税金の基礎

東京都の省エネ促進税制は事業税の半分まで。一人会社では枠が小さい

結論

東京都の中小企業者向け省エネ促進税制は、導入推奨機器の取得価額(上限2千万円)の2分の1を事業税から減免しますが、1年の上限はその年度の事業税額の2分の1です。200万円の設備(減免の枠100万円)を入れた場合、売上1,200万円・経費200万円の個人事業主は1年目に17.8万円を引けますが、同じ条件の一人会社(役員報酬月54万円)は法人事業税が8.7万円しかなく、4.3万円にとどまります。

  • 対象は、東京都が導入推奨機器に指定した空調・LED照明・小型ボイラー・太陽光発電などで、減価償却資産に限る。ランプ交換だけ、中古、貸付用・住宅用は対象外
  • 地球温暖化対策報告書などを環境局に出していることが条件。法人は資本金1億円以下
  • 個人は令和12年12月31日まで、法人は令和13年3月30日までに終了する事業年度に取得・事業供用したものが対象。減免前の税額をいったん全額納付する

設備投資の税制は、法人のほうが有利だと思われがちです。東京都の省エネ促進税制は、その逆になる例です。個人事業税にも法人事業税にも同じ枠の減免がありますが、1年に引ける上限が「その年の事業税額の2分の1」なので、事業税が小さい一人会社では枠を使い切れません。

構造は国の研究開発税制と同じです。控除の割合ではなく、上限を決める税額の大きさで差が付きます。

取得価額の2分の1を、事業税額の2分の1まで減免

東京都主税局の案内では、制度の骨格は次のとおりです。

項目個人事業税法人事業税
対象者「地球温暖化対策報告書」等を環境局に提出した個人事業者資本金1億円以下で、同じ報告書等を提出した法人
減免額設備の取得価額(上限2千万円)の2分の1同じ
1年の限度減免を受ける年度の事業税額の2分の1当期事業税額の2分の1
減免する税取得年の所得に対して翌年度に課税される個人事業税取得事業年度の法人事業税
減免しきれない額翌年度の個人事業税から減免可翌事業年度等の法人事業税から減免可
適用期間令和12年12月31日までに取得・事業供用令和13年3月30日までに終了する各事業年度

対象設備は、東京都が導入推奨機器に指定した空調設備(エアコン、ガスヒートポンプ式冷暖房機)、照明設備(LED照明器具、LED誘導灯器具)、小型ボイラー、再生可能エネルギー設備(太陽光発電、太陽熱利用)です。減価償却資産に限られ、貸付用・住宅用・中古は除かれます。ランプ交換だけでは対象になりません。

手続きは、減免を受ける年度の事業税の納期限までに、減免申請書を都税事務所に出します。減免前の税額はいったん全額を納め、申請内容の確認後に減免が決まります。

200万円の設備で、1年目に引ける額を比べる

当サイトの計算エンジンで、200万円の対象設備(減免の枠100万円)を入れた年に引ける額を、個人事業主と一人会社で計算しました。

200万円の設備を取得した場合の、1年目の減免額

年間売上(税抜)個人事業税個人の1年目の減免最適な役員報酬法人事業税法人の1年目の減免
800万円15.5万円7.8万円月42万円0.8万円0.4万円
1,000万円25.5万円12.8万円月54万円2.0万円1.0万円
1,200万円35.5万円17.8万円月54万円8.7万円4.3万円
1,500万円50.5万円25.3万円月54万円20.9万円10.5万円
2,000万円75.5万円37.8万円月90万円22.6万円11.3万円
3,000万円125.5万円62.8万円月100万円74.7万円37.3万円

経費200万円・東京23区・40歳未満・単身・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。個人事業税は5%の業種。法人事業税は特別法人事業税を含まない。減免は「設備の取得価額の2分の1」と「その年度の事業税額の2分の1」の小さいほう。設備の取得が税額に与える影響(減価償却費の増加)は含めていない。2026年(令和8年)分の税率による概算。再計算は node scripts/shoene-sokushin-jigyozei.mjs。

売上1,200万円で、個人は17.8万円、一人会社は4.3万円です。枠は同じ100万円なのに、1年目に使える額は4分の1になります。売上1,000万円以下では、法人は1万円前後しか引けません。

なぜ一人会社の法人事業税は小さいのか

一人会社は、役員報酬を損金にして法人の利益を小さくします。手取りが最大になる役員報酬を取ると、法人に残る所得は数十万〜数百万円になり、その所得に3.5%からの法人事業税がかかるだけです。個人事業税は、事業所得から事業主控除290万円を引いた全額に5%がかかるので、税額そのものが大きくなります。

個人事業税と法人事業税の仕組みの違いは個人事業税の業種と計算方法にまとめています。

繰り越しても、一人会社は使い切りにくい

減免しきれなかった額は、個人は翌年度、法人は翌事業年度等に繰り越せます。それでも上限は毎年「事業税額の2分の1」です。

個人事業主の売上1,000万円の例では、1年目12.8万円、翌年度も同じ所得なら12.8万円で、2年で25.5万円です。100万円の枠の4分の1しか使えません。一人会社では1年1万円なので、繰り越しを重ねてもほとんど使えないことになります。

この税制が効くのは、事業税が大きい人、つまり利益を個人の事業所得として受け取っている個人事業主か、法人に利益を多く残している会社です。法人化を予定している個人事業主が省エネ設備の更新を考えているなら、個人のうちに取得して個人事業税から減免を受けるほうが、枠を多く使える計算になります。

ただし、減免の対象は「地球温暖化対策報告書」等を提出していることが前提で、機器の型式も指定されています。導入推奨機器は随時追加・取消があるため、取得の前に東京都の「省エネ促進税制対象機器」で型式を確かめる必要があります。

まとめ

  • 東京都の省エネ促進税制は、導入推奨機器の取得価額(上限2千万円)の2分の1を個人事業税・法人事業税から減免する
  • 1年の上限はその年度の事業税額の2分の1。減免しきれない額は翌年度(法人は翌事業年度等)に繰り越せる
  • 200万円の設備・売上1,200万円なら、1年目の減免は個人事業主17.8万円、一人会社4.3万円
  • 最適な役員報酬を取る一人会社は法人事業税が小さく、売上1,000万円以下では年1万円前後しか使えない
  • 対象機器・報告書の提出などの要件があり、ランプ交換だけ・中古・住宅用は対象外

よくある質問

赤字の年に設備を入れたら、減免は受けられませんか?

東京都主税局は、取得した年度に欠損や損失で事業税額がない場合は減免申請できないとしています。ただし、その年に申請できなかった額は、個人は翌年度、法人は翌事業年度等で減免申請できます。

個人事業主はいつの事業税から減免されますか?

取得年の所得に対して翌年度に課税される個人事業税から減免されます。主税局は、令和8年中に対象設備を取得し事業の用に供した場合、令和9年度の定期課税から減免対象になると案内しています。

LEDの電球を交換しただけでも対象になりますか?

なりません。照明設備でランプ交換のみの場合は導入推奨機器に指定されていないため対象外です。対象はLED照明器具・LED誘導灯器具などの指定機器で、型式番号が東京都のホームページで公表されています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。