税金の基礎

埼玉県の個人事業税を70業種で集計。平均が法人化の分岐点を超えるのは医業だけ

結論

埼玉県で令和5年度に個人事業税を課税された人は70,905人で、1人当たり所得は704万円です。課税人員100人以上の30業種のうち、平均がさいたま市・40歳未満・単身の法人化の損益分岐点1,258万円を超えるのは医業(751人・1,367万円)だけでした。人数の多い請負業(24,423人)は523万円、不動産貸付業(24,289人)は943万円です。所得1,000万円超は10,943人(15.4%)にとどまります。

  • 70の法定業種のうち課税人員がいたのは57業種。税理士業1,359人・1,114万円、公認会計士業172人・1,068万円、弁護士業546人・1,032万円が医業に続く
  • 所得400万円以下(個人事業税が5.5万円以下)の人が20,490人で28.9%。300万〜400万円は10万円刻みでほぼ均等に並ぶ
  • 同じ統計の法人事業税では、令和5年度の事業年度132,710のうち欠損法人が83,118(62.6%)で、5年間62〜64%で動かない

個人事業税の統計は、多くの都道府県で「不動産業」「法務業等」のようにいくつかの業種をまとめて公表しています。埼玉県の税務統計は、地方税法が定める法定業種を1つずつ、70業種に分けて課税人員と所得金額を載せています。

業種ごとの平均所得が分かれば、法人化の損益分岐点と同じ物差しで比べられます。東京都・大阪府・神奈川県の集計(大阪府で個人事業税を払う人は8.1万人、神奈川県で個人事業税を払う人の2割は所得1,000万円超)より細かい単位です。

平均が分岐点を超えるのは医業だけ

埼玉県の「個人事業税」(令和5年度の事業別内訳)から、課税人員100人以上の30業種を1人当たり所得の高い順に並べました。損益分岐点は、当サイトの計算エンジンでさいたま市の国保・協会けんぽ埼玉支部・40歳未満・単身の条件で求めた値(5%の業種で売上−経費1,258万円、3%の業種で1,495万円)です。

埼玉県の個人事業税の法定業種別(令和5年度・課税人員100人以上)

業種区分課税人員1人当たり所得損益分岐点との比
医業第三種751人1,367万円109%
税理士業第三種1,359人1,114万円89%
公認会計士業第三種172人1,068万円85%
弁護士業第三種546人1,032万円82%
獣医業第三種168人950万円75%
不動産貸付業第一種24,289人943万円75%
歯科医業第三種627人843万円67%
司法書士業第三種389人818万円65%
土地家屋調査士業第三種261人805万円64%
周旋業第一種132人747万円59%
社会保険労務士業第三種389人729万円58%
広告業第一種142人643万円51%
コンサルタント業第三種1,382人629万円50%
行政書士業第三種218人611万円49%
物品販売業第一種3,110人589万円47%
設計監督者業第三種702人587万円47%
代理業第一種220人575万円46%
製造業第一種2,491人542万円43%
デザイン業第三種849人535万円43%
駐車場業第一種976人529万円42%
料理店業第一種118人525万円42%
請負業第一種24,423人523万円42%
歯科技工士業第三種268人496万円39%
飲食店業第一種1,078人495万円39%
諸芸師匠業第三種514人480万円38%
美容業第三種1,426人474万円38%
あん摩等の事業第三種338人468万円31%
写真業第一種162人466万円37%
理容業第三種380人455万円36%
運送業第一種2,359人427万円34%
全業種70,905人704万円56%

出典:埼玉県 税務統計(令和6年版)課税状況「8 個人事業税」(分割個人他県本店分を除く、表の出所は総務省統計)。1人当たり所得は所得金額(事業主控除前)の合計を課税人員で割った平均。損益分岐点は経費200万円・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社の条件で、あん摩等の事業は3%、それ以外は5%の業種として計算(2026年(令和8年)分基準)。集計は python3 scripts/saitama-kojin-jigyozei.py(取得)と node scripts/saitama-kojin-jigyozei.mjs。

平均が損益分岐点を超えるのは、医業の1,367万円(109%)だけです。税理士業(89%)、公認会計士業(85%)、弁護士業(82%)と士業が続きます。

医業は、地方税法72条の49の12により社会保険診療につき支払を受けた金額を総収入金額に算入しないので、ここでの所得は課税対象になった部分の平均と読む必要があります。医療法人という別の器があることも含め、医師の法人化は一般の業種と前提が違います(開業医の概算経費と医療法人)。

人数の多い業種は、分岐点の4割

人数で見ると、請負業(24,423人)と不動産貸付業(24,289人)の2つで全体の68.7%を占めます。請負業の平均は523万円で、損益分岐点の42%です。建設・ITの業務委託など「請け負って稼ぐ」個人事業主の平均像は、法人化の判断ラインのかなり手前にいます。

