税金の基礎
大阪府で個人事業税を払う人は8.1万人。飲食店は令和4年度だけ11倍に
結論
大阪府で個人事業税を課税された人は令和6年度に81,028人で、不動産業22,737人と請負業22,371人が半分以上を占めます。1人当たり所得は699万円で、大阪市・40歳未満・単身の法人化の損益分岐点1,283万円の54%です。飲食店業は令和3年度2,054人から令和4年度23,570人へ11倍に増え、翌年度は3,276人に戻りました。令和3年は飲食店に営業時間短縮協力金が支給された年で、協力金も事業所得として個人事業税の対象になります。
- 1人当たり所得が最も高いのは法務業等の1,015万円で、損益分岐点の79%。請負業は535万円、運送倉庫業は442万円
- 請負業は令和4年度18,872人から令和6年度22,371人へ2年で3,499人増えた。不動産業は5年間22,700〜23,100人でほぼ横ばい
- 大阪府行政不服審査会は、時短協力金を含む事業所得に個人事業税を課した処分の取消しを求める審査請求を、棄却すべきと答申した(令和5年度答申第19号・第20号)
このテーマの全体像 個人事業税の業種と計算方法
個人事業税は、法人化すると消える税金の1つです。では、実際にどんな業種の人が、どれくらいの所得で払っているのか。大阪府は府税務統計で、業種別の課税人員と所得金額を毎年公表しています。
東京都の数字は東京都で個人事業税を払う人は19.4万人で集計しました。東京都の統計は業種別の所得に推計とみられる値が含まれ、人員しか使えませんでした。大阪府の表は、業種ごとの所得金額まで比べられます。
令和6年度は81,028人。不動産業と請負業で半分を超える
大阪府の「個人事業税に関する調」((2) 業種別所得金額)から、令和2〜6年度の課税人員を集計しました。各年度の課税は前年中の所得に対するものです。
大阪府の個人事業税の課税人員(人)
| 区分 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 合計 | 75,953 | 77,666 | 99,987 | 78,888 | 81,028 |
| 不動産業(第1種) | 22,998 | 23,143 | 22,933 | 22,873 | 22,737 |
| 請負業(第1種) | 20,025 | 20,266 | 18,872 | 20,197 | 22,371 |
| 物品販売業(第1種) | 4,483 | 4,923 | 4,763 | 4,639 | 4,776 |
| 製造業(第1種) | 4,549 | 4,071 | 3,686 | 3,818 | 3,800 |
| 運送倉庫業(第1種) | 2,854 | 3,013 | 3,150 | 3,402 | 3,531 |
| 飲食店業(第1種) | 2,615 | 2,054 | 23,570 | 3,276 | 2,535 |
| 料理店業(第1種) | 478 | 314 | 3,201 | 509 | 425 |
| 法務業等(第3種) | 7,264 | 8,006 | 7,964 | 7,869 | 7,864 |
| 医業等(第3種) | 2,058 | 2,091 | 2,496 | 2,425 | 2,300 |
| 環境衛生業(第3種) | 1,926 | 2,209 | 1,896 | 2,260 | 2,593 |
| その他の事業(第3種) | 4,989 | 5,759 | 5,443 | 5,673 | 5,938 |
出典:大阪府 府税務統計(令和2〜6年度版)「7 個人事業税に関する調 (2) 業種別所得金額」。課税人員は所得税課税者と所得税失格者の計。2以上の道府県に事業所を有する個人は、主たる事業所が大阪府にある者のみ計上。業種の区分は府の表のとおり。集計は
python3 scripts/osaka-kojin-jigyozei.py(取得)とnode scripts/osaka-kojin-jigyozei.mjs。
令和6年度の81,028人のうち、不動産業が22,737人、請負業が22,371人で、合わせて55.7%です。不動産業は5年間22,700〜23,100人の幅でほとんど動いていません。
伸びているのは請負業です。令和4年度の18,872人から令和6年度の22,371人へ、2年で3,499人増えました。理容・美容などの環境衛生業も5年で1,926人から2,593人へ1.35倍、運送倉庫業も1.24倍になっています。東京都でも請負業と環境衛生業が増えていて、同じ向きの動きです。
飲食店業は令和4年度だけ23,570人。時短協力金が所得に入った
表の中で1つだけ桁の違う数字があります。飲食店業の令和4年度の23,570人です。前年度の2,054人の11倍で、翌年度は3,276人に戻っています。料理店業も同じ年度だけ3,201人に増えました。
飲食店業の課税人員と1人当たり所得
| 年度(所得の年) | 課税人員 | 1人当たり所得(事業主控除前) |
|---|---|---|
| 令和2年度(令和元年) | 2,615 | 486万円 |
| 令和3年度(令和2年) | 2,054 | 446万円 |
| 令和4年度(令和3年) | 23,570 | 723万円 |
| 令和5年度(令和4年) | 3,276 | 560万円 |
| 令和6年度(令和5年) | 2,535 | 540万円 |
令和4年度の課税は令和3年中の所得が対象です。令和3年は、新型コロナの感染拡大を受けて飲食店に営業時間短縮等協力金(時短協力金)が支給された年でした。
この協力金が個人事業税の対象になるかは、実際に争われています。大阪府行政不服審査会の令和5年度答申第19号では、令和3年の収入の大半が時短協力金で、協力金を除けば赤字なのに課税されるのは納得できないという審査請求に対し、審査会は請求を棄却すべきと答申しました。
答申が引く審理員意見書の理由は2つです。個人事業税は原則として所得税の課税標準(申告した事業所得)を基準に課税すること。そして、国税庁のFAQでは事業に関連して支給される助成金は事業所得等に区分されると解されていることです。
