税金の基礎

減資で均等割は18万円から7万円に下がるか。欠損がないと下がらない理由

結論

資本金を1,000万円以下に減資するだけでは、均等割は下がりません。均等割の区分は地方税法の「資本金等の額」で決まり、無償減資で資本金をその他資本剰余金に移しても、この額は払込額のまま動かないからです。下がるのは、減資で生じた剰余金を1年以内に欠損の塡補に充てた分だけ。払込2,000万円の会社なら、1,000万円以上の欠損を塡補して初めて、東京23区で年18万円から7万円に下がります。

  • 判定額は「資本金等の額(欠損塡補分を控除)」と「資本金+資本準備金」の大きいほう(地方税法52条4項)。資本金だけ減らしても前者が残る
  • 払込2,000万円・1,100万円減資のうち欠損塡補が600万円なら判定額1,400万円で18万円のまま。全額塡補なら900万円で7万円になる
  • 下がれば年11万円の差。株式会社の減資は株主総会の決議・官報公告と1か月以上の異議期間・登記(登録免許税3万円)が要る

資本金1,500万円や2,000万円で設立した会社は、毎年の均等割が東京23区で年18万円です。1,000万円以下の会社の7万円との差は年11万円で、利益が出ない年にもかかります。そこで「資本金を999万円に減資すれば7万円に戻る」と考える人がいますが、地方税法の計算ではそう単純になりません。

均等割の区分は「資本金」ではなく「資本金等の額」で決まる

地方税法52条1項は、法人の均等割の区分を資本金等の額で定めています。資本金等の額が1,000万円以下なら最小区分、1,000万円超1億円以下なら次の区分です。従業者50人以下の会社の標準税率で合計すると、7万円と18万円になります。

資本金等の額(従業者50人以下)均等割(道府県分+市町村分・年)
1,000万円以下7万円
1,000万円超1億円以下18万円

※ 標準税率。東京23区は都民税として合算額を課税する。超過課税のある自治体では額が変わる。均等割の自治体差は法人住民税の均等割は自治体でいくら違うかを参照。

「資本金等の額」は、法人税法上の資本金等の額を出発点にします。法人税法上の資本金等の額は、株主が払い込んだ額の累計に近い数字で、資本金とその他資本剰余金の間でお金を付け替えても変わりません。登記簿の資本金とは別の数字です。

さらに52条4項は、資本金等の額が「資本金の額と資本準備金の額の合算額」に満たない場合は、合算額で区分を判定するとしています。つまり判定に使うのは、2つの数字のうち大きいほうです。

無償減資だけでは、資本金等の額は1円も動かない

払戻しを伴わない減資(無償減資)では、会社法447条に従って資本金を減らし、減らした額をその他資本剰余金に計上します。会社の預金は動かず、純資産の中で区分が移るだけです。

この場合、2つの数字は次のように動きます。

  • 資本金+資本準備金:減資した分だけ下がる
  • 資本金等の額:法人税法上の金額なので、払込額のまま動かない

判定は大きいほうで行うため、資本金を999万円に下げても、資本金等の額が2,000万円のまま残っていれば区分は18万円のままです。払込2,000万円の会社が減資のしかたを変えた場合を、scripts/genshi-kintouwari.mjs で計算しました。

減資のしかた(払込2,000万円・資本金2,000万円)資本金等の額(地方税)資本金+資本準備金判定に使う額均等割(年)
減資しない2,000.0万円2,000.0万円2,000.0万円18.0万円
1,100万円減資・その他資本剰余金に置いたまま2,000.0万円900.0万円2,000.0万円18.0万円
1,100万円減資・資本準備金へ振替2,000.0万円2,000.0万円2,000.0万円18.0万円
1,100万円減資・うち600万円を欠損塡補1,400.0万円900.0万円1,400.0万円18.0万円
1,100万円減資・全額を欠損塡補900.0万円900.0万円900.0万円7.0万円

