税金の基礎

神奈川県で個人事業税を払う人の2割は所得1,000万円超。平均は1,916万円

結論

神奈川県で令和5年度に個人事業税を課税された人は81,785人で、所得階層が分かる77,872人のうち、所得1,000万円超が15,710人(20.2%)です。この層の1人当たり所得は1,916万円で、横浜市・40歳未満・単身の法人化の損益分岐点1,272万円を大きく上回ります。一方で350万〜500万円の層が22,074人(28.3%)と最も多く、個人事業税を払う人の半数近くは所得700万円以下です。

  • 不動産業が34,463人で42.1%を占め、1人当たり所得は1,012万円。請負業は18,163人で537万円
  • 10年で法務業は5,373人から7,589人へ41.2%、環境衛生業は39.9%増えた。不動産業は0.4%増でほぼ横ばい
  • 減免は766件・380万1,700円で、うち587件は不動産業。飲食店業は令和4年度だけ13,659人に増えた

法人化の目安は「所得○○万円から」と語られますが、実際に個人事業主がどの所得に分布しているかを示す数字は多くありません。神奈川県の県税統計は、個人事業税を課税された人を所得階層別に数えています。

個人事業税の所得は、事業主控除の前の額です。青色申告特別控除を引かないので、判定ツールの「売上−経費」と同じ物差しで、法人化の損益分岐点と比べられます。

所得1,000万円超は15,710人、2割

神奈川県の「個人事業税 所得階層別内訳」(令和5年度、令和4年中の所得)を並べました。

神奈川県の個人事業税の所得階層別内訳(令和5年度)

所得(事業主控除前)人員構成比1人当たり所得
300万円以下1,984人2.5%292万円
300万円超310万円以下2,006人2.6%302万円
310万円超320万円以下2,006人2.6%312万円
320万円超350万円以下5,683人7.3%331万円
350万円超500万円以下22,074人28.3%415万円
500万円超700万円以下16,519人21.2%580万円
700万円超1,000万円以下11,890人15.3%816万円
1,000万円超15,710人20.2%1,916万円
合計77,872人100.0%799万円

出典:神奈川県 令和5年度県税統計「4 個人事業税 (2) 所得階層別内訳」。事業廃止分に係る所得を除く。2以上の都道府県に事務所等を有する個人は本県に主たる事務所等を有する個人のみ。集計は python3 scripts/kanagawa-kojin-jigyozei.py(取得)と node scripts/kanagawa-kojin-jigyozei.mjs。

最も人数が多いのは350万〜500万円の層で、22,074人(28.3%)です。所得700万円以下を足すと50,272人で、64.6%になります。

一方、1,000万円を超える層は15,710人で、1人当たり所得は1,916万円です。この層は平均で見ると、所得1,000万円をわずかに超えた人ではなく、2,000万円近い人が中心だと読めます。

法人化の損益分岐点(1,272万円)と並べる

当サイトの計算エンジンで、横浜市の国保・協会けんぽ神奈川支部・40歳未満・単身・個人事業税5%の業種について、法人化の損益分岐点を求めると、売上−経費1,272万円でした。

所得の層人員損益分岐点(1,272万円)との関係
700万円以下50,272人(64.6%)分岐点の55%以下。この条件では分岐点に届かない層
700万円超1,000万円以下11,890人(15.3%)分岐点の手前。家族構成や経費で判定が近づく層
1,000万円超15,710人(20.2%)平均1,916万円で、多くは分岐点を超えている層

損益分岐点は経費200万円・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社の条件(2026年(令和8年)分基準)。配偶者の有無や年齢で動く。

1,000万円超の層には1,000万〜1,272万円の人も含まれるので、全員が分岐点を超えているわけではありません。ただし層の平均が1,916万円なので、多くは分岐点の上にいます。神奈川県で個人事業税を払っている人の5人に1人前後は、法人化で手取りが増える側にいる可能性が高いことになります。

法人化の目安となる所得と、条件で分岐点がどう動くかは個人事業主の法人化の目安と損益分岐点で扱っています。

不動産業が42%、1人当たり1,012万円

業種別課税状況では、不動産業が突出しています。

業種別(令和5年度・課税人員100人以上)

業種課税人員1人当たり所得減免件数減免税額
不動産業(第一種)34,463人1,012万円587件2,908,800円
請負業(第一種)18,163人537万円44件219,000円
法務業(第三種)7,589人897万円42件210,000円
運送倉庫業(第一種)4,312人518万円47件240,900円
物品販売業(第一種)3,346人574万円8件38,200円
医業等(第三種)3,004人901万円6件30,000円
その他の事業(第三種)2,935人547万円12件56,000円
飲食店業(第一種)2,342人537万円3件15,000円
環境衛生業(第三種)2,166人477万円3件15,000円
製造業(第一種)1,632人545万円8件38,800円
その他の事業(第一種)1,008人747万円4件20,000円
あん摩等の事業等(第三種)471人466万円2件10,000円
料理店業(第一種)191人533万円0件0円
合計81,785人786万円766件3,801,700円

