税金の基礎
黒字の中小法人の64%は所得800万円以下。国税庁の統計で数えた
結論
国税庁の会社標本調査(令和6年度分)を再集計すると、資本金1億円以下の利益計上法人116万9,576社(通算法人を除く)のうち、所得金額が800万円以下の会社は74万4,404社、63.6%でした。資本金100万円以下では77.7%、200万円超500万円以下では74.2%です。800万円は法人税の軽減税率15%と法人事業税の税率区分の境目にあたります。
- 所得100万円以下の法人だけで利益計上法人の22.2%。所得800万円以下まで累積すると63.6%、1,000万円以下で68.3%
- 資本金が小さいほど800万円以下の割合が高い。資本金5,000万円超1億円以下では15.7%にとどまる
- 計算エンジンで最適な役員報酬を取ると、売上2,000万円(経費200万円)までは法人の課税所得が800万円以下に収まり、売上2,500万円で907.9万円と境目を超える
法人税の話になると「中小法人は800万円まで15%」という説明がよく出てきます。では、実際の会社のうち、どれくらいがこの800万円の内側に収まっているのか。国税庁の統計から数えた記事はほとんど見当たりません。
国税庁の「会社標本調査」には、所得の大きさ別・資本金の大きさ別に会社の数を並べた表があります。当サイトは赤字法人の割合を数えたときに同じ表を使いましたが、黒字の会社の所得の分布は使っていませんでした。今回はそこを数え直します。
黒字の中小法人の63.6%は、所得800万円以下
使ったのは、会社標本調査(令和6年度分)の第9表「所得階級別・資本金階級別法人数」の合計シートです。法人税の軽減税率が使えるのは資本金1億円以下の中小法人なので、その範囲の利益計上法人(黒字の法人)を数えました。
| 資本金 | 利益計上法人(通算法人を除く) | うち所得800万円以下 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 269,047社 | 209,166社 | 77.7% |
| 100万円超200万円以下 | 34,414社 | 27,057社 | 78.6% |
| 200万円超500万円以下 | 406,260社 | 301,368社 | 74.2% |
| 500万円超1,000万円以下 | 278,670社 | 152,845社 | 54.8% |
| 1,000万円超2,000万円以下 | 70,946社 | 26,602社 | 37.5% |
| 2,000万円超5,000万円以下 | 79,352社 | 22,515社 | 28.4% |
| 5,000万円超1億円以下 | 30,887社 | 4,851社 | 15.7% |
| 1億円以下計 | 1,169,576社 | 744,404社 | 63.6% |
出典:国税庁「令和6年度分 会社標本調査」第9表(合計)を当サイトで再集計。標本調査による推計値。第9表の「計」は所得階級の行に通算法人の行を足した数なので、所得階級が分からない通算法人(資本金1億円以下で7,869社)を分母から除いた。集計スクリプト:scripts/houjin-shotoku-kaikyu.mjs、集計結果:data/official/houjin-shotoku-kaikyu/derived.csv
資本金1億円以下の黒字法人のうち、63.6%は所得800万円以下です。資本金500万円以下に絞ると、74〜79%まで上がります。一人社長の会社の多くが属する小さな資本金の帯ほど、800万円の内側に収まる会社の割合が高くなります。
逆に、資本金が大きくなるほど割合は下がり、5,000万円超1億円以下では15.7%です。資本金の大きさは事業の規模とある程度連動するので、自然な結果です。
所得階級別に見ると、100万円以下だけで2割を超える
資本金1億円以下の黒字法人を、所得の大きさ別に並べると次のとおりです。
| 所得階級 | 法人数 | 利益計上法人に占める割合 | 累積 |
|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 259,708社 | 22.2% | 22.2% |
| 100万円超200万円以下 | 134,245社 | 11.5% | 33.7% |
| 200万円超300万円以下 | 95,081社 | 8.1% | 41.8% |
| 300万円超500万円以下 | 131,426社 | 11.2% | 53.0% |
| 500万円超800万円以下 | 123,944社 | 10.6% | 63.6% |
| 800万円超1,000万円以下 | 54,124社 | 4.6% | 68.3% |
| 1,000万円超2,000万円以下 | 138,343社 | 11.8% | 80.1% |
| 2,000万円超3,000万円以下 | 61,701社 | 5.3% | 85.4% |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 59,543社 | 5.1% | 90.5% |
| 5,000万円超1億円以下 | 52,697社 | 4.5% | 95.0% |
| 1億円超 | 58,764社 | 5.0% | 100.0% |
出典:同上。1億円超は「1億円超2億円以下」から「10億円超」までの4階級の合計
黒字の中小法人の5社に1社強は、所得が100万円以下です。所得の中央値は、累積が50%を超える300万円超500万円以下の階級にあります。
なお、所得階級の幅は100万円刻みから5,000万円刻みまでそろっていません。800万円超1,000万円以下の4.6%が前後より小さく見えるのは、この階級の幅が200万円しかないためで、割合の大小をそのまま会社の密集度として比べることはできません。
