税金の基礎

利益を資本金に組み入れると均等割は18万円に。資本金等の額は増えないのに上がる

結論

利益剰余金を資本金に組み入れても、資本金等の額は増えません(法人税法施行令8条1項13号で組入れ額を差し引くため)。ところが均等割は、資本金等の額が「資本金+資本準備金」より小さいときは、その合算額で区分を決めます(地方税法52条4項・312条6項)。資本金300万円の会社が701万円を組み入れて資本金1,001万円にすると、均等割は年7万円から18万円に上がり、10年で110万円の負担増です。

  • 資本金の増加の登記は、増加額の1,000分の7(3万円未満なら3万円)の登録免許税がかかる。701万円の組入れなら4万9,000円
  • 組入れ後の資本金を1,000万円以下に収めれば、均等割は7万円のまま変わらない
  • 資本金1億円以下なら、法人税の軽減税率(年800万円以下15%)など中小法人の扱いは変わらない。変わるのは均等割の区分

会社の信用を示すため、あるいは取引先や金融機関の目を意識して、たまった利益を資本金に組み入れる会社があります。現金の払込みが要らない「無償増資」です。

このとき気にしたいのが法人住民税の均等割です。均等割は「資本金等の額」で区分を決めると説明されますが、それだけでは結論を間違えます。無償増資では資本金等の額は増えないのに、均等割は上がる場合があります。

無償増資では、資本金等の額は増えない

法人税の「資本金等の額」は、資本金の額に、株主から払い込まれた資本の増減を足し引きした額です。法人税法施行令8条1項は、加算・減算する項目を列挙しています。

その13号に、剰余金の額を減少して資本金の額を増加した場合の「その増加した金額」があります。これは減算する項目です。つまり利益剰余金を資本金に振り替えると、資本金は増えますが、同じ額が差し引かれ、資本金等の額は組入れ前と変わりません。

株主から新たにお金が入っていない以上、法人税の上では資本の払込みが増えたとは扱わない、という考え方です。

均等割は「資本金+資本準備金」でも判定する

ここで地方税法の規定が効きます。52条4項(道府県民税)と312条6項(市町村民税)は、資本金等の額が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」に満たない場合は、その合算額で均等割の区分を判定すると定めています。

判定に使う額無償増資での動き
資本金等の額(法人税法)組入れ額を差し引くので変わらない
資本金+資本準備金(会社法上の額)組入れ額だけ増える
均等割の区分2つのうち大きいほうで判定

無償増資をすると、資本金+資本準備金のほうが資本金等の額より大きくなります。そのため、合算額が1,000万円を超えた時点で、均等割は1,000万円超の区分に上がります。

この規定は、逆の方向(無償減資)でも効きます。資本金を減らしても資本金等の額が減らないので均等割が下がらない、という話は減資で均等割は18万円から7万円に下がるかで扱いました。今回の無償増資は、同じ条文が逆の向きに働く例です。

資本金300万円の会社が組み入れた場合

設立時に300万円を払い込み、資本準備金のない一人会社が、利益剰余金を資本金に組み入れるとします。

組入れ額ごとの均等割と登録免許税(従業者50人以下・標準税率)

組入れ額組入れ後の資本金資本金等の額均等割の判定に使う額均等割(年)登録免許税10年の均等割の増加
200万円500万円300万円500万円70,000円30,000円0円
500万円800万円300万円800万円70,000円35,000円0円
700万円1,000万円300万円1,000万円70,000円49,000円0円
701万円1,001万円300万円1,001万円180,000円49,000円1,100,000円
1,000万円1,300万円300万円1,300万円180,000円70,000円1,100,000円
2,000万円2,300万円300万円2,300万円180,000円140,000円1,100,000円

均等割は道府県民税と市町村民税の標準税率の合計(資本金等1,000万円以下・50人以下で7万円、1,000万円超1億円以下・50人以下で18万円)。東京23区は都民税として同じ額。超過課税のある自治体ではこれより高い。登録免許税は増加した資本金の額の1,000分の7(3万円未満は3万円)。再計算は node scripts/musho-zoshi-kintouwari.mjs。

組入れ後の資本金がちょうど1,000万円なら、均等割は7万円のままです。1円でも超えると18万円になり、年11万円、10年で110万円の負担が増えます。登録免許税は1回きりですが、均等割の増加は会社がある限り毎年続きます。

均等割の増加は法人化の損益分岐点も押し上げます。7万円が18万円になると分岐点がどれだけ上がるかは均等割7万円は法人化の損益分岐を70万円押し上げるで計算しています。

1,000万円以下に収めれば、変わるのは見た目の資本金だけ

資本金1億円以下の会社であれば、法人税の軽減税率(年800万円以下の部分15%)や、交際費の定額控除など、中小法人の扱いは変わりません。資本金1,000万円を超えて変わる主なものは、均等割の区分です。

消費税の新設法人の判定(期首の資本金1,000万円以上なら免税にならない)は、設立1期目・2期目の話です。3期目以降の無償増資では関係しません。

資本金をいくらにするかという設立時の判断は法人化の資本金は1,000万円未満?3つの境目を比較で、均等割そのものの仕組みは法人住民税の均等割(赤字でも年7万円)で扱っています。無償増資を検討するなら、組入れ後の資本金+資本準備金が1,000万円を超えないかを先に確かめると、毎年11万円の固定費の増加を避けられます。

まとめ

  • 利益剰余金を資本金に組み入れる無償増資では、法人税法施行令8条1項13号により資本金等の額は増えない
  • それでも均等割は、資本金等の額が資本金+資本準備金より小さいときは合算額で判定する(地方税法52条4項・312条6項)
  • 資本金300万円の会社が701万円を組み入れて資本金1,001万円にすると、均等割は年7万円から18万円になる
  • 資本金の増加の登記には、増加額の1,000分の7(最低3万円)の登録免許税がかかる
  • 組入れ後の資本金+資本準備金を1,000万円以下に収めれば、均等割は7万円のまま

よくある質問

資本準備金を資本金に組み入れても均等割は変わりますか?

資本金+資本準備金の合算額は変わらないので、合算額で判定する部分は動きません。均等割の区分が変わるのは、利益剰余金やその他資本剰余金から資本金に組み入れて、合算額そのものが増える場合です。

均等割の区分はいつの資本金で判定しますか?

申告納付する法人は、法人税の課税標準の算定期間の末日、つまり事業年度末の現在で判定します。期中に組み入れても、事業年度末に資本金+資本準備金が1,000万円を超えていれば、その事業年度の均等割は上の区分になります。

いったん組み入れた資本金を減らせば均等割は戻りますか?

減資して資本金を1,000万円以下に戻せば、合算額による判定は下がります。ただし減資には債権者保護手続(官報公告と1か月の異議期間)が要り、資本金等の額そのものが1,000万円を超えている会社では減資だけでは下がりません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。