税金の基礎
東京都で個人事業税を払う人は19.4万人。請負業は12年で1.9倍、不動産は2割減
結論
東京都で個人事業税を課税された人は2024年度に194,418人で、全国の17.5%です。2012年度と比べると請負業は16,650人から31,051人へ1.86倍、理容・美容などの環境衛生業は2.37倍、デザイン・コンサルなどの第三種その他の事業は1.94倍に増えました。一方、不動産貸付業は2006年度の75,183人から61,962人へ18%減り、構成比は40.2%から31.9%に下がっています。
- 課税人員の業種構成は、物を作る・売る・貸す側(製造・物品販売・不動産・駐車場)が縮み、請け負う・サービスする側(請負・環境衛生・第三種その他)が伸びた
- 全国比では運送・運送取扱業が38.5%と突出し、法務業等は27.7%。請負業は9.5%、製造業は6.5%にとどまる
- 課税されている人は5%(医業類似は3%)の業種にいるので、法人化の損益分岐点は事業所得1,266万円の側になる(40歳未満・独身・東京23区)
このテーマの全体像 個人事業税の業種と計算方法
個人事業税の業種別の統計は、全国では総務省が毎年公表していますが、比べられるのは直近の2年程度です。東京都の都税統計年報は、2006年度から同じ形の業種別の表をPDFで公開しており、18年分を並べると、東京で「事業税を払う個人」の顔ぶれがどう入れ替わったかが見えます。
表はすべて、都税統計年報「個人事業税 (1) 業種別」の課税人員から作りました。2008年度はPDFの文字が取り出せなかったため除いています。
18年で、不動産の人が減り、請け負う人が増えた
| 業種 | 2006年度 | 2012年度 | 2018年度 | 2024年度 | 2024÷2006 | 2024÷2012 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総計 | 186,796人 | 160,223人 | 177,231人 | 194,418人 | 1.04倍 | 1.21倍 |
| 不動産貸付業 | 75,183人 | 72,395人 | 65,379人 | 61,962人 | 0.82倍 | 0.86倍 |
| 請負業 | 22,749人 | 16,650人 | 25,091人 | 31,051人 | 1.36倍 | 1.86倍 |
| 物品販売業 | 14,589人 | 10,464人 | 9,366人 | 10,643人 | 0.73倍 | 1.02倍 |
| 製造業 | 5,792人 | 2,987人 | 2,898人 | 2,609人 | 0.45倍 | 0.87倍 |
| 運送・運送取扱業 | 10,752人 | 9,423人 | 12,906人 | 11,855人 | 1.10倍 | 1.26倍 |
| 駐車場業 | 3,788人 | 2,937人 | 2,670人 | 1,212人 | 0.32倍 | 0.41倍 |
| 料理店・飲食店業 | 7,705人 | 5,166人 | 8,055人 | 11,333人 | 1.47倍 | 2.19倍 |
| 法務業等 | 20,444人 | 18,213人 | 19,399人 | 23,647人 | 1.16倍 | 1.30倍 |
| 環境衛生業 | 4,322人 | 3,804人 | 5,646人 | 9,004人 | 2.08倍 | 2.37倍 |
| 第三種その他の事業 | 10,636人 | 8,870人 | 13,469人 | 17,181人 | 1.62倍 | 1.94倍 |
※ 東京都主税局 都税統計年報「個人事業税 (1) 業種別」。各年度の課税は前年の所得に対するもの。法務業等は弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士など、環境衛生業は理容・美容・クリーニングなど(表の備考による)。第三種その他はデザイン業・コンサルタント業・諸芸師匠業・設計監督者業など
※ scripts/tozei-kojin-jigyozei-zenkoku.mjs で集計(元データは data/official/tozei-tokei-kojin-jigyozei/)
