税金の基礎

企業版ふるさと納税は一人会社だと9割軽減にならない。利益260万円なら34%

結論

企業版ふるさと納税の「約9割軽減」は、税額控除の上限に届かない大きな会社の話です。税引前利益260万円の一人会社が30万円を寄附すると、税額控除は上限で3.6万円にとどまり、損金算入の6.4万円と合わせても軽減は34%、実質負担は19.9万円です。

  • 最初に効くのは法人住民税の上限(法人税割額の20%)。制度上は寄附額の40%を控除できるが、利益3,000万円の会社でも寄附100万円に対して7.8万円しか控除できない
  • 9割近い軽減になるのは、利益1,500万円以上の会社が寄附10万円程度にとどめる場合
  • 個人事業主は使えない(税額控除は青色申告書を提出する法人が対象)。寄附は令和10年3月31日まで

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、法人が自治体の認定事業に寄附すると、寄附額の最大約9割の税金が軽くなる制度として紹介されます。個人のふるさと納税の枠が法人化で小さくなった人が、代わりに会社で使えないかと考えるのは自然な発想です。

ところが一人会社の規模で計算すると、9割どころか、寄附額の2〜5割しか税金は減らないケースが大半でした。理由は税額控除に3つの上限があるからです。

「約9割」の内訳は、損金算入3割+税額控除6割

企業版ふるさと納税で税金が軽くなる経路は2つあります。

  1. 損金算入:地方公共団体への寄附金は全額が損金になります(法人税法37条3項1号)。実効税率を約3割とすると、寄附額の約3割の税金が減る
  2. 税額控除:さらに次の3つの税から控除される(令和10年3月31日までの寄附)
税目控除できる額上限
法人住民税寄附額の40%法人税割額の20%
法人税寄附額の40%のうち法人住民税で控除しきれなかった分(寄附額の10%まで)法人税額の5%
法人事業税寄附額の20%法人事業税額の20%

※ 北海道「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)による寄付金控除」、租税特別措置法42条の12の2

損金算入の3割と税額控除の最大6割(40%+20%)で約9割、というのが「最大9割軽減」の意味です。ただし表の右端の上限に注目してください。控除できるのは、それぞれの税額の一部までです。

一人会社では、法人住民税の上限で止まる

上限がどれくらい効くのか、当サイトのシミュレーターの設例(売上1,200万円・経費200万円・役員報酬月54万円)に近い、税引前利益260万円の会社が30万円を寄附した場合で見ます。

項目制度上の最大上限の基準実際の額
損金算入による減税約3割—6.4万円
法人住民税の税額控除12.0万円法人税割 2.3万円×20%=0.5万円0.5万円
法人税の税額控除3.0万円法人税額 32.9万円×5%=1.6万円1.6万円
法人事業税の税額控除6.0万円法人事業税 7.7万円×20%=1.5万円1.5万円
実質負担約1割19.9万円

※ 税引前利益260万円・寄附30万円。東京都の税率。上限の判定に使う税額は損金算入後の額。当サイトの計算エンジン(scripts/kigyouban-furusato-nozei.mjs detail)で算出

制度上は法人住民税だけで12.0万円控除できるはずが、実際には0.5万円です。東京都の法人税割は法人税額の7%なので、法人税額32.9万円なら法人税割は2.3万円しかなく、その20%は0.5万円にしかなりません。税額控除の合計は3.6万円で、寄附30万円のうち税金が減ったのは損金算入と合わせて約10万円(34%)でした。

法人住民税の上限は、法人税割の20%です。法人税割が法人税額の7%なら、上限は法人税額の1.4%にすぎません。制度どおり寄附額の40%を法人住民税から控除するには、寄附額の約29倍の法人税額が必要です。寄附30万円なら法人税額約860万円で、税引前利益にすると4,300万円前後の会社の話になります。

税引前利益と寄附額の組合せ別の実質負担

税引前利益寄附10万円寄附30万円寄附50万円寄附100万円
100万円6.4万円(36%減)22.5万円(25%減)38.5万円(23%減)78.7万円(21%減)
260万円4.7万円(53%減)19.9万円(34%減)36.0万円(28%減)76.1万円(24%減)
500万円3.7万円(63%減)15.8万円(47%減)31.2万円(38%減)70.8万円(29%減)
800万円3.1万円(69%減)12.5万円(58%減)25.9万円(48%減)64.9万円(35%減)
1,500万円0.7万円(94%減)7.4万円(75%減)14.8万円(70%減)39.0万円(61%減)
3,000万円0.6万円(94%減)2.9万円(90%減)10.3万円(79%減)28.7万円(71%減)

