税金の基礎

少額減価償却資産の特例は40万円未満へ。法人成りの年は300万円が月割り

結論

令和8年4月1日以後に取得して事業に使い始めた資産は、青色申告の中小企業者等なら取得価額40万円未満まで全額をその年の経費にできます(改正前は30万円未満)。年300万円の上限は据え置きで、期限は令和11年3月31日まで3年延長されました。個人事業主も法人も同じ基準です。

  • 39万円のパソコンで1年目に減る税・保険料は、事業所得800万円の個人で12.5万円、同じ所得の一人社長の法人で4.2万円
  • 法人成りの年は、個人(廃業年)と法人(1期目)の300万円がそれぞれ月割りになる。7月1日設立・12月決算なら150万円ずつ
  • 税込経理なら税抜36万3,637円以上の資産は40万円以上として扱われ、特例の対象から外れる

一度に経費にできる金額の基準は、10万円・20万円・40万円の3段階あります。このうち令和8年度改正で動いたのは40万円(旧30万円)の枠だけです。この記事では、改正で何が変わったかを確認したうえで、同じ39万円の資産でも個人事業主と一人社長の法人で1年目に減る税がどれだけ違うか、法人成りの年に300万円の上限がどう割れるかを計算しました。

10万・20万・40万円、3つの枠の違い

事業に使う資産は、原則として耐用年数にわたって少しずつ経費にします(減価償却)。その例外として、取得価額が小さい資産には次の3つの扱いがあります。

取得価額扱い青色申告の要件年間の上限償却資産税
10万円未満使い始めた年に全額を経費なしなし申告対象外
20万円未満3年で3分の1ずつ経費(一括償却資産)なしなし申告対象外
40万円未満使い始めた年に全額を経費(少額減価償却資産の特例)必要合計300万円申告対象

※ 40万円未満の枠は、令和8年3月31日までに取得した資産では30万円未満。国税庁 No.2100・No.5408、東京都主税局「固定資産税(償却資産)」より

10万円未満と20万円未満の扱いは、所得税法施行令・法人税法施行令に置かれた本則です。期限はなく、白色申告でも使えます。一方で40万円未満の枠は、租税特別措置法の期限付きの特例です(個人は28条の2、法人は67条の5)。青色申告をしていることが条件で、1年間に使える合計額に300万円の上限があります。

3つの枠は重ねて使うものではなく、資産ごとにどれか1つを選びます。15万円の資産は一括償却資産にも40万円未満の特例にも入れられますが、前者は3年に分かれ、後者は1年目に全額が落ちます。その代わり、後者は300万円の枠を使い、償却資産税の申告対象に残ります。

令和8年度改正で変わったのは3点

国税庁の「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」によると、法人の特例は次のように変わりました。財務省の大綱は、所得税(個人事業主)についても同様としています。

項目改正前改正後
取得価額の基準30万円未満40万円未満
適用期限令和8年3月31日令和11年3月31日
対象から外れる法人常時使用する従業員が500人超常時使用する従業員が400人超
年間の合計額の上限300万円300万円(据え置き)

新しい基準が使えるのは、令和8年4月1日以後に取得等をした資産です。どちらの基準が当たるかは、決算期ではなく取得等をした日で判定します。個人事業主の令和8年分なら、1〜3月に取得した資産は30万円未満、4月以降に取得した資産は40万円未満が基準になり、300万円の上限は1年分を通して数えます。

従業員数の要件が500人から400人に下がりましたが、一人社長の会社や数人規模の会社には影響しません。

経費になるのは「使い始めた年」

特例は、取得したうえで事業の用に供した資産に使えます。経費になるのは**事業に使い始めた年(事業年度)**です。12月に買って箱のまま年を越し、1月に設置したパソコンは、翌年の経費になります。年末に駆け込みで買う場合は、その年のうちに使い始めたことを説明できるようにしておく必要があります。

適用を受けるには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を付ける必要があります。法人の場合は別表十六(七)です。明細を付けずに申告すると、特例は使えません。

