税金の基礎
小さい法人の繰越欠損金は残高50兆円、使うペースの8.6年分(会社標本調査)
結論
国税庁の会社標本調査(令和6年度分)で資本金1億円以下の法人を集計すると、繰越欠損金の当期控除額は5兆8,168億円、翌期への繰越額は50兆907億円で、残高はいまの控除ペースの8.6年分あります。資本金100万円以下では黒字法人の18.4%が繰越欠損金を使い、別に欠損法人に数えられる会社のうち12万4,031件(年度数)が繰越欠損金の控除で所得を0にしていました。法人の繰越期間は10年なので、この残高の一部は使われないまま期限を迎えるとみられます。
- 欠損法人の定義には「繰越欠損金を控除した結果、所得金額が0となった場合」を含む。赤字法人の数には、過去の赤字を取り返している途中の会社が入っている
- 欠損法人の97〜99%が翌期へ繰越欠損金を持ち越しており、資本金100万円以下での1件あたりの繰越額は1,212.2万円
- 個人事業の純損失の繰越は3年。法人化すると10年に延びるが、使い切れるかは黒字の大きさ次第
このテーマの全体像 法人税の実効税率(利益別)
法人化すると、赤字(欠損金)を10年間繰り越せるようになります。個人事業の3年と比べると長く、法人化のメリットとして挙げられることがよくあります。では実際に、小さい法人は繰越欠損金をどれくらい使い、どれくらい抱えたままなのか。国税庁の会社標本調査の第3表で確かめました。
黒字法人の2割が繰越欠損金を使っている
会社標本調査(令和6年度分)の第3表には、資本金階級別に、繰越欠損金の当期控除額と翌期繰越額が、事業年度数と金額で載っています。黒字の法人(利益計上法人)の側を見ると、次のとおりです。
| 資本金階級 | 黒字法人数 | 当期に控除した年度数 | 黒字法人に占める割合 | 当期控除額の合計 | 1件あたり当期控除額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 269,047社 | 49,459 | 18.4% | 1,743億円 | 352.4万円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 34,414社 | 7,037 | 20.4% | 194億円 | 276.3万円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 406,260社 | 84,395 | 20.8% | 3,164億円 | 374.9万円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 278,670社 | 49,793 | 17.9% | 4,229億円 | 849.4万円 |
| 1,000万円超〜2,000万円以下 | 70,946社 | 10,211 | 14.4% | 1,394億円 | 1,365.4万円 |
| 2,000万円超〜5,000万円以下 | 79,352社 | 10,816 | 13.6% | 3,102億円 | 2,867.6万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30,887社 | 4,517 | 14.6% | 4,515億円 | 9,996.1万円 |
※ 国税庁 令和6年度分 会社標本調査 第3表・第2表(通算法人を除く)。件数は事業年度数で、法人数との比は目安。元データは data/official/kurikoshi-kessonkin-r06/、表は scripts/kurikoshi-kessonkin-r06.mjs で再生成できる
資本金1,000万円以下の階級では、黒字法人の**18〜21%**が繰越欠損金で所得を減らしています。1件あたりの控除額は、資本金100万円以下で352.4万円です。
「欠損法人」の中にも、繰越欠損金を使った会社がいる
統計上の欠損法人は「所得金額が負または0の法人」で、繰越欠損金を控除した結果、所得が0になった法人も含みます。つまり、本業では黒字だったのに、過去の赤字を使って所得を0にした会社は、欠損法人に数えられます。その件数と金額です。
| 資本金階級 | 当期に控除した年度数 | 当期控除額の合計 | 黒字法人の控除額との比 |
|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 124,031 | 4,048億円 | 2.32倍 |
| 100万円超〜200万円以下 | 19,371 | 548億円 | 2.82倍 |
| 200万円超〜500万円以下 | 270,850 | 8,874億円 | 2.80倍 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 161,569 | 10,737億円 | 2.54倍 |
資本金100万円以下では、欠損法人41万5,603社に対し、繰越欠損金で所得を0にした年度が12万4,031ありました。欠損法人のおよそ3割です。控除額の合計は黒字法人側の2.3倍にもなります。「法人の6割が赤字」という数字には、過去の赤字を取り返している途中の会社が少なからず入っています(「法人の6割が赤字」は本当か)。
繰り越す残高は、使うペースの8.6年分
