税金の基礎
設立1期目が短いと法人税の800万円枠も月割。3か月なら200万円
結論
事業年度が1年未満なら、法人税の軽減税率の枠は「800万円×月数÷12」で、3か月なら200万円、6か月なら400万円です。法人事業税の400万円・800万円も同じです。利益600万円が3か月の1期目に入ると、12か月の場合より税金は46.1万円多くなります。ただし利益が毎月同じなら、24か月の合計税額はほぼ変わりません。差が出るのは利益の入り方に偏りがあるときです。
- 月割の端数は法人税・法人事業税とも1か月に切り上げる。9月20日設立・12月決算なら4か月扱いで枠は約266.7万円。均等割は端数を切り捨てるので数え方が違う
- 利益2,400万円を24か月で得る場合、1期目3か月に1,200万円が集中すると税は649.4万円で、12か月ずつ均等なときより35.2万円多い
- 1期目に利益がほとんどないと枠を捨てることになる。3か月の1期目が利益ゼロなら、均等な場合より23.9万円多い
このテーマの全体像 法人税の実効税率(利益別)
法人の税金には、所得や金額の「枠」がいくつかあります。法人税の軽減税率なら年800万円までです。この枠は「年」の枠なので、設立1期目のように事業年度が1年に満たないと月割になります。
決算月の決め方は法人の決算月の決め方や法人化のタイミングで、均等割と消費税の観点から扱いました。この記事では、そこに出てこない所得基準の枠を計算します。
月割になる枠は4つ
| 枠 | 12か月 | 9か月 | 6か月 | 3か月 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 法人税の軽減税率(15%) | 800万円 | 600万円 | 400万円 | 200万円 | 法人税法66条4項 |
| 法人事業税 3.5%の帯 | 400万円 | 300万円 | 200万円 | 100万円 | 地方税法72条の24の7第6項 |
| 法人事業税 5.3%の帯の上限 | 800万円 | 600万円 | 400万円 | 200万円 | 同上 |
| 交際費の定額控除 | 800万円 | 600万円 | 400万円 | 200万円 | 国税庁 No.5265 |
| 少額減価償却資産の合計 | 300万円 | 225万円 | 150万円 | 75万円 | 国税庁 No.5408 |
月数は暦に従って数え、1か月未満の端数は1か月に切り上げます。9月20日に設立して12月決算なら、3か月と12日なので4か月扱いで、法人税の枠は約266.7万円です。
均等割は端数の扱いが逆
法人住民税の均等割は、1か月未満の端数を切り捨てます(全体が1か月未満なら1か月)。同じ例なら3か月分です。同じ1期目で、法人税は4か月、均等割は3か月と数え方が違います。 申告書を自分で作るときに間違えやすい点です。
軽減税率15%そのものの期限は法人税15%は令和9年3月末開始の事業年度まで、全体の税負担は法人税の実効税率で扱っています。
同じ利益が短い期に入ると、いくら増えるか
まず単純に、同じ利益を短い事業年度で計上した場合です。
| 1期目の月数 | 利益300万円 | 利益600万円 | 利益1,000万円 | 利益2,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 12か月 | 71.0万円 | 138.4万円 | 246.9万円 | 582.8万円 |
| 9か月 | 69.3万円 | 138.6万円 | 269.2万円 | 605.0万円 |
| 6か月 | 69.2万円 | 157.0万円 | 291.4万円 | 627.2万円 |
| 3か月 | 78.5万円 | 179.3万円 | 313.6万円 | 649.4万円 |
※ 法人税・地方法人税・法人税割・法人事業税・特別法人事業税・均等割(年7万円の月割)の合計。東京23区の標準的な税率。12か月の値は計算エンジン(calcCorporateTaxes)と一致することを確認した。スクリプト:scripts/houjinka-bw-tables.mjs tsukiwari
均等割の違いを除いて12か月と比べた増加額は次のとおりです。
| 1期目の月数 | 利益300万円 | 利益600万円 | 利益1,000万円 | 利益2,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 9か月 | 0.0万円 | 1.9万円 | 24.0万円 | 24.0万円 |
| 6か月 | 1.6万円 | 22.1万円 | 48.0万円 | 47.9万円 |
| 3か月 | 12.7万円 | 46.1万円 | 71.9万円 | 71.9万円 |
3か月の1期目では最大で71.9万円増えます。 枠を使い切った後は、利益がいくら増えても増加額は一定です。
ただし、利益が毎月同じなら差はほとんど出ない
ここで結論を急ぐと間違えます。上の表は「同じ利益を短い期間で稼いだ」場合で、月あたりの利益が高い比較になっています。毎月同じペースで稼ぐなら、枠も月数に比例するので、区切り方を変えても税額は動きません。
設立から24か月の税額(均等割を除く)を、区切り方を変えて比べました。