課税人員の総数は、2006年度の186,796人から2012年度に160,223人まで減り、2024年度は194,418人に戻りました。総数だけ見ると18年で1.04倍ですが、中身は大きく入れ替わっています。
増えたのは、請け負う・サービスを提供する業種です。請負業は2012年度から1.86倍の31,051人、理容・美容などの環境衛生業は2.37倍、デザイン・コンサル・講師などを含む第三種その他の事業は1.94倍です。減ったのは、物を作る・売る・貸す業種で、製造業は2006年度の半分以下、駐車場業は3分の1になりました。
構成比で見ると、入れ替わりがはっきりします。
| 業種 | 2006年度の構成比 | 2024年度の構成比 |
|---|---|---|
| 不動産貸付業 | 40.2% | 31.9% |
| 請負業 | 12.2% | 16.0% |
| 法務業等 | 10.9% | 12.2% |
| 第三種その他の事業 | 5.7% | 8.8% |
| 運送・運送取扱業 | 5.8% | 6.1% |
| 料理店・飲食店業 | 4.1% | 5.8% |
| 物品販売業 | 7.8% | 5.5% |
| 環境衛生業 | 2.3% | 4.6% |
| 製造業 | 3.1% | 1.3% |
| 駐車場業 | 2.0% | 0.6% |
※ 集計の条件は上の表と同じ
2006年度は、東京で個人事業税を払う人の4割が不動産の貸主でした。2024年度は3割を少し超える程度で、請負業・第三種その他・環境衛生業の合計(29.4%)とほぼ並んでいます。
全国と比べると、運送業の38.5%が東京都に集まる
同じ令和6年度について、総務省の全国の業種別の課税人員と、都税統計の区分にそろえて比べました。
| 業種 | 東京都 | 全国 | 東京都の割合 |
|---|---|---|---|
| 総計 | 194,418人 | 1,111,436人 | 17.5% |
| 運送・運送取扱業 | 11,855人 | 30,759人 | 38.5% |
| 法務業等 | 23,647人 | 85,370人 | 27.7% |
| あん摩業等 | 1,960人 | 7,065人 | 27.7% |
| 第三種その他の事業 | 17,181人 | 67,379人 | 25.5% |
| 料理店・飲食店業 | 11,333人 | 47,165人 | 24.0% |
| 医業等 | 6,407人 | 27,305人 | 23.5% |
| 不動産貸付業 | 61,962人 | 317,262人 | 19.5% |
| 環境衛生業 | 9,004人 | 47,959人 | 18.8% |
| 代理業 | 1,005人 | 6,129人 | 16.4% |
| 物品販売業 | 10,643人 | 70,621人 | 15.1% |
| 駐車場業 | 1,212人 | 11,736人 | 10.3% |
| 請負業 | 31,051人 | 326,982人 | 9.5% |
| 製造業 | 2,609人 | 40,394人 | 6.5% |
※ 令和6年度(令和5年分の所得に対する課税)。全国は総務省「道府県税の課税状況等に関する調」。業種のまとめ方は都税統計の備考に従い、全国の業種を合算した。都税統計は過年度相当分・分割支店分を含まないため、割合は目安
全国の課税人員のうち東京都は17.5%です。これを基準にすると、運送・運送取扱業(38.5%)が突出し、法務業等・あん摩業等(ともに27.7%)、第三種その他(25.5%)も東京都に偏っています。士業やデザイン・コンサルのような第三種事業は、顧客の集まる都市に寄るということです。
逆に**請負業は9.5%**にとどまります。請負業は全国で326,982人と最大の区分ですが、その中心は建設業の一人親方などで、東京都への集中は小さい区分です。東京都で請負業が12年で1.86倍に増えたとはいえ、全国の構成とは違う形で増えていると読めます。
全国の業種別の課税人員と所得の分布は、個人事業税を払う人は111万人で総務省の統計から整理しています。
駐車場業は2021年度に4割減った
減少が目立つ駐車場業は、2020年度の2,642人から2021年度に1,480人へ、1年で44%減りました。その後も減り続け、2024年度は1,212人です。
