税金の基礎

個人事業税は医療費と障害者で減免される。法人化で消える東京都の制度

結論

東京都の個人事業税は、医療費(保険金等の補てんを除く)が「合計所得金額×20%−25万円」を超えると、{医療費−合計所得金額×5%}×税率が減免されます。売上−経費600万円の人が医療費200万円を払った年は、税額15.5万円のうち8.5万円が減ります。合計所得金額370万円以下で本人か扶養親族が障害者なら、1人5,000円(特別障害者は1万円)の減免もあります。どちらも申請が必要で、法人事業税にはない制度です。

  • 医療費の減免は、医療費控除と違い個人事業税の「税額」から直接引く。所得税・住民税の医療費控除とは別に申請する
  • 合計所得金額は青色申告特別控除の前。売上−経費800万円なら医療費が135万円を超えないと対象にならない
  • 納期限までに都税事務所へ申請する。医療費はその年の1月1日以降申請時までに支出したもの(前年9月1日以降で前年度に対象にならなかった分を含む)

医療費がかさんだ年は、所得税・住民税で医療費控除を受けます。ここまではよく知られています。東京都では、もう1つ、個人事業税の減免を受けられる場合があります。

医療費控除は法人化で戻る額が減るでは、医療費控除は国保料にも個人事業税にも効かないと整理しました。控除としてはそのとおりですが、個人事業税には控除とは別に「減免」という入口があります。そしてこの減免は、法人化すると使えなくなります。

医療費の減免は、税額から直接引く

東京都主税局は、納税者が自分や生計を一にする親族の医療費を支払った場合、個人事業税の税額の減免を受けられる場合があるとしています。

項目内容
条件〔合計所得金額×20%−25万円〕<〔医療費(保険金等による補てん部分を除く)〕
減免額{医療費−(合計所得金額×5/100)}×個人事業税の税率
合計所得金額青色申告特別控除前の事業所得・不動産所得のほか、給与所得などを合算したもの
対象の医療費課税年の1月1日以降申請時までの支出。前年9月1日以降に支出し、前年度に対象にならなかったものを含む
手続き個人事業税の納期限までに都税事務所・都税支所・支庁へ申請

対象になる医療費は、医師・歯科医師の診療費、治療に必要な医薬品、入院の部屋代・食事代、通院の交通費などで、所得税の医療費控除とよく似ています。医師への謝礼や、通院のための自家用車のガソリン代などは入りません。

医療費控除との違いは2つです。控除ではなく税額の減免であること。そして、足切りが所得の20%から25万円を引いた額と、高めに置かれていることです。所得税の医療費控除の足切りが10万円(所得200万円未満は所得の5%)なのと比べると、ハードルはかなり高くなります。

売上−経費600万円・医療費200万円なら8.5万円

当サイトの計算エンジンの個人事業税(5%の業種)に、この式を当てはめました。

個人事業税(5%)の医療費減免額(東京都)

売上−経費個人事業税減免の条件(医療費がこの額を超える)医療費30万円医療費50万円医療費100万円医療費200万円医療費300万円
400万円5.5万円55.0万円対象外対象外4.0万円5.5万円5.5万円
600万円15.5万円95.0万円対象外対象外3.5万円8.5万円13.5万円
800万円25.5万円135.0万円対象外対象外対象外8.0万円13.0万円
1,000万円35.5万円175.0万円対象外対象外対象外7.5万円12.5万円
1,500万円60.5万円275.0万円対象外対象外対象外対象外11.3万円

事業所得だけの人で、合計所得金額=売上−経費(青色申告特別控除の前)とした。個人事業税は事業主控除290万円を引いた所得の5%。減免額は税額を上限にした。保険金・高額療養費などで補てんされた額は医療費から除く。再計算は node scripts/kojin-jigyozei-genmen-iryohi.mjs。

所得が上がると、条件の足切りも差し引く額も大きくなります。売上−経費800万円なら医療費が135万円を超えないと対象になりません。減免額は医療費が同じなら所得が高いほど小さくなり、医療費200万円で、600万円の人は8.5万円、1,000万円の人は7.5万円です。

所得400万円の人は、医療費200万円で税額5.5万円がまるごと減免されます。所得が低めで医療費が大きい年ほど、個人事業税がゼロになりやすい制度です。

障害者がいれば1人5,000円

もう1つの減免は、納税者本人か扶養親族等が障害者の場合です。

項目内容
条件合計所得金額が370万円以下で、納税者または扶養親族等が障害者
減免額障害者1人につき5,000円(特別障害者は1人10,000円)
扶養親族等生計を一にする配偶者・親族で、合計所得金額が58万円以下(令和6年分以前は48万円以下)の人
手続き障害者手帳などと納税通知書を用意し、納期限までに申請

個人事業税は所得290万円を超えた部分にかかるので、この減免の対象になるのは、売上−経費がおおむね290万円から370万円の人です。額は小さいものの、申請しなければ受けられません。

法人化すると、減免ごと消える

法人化すると、事業の所得は会社の所得になり、個人事業税はかかりません。代わりに法人事業税がかかりますが、法人事業税には社長の医療費や家族の障害を理由とする減免はありません。

項目個人事業主(東京都)法人化した一人社長
事業にかかる税個人事業税(所得−290万円の5%など)法人事業税(所得400万円以下3.5%〜)
医療費による減免あり(申請)なし
障害者がいる場合の減免あり(合計所得370万円以下)なし
医療費控除(所得税・住民税)ありあり(役員報酬の給与所得から)

医療費が多い年が続く家庭では、法人化の損得を比べるときに、個人のままなら受けられた減免を個人側の手取りに足しておく必要があります。とはいえ表のとおり、減免額は年数万円から十数万円で、法人化の判断そのものを動かすほど大きくはありません。

個人事業税そのものの業種と税率、法人化するとどう変わるかは個人事業税の業種と計算方法にまとめています。まずは自分の売上と経費で、個人と法人の手取りの差を確かめてください。

まとめ

  • 東京都の個人事業税には、高額な医療費の減免と、障害者がいる場合の減免がある。どちらも納期限までの申請が必要
  • 医療費の減免は、医療費が「合計所得金額×20%−25万円」を超えたとき、{医療費−合計所得金額×5%}×税率を税額から引く
  • 売上−経費600万円・医療費200万円なら8.5万円、400万円・医療費200万円なら税額5.5万円がまるごと減る
  • 障害者がいる場合は、合計所得金額370万円以下で1人5,000円(特別障害者1万円)
  • 法人事業税には同じ減免がないので、法人化するとこの制度は使えなくなる

よくある質問

個人事業税の医療費の減免は、確定申告の医療費控除を出せば自動で受けられますか?

自動では受けられません。東京都主税局は、個人事業税の納期限までに都税事務所・都税支所・支庁へ減免の申請をするよう案内しています。医療費の領収書などの支出を証する書類か、医療費の一覧表を添付します。

法人化した後、社長の医療費で法人事業税は減りますか?

減りません。この減免は個人事業税の制度で、法人事業税には同じ仕組みがありません。社長個人の医療費は所得税・住民税の医療費控除で扱います。

東京都以外でも同じ減免がありますか?

個人事業税の減免は都道府県の条例で定めます。この記事の条件と計算式は東京都主税局の案内によるもので、他の道府県では住んでいる県の県税事務所の案内を確かめる必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。