税金の基礎

法人税15%は令和9年3月末開始の事業年度まで。延長されないと分岐点は169万円上がる

結論

中小法人の年800万円以下の所得に対する法人税15%は、租税特別措置法42条の3の2により「令和9年3月31日までに開始する事業年度」に限った特例です。延長されずに本則19%へ戻ると、単身・経費200万円の法人化の損益分岐点は事業所得1,266万円から1,435万円へ169万円上がります。

  • 判定は事業年度の開始日で行う。令和9年3月中に始まる事業年度なら、終わるのが令和10年2月でもその期は15%
  • 19%に戻ると、事業所得1,500万円の法人化の実質差額は年23.9万円から5.3万円に縮み、最適な役員報酬は月54万円から月100万円に跳ね上がる
  • 延長されるかどうかは今後の税制改正で決まる。当サイトのシミュレーターは現行の15%で計算している

法人化を検討するときに前提にしている「法人税は所得800万円まで15%」は、実は恒久的な税率ではありません。法人税法の本則は19%で、それを租税特別措置法が期限付きで15%に下げている状態です。その期限は、令和9年3月31日までに開始する事業年度です。

延長されるかどうかは、この記事を書いている令和8年9月時点ではまだ決まっていません。ただ、判断材料として「延長されなかったら何が変わるか」は計算しておけます。

15%は「令和9年3月31日までに開始する事業年度」の特例

租税特別措置法42条の3の2は、資本金1億円以下の普通法人などの「平成24年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得」について、法人税法66条2項の19%を15%に読み替えると定めています。所得が年10億円を超える事業年度は17%です。

所得の区分特例(措法42条の3の2)本則(法人税法66条)
年800万円以下の部分15%(令和9年3月31日までに開始する事業年度)19%
年800万円超の部分特例なし(23.2%のまま)23.2%

※ 資本金1億円以下の普通法人(適用除外事業者・通算法人などを除く)

国税庁の税率表(No.5759)でも、平成28年4月以後に開始する事業年度から令和7年4月以後に開始する事業年度まで、年800万円以下の部分はいずれも15%です。今回の期限で延長されるかどうか、要件が変わるかどうかは今後の税制改正で決まります。この記事では、延長されなかった場合に本則の19%へ戻ると仮定して計算します。

19%に戻ると、税金はいくら増えるか

法人税が上がると、法人税額を基準に計算する地方法人税(10.3%)と法人住民税の法人税割(東京都7%)も連動して増えます。税引前利益ごとに、法人の税金の合計を比べました。

税引前利益15%のとき(法人税等の合計)19%のとき増える額
100万円28.3万円32.8万円4.5万円
200万円49.7万円58.6万円8.9万円
300万円71.0万円84.5万円13.4万円
400万円92.4万円110.3万円17.9万円
600万円138.4万円165.1万円26.7万円
800万円184.8万円220.2万円35.4万円
1000万円246.9万円284.5万円37.5万円

※ 法人税・地方法人税(法人税額の10.3%)・法人住民税(法人税割7%+均等割7万円)・法人事業税・特別法人事業税の合計(東京都の税率)。当サイトの計算エンジン(scripts/houjinzei-keigen-zeiritsu-kigen.mjs tax)で算出

税引前利益800万円で年35.4万円の増加です。法人に利益を残すほど影響が大きく、800万円を超えると増え方が止まります(800万円超の部分はもともと23.2%)。15%を前提にした実効税率の計算は法人税は15%では済まないで扱っています。

法人化の差額と分岐点はどう動くか

法人に残す利益への税金が重くなると、法人化の損得そのものが動きます。事業所得別に、実質差額(税理士報酬の差を引いた後)を比べました。

事業所得15%:最適報酬15%:実質差額(年)19%:最適報酬19%:実質差額(年)差額の変化
800万円月54万円−24.1万円月54万円−26.3万円−2.1万円
1,000万円月54万円−14.7万円月54万円−24.0万円−9.3万円
1,200万円月54万円−6.6万円月89万円−21.7万円−15.1万円
1,500万円月54万円+23.9万円月100万円+5.3万円−18.6万円
1,800万円月90万円+47.0万円月100万円+28.7万円−18.3万円
2,000万円月90万円+67.3万円月100万円+42.0万円−25.3万円
2,500万円月100万円+136.1万円月100万円+106.1万円−30.0万円
3,000万円月100万円+197.2万円月100万円+167.2万円−30.0万円

※ 事業所得=売上−経費(青色申告特別控除の前)。経費200万円・東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録あり・合同会社。実質差額は3年目以降の定常状態で、税理士報酬の差(年20万円)を引いた後。当サイトの計算エンジン(scripts/houjinzei-keigen-zeiritsu-kigen.mjs)で算出