※ 株式会社・従業者50人以下・事業所は東京23区のみ・無償増資なし。均等割の額は data/rates-2026.json の区分表。

登記簿の資本金が900万円になっても、5行のうち4行は18万円のままです。下がったのは、減資した1,100万円を全額、欠損の塡補に充てた最後の行だけでした。

下がるのは「欠損の塡補に充てた分」だけ

地方税法23条1項4号の2は、法人税法上の資本金等の額から、平成18年5月1日以後に資本金・資本準備金を減らして計上した剰余金を損失の塡補に充てた金額を控除すると定めています。均等割の判定では、この控除後の額を使います。

この控除を使うには条件があります。東京都主税局の「資本金等の額」チェックポイントは、次の点を確認項目に挙げています。

  • 控除できるのは、損失の塡補に充てた金額が上限
  • 損失とは、塡補に充てた日のその他利益剰余金のマイナス額(繰越利益剰余金の額と異なる場合がある)
  • その他資本剰余金で塡補する場合、充てた日以前1年間に減資や準備金の減少で計上したものに限る
  • 株主総会議事録、貸借対照表、株主資本等変動計算書、債権者への異議申述の公告など、事実と金額を証する書類を申告書に添付する

ポイントは、欠損がなければ塡補もできないことです。利益が出ていてその他利益剰余金がプラスの会社は、いくら減資しても控除額が0円になり、均等割は下がりません。

7万円区分に入るのに必要な欠損額

資本金等の額を1,000万円以下にするには、払込額から1,000万円を引いた額以上を塡補する必要があります。塡補できるのは欠損の額までなので、裏返せばその額以上の欠損を抱えている会社でないと、7万円区分には入れません。

払込額(=資本金)7万円区分に必要な欠損塡補額必要な減資額(最低)欠損がそれ未満なら
1,200.0万円200.0万円200.0万円18万円のまま
1,500.0万円500.0万円500.0万円18万円のまま
2,000.0万円1,000.0万円1,000.0万円18万円のまま
3,000.0万円2,000.0万円2,000.0万円18万円のまま
5,000.0万円4,000.0万円4,000.0万円18万円のまま

※ 無償増資・資本準備金なしの前提。減資額は塡補額以上であればよいが、資本金+資本準備金も1,000万円以下にする必要がある。

この表は、設立時に1,000万円を超える出資をしたあと、事業が想定ほど伸びず累積赤字を抱えた会社を想定しています。逆に、黒字の会社が均等割を下げる目的だけで減資しても、税額は変わりません。

下がった場合の差は年11万円、登記費用は3万円

欠損塡補の条件を満たして7万円区分に入った場合、差は毎年11万円です。均等割は赤字でも黒字でも同じ額がかかり、法人税の計算上の損金にもなりません。減資の登記の登録免許税は、国税庁の税額表で「登記事項の変更」の申請1件3万円です。

経過年数均等割の累計差登録免許税3.0万円を引いた差
1年11.0万円8.0万円
2年22.0万円19.0万円
3年33.0万円30.0万円
5年55.0万円52.0万円
10年110.0万円107.0万円

※ 東京23区・従業者50人以下。官報の公告掲載料と、専門家に依頼する場合の報酬は含めていない。

官報の公告掲載料は、国立印刷局のサイトで料金表を確認できなかったため、この表に入れていません。申込みは各都道府県の官報サービスセンターなどで受け付けています。

均等割そのものの仕組み(赤字でもかかる理由、月割の計算)は法人住民税の均等割は赤字でも7万円にまとめています。

株式会社の減資は、決議・公告・登記の3段階

減資は取締役の判断だけではできません。会社法が定める手続きは次のとおりです。

  1. 株主総会の決議(会社法447条1項)。減少する資本金の額、準備金にするならその額、効力発生日を決める。原則は特別決議(309条2項9号)だが、定時株主総会で欠損の額を超えない範囲で減らす場合は普通決議でよい
  2. 債権者保護手続(449条)。減資の内容と計算書類に関する事項を官報に公告し、知れている債権者には個別に催告する。異議を述べられる期間は1か月以上。定款で電子公告や日刊新聞紙を公告方法にしている会社が官報と併せて公告すれば、個別の催告は省ける
  3. 効力発生と登記。効力は決議で決めた日に生じるが、債権者保護手続が終わっていなければ生じない(449条6項)。その後、資本金の変更登記をする

