設立の手続き
法人の決算月の決め方。インボイス登録済みなら定石が変わる
法人の決算月は、設立月の前月が常に正解ではありません。第1期の長さで変わる均等割、消費税免税の価値、最初の申告日を計算し、インボイス登録の有無別に決め方を整理します。
法人の決算月は、3月や12月に合わせる必要はありません。定款で事業年度を定め、1年以内の範囲で会社が選べます。
よくある助言は「設立月の前月を決算月にして、第1期をできるだけ長くする」です。これはインボイス未登録で、新設法人の消費税免税を受けられる会社には大きな意味があります。しかし法人でもインボイス登録をするなら、初年度から課税事業者です。第1期を長くしても消費税は免除されません。
結論は、次の2つに分かれます。
| 設立後の状態 | 最初に検討する決算月 |
|---|---|
| インボイス未登録で消費税の免税要件を満たす | 設立月の前月。第1期を長く取る |
| インボイス登録済み、または初年度から課税 | 繁忙期・資金繰り・売上の見通しで選ぶ |
ただし「設立月の前月」でも、設立日が月初でなければ第1期は丸12か月になりません。決算月を決める前に、期間と金額を日付から確認します。
第1期は設立日から最初の決算日まで
法人税基本通達では、最初の事業年度は法人の設立の日から始まります。登記申請を準備し始めた日や、資本金を振り込んだ日からではありません。
8月20日に設立した会社を例に、決算月ごとの違いを並べます。いずれも月末を決算日とします。
| 決算日 | 第1期のおおよその長さ | 最初の申告・納付期限 | 東京23区の均等割 |
|---|---|---|---|
| 8月31日 | 12日 | 10月31日 | 5,800円 |
| 12月31日 | 4か月12日 | 翌年2月末日 | 2万3,300円 |
| 翌年3月31日 | 7か月12日 | 翌年5月31日 | 4万800円 |
| 翌年7月31日 | 11か月12日 | 翌年9月30日 | 6万4,100円 |
均等割は、暦にしたがって数えた月数に1か月未満の端数があれば切り捨てます。ただし期間全体が1か月未満なら1か月です。東京23区・資本金1,000万円以下・従業者50人以下の年7万円を前提にすると、12日だけの第1期は5,800円になります。
8月20日から翌年7月31日までは約11か月半ありますが、均等割上は11か月です。「設立月の前月決算=12か月分」と機械的に扱わないことが大切です。均等割そのものの区分は法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で整理しています。
均等割が安いのは、期間が短いからにすぎない
短期決算にすれば最初の均等割は下がります。しかし、同じ12か月を通して事業を続けるなら、次の期の均等割がすぐ始まります。年7万円という営業期間あたりの負担が値引きされるわけではありません。
しかも12日だけの第1期でも、帳簿を締め、法人税と地方税を申告します。課税事業者なら消費税申告も必要です。申告期限は事業年度終了日の翌日から原則2か月以内なので、8月設立・8月決算なら設立直後に決算が来ます。
短い第1期は「均等割を節約する方法」ではなく、決算と申告を前倒しする選択です。申告期限の実務は法人の確定申告は決算から2か月で確認できます。
設立後に決算期を動かす場合も同じで、24か月をどう区切っても均等割の合計は変わりません。そのときは法人税15%が使える年800万円の枠が月割で縮む点のほうが効きます。法人の決算期変更で均等割は減らないで計算しました。
インボイス未登録なら、第1期を長くする価値がある
新設法人の1期目と2期目には、通常、消費税の基準期間である前々事業年度がありません。資本金、特定期間、支配関係などの例外に該当せず、インボイス登録もしなければ、消費税の納税義務が免除される場合があります。
ここで重要なのは、免税期間が「2年」ではなく2事業年度だということです。
- 第1期が12日、2期目が12か月なら、2期合計は約12か月半
- 第1期が約11か月半、2期目が12か月なら、2期合計は約23か月半
同じ8月20日設立でも、最初の決算日をどこに置くかで、基準期間がない2期の合計は約11か月変わります。免税要件そのものには例外があるため、先に新設法人の「2期免税」が崩れる4つの条件を確認してください。
売上1,200万円なら、1か月で9万円ずつ動く
税抜売上が年1,200万円、経費が年200万円、その60%が課税仕入れになる事業を一定のペースで続ける前提で、原則課税の消費税を計算しました。
売上にかかる消費税 120万円
− 課税仕入れにかかる消費税 12万円
= 年間の納付相当額 108万円