2つのことが読み取れます。

1. 最適な役員報酬が跳ね上がる。 事業所得1,200万円では月54万円→月89万円、1,500万円では月54万円→月100万円です。15%なら会社に利益を残したほうが有利だった帯で、19%では役員報酬として個人に出してしまったほうが有利になります。役員報酬の決め方そのものが変わる、ということです。決め方の考え方は役員報酬はいくらが最適かで説明しています。

2. 法人化の利点が年20〜30万円縮む。 事業所得1,500万円では年23.9万円の利点が5.3万円まで縮み、ほぼ互角になります。

条件別の損益分岐点も並べます。

条件軽減税率15%(現行)本則19%に戻った場合分岐点の移動
基本(単身・インボイス登録あり)1266万円1435万円+169万円
配偶者あり(無収入)1016万円1186万円+170万円
40〜64歳(介護保険料あり)1243万円1463万円+220万円
大阪市1283万円1468万円+185万円

※ 損益分岐点は、税理士報酬の差(年20万円)を引いた実質差額が0になる事業所得(売上−経費)。経費200万円・青色申告(e-Tax)・合同会社。当サイトの計算エンジン(scripts/houjinzei-keigen-zeiritsu-kigen.mjs breakeven)で算出

どの条件でも、分岐点は169万〜220万円上がります。事業所得1,300万〜1,400万円あたりで「法人化が少し有利」と出ている人は、19%に戻ると結論が入れ替わる可能性があります。

15%が適用される期間は、設立日と決算月で決まる

この特例は「令和9年3月31日までに開始する事業年度」が対象です。事業年度の途中で期限をまたいでも、開始日が3月31日以前ならその期はまるごと15%です。

事業年度開始日現行法での税率
3月決算の法人:令和8年4月〜令和9年3月令和8年4月1日15%
3月決算の法人:令和9年4月〜令和10年3月令和9年4月1日19%(延長されなければ)
12月決算の法人:令和9年1月〜12月令和9年1月1日15%
12月決算の法人:令和10年1月〜12月令和10年1月1日19%(延長されなければ)
令和9年3月1日設立・2月決算の1期目:令和9年3月〜令和10年2月令和9年3月1日15%

これから法人成りする人にとっては、1期目の事業年度の開始日が設立日です。令和9年3月中に設立して1期目を1年近く取れば、延長されなくても令和10年2月ごろまでは15%が適用されます。決算月の決め方全般は法人の決算月の決め方で扱っています。

ただし、この税率だけのために設立を急いだり遅らせたりするのは本末転倒です。税引前利益300万円の法人で19%との差は年13.4万円です。設立の時期は、消費税の免税期間や社会保険に切り替わる月など、ほかの要素とあわせて決めるものです。法人化の時期の選び方は法人化のタイミングと決算期の決め方で説明しています。

シミュレーターは15%で計算している

当サイトのシミュレーターと記事の計算は、現行法の**15%**で行っています。税率データには期限(令和9年3月31日までに開始する事業年度)を記録しており、税制改正で延長・変更が決まった時点で税率データと記事を更新します。

いま法人化の判断が僅差になっている人は、15%と19%の両方で結論が変わらないかを見ておくと安心です。まずは自分の売上と経費で、現行税率での差額をシミュレーターで確かめてください。

まとめ

  • 中小法人の年800万円以下の所得にかかる法人税15%は、措法42条の3の2による時限措置で、令和9年3月31日までに開始する事業年度まで
  • 延長されずに本則19%へ戻ると、税引前利益800万円で法人の税金は年35.4万円増える
  • 法人化の損益分岐点は169万〜220万円上がり、単身・経費200万円なら事業所得1,266万円→1,435万円
  • 最適な役員報酬は大きく上がり、事業所得1,500万円では月54万円→月100万円
  • 判定は事業年度の開始日で行うため、令和9年3月中に始まる事業年度はまるごと15%

よくある質問

今から法人を設立すると、法人税は19%になるのですか

現行法では、令和9年3月31日までに開始する事業年度は15%です。令和8年中や令和9年3月までに設立した法人の1期目は、事業年度が令和9年4月以降に終わっても15%が適用されます。19%になり得るのは、令和9年4月1日以後に開始する事業年度で、特例が延長されなかった場合です。

800万円を超える部分の税率も上がりますか

年800万円を超える部分は、もともと本則の23.2%が適用されており、この特例とは関係ありません。変わる可能性があるのは年800万円以下の部分の15%だけです。

地方の税金も増えますか

地方法人税(法人税額の10.3%)と法人住民税の法人税割は法人税額を基準に計算するため、法人税が増えればその分だけ連動して増えます。法人事業税は所得を基準にするので変わりません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。