40万円は、税抜か税込か

40万円未満かどうかは、その事業者が使っている経理方式で計算した取得価額で判定します。国税庁 No.5403 の質疑応答は、税抜経理なら消費税を除いた額、税込経理なら消費税を含めた額が取得価額になるとしています。免税事業者は、帳簿上どう書いていても税込経理で計算します。

本体価格(税抜)税込税抜経理の判定税込経理の判定
36万円39万6,000円40万円未満(特例の対象)40万円未満(特例の対象)
36万3,637円40万円40万円未満(特例の対象)40万円以上(対象外)
39万円42万9,000円40万円未満(特例の対象)40万円以上(対象外)

税込経理の人は、税抜36万3,637円以上の資産が40万円以上として扱われ、特例から外れます。インボイス登録をしていない免税事業者は、この基準で判定することになります。経理方式の選び方は税込経理と税抜経理で何が変わるかで扱っています。

取得価額には、本体価格に加えて送料や設置費用などの付随費用も含めます。判定の単位は「通常1単位として取引される単位」で、国税庁 No.5403 は、応接セットならテーブルと椅子の1組、カーテンなら部屋ごとの合計で判定するとしています。セットで買ったものを1点ずつに分けて40万円未満にすることはできません。

同じ39万円でも、1年目に減る税は個人のほうが大きい

特例を使うと、1年目の経費が増えて税が減ります。ただし、使わなかった場合も通常の減価償却で少しずつ経費になるので、特例の効果は「前倒し」の分だけです。39万円(税抜)のパソコンを期首に買った場合で、特例を使った場合と使わなかった場合の1年目の税・保険料の差を計算しました。

事業所得(青色控除前)個人:1年目の税・保険料の差法人:1年目の税の差法人:役員報酬(月額)法人:パソコンを買わない場合の課税所得
300万円7.1万円1.1万円20万円23.9万円
400万円8.5万円0.0万円28万円14.4万円
500万円9.8万円0.0万円36万円4.9万円
600万円12.5万円1.0万円42万円23.3万円
800万円12.5万円4.2万円54万円56.7万円
1,000万円11.5万円4.2万円54万円247.6万円
1,200万円14.3万円4.5万円54万円437.5万円
1,500万円14.3万円4.5万円54万円717.2万円

※ 39万円(税抜)のパソコンを期首に取得。特例なしの1年目の償却費は個人9.75万円(定額法)、法人19.50万円(定率法)。個人は所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険、法人は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税。東京23区・40歳未満・単身・青色65万円・インボイス登録あり・合同会社。経費は別に200万円。法人の所得が0円を下回った部分は欠損金として翌期以降に繰り越す(この表の1年目には現れない)。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/shogaku-genka-shokyaku-40man.mjs)

差が開く理由は2つあります。

1つ目は、特例を使わなかった場合の1年目の償却費が違うことです。届出をしていなければ、個人は定額法、法人は定率法で償却します。耐用年数4年のパソコンなら、1年目の償却費は個人が9.75万円、法人が19.5万円です。法人はもともと1年目に多く落ちるので、特例で前倒しできる額が小さくなります。償却方法の違いは法人の減価償却は届出なしだと定率法で計算しています。

2つ目は、法人は役員報酬で所得をすでに圧縮していることです。当サイトの計算では、手取りが最大になる役員報酬を選ぶと、事業所得800万円以下の法人の課税所得は60万円を下回ります。そこに経費を足しても、減る法人税はわずかです。事業所得400万・500万円の行では、特例を使わなくても通常の償却で課税所得が0円になるため、1年目の差は0円でした。一方の個人事業主は、増えた経費がそのまま所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料の計算に効きます。

法人では、使うかどうかを選ぶ意味がある

特例は、明細を付けて申告した場合に適用されるもので、使わない選択もできます。法人の所得が小さい年に使うと、所得を超えた部分は欠損金として翌期以降に繰り越されます。青色申告なら10年間繰り越せるので無駄にはなりませんが、300万円の枠はその年のうちに使い切りです。

所得が大きく出る見込みの事業年度に購入を寄せるか、通常の償却で数年に分けるかで、税負担のかかり方が変わります。欠損金の扱いは欠損金の繰越は法人10年・個人3年にまとめています。

