税金の基礎

個人事業税を払う人は111万人。業種別の平均所得では法人化はまだ不利

結論

総務省の調査では、令和6年度に個人事業税を課税された個人は111万1,436人、平均所得は708.5万円です。最も多い請負業は32.7万人で平均所得545.2万円、1人あたりの税額は推計13.1万円。業種ごとの平均所得で法人化を判定すると、実質差額がプラスになるのは弁護士業(平均1,669.6万円・年+34.4万円)だけでした。

  • 個人事業税の所得が1,000万円を超える人は16万416人で課税人員の14.4%。前年度より6,282人増えた
  • 課税人員の49.3%は所得500万円以下。事業主控除290万円を超えた部分に5%かかるので、税額は年10万円前後の層が厚い
  • 税理士業(平均1,075.8万円)と医業(平均1,017.8万円)は平均で年−14万円前後の僅差。個人差で結論が入れ替わる帯

個人事業税は、事業所得が290万円を超えると課税される都道府県の税金です。法人化を考える人の多くがこの税を払っていますが、全国で何人が、どの業種で、いくら払っているのかはあまり知られていません。

総務省は毎年「道府県税の課税状況等に関する調」で、個人事業税の課税人員と所得金額を業種別・所得階層別に公表しています。令和6年度(令和5年分の所得に対する課税)の表を当サイトで再集計し、業種ごとの平均所得を判定ツールに通してみました。

個人事業税を払っている人は111万人

令和6年度に個人事業税を課税された個人は111万1,436人、所得金額の合計は7兆8,750億円で、1人あたりの平均所得は708.5万円でした。前年度(令和5年度)の108万4,249人から2万7,187人増えています。

個人事業税は、所得から事業主控除290万円を差し引いた額に、業種に応じて3〜5%をかけます(多くの業種は5%)。所得が290万円以下なら課税されないので、この111万人は「事業所得がおおむね290万円を超えている人」の数と読めます。ライターなど法定業種に当たらない事業は非課税なので、ここには入っていません。業種の区分と税率は個人事業税がかからない業種があるで扱っています。

所得の分布:半数は500万円以下、1,000万円超は14.4%

個人事業税の所得課税人員割合累積1人あたり平均所得
300万円以下37,1533.3%3.3%287.4万円
300万円超 400万円以下300,48827.0%30.4%344.4万円
400万円超 500万円以下210,01818.9%49.3%441.7万円
500万円超 600万円以下143,65412.9%62.2%540.5万円
600万円超 700万円以下99,2828.9%71.1%638.5万円
700万円超 1,000万円以下160,42514.4%85.6%814.8万円
1,000万円超160,41614.4%100.0%1925.2万円
合計1,111,436100.0%—708.5万円

※ 総務省「令和6年度 道府県税の課税状況等に関する調」07表(全業種の合計)を当サイトで再集計(scripts/kojin-jigyozei-kazei-jokyo.mjs kaiso)。「300万円以下」には年の途中で開業・廃業して事業主控除が月割になった人などが含まれるため、平均が290万円を下回る

課税人員の49.3%は所得500万円以下です。この層の税額は、所得500万円でも(500万−290万)×5%=10.5万円なので、年10万円前後が中心になります。

一方、所得1,000万円超は16万416人(14.4%)で、前年度の15万4,134人から6,282人増えました。この層の平均所得は1,925.2万円です。ただし全業種の合計なので、不動産貸付業(課税人員31.7万人)の家賃収入も含まれている点に注意してください。

業種別:人数・平均所得・推計税額

主な業種について、課税人員が多い順に並べました。右端は、その業種の平均所得を「売上−経費」とみなして、当サイトの判定エンジンで法人化の実質差額を出したものです。

業種(区分)課税人員平均所得推計の個人事業税(1人あたり年額)平均所得での法人化の実質差額
請負業(第一種)326,982545.2万円13.1万円−46.8万円
不動産貸付業(第一種)317,262893.0万円30.9万円—(不動産所得)
物品販売業(第一種)70,621610.4万円16.6万円−37.1万円
飲食店業(第一種)41,791441.8万円11.2万円−49.9万円
製造業(第一種)40,394573.5万円14.4万円−40.5万円
美容業(第三種)34,645473.2万円9.4万円−49.7万円
運送業(第一種)30,662479.7万円10.4万円−49.4万円
税理士業(第三種)29,0981075.8万円39.4万円−13.5万円
弁護士業(第三種)23,6421669.6万円69.2万円+34.4万円
コンサルタント業(第三種)23,094680.3万円19.9万円−32.3万円
医業(第三種)15,5461017.8万円36.7万円−14.4万円
デザイン業(第三種)15,279565.0万円13.9万円−41.0万円
設計監督者業(第三種)14,545590.0万円15.1万円−38.2万円
広告業(第一種)3,809694.2万円21.1万円−31.5万円
写真業(第一種)3,083572.5万円14.4万円−40.6万円

