税金の基礎

個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法

個人事業税は法定70業種に該当する事業だけに課税されます。ライター業や翻訳業は原則として対象外です。税率3〜5%の区分、事業主控除290万円、青色申告特別控除が使えない点まで、計算方法を具体的に示します。

個人事業主が納める税金として、所得税・住民税・消費税はよく知られています。もうひとつ、個人事業税があります。

これが見落とされやすい理由は2つあります。申告書を自分で書く場面がないことと、そもそも課税されない人がいることです。

法人化の試算をするとき、この個人事業税を計算に入れているツールは多くありません。所得700万円なら年20万円前後の差になるため、無視できません。

計算方法

個人事業税 =(事業所得 + 青色申告特別控除額 − 事業主控除290万円)× 税率

3つの特徴があります。

事業主控除は年290万円

所得から290万円を差し引いてから課税されます。したがって事業所得が290万円以下なら個人事業税はかかりません。

年の途中で開業・廃業した場合は月割になります。7月開業なら6か月分で145万円です。

青色申告特別控除は使えない

ここが間違えやすい点です。個人事業税の計算では、青色申告特別控除65万円が適用されません。

所得税では控除された65万円を、事業税の計算では足し戻します。所得税の確定申告書に書かれた「事業所得」の金額そのままではない、ということです。

所得税個人事業税
売上 − 経費1,000万円1,000万円
青色申告特別控除−65万円適用なし
事業主控除−290万円
課税の基礎935万円710万円

税率は業種で3〜5%

法定業種の区分によって決まります。

区分税率業種数
第1種事業5%37業種
第2種事業4%3業種
第3種事業(原則)5%28業種
第3種事業のうち一部3%2業種

大半の業種は5%です。

先ほどの例(売上1,000万円・経費0円と仮定した場合の事業所得1,000万円)で計算すると、

(1,000万円 − 290万円) × 5% = 35万5,000円

年35.5万円。決して小さくありません。

課税されない業種がある

ここが個人事業税の最大の特徴です。法定業種に該当しない事業には、そもそも課税されません。

地方税法が定める70業種は次のとおりです。

第1種事業(37業種・税率5%)

物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(むし風呂等)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業

第2種事業(3業種・税率4%)

畜産業、水産業、薪炭製造業

第3種事業(30業種・税率5%、ただし2業種は3%)

医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業

税率3%:あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業

一覧にない事業は課税されない

この70業種のいずれにも当たらなければ、個人事業税はかかりません。代表的なものを挙げます。

  • 文筆業(ライター・作家)
  • 翻訳業・通訳業
  • 画家・イラストレーター・音楽家などの芸術家
  • スポーツ選手
  • 農業(林業も原則対象外)

これらは法定業種に含まれていないため、原則として非課税です。所得が1,000万円あっても個人事業税はゼロになります。

判断が割れやすい業種

問題は、一覧に明記されていない現代的な職種です。

職種扱われ方
Webデザイナーデザイン業(第3種・5%)とされることが多い
システムエンジニア・プログラマー請負業(第1種・5%)とされることが多い
Webライター文筆業として非課税とされることが多い
経営コンサルタントコンサルタント業(第3種・5%)
動画編集者内容により請負業やデザイン業とされうる
ブロガー・アフィリエイター広告業(第1種・5%)とされることが多い

「〜とされることが多い」という書き方をしているのは、最終的な判断が都道府県によるためです。同じ職種でも、実際の業務内容と契約形態によって結論が変わります。

たとえば同じ「ライター」でも、自分の名前で記事を書いて執筆料を得ていれば文筆業として非課税、企業から受注してコンテンツを納品する形なら請負業として課税、という判断がありえます。

開業届や確定申告書に書いた業種名で機械的に決まるわけではありません。 判断に迷う場合は、都道府県税事務所に事業内容を説明して確認してください。

法人化するとどうなるか

個人事業を廃業すれば個人事業税はかからなくなり、代わりに法人事業税が課されます。

個人事業税法人事業税(東京都・標準税率)
控除事業主控除290万円なし
税率業種により3〜5%所得400万円以下3.5%/400万〜800万円5.3%/800万円超7.0%
上乗せなし特別法人事業税(事業税額の37%)
非課税業種ありなし

法人には事業主控除290万円がありません。 また非課税業種という考え方もないため、ライター業や翻訳業のように個人では非課税だった事業は、法人化すると事業税の対象になります。

つまり個人事業税が非課税の業種にとって、法人化は事業税の面では不利に働きます。逆に、5%課税されている業種にとっては、法人化で税率が下がる帯(所得400万円以下3.5%)が生まれます。

当サイトのシミュレーターは、詳細設定で業種区分を選べます。非課税業種を選ぶと個人側の税負担が下がるため、法人化の分岐点が上がります。業種によって結論が変わるということです。

法人化の判断全体については法人化の目安は「所得800万円」?その数字が当てにならない3つの理由をご覧ください。

納付の時期

個人事業税は、自分で申告する必要は原則としてありません。所得税の確定申告をすれば、そのデータが都道府県に回ります。

  • 8月ごろ:都道府県から納税通知書が届く
  • 8月末と11月末の2回に分けて納付(一括も可)

税額が1万円以下の場合は8月に一括で納めます。

なお納めた個人事業税は、その年の必要経費(租税公課)になります。所得税や住民税は経費になりませんが、個人事業税は経費です。混同しないでください。

まとめ

  • 個人事業税は法定70業種に該当する事業だけに課税される。ライター業・翻訳業・芸術家・農業などは原則非課税
  • 計算は「事業所得 + 青色申告特別控除 − 事業主控除290万円 × 税率」。青色申告特別控除は足し戻す
  • 税率は第1種5%・第2種4%・第3種5%(一部3%)。大半は5%
  • 事業所得290万円以下なら課税されない
  • 判断が割れる職種は都道府県の判断による。開業届の業種名で機械的に決まるわけではない
  • 法人化すると法人事業税に変わる。事業主控除も非課税業種もないため、非課税業種にとっては不利に働く
  • 納めた個人事業税は経費になる

自分の業種区分を選んで、法人化の分岐点がどう動くか確かめてみてください。

よくある質問

個人事業税の申告は必要ですか?

所得税の確定申告をしていれば、そのデータが都道府県に回るため、個人事業税のための別の申告は原則として不要です。8月ごろに都道府県から納税通知書が届き、8月と11月の2回に分けて納付します。確定申告書の「事業税に関する事項」欄で、非課税所得や事業の種類を記入する箇所があるので、そこは正確に書いてください。

納めた個人事業税は経費になりますか?

なります。個人事業税は事業に関連して課される税なので、支払った年の必要経費(租税公課)に算入できます。所得税や住民税は経費になりませんが、個人事業税は違います。この点は間違えやすいので注意してください。

法人化すると個人事業税はどうなりますか?

個人事業を廃業すればかからなくなり、代わりに法人事業税が課されます。法人事業税には事業主控除290万円のような控除がなく、所得400万円以下3.5%・400万円超800万円以下5.3%・800万円超7.0%の累進構造です(東京都の標準税率)。さらに特別法人事業税が事業税額の37%上乗せされます。単純に有利不利を比べられるものではありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。