| 毎月の利益 | 12か月+12か月 | 6+12+6か月 | 3+12+9か月 | 1+12+11か月 |
|---|---|---|---|---|
| 50万円 | 262.8万円 | 262.8万円 | 262.8万円 | 262.8万円 |
| 100万円 | 614.2万円 | 614.1万円 | 614.1万円 | 614.1万円 |
| 200万円 | 1,420.2万円 | 1,420.2万円 | 1,420.1万円 | 1,420.1万円 |
※ 条件は上の表と同じ。均等割は月割で合計が変わらないため除いた
利益が均等なら、1期目の長さで税額はほとんど変わりません。 「1期目を短くすると損」という一般論は、この場合には当てはまりません。
差が出るのは、利益の入り方に偏りがあるとき
実際の法人成りでは、利益は均等に入りません。24か月の合計利益を2,400万円として、配分を変えます。
| 配分(事業年度と利益) | 24か月の税額 | 均等との差 |
|---|---|---|
| 12か月 1,200万円 + 12か月 1,200万円(均等) | 614.2万円 | — |
| 3か月 100万円 + 12か月 1,200万円 + 9か月 1,100万円 | 625.9万円 | +11.7万円 |
| 3か月 0円 + 12か月 1,300万円 + 9か月 1,100万円 | 638.1万円 | +23.9万円 |
| 3か月 1,200万円 + 12か月 900万円 + 9か月 300万円 | 649.4万円 | +35.2万円 |
※ 条件は上の表と同じ。均等割は除く
偏りのパターンは2つあります。
短い1期目に利益が集中する場合。 設立直後に大口の入金があり、決算まで短いケースです。3か月の枠200万円に1,200万円が入ると、残りは本則に近い税率になります。
短い1期目に利益がない場合。 開業の準備に費用がかかる、法人成り直後で入金が少ない、というケースです。枠は使わなければ捨てることになり、翌期には繰り越せません。
法人成りの場合の見方
法人成りの1期目は、個人事業の売掛金が個人に入るので、法人の入金が遅れます(法人成りの12月納品・1月入金)。月割の枠で考えるなら、1期目は入金が立つまでの期間を長めにとっておくほうが、枠の使い残しは小さくなります。
反対に、1期目の決算を早くして消費税の免税期間を調整する考え方もあります。ただしこれはインボイス登録の有無で効果が変わります(法人の決算月の決め方)。枠の使い残しは最大でも数十万円の話なので、決算月は事業の繁閑と消費税を先に決め、この記事の枠は確認に使う程度で十分です。
少額資産と交際費は、買う時期で調整できる
税率の枠と違い、この2つは支出の時期で影響をコントロールできます。
| 枠 | 3か月の1期目 | 影響 |
|---|---|---|
| 少額減価償却資産(1個40万円未満) | 75万円 | 75万円を超えた分は通常の減価償却。パソコンなどを設立時にまとめて買う場合に関係する |
| 交際費の定額控除 | 200万円 | 3か月で200万円を超えることは多くない |
設立直後に備品をまとめて買うなら、3か月の1期目では枠の75万円で止まります。1個40万円未満の特例は、少額減価償却資産の特例で扱っています。
2期目の中間申告にも効く
もう1つ忘れやすいのが、短い1期目の税額が2期目に与える影響です。前期の実績による予定申告は次の式で計算します。
前期の法人税額 × 6 ÷ 前期の月数
3か月の1期目に利益が集中すると、前期の税額を2倍した額が2期目の中間納付になります。2期目の利益が平均的でも、資金繰りでは先に大きな納付が来ます。条件は法人税の中間申告はいくらからを参照してください。
まとめ
- 事業年度が1年未満なら、法人税の800万円枠、法人事業税の400万円・800万円、交際費800万円、少額資産300万円はすべて月割
- 月数は法人税・事業税とも端数切り上げ。均等割は切り捨てで数え方が違う
- 同じ利益を短い期に入れると最大71.9万円増えるが、利益が毎月均等なら24か月の税額はほぼ同じ
- 差が出るのは偏りがあるとき。3か月に1,200万円が集中すると35.2万円、3か月の利益がゼロでも23.9万円増える
- 短い1期目の税額は「×6÷月数」で2期目の中間納付を重くする
設立時期そのものの損得は法人化の判定の後で決まります。法人化の差額は、判定ツールで自分の売上と経費から確かめてください。
よくある質問
1期目を短くすると税金は増えますか?
利益が毎月同じなら、合計はほとんど変わりません。枠も月数に比例するためです。増えるのは、短い期に利益が集中する場合と、短い期に利益がほとんどなく枠を使いきれない場合です。
法人住民税の均等割も同じ数え方ですか?
違います。均等割の月数は1か月未満の端数を切り捨て(全体が1か月未満なら1か月)で数えます。法人税と法人事業税は切り上げです。同じ1期目でも月数が1か月ずれることがあります。
2期目の中間申告にも影響しますか?
影響します。前期の税額を基準にする予定申告は「前期の税額×6÷前期の月数」で計算するので、短い1期目に利益が集中すると、2期目の中間納付が重くなります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。