一人会社なら、株主総会は社長1人の決議で足ります。それでも官報公告と1か月の異議期間は省けないため、決算期の直前に思い立っても間に合わないことがあります。均等割は事業年度末の資本金等の額で判定する(地方税法52条2項)ので、減資と欠損塡補をその期の末日までに終えるかで、どの年度から下がるかが決まります。

合同会社は減資できる場面が限られる

合同会社が資本金を減らせるのは、損失の塡補のため(会社法620条)か、出資・持分の払戻しのため(626条)です。株式会社のように、理由を問わず資本金をその他資本剰余金に移すことはできません。官報公告と1か月以上の異議期間は合同会社でも必要で、減資の効力は手続きが終わった日に生じます(627条)。

消費税と法人税への影響は限られる

資本金1,000万円は消費税の新設法人の判定にも使われますが、これは基準期間がない事業年度(原則として設立1期目・2期目)だけの話です。3期目以降は基準期間の課税売上高で納税義務を判定するので、後から減資しても消費税の判定は変わりません。設立時の判定は法人化の資本金は1,000万円未満?3つの境目を比較と、資本準備金で資本金を999万円に抑える方法で扱っています。

法人税の軽減税率(年800万円以下15%)は資本金1億円以下の中小法人が対象なので、1,000万円前後の減資で変わることはありません。均等割を2社分払う話は法人を2社に分けると軽減税率は2つ使えるかで計算しています。

均等割の差11万円は、法人化するかどうかの判定では毎年の固定費として効きます。自分の売上と経費で法人化後の手取りがどうなるかは、判定ツールで確かめてください。

同じ52条4項は逆の向きにも働きます。利益剰余金を資本金に組み入れる無償増資では、資本金等の額は増えないのに、資本金+資本準備金が1,000万円を超えると均等割は18万円になります(利益を資本金に組み入れると均等割は18万円に)。

まとめ

  • 均等割の区分は「資本金等の額(欠損塡補分を控除)」と「資本金+資本準備金」の大きいほうで判定する
  • 無償減資で資本金をその他資本剰余金に移すだけ、または資本準備金に振り替えるだけでは、均等割は年18万円のまま
  • 下がるのは、減資で生じた剰余金を1年以内に欠損(その他利益剰余金のマイナス)の塡補に充てた分だけ。払込2,000万円なら1,000万円以上の塡補が要る
  • 7万円区分に入れば年11万円の差。株式会社の減資は株主総会の決議、官報公告と1か月以上の異議期間、登記(登録免許税3万円)を経る

よくある質問

減資した資本金を資本準備金に振り替えれば、均等割は下がりますか?

下がりません。均等割の判定では、地方税法上の資本金等の額と資本金+資本準備金の合算額のうち大きいほうを使います。資本金を資本準備金に移すと合算額は変わらず、資本金等の額も動かないため、区分は同じです。

均等割の区分はいつの時点の資本金等の額で決まりますか?

申告納付する法人は、法人税の課税標準の算定期間の末日、つまり事業年度末の資本金等の額で判定します(地方税法52条2項)。期中に減資と欠損塡補が終わっていれば、その事業年度の均等割から区分が変わります。

合同会社も同じように減資できますか?

合同会社が資本金を減らせるのは、損失の塡補のためか、出資・持分の払戻しのためです(会社法620条・626条)。損失の塡補のための減少額は損失の額が上限です。どちらでも官報公告と1か月以上の債権者の異議期間が必要で、減少の効力は手続きが終わった日に生じます(会社法627条)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。