法人成りの年は、300万円の枠が個人と法人に分かれる

300万円の上限は、1年に満たない期間では月割りになります。

  • 個人:業務を開始した年と廃止した年は、300万円 × その年に業務を営んでいた月数 ÷ 12(租税特別措置法28条の2)
  • 法人:事業年度が1年未満なら、300万円 × その事業年度の月数 ÷ 12(国税庁 No.5408)

どちらも1か月未満の端数は1か月に切り上げます。法人成りの年は、個人事業の廃業年と法人の第1期が重なるので、両方の枠が月割りで並ぶことになります。

法人の設立日個人の営業月数(廃業年)個人の上限法人1期目の月数(12月決算)法人の上限合計
4月1日3か月75.0万円9か月225.0万円300.0万円
7月1日6か月150.0万円6か月150.0万円300.0万円
7月15日7か月175.0万円6か月150.0万円325.0万円
10月1日9か月225.0万円3か月75.0万円300.0万円

※ 個人事業は設立日の前日に廃業した前提。個人は1月1日から廃業日までの月数、法人は設立日から12月31日までの月数で、どちらも1か月未満の端数は1か月に切り上げる。当サイトで計算(scripts/shogaku-genka-shokyaku-40man.mjs limit)

月の途中で設立すると、個人と法人の両方で端数の月が1か月に切り上がるため、合計は300万円を少し超えます。ただ、枠を増やすために設立日を選ぶほどの差ではありません。気をつけるべきは、枠が半分ずつになることのほうです。7月1日設立なら、個人も法人もその年に使える枠は150万円ずつです。

法人成りの前後は、パソコンや備品をまとめて買い替える時期と重なりがちです。個人で買うか法人で買うかで、使える枠と経費になる事業体が変わります。個人の廃業年に残った一括償却資産の扱いは法人成りの年、一括償却資産と開業費の残りは全額経費で扱っています。

全額を経費にしても、償却資産税の申告には残る

特例で全額を経費にした資産は、帳簿上は残りが0円になります。しかし固定資産税(償却資産)では、この特例を使った資産は申告対象です。東京都主税局は、10万円未満で一時に経費にした資産と、20万円未満の一括償却資産を申告対象外としていますが、中小企業者等の特例を適用した資産は対象外に含めていません。

償却資産税は、同じ市区町村にある資産の課税標準額の合計が150万円未満なら課税されません。一人社長の会社ならこの範囲に収まることが多い一方で、申告そのものは必要です。免税点の考え方と申告の要否は償却資産税は150万円未満でも申告で計算しています。

まとめ

  • 令和8年4月1日以後に取得等をした資産は、青色申告の中小企業者等なら40万円未満まで使い始めた年に全額を経費にできる。年300万円の上限は据え置き、期限は令和11年3月31日
  • 40万円の判定は経理方式による。税込経理(免税事業者を含む)なら税抜36万3,637円以上の資産は対象外
  • 39万円のパソコンで1年目に減る税・保険料は、事業所得800万円の個人で12.5万円、法人で4.2万円。法人は定率法と役員報酬で、もともと1年目の所得が小さい
  • 法人成りの年は、個人(廃業年)と法人(1期目)の300万円がそれぞれ月割りになる
  • 特例を使った資産は、償却資産税の申告対象に残る

特例の効果は、あなたの所得がどこにあるかで大きく変わります。経費の見込みを入れて、個人のままと法人化した場合の手取りをシミュレーターで比べてみてください。

よくある質問

取得価額がちょうど40万円の資産も特例の対象ですか

対象になりません。基準は40万円「未満」です。税抜経理なら税抜39万9,999円まで、税込経理なら税込39万9,999円までが対象です。40万円以上の資産は耐用年数に応じて減価償却します。

白色申告でも40万円未満の特例は使えますか

使えません。この特例は青色申告をしている中小事業者・中小企業者等に限られます。10万円未満の資産を全額経費にする扱いと、20万円未満の資産を3年で均等に経費にする一括償却資産は、白色申告でも使えます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。