※ 実質負担=寄附額−損金算入による減税−税額控除(法人住民税・法人税・法人事業税)。東京都の税率、資本金1,000万円以下の中小法人。「◯%減」は寄附額に対して税金が減った割合。税額控除が地方法人税の課税標準に与える影響は考慮していない。当サイトの計算エンジン(scripts/kigyouban-furusato-nozei.mjs)で算出

読み取れることは3つです。

  • 寄附額を増やすほど、軽減率は下がる。上限は税額で決まっていて寄附額とともに増えないため、寄附を増やした分は損金算入の3割程度しか戻りません
  • 9割前後の軽減になるのは、税引前利益1,500万円以上で寄附10万円程度の場合だけでした。寄附の下限は10万円なので(10万円未満は税額控除の対象外)、「最小額を寄附する」ときにだけ宣伝どおりに近づきます
  • 税引前利益260万円前後の一人会社では、寄附30万円で軽減34%、実質負担は約20万円です

損金算入による減税の部分は、自治体への寄附に限らず、経費を使えば同じように生じます。企業版ふるさと納税ならではの上乗せは税額控除の部分で、一人会社の規模ではそれが数万円で頭打ちになる、というのが計算から見える実態です。

個人のふるさと納税とは、そもそも性格が違う

法人化すると、役員報酬の額によっては個人のふるさと納税の上限が下がります。その減り方はふるさと納税の上限は法人化で下がるで計算しています。

企業版はその代わりにはなりません。違いを並べます。

個人のふるさと納税企業版ふるさと納税
使える人個人(個人事業主も会社員も)法人のみ(税額控除は青色申告書を提出する法人)
返礼品ありなし(特別の利益が及ぶ寄附は対象外)
寄附先原則として全国の自治体認定地域再生計画の事業を行う自治体。本社所在地は対象外
最低額なし10万円(未満は税額控除なし)
軽減の目安上限内なら自己負担2,000円本文の表のとおり。一人会社では2〜5割程度が多い

個人のふるさと納税は、上限内なら実質2,000円の負担で返礼品が受け取れる制度です。企業版は返礼品がなく、一人会社では税金の軽減も限られるので、地域への貢献そのものに意味を感じる場合の選択肢と考えるのが実態に合っています。寄附金全般の損金算入の上限は法人の寄附金は全額損金にならないで扱っています。

企業版ふるさと納税は法人化しないと使えない制度ですが、法人化するかどうかを左右するほどの金額にはなりません。法人化の判断は、自分の売上と経費で差額を確かめたうえで考えてください。

まとめ

  • 企業版ふるさと納税の「約9割軽減」は、損金算入約3割と税額控除最大6割の合計
  • 税額控除には法人税割の20%・法人税の5%・法人事業税の20%という上限があり、小さな会社ではまず法人住民税の上限で止まる
  • 税引前利益260万円の会社が30万円を寄附すると、税額控除は3.6万円、軽減は34%で実質負担19.9万円
  • 9割前後の軽減になるのは、税引前利益1,500万円以上の会社が寄附10万円程度にとどめる場合
  • 返礼品はなく、本社所在地への寄附は対象外。個人のふるさと納税の代わりにはならない

よくある質問

企業版ふるさと納税で返礼品はもらえますか

もらえません。寄附をした法人に経済的な利益を与えることは認められておらず、特別の利益が及ぶ寄附は税額控除の対象になる特定寄附金から除かれています(措法42条の12の2)。

本社がある市区町村に寄附できますか

主たる事務所が所在する地方公共団体への寄附は、税額控除の対象になりません(北海道の案内)。寄附先は、国の認定を受けた地域再生計画の事業を行う自治体に限られます。

赤字の会社でも意味がありますか

赤字で法人税・法人税割・法人事業税がかからない年は、税額控除の上限もほぼ0円になり、損金算入による減税も生じません。寄附金は全額が会社の持ち出しになります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。