だけでなく、個人側の税、社会保険、固定費、内部留保の取り出しまで一つの計算に入れる必要があります。
納税資金は「税率×利益」より多めに分けておく
利益1,000万円の例では法人税等が246.9万円でした。決算時に残っている預金が利益と同額とは限りません。借入金の元本返済、設備購入、売掛金の未回収などは、会計上の利益と現金を別方向に動かします。
たとえば借入金の元本を100万円返しても、その100万円は原則として損金ではありません。預金は100万円減りますが、課税所得は返済だけでは100万円下がりません。反対に、売上を計上しても入金が翌期なら、利益は増えているのに納税に使う現金はまだ入っていない状態になります。
そのため、決算直前に「預金残高から税率15%を残せばよい」とは判断できません。月次で税引前利益を確認し、法人税等の概算額を別口座へ移す方法が資金不足を防ぎやすくなります。利益800万円を超える可能性があるなら、超過部分は表の31%前後を一つの警戒線として置き、最終額を申告担当者の計算で更新します。
また、法人事業税と特別法人事業税は支払った期の損金になるため、設立初年度と毎年同じ利益が続く状態では税額の出方が一致しません。当サイトの数字は比較のための定常状態であり、実際の納付スケジュール表そのものではない点にも注意してください。
15%を使ってよい場面、使えない場面
15%は、法人税の概算を組み立てる最初の材料としては使えます。ただし、次の判断には単独で使えません。
- 法人化後の納税資金を準備する
- 個人事業主と法人の手取りを比べる
- 役員報酬をいくらにするか決める
- 会社に残る現金を予測する
これらでは、少なくとも法人税等の合計と役員個人側の負担を分けて計算します。特に「会社に残る額」と「役員個人の生活費に使える額」を混ぜないことが重要です。
まとめ
- 15%は中小法人の年800万円以下の所得部分に対する法人税率で、会社の税負担全体ではない
- 東京23区の前提では、利益300万円の法人税等は71.1万円、負担割合は23.7%
- 利益が少ないと均等割7万円の影響が大きく、800万円超では高い税率帯が加わる
- 利益800万円から1,000万円までの追加利益には、法人税等が31.1%増える計算になった
- 個人との比較には、役員報酬の税・社会保険と内部留保の取り出しまで含める
15%という一つの税率ではなく、自分の売上、経費、役員報酬を入れた後の手取りで確かめてください。
よくある質問
中小法人の法人税率は一律15%ですか?
一律ではありません。15%は一定の中小法人における年800万円以下の所得部分に対する法人税の軽減税率です。800万円を超える部分には23.2%が適用され、別に地方法人税や法人住民税、法人事業税などもかかります。
赤字なら法人の税金は0円ですか?
所得に連動する税は原則0円になりますが、法人住民税の均等割は残ります。東京23区で資本金等1,000万円以下、従業者50人以下なら年7万円です。
法人税の実効税率は何%で見積もればよいですか?
利益額や所在地などで変わるため、固定の1率では見積もれません。この記事の前提では、税引前利益300万円で税負担23.7%、1,000万円で24.7%となります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。