税金の基礎

赤字の年に前期の法人税が戻る。欠損金の繰戻し還付で戻る税・戻らない税

結論

青色申告の中小法人(資本金1億円以下)は、当期の欠損金を前1年以内に始まった事業年度へ繰り戻し、前期の法人税額×当期の欠損金額÷前期の所得金額を還付請求できます。地方法人税も同じ割合で戻ります。前期の利益600万円・当期の赤字300万円なら、東京23区で合計49万6,252円が戻ります。法人住民税の法人税割と事業税は戻らず、翌期以降の計算で差し引く形になります。

  • 要件は、前期から連続して青色申告をしていること、赤字の期の申告書を期限内に出すこと、還付請求書を申告書と同時に出すこと
  • 設立1期目の赤字は繰り戻す先の期がない。2期目の赤字を1期目へ繰り戻すのが一人会社で最初に使える場面
  • 個人の純損失の繰戻しで戻るのは前年の所得税だけ。法人は法人税と地方法人税の2つが戻る

法人化した翌期に売上が落ちて赤字になると、前期に払った法人税をまとめて取り戻せる制度があります。欠損金の繰戻し還付です。赤字を翌期以降に繰り越す「繰越控除」はよく知られていますが、繰り戻せば今すぐ現金で戻ります。

ただし戻るのは国の税だけで、地方税は戻りません。どの税がいくら戻るかを計算しました。

戻るのは前期の法人税と地方法人税

国税庁No.5763によると、青色申告書を出す法人に欠損金額が生じた事業年度(欠損事業年度)は、その欠損金額を欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して、法人税額の還付を請求できます。還付額の算式は次のとおりです。

還付額 = 還付所得事業年度の法人税額 × 欠損事業年度の欠損金額 ÷ 還付所得事業年度の所得金額
(分母の金額が限度)

この制度は、中小企業者等以外の法人については令和10年3月31日までに終了する事業年度の欠損金に適用されない扱いが続いています。資本金1億円以下の一人会社は中小企業者等に当たり、使えます(大法人の完全支配下にある法人などは除かれます)。

地方法人税は、法人税の繰戻し還付に連動して還付されます(地方法人税法23条)。地方法人税は法人税額の10.3%なので、法人税の還付額のほぼ1割が上乗せで戻ります。

税繰戻しで戻るかどう扱われるか
法人税戻る前期の税額×欠損金額÷前期の所得金額
地方法人税戻る法人税の還付に連動
法人住民税(法人税割)戻らない還付された法人税額を「控除対象還付法人税額」として、翌期以降の課税標準から差し引く
法人住民税(均等割)戻らない赤字でも毎年かかる
法人事業税・特別法人事業税戻らない事業税には繰戻しの制度がなく、欠損金を翌期以降に繰り越して使う

鹿児島市は、法人税で繰戻し還付が行われても法人市民税の法人税割を還付する制度はなく、還付された法人税額を課税標準から控除する形で繰り越すと案内しています。翌期以降に黒字に戻れば住民税の側でも取り返せますが、今すぐ現金で戻るのは国税だけです。

前期の利益と当期の赤字で、戻る額はこう決まる

前期の税引前利益と当期の欠損金の組み合わせで、還付額を計算しました。

前期の税引前利益前期の法人税当期の欠損法人税の還付地方法人税の還付還付合計戻らない法人税割(翌期以降へ)
300万円429,300円100万円150,000円15,408円165,408円10,482円
300万円429,300円300万円429,300円44,100円473,400円30,000円
600万円852,700円100万円149,991円15,426円165,417円10,483円
600万円852,700円300万円449,973円46,279円496,252円31,451円
600万円852,700円600万円852,700円87,700円940,400円59,600円
800万円1,132,500円300万円450,000円46,291円496,291円31,470円
800万円1,132,500円600万円900,000円92,582円992,582円62,940円

※ 東京23区・中小法人。前期の税は当サイトの計算エンジンで算出(事業税を損金に入れた後の所得に法人税15%・地方法人税10.3%・法人税割7.0%)。地方法人税の還付は法人税の還付と同じ割合で概算 ※ 前期の税引前利益300万円の行は、事業税を引いた所得が約286万円のため、欠損300万円で前期の法人税が全額戻る ※ 計算は scripts/kessonkin-kurimodoshi-houjin.mjs による

一人会社の所得は800万円以下に収まることが多く、法人税の税率は15%です。欠損100万円なら法人税15万円とその1割程度の地方法人税で、約16.5万円が戻ります。前期の所得を超える赤字は、超えた分だけ翌期以降に繰り越します。