一人社長の会社では、役員報酬しだいで法人の所得が動く
法人の所得は、売上から経費と役員報酬を引いた後に残る金額です。一人社長の会社では、役員報酬をいくらにするかを社長自身が決めます。役員報酬を上げれば法人の所得は下がり、下げれば上がります。
当サイトの計算エンジンは、役員報酬を月5万円から100万円まで1万円刻みで全通り計算し、社長個人と法人を合わせた手取りが最大になる額を選びます。そのとき法人に残る課税所得は次のとおりです。
| 売上 | 最適な役員報酬(月額) | 法人の課税所得 | 800万円以下か |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 54.0万円 | 56.7万円 | ○ |
| 1,400万円 | 54.0万円 | 437.5万円 | ○ |
| 2,000万円 | 90.0万円 | 561.6万円 | ○ |
| 2,500万円 | 100.0万円 | 907.9万円 | × |
| 3,000万円 | 100.0万円 | 1,364.2万円 | × |
| 4,000万円 | 100.0万円 | 2,276.7万円 | × |
※ 経費200万円、東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)・合同会社/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/houjin-shotoku-kaikyu.mjs engine(報酬を据え置いた場合の参考値も同じ出力)
売上2,000万円までは、最適な役員報酬を取ると法人の所得は800万円以下に収まります。売上2,000万円で報酬を月54万円に据え置くと、法人の課税所得は992.7万円となって800万円を超えます。報酬を月70万円にすると795.0万円、月90万円にすると561.6万円まで下がり、社長個人と法人を合わせた手取りは月90万円のときが最も大きくなります。
売上2,500万円を超えると、計算の上限である月100万円まで報酬を上げても、法人の所得は800万円を超えます。
800万円を境に、法人の税負担の傾きが変わる
800万円が境目になるのは、法人税だけではありません。中小法人の法人税は年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。東京都の法人事業税(所得割)も、年400万円以下・800万円以下・800万円超の3段階で税率が上がります。
計算エンジンで、法人の所得が100万円増えたときに増える法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税などの合計を出すと、所得700万〜800万円では23.2%ですが、900万〜1,000万円では33.6%になります(東京都・資本金1億円以下の税率)。法人税の税率の組み立てと利益別の実効税率は、法人税は15%では済まないで計算しています。
統計を読むときの注意
- 標本調査による推計値です。国税庁は、会社標本調査の数値は他の税務統計と一致しないとしています
- 所得は会計上の利益ではありません。役員報酬を払い、税務上の調整と繰越欠損金の控除をした後の金額です
- 資本金1億円以下でも、大法人の子会社などは軽減税率を使えません。この表は資本金で区切っているため、軽減税率が使えない会社も一部含みます
- 通算法人は除いています。所得階級が分からないためで、資本金1億円以下では7,869社です
自分の会社の所得はどの帯に入るか
黒字の中小法人の6割強が800万円以下に収まっている理由を、この統計だけから特定することはできません。ただ、一人社長の会社に限れば、法人化したときに法人の所得がどの帯に入るかは、売上・経費と役員報酬の決め方で決まります。
判定ツールは、最適な役員報酬と、そのとき法人に残る利益を計算します。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で、法人の所得が800万円の内側に収まるかを確かめてください。
まとめ
- 会社標本調査を再集計すると、資本金1億円以下の黒字法人のうち所得800万円以下は63.6%(通算法人を除く)
- 資本金500万円以下では74〜79%、5,000万円超1億円以下では15.7%と、資本金が小さいほど高い
- 所得100万円以下だけで22.2%。所得の中央値は300万円超500万円以下の階級にある
- 計算エンジンの最適役員報酬では、売上2,000万円(経費200万円)までは法人の所得が800万円以下に収まる
- 800万円を超えると、所得100万円あたりの法人の税負担の増え方は23.2%から33.6%に上がる
よくある質問
「所得」は会社の利益と同じですか?
同じではありません。会社標本調査の所得金額は法人税の申告上の所得で、会計上の利益に税務上の調整を加え、繰越欠損金を控除した後の金額です。役員報酬を払った後の金額でもあります。
所得が800万円を超えると、法人税率は全体が上がりますか?
上がるのは800万円を超えた部分だけです。中小法人の法人税は、年800万円以下の部分に15%、超える部分に23.2%がかかります。
通算法人を除いたのはなぜですか?
第9表の「計」には、所得階級の行とは別に大通算法人・中小通算法人の行が足されており、通算法人の所得階級は分かりません。割合の分母を所得階級が分かる法人にそろえるため除きました。資本金1億円以下で7,869社です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。