※ 総務省「令和6年度 道府県税の課税状況等に関する調」02〜04表を当サイトで再集計(scripts/kojin-jigyozei-kazei-jokyo.mjs)。平均所得=所得金額÷課税人員。推計税額=差引課税所得金額×税率(5%)÷課税人員で、減免などは考慮していない。法人化の実質差額は、平均所得を売上−経費とみなし、経費200万円・東京23区・40歳未満・単身・青色65万円・インボイス登録ありで計算した定常状態の値(税理士報酬の差年20万円を差引後)

エンジニアや建設業の一人親方が多く含まれる請負業が32.7万人で最多です。平均所得は545.2万円、推計の個人事業税は年13.1万円でした。デザイン業(1.5万人)・コンサルタント業(2.3万人)も含め、フリーランスに多い業種の平均所得は500万〜700万円に集まっています。

平均的な所得なら、法人化はほとんどの業種で不利

判定ツールに平均所得を通すと、実質差額がプラスになったのは弁護士業だけでした(平均1,669.6万円・年+34.4万円)。請負業・飲食店業・美容業・運送業など平均所得が500万円前後の業種は、年−40万〜−50万円です。

これは、当サイトが計算している法人化の損益分岐点(単身・東京23区などの条件で事業所得1,266万円前後)に、多くの業種の平均所得が届いていないためです。平均所得が1,000万円を超える税理士業(−13.5万円)と医業(−14.4万円)は分岐点の手前にいて、配偶者の有無や経費の中身で結論が入れ替わる帯です。配偶者がいると分岐点が約250万円下がることは配偶者がいると法人化の分岐点は250万円下がるで計算しています。

国税庁の申告所得税の統計から「法人化が有利な個人事業主は約6%」と推計した法人化が有利な個人事業主は何%かとあわせると、法人化が有利になるのは一部の高所得層に限られるという結論は、別の統計から見ても変わりません。

ただし、平均はあくまで平均です。同じ請負業でも所得1,000万円を超える人は大勢います。業種の平均で判断せず、自分の売上と経費でシミュレーターを動かしてください。

統計を読むときの注意

  • 個人事業税の所得は、確定申告の所得と同じではない。青色申告特別控除を引く前の額で、そこから事業主控除290万円を引いて課税する。判定ツールの「事業所得(売上−経費)」に近いが、専従者給与などの扱いで差が出る
  • 課税されない人は入っていない。所得290万円以下の人、法定業種に当たらない事業の人は数えられていない
  • 所得階層の表は全業種の合計。業種別の所得分布は公表されていないため、「請負業で1,000万円超は何人か」は分からない
  • 令和6年度の表は令和5年分の所得。統計の年度と所得の年は1年ずれる

まとめ

  • 令和6年度に個人事業税を課税された個人は111万1,436人、平均所得708.5万円(前年度より2万7,187人増)
  • 課税人員の49.3%は所得500万円以下、1,000万円超は14.4%(16万416人)
  • 最多の請負業は32.7万人で平均所得545.2万円、推計税額は年13.1万円
  • 業種の平均所得で法人化を判定すると、有利になるのは弁護士業だけ。税理士業・医業は年−14万円前後の僅差
  • 業種の平均ではなく、自分の売上と経費で判定する必要がある

よくある質問

個人事業税の「所得」は確定申告の所得と同じですか

同じではありません。個人事業税の所得は、青色申告特別控除を差し引く前の事業所得をもとに計算し、そこから事業主控除290万円を引いた額に税率をかけます。確定申告書の所得金額より青色申告特別控除の分だけ大きくなります。

ライターやプログラマーはこの統計に入っていますか

個人事業税の法定業種に当たらない事業は課税されないため、課税人員には入りません。業種の区分は都道府県が判断し、同じ職種でも仕事の内容によって扱いが分かれることがあります。

平均所得より多く稼いでいれば法人化が有利ですか

平均所得はあくまで目安です。法人化の損得は所得のほか、家族構成・住んでいる自治体・インボイス登録の有無・経費の中身で変わります。当サイトの条件(単身・東京23区など)では、事業所得がおおむね1,266万円を超えると法人化が有利になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。