駐車場用地の貸付けについては、東京都行政不服審査会の答申(令和3年2月25日)が、東京都の事務提要が令和2年3月27日に改正されていることに触れ、その事案には改正前の基準を当てはめています。改正後の内容は公表されていないため、2021年度の減少との関係は確認できません。駐車場用地の貸付けの判定が争われた事案は、個人事業税の審査請求、東京都の答申40件で認められたのは1件だけで読んでいます。
料理店・飲食店業も特徴的な動きをしています。2021年度の8,201人が、2022年度に17,336人へ倍増し、2023年度は8,962人に戻りました。2022年度の課税は2021年の所得に対するものですが、表には理由が書かれておらず、この記事では推定しません。
課税されている人は、法人化の分岐点が低い側にいる
この統計に載っているのは、法定業種に当たり、事業所得が事業主控除の290万円を超えた人だけです。つまり全員が、税率5%(あん摩業等は3%)の個人事業税を払っています。
法人化すると個人事業税はなくなり、法人の所得に法人事業税がかかります。役員報酬を払った後の法人の所得は小さいので、課税されている業種の人ほど法人化で事業税の負担が減ります。当サイトの計算エンジンでは、40歳未満・独身・経費200万円・東京23区の条件で、法人化の損益分岐となる事業所得は次のとおりです。
| 個人事業税の区分 | 損益分岐となる事業所得 |
|---|---|
| 5%(請負業・不動産貸付業・法務業等・デザイン業など) | 1,266万円 |
| 3%(あん摩・はり・きゅう・柔道整復など) | 1,504万円 |
| 課税されない業種 | 2,198万円 |
※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。事業所得は青色申告特別控除の前
増えている請負業・デザイン・コンサル・理美容の人たちは、いずれも5%の区分です。課税されていない業種の人と比べて、法人化を考え始める所得が900万円以上低いところにいます。業種区分ごとの計算はライター・エンジニア・デザイナーで法人化の分岐点は932万円違う、業種の線引きそのものは個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法にまとめています。
大阪府の府税務統計は業種別の所得金額まで比べられます。令和6年度の1人当たり所得と損益分岐点の比較、飲食店業の令和4年度の急増は大阪府で個人事業税を払う人は8.1万人で集計しました。
まとめ
- 東京都の個人事業税の課税人員は2024年度194,418人(全国の17.5%)。2012年度の160,223人から1.21倍
- 請負業は2012年度比1.86倍、環境衛生業は2.37倍、第三種その他は1.94倍。不動産貸付業は2006年度比18%減で構成比は40.2%→31.9%
- 製造業は2006年度の半分以下、駐車場業は3分の1。駐車場業は2021年度に1年で44%減った
- 全国比では運送・運送取扱業が38.5%と突出し、請負業は9.5%にとどまる
- 課税されている人は5%か3%の区分にいるので、法人化の損益分岐点は課税されない業種より低い
統計が示すのは東京全体の傾向で、個々の判断は所得と業種区分で決まります。自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
都税統計の「課税人員」は、個人事業主の人数と同じですか?
違います。個人事業税は法定業種に当たり、事業所得が事業主控除290万円を超える人にだけ課税されます。課税されない業種の人や所得が290万円以下の人は含まれません。都税統計は過年度相当分と分割支店分も含まないとしています。
業種別の1人当たり所得は使えますか?
都税統計には業種別の所得金額も載っていますが、2006〜2016年度ごろは1人当たりの値が業種ごとに数年間ほぼ同じで、推計を含むとみられます。この記事では課税人員だけを比べました。
2022年度に料理店・飲食店業の課税人員が急に増えたのはなぜですか?
2022年度は17,336人で、前後の年度の約2倍でした。2022年度の課税は2021年の所得に対するものです。都税統計の表には増減の理由は書かれていないため、この記事では理由を推定していません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。