税金の基礎
均等割7万円は法人化の損益分岐を70万円押し上げる。配偶者ありなら192万円
結論
東京23区・単身の条件で、均等割が0円なら法人化の損益分岐点は事業所得1,196万円ですが、年7万円の均等割があるため1,266万円になり、70万円押し上げられています。配偶者あり(無収入)では824万円→1,016万円で192万円、白色申告では675万円→793万円で118万円です。均等割と税理士報酬の差(合わせて年27万円)が両方なければ、損益分岐点は750万円まで下がります。
- 損益分岐点の近くでは、事業所得が1万円増えても法人化の有利さは約1,014円しか増えない。だから年7万円の固定費が事業所得70万円分に化ける
- 資本金1,000万円超・従業者50人以下で均等割が18万円になると、単身の損益分岐点は1,373万円へさらに107万円上がる
- 損益分岐点(事業所得1,266万円)での法人の税金121万1,400円のうち、均等割は7万円で5.8%
このテーマの全体像 法人住民税の均等割(赤字でも年7万円)
法人住民税の均等割は、赤字でも年7万円かかる定額の税です。年7万円という金額だけを見ると小さく感じますが、法人化するかどうかの判断では、この7万円が思ったより大きく効いています。均等割がなかったら損益分岐点がどこにあるかを逆算すると、その重さが見えます。
均等割がなければ、損益分岐点は70万円下がる
当サイトの計算エンジンで、法人化の損益分岐点(3期目以降の実質差額がプラスに転じる事業所得)を、均等割の額だけ変えて計算しました。東京23区・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社です。
| 条件 | 均等割0円なら | 7万円(現行) | 18万円(資本金1,000万円超) | 7万円が押し上げている額 | 7万→18万で上がる額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単身・40歳未満 | 1,196万円 | 1,266万円 | 1,373万円 | 70万円 | 107万円 |
| 配偶者あり(無収入) | 824万円 | 1,016万円 | 1,184万円 | 192万円 | 168万円 |
| 40〜59歳 | 1,173万円 | 1,243万円 | 1,351万円 | 70万円 | 108万円 |
| 個人事業税が非課税の業種 | 2,130万円 | 2,198万円 | 2,416万円 | 68万円 | 218万円 |
| 白色申告 | 675万円 | 793万円 | 1,102万円 | 118万円 | 309万円 |
※ 事業所得は売上−経費(青色申告特別控除の前)。税理士報酬は個人15万円・法人35万円で計算
単身・40歳未満なら、年7万円の均等割が損益分岐点を事業所得で70万円押し上げています。配偶者がいる場合は192万円、白色申告では118万円です。均等割の額は同じ7万円なのに、条件によって押し上げる幅がこれだけ違います。
均等割は、法人税の計算で経費(損金)になりません。法人税等を減らす効果がないので、7万円がそのまま会社に残るお金を減らします。均等割の仕組みそのものは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で整理しています。
7万円が70万円に化ける理由
7万円の負担で損益分岐点が70万円動くのは、損益分岐点の近くでは、法人化の有利さがゆっくりしか増えないからです。
この条件では、損益分岐点(事業所得1,266万円)から事業所得が100万円増えても、法人化したときの実質差額は10.1万円しか増えません。1万円あたり約1,014円です。年7万円の固定費を取り返すには、事業所得がおよそ69万円多く必要になります。表の70万円は、この傾きの裏返しです。
条件によって押し上げ幅が違うのも同じ理由です。配偶者がいる場合、損益分岐点(事業所得1,016万円)から100万円増えたときの実質差額の増加は5.6万円で、1万円あたり約565円と単身の半分ほどです。同じ7万円を取り返すのに、より多くの所得が必要になるので、押し上げ幅は192万円まで広がります。
固定費全体では516万円
法人化で毎年増える固定費は、均等割だけではありません。決算申告を税理士に頼むと、個人のときより税理士報酬が上がります。当サイトの前提(個人15万円、法人35万円)では差は年20万円です。法人化で増える固定費は、これに均等割7万円を足した年27万円になります。
この27万円がどちらもなければ、単身の損益分岐点は事業所得750万円まで下がります。現行の1,266万円より516万円低い水準です。「法人化は所得800万円から」というよく聞く目安は、この固定費をほとんど考えていない計算に近いと言えます。目安の数字がなぜずれるかは法人化の目安は所得いくらかで詳しく扱っています。
税理士報酬をいくらまでなら払えるかは税理士の顧問料はいくらまで、決算申告を自分でやった場合の損益分岐点は法人の決算申告を自分でやるとで計算しています。
資本金1,000万円超で18万円になると、さらに107万円
均等割の額は、資本金等の額と従業者数で決まります。資本金等が1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円(東京23区の場合)、1,000万円を超えると従業者50人以下でも年18万円です。
上の表のとおり、18万円になると単身の損益分岐点は1,373万円で、7万円のときより107万円上がります。白色申告では309万円も上がります。設立時の資本金を1,000万円以下にしておく理由は、消費税の免税(資本金1,000万円以上だと設立1〜2期の免税がない)だけではありません。減資で均等割を下げられるかは減資で均等割は18万円から7万円に下がるかで扱っています。
自治体によっては超過課税で7万円を少し上回ります。横浜市は7万4,500円、神戸市は7万2,000円などで、主要都市の額は法人住民税の均等割は自治体で違うにまとめています。数千円の差なら、損益分岐点への影響は数万円程度です。
損益分岐点にいる人にとって、均等割は法人の税金の5.8%
損益分岐点(事業所得1,266万円)の人が最適な役員報酬(月54万円)を取ると、法人に残る税引前利益は525.5万円で、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の合計は121万1,400円です。均等割はそのうち7万円で、5.8%にすぎません。
それでも損益分岐点を70万円動かすのは、ここまで見てきたとおり、法人化の有利さがこの所得帯では薄いからです。損益分岐点の近くにいる人ほど、均等割や税理士報酬のような固定費の扱いで結論が変わります。 判断が僅差なら、固定費を含めた実質差額で比べてください。判定ツールは均等割と税理士報酬の差を差し引いた実質差額を出します。自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 均等割が0円なら、単身の法人化の損益分岐点は事業所得1,196万円。年7万円の均等割で1,266万円になり、70万円押し上げられている
- 押し上げ幅は条件で違い、配偶者ありで192万円、白色申告で118万円
- 損益分岐点の近くでは事業所得1万円あたり約1,014円しか有利さが増えないため、7万円が約69万円分の所得に相当する
- 均等割と税理士報酬の差(年27万円)がどちらもなければ、損益分岐点は750万円で、516万円低くなる
- 資本金1,000万円超で均等割が18万円になると、単身の損益分岐点はさらに107万円上がる
よくある質問
均等割は法人税の計算で経費(損金)になりますか。
なりません。法人住民税(均等割・法人税割)は損金に算入されない税金です。そのため、均等割は法人税等を減らさず、そのまま会社に残るお金を7万円減らします。
均等割を払わずに済む方法はありますか。
事業を行っている法人である限り、赤字でも均等割はかかります。休眠会社の扱いは自治体で異なります。資本金を1,000万円以下にしておけば、18万円の区分を避けられます。
7万円の均等割で、なぜ損益分岐点が70万円も動くのですか。
損益分岐点の近くでは、事業所得が増えても法人化した場合の有利さはゆっくりしか増えないためです。この条件では事業所得1万円あたり約1,014円で、7万円を取り返すには事業所得が約69万円多く必要になります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。