不動産貸付業の平均は943万円ですが、不動産の所得は不動産所得で、法人化の損得の仕組みが事業所得とは違います。表の比はあくまで同じ物差しで並べたときの目安です。

400万円以下が29%、1,000万円超は15%

埼玉県の所得階層別の表は、300万〜400万円の間を10万円刻みで数えています。

所得階層別(令和5年度)

所得(事業主控除前)人員構成比累積
300万円以下2,088人2.9%2.9%
300万円超310万円以下2,057人2.9%5.8%
310万円超320万円以下2,069人2.9%8.8%
320万円超330万円以下1,967人2.8%11.5%
330万円超340万円以下1,978人2.8%14.3%
340万円超350万円以下1,783人2.5%16.8%
350万円超360万円以下1,789人2.5%19.4%
360万円超370万円以下1,717人2.4%21.8%
370万円超380万円以下1,728人2.4%24.2%
380万円超400万円以下3,314人4.7%28.9%
400万円超500万円以下13,499人19.0%47.9%
500万円超700万円以下15,728人22.2%70.1%
700万円超1,000万円以下10,245人14.4%84.6%
1,000万円超10,943人15.4%100.0%

出典:埼玉県 税務統計(令和6年版)課税状況「9 個人事業税所得階層別」。中途開廃業者は年所得に換算した額の区分に計上。

所得400万円以下の人は20,490人で28.9%です。個人事業税は所得から事業主控除290万円を引いた額にかかるので、この層の税額は5%の業種でも5.5万円以下です。300万〜400万円の間は、10万円ごとにほぼ2,000人ずつ並んでいます。

1,000万円超は10,943人(15.4%)で、1人当たり所得は1,775万円です。令和元年度の9,516人から令和5年度の10,943人へ、1.15倍に増えました(令和4年度は12,479人と一時的に多い年がありました)。神奈川県の同じ層は20.2%で、埼玉県のほうが高所得の層は薄くなっています。

法人の側は、6割が欠損で所得がない

同じ統計には、法人事業税の所得階層別の表もあります。埼玉県に事務所等がある法人の事業年度数(分割法人の他県本店分を除く)です。

法人事業税の所得階層別(事業年度数)

年度合計欠損法人欠損法人の割合所得400万円以下400万円超800万円以下
令和元年度124,73878,52363.0%27,0996,581
令和2年度125,14380,27164.1%26,0946,677
令和3年度127,84480,52163.0%26,7967,193
令和4年度130,70682,32263.0%27,1467,212
令和5年度132,71083,11862.6%26,9567,497

出典:埼玉県 税務統計(令和6年版)課税状況「13 法人事業税所得階層別」。規模を問わずすべての法人の事業年度数で、一人会社だけの数字ではない。

法人の6割強は欠損で、所得にかかる法人事業税はありません。個人事業税は所得が290万円を超えた人にしかかからないのに対し、法人は利益がなくても均等割(法人住民税)を払い続けます。所得がない年にも残るこの固定費の大きさは、法人住民税の均等割(赤字でも年7万円)で確かめられます。

自分がどの業種・どの所得にいるかで目安は変わります。業種ごとの税率と課税されない業種の線引きは個人事業税の業種と計算方法で確かめ、そのうえで自分の売上と経費で個人と法人の手取りを比べてください。

まとめ

  • 埼玉県で令和5年度に個人事業税を課税された人は70,905人、1人当たり所得704万円で、法人化の損益分岐点(さいたま市1,258万円)の56%
  • 課税人員100人以上の30業種で、平均が分岐点を超えるのは医業(1,367万円)だけ。税理士業1,114万円、公認会計士業1,068万円、弁護士業1,032万円が続く
  • 人数の多い請負業(24,423人)は平均523万円で、分岐点の42%
  • 所得400万円以下が28.9%、1,000万円超は15.4%(神奈川県は20.2%)
  • 同じ統計の法人事業税では、事業年度の62.6%が欠損法人

よくある質問

「所得金額」は売上から経費を引いた額ですか?

個人事業税の課税標準になる年所得で、事業主控除の前の額です。個人事業税では青色申告特別控除を引かないので、おおむね売上から必要経費を引いた額に当たります。埼玉県の表は、中途開廃業者の所得を年所得に換算して所得階層を区分しています。

医業の個人事業税は、社会保険診療分も含まれていますか?

地方税法72条の49の12は、医業などを行う個人が社会保険診療につき支払を受けた金額を、個人事業税の総収入金額に算入しないと定めています。統計の所得金額は個人事業税の課税標準に基づくものなので、医業の1人当たり所得は自由診療などの課税対象部分で計算された値と考えられます。

欠損法人の割合は一人会社の割合ですか?

違います。法人事業税の事業年度数は、埼玉県に事務所等がある法人(分割法人の他県本店分を除く)すべてを規模を問わず数えたものです。一人会社だけを取り出した数字ではありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。