出典:神奈川県 令和5年度県税統計「4 個人事業税 (1) 業種別課税状況」。1人当たりの値は合計額を課税人員で割った平均。業種の区分は県の表のとおり。

不動産業は34,463人で全体の42.1%、1人当たり所得は1,012万円です。大阪府(令和6年度、22,737人)よりも人数が多く、所得も高くなっています(大阪府で個人事業税を払う人は8.1万人)。ただし不動産業の所得は不動産所得で、法人化の損得の構造が事業所得とは違います。

減免は766件・380万1,700円で、そのうち587件・290万8,800円が不動産業です。1件当たりは数千円で、制度ごとの内訳は表にありません。個人事業税の減免の種類(障害者・高額な医療費・災害など)は東京都の例を個人事業税は医療費と障害者で減免されるで扱っています。

10年で、法務業と環境衛生業が4割増えた

課税人員の推移の表は、平成26年度から令和5年度までの10年分があります。

課税人員の推移(人)

業種平成26年度平成29年度令和2年度令和4年度令和5年度10年の増減
合計74,60278,38179,57193,07881,785+9.6%
不動産業34,31434,46134,00534,41334,463+0.4%
請負業16,84218,64918,88317,60518,163+7.8%
法務業5,3735,9666,5767,4107,589+41.2%
運送倉庫業4,3454,2874,2693,7834,312−0.8%
物品販売業2,7532,9923,0623,4373,346+21.5%
医業等2,6602,6462,5453,1033,004+12.9%
環境衛生業1,5481,7752,1011,9702,166+39.9%
飲食店業1,7482,0442,11713,6592,342+34.0%

出典:神奈川県 令和5年度県税統計「4 個人事業税 (4) 課税人員の推移」。課税人員は所得税課税者と所得税失格者の計。

10年で最も増えたのは法務業(弁護士・税理士・司法書士などの士業を含む区分)の41.2%と、理容・美容などの環境衛生業の39.9%です。不動産業はこの10年、34,000人台でほとんど動いていません。

飲食店業は令和4年度だけ13,659人で、前後の年度の6倍以上です。令和4年度の課税は令和3年中の所得が対象で、飲食店に営業時間短縮協力金が支給された年に当たります。大阪府でも同じ年度に飲食店業の課税人員が11倍になっていて、協力金を含む事業所得に個人事業税を課した処分は大阪府の審査会でも維持されています。

自分の所得がこの分布のどこにあるかより、自分の売上と経費で個人と法人の手取りを比べることが判断の出発点です。業種ごとの税率と課税されない業種の線引きは個人事業税の業種と計算方法にまとめています。

埼玉県の税務統計は、法定業種を70に分けて1人当たり所得を出せます。業種ごとの平均を損益分岐点と比べた結果は埼玉県の個人事業税を70業種で集計にまとめています。

まとめ

  • 神奈川県で令和5年度に個人事業税を課税された人は81,785人。所得階層が分かる77,872人のうち、所得1,000万円超は15,710人(20.2%)
  • 1,000万円超の層の1人当たり所得は1,916万円で、横浜市・40歳未満・単身の法人化の損益分岐点1,272万円を大きく上回る
  • 最も多いのは350万〜500万円の層(28.3%)で、所得700万円以下が64.6%を占める
  • 不動産業が34,463人(42.1%)で1人当たり1,012万円。10年では法務業が41.2%、環境衛生業が39.9%増えた
  • 飲食店業は令和4年度だけ13,659人。所得の年の令和3年は時短協力金が支給された年

よくある質問

神奈川県の統計の所得は、売上から経費を引いた額ですか?

個人事業税の課税標準になる所得で、事業主控除(年290万円)の前の額です。個人事業税では青色申告特別控除を差し引かないので、おおむね売上から必要経費を引いた額に当たります。

所得階層別の人数と業種別の人数が違うのはなぜですか?

所得階層別内訳は、事業廃止分に係る所得を除いて記載していると表の備考にあります。そのため合計人員77,872人は、業種別の課税人員81,785人より少なくなっています。

令和6年度の数字はありますか?

神奈川県の令和6年度県税統計は各項目を順次公開していて、この記事の作成時点では個人事業税の表が掲載されていませんでした。そのため令和5年度(令和4年中の所得)の数字を使っています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。