協力金や給付金は「事業に関連する収入」として、所得税と同じく個人事業税の所得にも入る、というのがこの答申の結論です。法人であれば、同じ協力金は法人の益金になり、法人事業税の所得に入ります。個人と法人で課税されるかどうかが変わる論点ではありません。
1人当たり所得は699万円で、法人化の損益分岐点の54%
大阪府の表は、業種ごとの所得金額(事業主控除前)を載せています。個人事業税では青色申告特別控除を差し引かないので、この所得はおおむね「売上−経費」に当たり、判定ツールの損益分岐点と同じ物差しで比べられます。
当サイトの計算エンジンで、大阪市の国保・協会けんぽ大阪支部・40歳未満・単身の損益分岐点を求めると、個人事業税5%の業種で売上−経費1,283万円、3%の業種で1,527万円でした。
令和6年度の1人当たり所得と損益分岐点(課税人員100人以上の業種)
| 業種 | 課税人員 | 1人当たり所得 | 1人当たり事業主控除 | 損益分岐点との比 |
|---|---|---|---|---|
| 法務業等(第3種) | 7,864人 | 1,015万円 | 289万円 | 79% |
| 料理店業(第1種) | 425人 | 975万円 | 281万円 | 76% |
| 医業等(第3種) | 2,300人 | 892万円 | 288万円 | 70% |
| 不動産業(第1種) | 22,737人 | 885万円 | 285万円 | 69% |
| その他の事業(第1種) | 1,651人 | 637万円 | 280万円 | 50% |
| 物品販売業(第1種) | 4,776人 | 628万円 | 286万円 | 49% |
| 製造業(第1種) | 3,800人 | 595万円 | 287万円 | 46% |
| 印刷出版業(第1種) | 129人 | 569万円 | 284万円 | 44% |
| その他の事業(第3種) | 5,938人 | 565万円 | 283万円 | 44% |
| 飲食店業(第1種) | 2,535人 | 540万円 | 282万円 | 42% |
| 請負業(第1種) | 22,371人 | 535万円 | 286万円 | 42% |
| あん摩業等(第3種) | 267人 | 505万円 | 287万円 | 33% |
| 環境衛生業(第3種) | 2,593人 | 466万円 | 285万円 | 36% |
| 運送倉庫業(第1種) | 3,531人 | 442万円 | 284万円 | 34% |
| 全業種 | 81,028人 | 699万円 | — | 54% |
1人当たりの値は府の表の合計額を課税人員で割った平均。損益分岐点は大阪市・協会けんぽ大阪支部・40歳未満・単身・経費200万円・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社で、あん摩業等は3%、それ以外は5%の業種として計算した(2026年(令和8年)分基準)。再計算は
node scripts/osaka-kojin-jigyozei.mjs。
平均で損益分岐点に最も近いのは法務業等(弁護士・税理士・司法書士などの士業)の1,015万円で、79%です。最も遠い運送倉庫業は442万円で34%にとどまります。
1人当たり事業主控除が290万円に届かないのは、年の途中で開業・廃業した人の控除が月割になるためです。
平均の外側にいる人が、法人化を考える層
平均値は、所得の高い少数の人に引き上げられます。それでも全業種の平均が損益分岐点の半分ほどということは、個人事業税を払っている人の多くは、法人化しても手取りが増えない側にいると読めます。
ただし個人事業税は、所得290万円を超えたところからかかる税です。課税されている時点で、法人化の判断を考え始める位置にはいます。業種ごとの税率と、課税されない業種の線引きは個人事業税の業種と計算方法にまとめています。
不動産業の所得は不動産所得で、事業所得とは法人化の損得の構造が違います。不動産の法人化は別の判断軸になるので、表の比はあくまで目安です。
自分がどの位置にいるかは、平均ではなく自分の売上と経費で確かめてください。
神奈川県の県税統計は、個人事業税を払う人を所得階層別にも数えています。所得1,000万円超の人の割合と、その層の平均所得は神奈川県で個人事業税を払う人の2割は所得1,000万円超で集計しました。
まとめ
- 大阪府で個人事業税を課税された人は令和6年度81,028人。不動産業22,737人と請負業22,371人で55.7%
- 請負業は2年で3,499人増え、環境衛生業は5年で1.35倍。東京都と同じ向きの動き
- 飲食店業は令和4年度だけ23,570人(前年度の11倍)。所得の年の令和3年は時短協力金が支給された年で、府の審査会は協力金を含む事業所得への課税を維持した
- 1人当たり所得は全業種で699万円、法人化の損益分岐点1,283万円の54%。最も近い法務業等でも79%
- 個人事業税の所得は青色申告特別控除の前の額で、判定ツールの「売上−経費」と同じ物差しで比べられる
よくある質問
大阪府の統計の「所得金額」は、売上から経費を引いた額ですか?
個人事業税の課税標準になる所得で、事業主控除(年290万円)の前の額です。個人事業税では青色申告特別控除を差し引かないので、おおむね売上から必要経費を引いた額に当たります。
2つ以上の府県に事業所がある人はどう数えられていますか?
大阪府の表は、2以上の道府県に事業所を有する個人については、主たる事業所が大阪府にある者だけを計上していると注記しています。
給付金や協力金にも個人事業税はかかりますか?
事業に関連して支給される助成金は事業所得等の収入金額に入り、個人事業税は原則として所得税の事業所得を基準に課税されます。大阪府行政不服審査会は、時短協力金を含む事業所得に課税した処分を適法とした審理員の判断を妥当としています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。