前期の税額が上限

戻る額は、前期に実際に納めた法人税額が上限です。前期の利益300万円で欠損600万円の行は、欠損300万円の行と同じ473,400円で止まります。残りの欠損は、法人税でも翌期以降に繰り越して使います。

使える条件と、一人会社で最初に使える場面

繰戻し還付には、次の要件がすべて必要です(国税庁No.5763)。

  1. 還付所得事業年度から欠損事業年度の前の事業年度まで、連続して青色申告書を出していること
  2. 欠損事業年度の青色申告書を期限内に出していること
  3. その申告書と同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を出していること

設立1期目は、繰り戻す先の事業年度がありません。一人会社で最初に使えるのは、2期目の赤字を1期目へ繰り戻す場面です。1期目から青色申告であることが前提になるので、設立後の青色申告の承認申請の期限は外せません(法人の青色申告申請は設立3か月後より早い)。

申告期限を1日でも過ぎると要件2を満たさず、その赤字は繰越控除でしか使えなくなります。還付請求書を出し忘れた場合も同じです。

会社をたたむ年は、解散の特例がある

解散や事業の全部の譲渡など一定の事実が生じた場合は、その日前1年以内に終了した事業年度か、その日の属する事業年度の欠損金を繰り戻せます。請求書は解散等の事実が生じた日以後1年以内に出します。会社をたたむときは翌期の黒字が来ないので、繰越控除では取り返せない法人税を、この特例で取り戻すことになります。清算中の欠損金の扱いは期限切れ欠損金は解散後だけ使えるで扱っています。

個人事業主の繰戻しとの違い

個人事業主にも純損失の繰戻し還付があります。青色申告者が前年分の所得税の還付を受ける制度で、住民税も国民健康保険料も戻りません(純損失の繰戻し還付で戻るのは所得税だけ)。

個人事業主一人会社(中小法人)
戻る税前年の所得税前期の法人税・地方法人税
戻らない税住民税・個人事業税・国保法人税割・均等割・事業税
繰越の年数3年10年

戻る税が国税だけという構造は同じです。違うのは繰越の年数で、法人は10年、個人は3年です(欠損金の繰越は法人10年・個人3年)。

法人化の判定にどう効くか

当サイトの判定ツールは、毎年同じ売上と経費が続く定常状態で手取りを比べています。年ごとの赤字・黒字の波は入っていません。

効いてくるのは売上に波がある人です。法人化した翌期に売上が落ちたときの影響は、法人化した翌期に売上が半減したエンジニアの試算事例で計算しています。その年に赤字が出れば、前期の法人税が還付で戻ってくるので、資金繰りの落ち込みを一部埋められます。法人税の税率そのものは法人税15%は実質17.6%で整理しています。

還付の手続きは申告書と同時の1回きりで、出し忘れは取り返せません。赤字の見込みが出た期は、決算前に繰戻しを使うかどうかを決めておく必要があります。判断が分かれる場面では、個別の条件を税理士に確認する価値があります。

まとめ

  • 青色申告の中小法人は、当期の欠損金を前期に繰り戻し、前期の法人税×欠損金額÷前期の所得金額の還付を受けられる。地方法人税も連動して戻る
  • 前期の利益600万円・当期の赤字300万円なら、東京23区で合計49万6,252円が戻る。上限は前期に納めた法人税額
  • 法人住民税と事業税は戻らない。法人税割は控除対象還付法人税額として翌期以降に差し引き、事業税は欠損金を繰り越して使う
  • 要件は連続した青色申告、期限内申告、還付請求書の同時提出。一人会社で最初に使えるのは2期目の赤字
  • 判定ツールは定常状態の比較なので、売上に波があるなら、赤字の年の還付も含めて自分の売上と経費で確かめてください

よくある質問

前期に法人税を払っていなければ、繰戻し還付は使えませんか。

使えません。還付されるのは前期に納めた法人税額のうち、当期の欠損金に対応する部分だけです。前期も赤字や所得0円なら、当期の欠損金は翌期以降に繰り越して使います。

繰戻し還付と繰越控除は、どちらか選ぶのですか。

欠損金のうち繰り戻した部分は法人税の繰越控除には使えません。残った部分は翌期以降に繰り越せます。前期の税額で全額は戻らない大きな赤字なら、両方を組み合わせることになります。

会社をたたむ年の赤字も繰り戻せますか。

解散など一定の事実が生じた場合は、その日前1年以内に終了した事業年度か、その日の属する事業年度の欠損金を繰り戻せます。請求書は解散等の事実が生じた日以後1年以内に出します(国税庁No.5763)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。