赤字の法人のほとんどは、翌期へ繰越欠損金を持ち越しています。
| 資本金階級 | 欠損法人数 | 翌期へ繰り越す年度数 | 欠損法人に占める割合 | 翌期繰越額の合計 | 1件あたり翌期繰越額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 415,603社 | 405,691 | 97.6% | 4兆9,178億円 | 1,212.2万円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 60,299社 | 59,214 | 98.2% | 6,376億円 | 1,076.7万円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 737,936社 | 726,891 | 98.5% | 9兆5,635億円 | 1,315.7万円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 416,642社 | 411,931 | 98.9% | 11兆8,861億円 | 2,885.5万円 |
資本金100万円以下の赤字の会社は、1件あたり平均1,212.2万円の繰越欠損金を抱えています。
全法人(黒字・赤字の合計)で、翌期への繰越額をその年の当期控除額で割ると、いまの控除のペースで残高を使い切るのに何年かかるかの目安になります。
| 資本金階級 | 当期控除額 | 翌期繰越額 | 残高÷当期控除額 |
|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 5,791億円 | 4兆9,808億円 | 8.6年分 |
| 100万円超〜200万円以下 | 742億円 | 6,378億円 | 8.6年分 |
| 200万円超〜500万円以下 | 1兆2,038億円 | 9兆5,862億円 | 8.0年分 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 1兆4,967億円 | 11兆9,994億円 | 8.0年分 |
| 1,000万円超〜2,000万円以下 | 4,524億円 | 3兆2,900億円 | 7.3年分 |
| 2,000万円超〜5,000万円以下 | 9,016億円 | 6兆6,501億円 | 7.4年分 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 1兆1,089億円 | 12兆9,464億円 | 11.7年分 |
| 1億円以下の計 | 5兆8,168億円 | 50兆907億円 | 8.6年分 |
残高は控除ペースの8.6年分です。法人の繰越期間は10年なので、全体として見ると、繰越欠損金はぎりぎり使い切れるかどうかのペースでしか減っていません。赤字が続いたまま期限を迎える分は、使われずに消えていきます。
法人化の判断に引きつけると
法人化すると繰越期間は個人の3年から10年に延びます(欠損金の繰越は法人10年・個人3年)。ただし、繰越欠損金は後の年に黒字が出て初めて税金を減らします。統計が示すのは、赤字を抱えた会社の多くが、その黒字を十分に出せていないという実態です。
一人会社の場合は、もう1つ事情があります。役員報酬を高く設定すると法人が赤字になり、欠損金が積み上がります。しかし役員報酬は定期同額で期中に変えにくく、赤字を毎年繰り越すだけになりがちです。法人に残る所得の水準を見ながら報酬を決めることが、繰越欠損金を「使える赤字」にする前提です(役員報酬の最適額)。
法人に残る所得にかかる税は法人税は15%では済まない|利益別の実効税率で、法人化で手取りがどう変わるかは判定ツールで確かめられます。
まとめ
- 資本金1,000万円以下の黒字法人の18〜21%が、繰越欠損金で所得を減らしている
- 欠損法人には、繰越欠損金で所得を0にした会社も含まれる。資本金100万円以下では欠損法人の約3割
- 赤字の会社の97〜99%が繰越欠損金を翌期に持ち越し、資本金100万円以下で1件あたり1,212.2万円
- 資本金1億円以下の繰越残高は50兆円で、控除ペースの8.6年分。10年の期限に近い
- 繰越期間が長くても、後で黒字が出なければ税金は減らない
よくある質問
法人の繰越欠損金は何年使えますか。
青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度の分から10年間繰り越せます。中小法人は、繰越控除をする年の所得の全額まで控除できます。
統計の「欠損法人」は全部が赤字の会社ですか。
違います。会社標本調査の欠損法人は、所得金額が負または0の法人で、繰越欠損金を控除した結果0になった法人も含みます。資本金100万円以下では、欠損法人41万5,603社に対し、繰越欠損金を控除した年度が12万4,031ありました。
繰越欠損金が残ったまま会社をたたむとどうなりますか。
解散後の清算中に残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れの欠損金も使える特例があります。使える条件は限られるので、個別に確認が必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。