月あたりでは9万円です。第1期の長さに比例させると、免税で納付不要になる額は次のようになります。
| 第1期の月数 | 売上 | 納付不要になる消費税の概算 |
|---|---|---|
| 1か月 | 100万円 | 9万円 |
| 4か月 | 400万円 | 36万円 |
| 7か月 | 700万円 | 63万円 |
| 11か月 | 1,100万円 | 99万円 |
| 12か月 | 1,200万円 | 108万円 |
1か月決算と11か月決算の差は90万円です。これに対し、東京23区の均等割の差は5万8,300円です。免税要件を満たす会社なら、均等割を短期化するより、免税になる第1期を長くする効果のほうがこの例では大きいと分かります。
ただし免税事業者が納めなかった108万円が、そのまま社長個人の手取りになるわけではありません。法人の収益に含まれ、利益が出れば法人税等の対象になります。また、売上や仕入れに軽減税率8%が含まれる事業はこの単純計算と一致しません。
インボイス登録済みなら、長期化の90万円は消える
適格請求書発行事業者として登録した法人は、登録日以後、消費税の課税事業者です。資本金1,000万円未満でも、第1期に基準期間がなくても変わりません。
先ほどの条件で法人もインボイス登録するなら、第1期が1か月でも11か月でも、その期間に対応する消費税を申告します。1か月決算と11か月決算の「免税による90万円差」は0円です。
この会社が第1期を長くする主な効果は、最初の決算・申告を遅らせられることです。一方、決算までの取引が増えるため、一度に締める帳簿の量も増えます。消費税ではなく、事業運営で決めます。
個人事業主の登録番号は法人へ引き継げません。法人成り後も取引先へインボイスを出すなら、新しい法人として登録が必要です。インボイス登録済みの法人成りと2期免税もあわせて確認してください。
登録済みの会社は3つの順で決める
1. 決算作業を繁忙期から外す
決算月の後には、売掛金・買掛金の確認、棚卸し、固定資産の集計、役員との貸借整理が続きます。単に決算月だけでなく、その後2か月も含めて本業の繁忙期と重ならないかを見ます。
たとえば12月が繁忙期なら、12月決算は年末の売上を締めながら翌年2月末までに申告する配置です。税務上12月が有利という理由がなければ、落ち着いて資料を集められる月へずらすほうが安全です。
2. 納税期限の手元資金を見る
法人税、地方税、消費税は、原則として決算日の翌日から2か月以内に申告・納付します。
| 決算月 | 原則の申告・納付月 |
|---|---|
| 3月 | 5月 |
| 6月 | 8月 |
| 9月 | 11月 |
| 12月 | 翌年2月 |
売上が大きい月ではなく、実際の入金が厚い時期を見ます。決算月に大型案件を売上計上しても、入金が3か月後なら、その前に納税期限が来ることがあります。入金サイトまで資金繰り表へ入れ、納付月に現金が残る決算月を選びます。
3. 期首3か月で役員報酬を決めやすいかを見る
定期同額給与として役員報酬を損金にするには、原則として事業年度開始から3か月以内の改定などの要件があります。決算月の翌月が期首です。
季節性のある事業なら、売上の山が終わって年間の見通しが立つ時期を期首にすると、次期の役員報酬を決めやすくなります。反対に、数字がほとんど見えない時期を期首にすると、3か月以内に1年分の報酬を決める難度が上がります。
青色申告の期限は、短期決算ほど早く来る
会社設立時の青色申告承認申請書は、設立の日から3か月を経過した日と、最初の事業年度終了日の前日のいずれか早い日までに提出します。
8月20日設立・8月31日決算なら、「設立から3か月後」まで待てません。第1期から青色申告を使うには、原則として8月30日までが期限です。設立から10日しかなく、登記後の口座や会計設定と並行して提出することになります。
第1期を短くする場合は、決算申告だけでなく青色申告の期限も圧縮されます。会社設立後に必要な届出を先に一覧化し、提出日を決めてから短期決算を選びます。
決算月を決めるチェックリスト
最後は、次の順で1つずつ確定します。
- 法人でもインボイス登録をするか
- 資本金・特定期間・支配関係を含め、消費税の免税要件を満たすか
- 設立日から候補の決算日まで、実際に何か月あるか
- 決算後2か月が本業の繁忙期と重ならないか
- その納付月に売掛金が入金済みか
- 翌期の最初の3か月で役員報酬を判断できるか
- 第1期の青色申告承認申請期限までに提出できるか
インボイス未登録で免税要件を満たすなら、まず設立月の前月を置き、他の条件に致命的な衝突がないかを確認します。登録済みなら、その定石を外し、繁忙期・入金・役員報酬の順で候補を絞ります。
まとめ
- 法人の第1期は設立日から始まり、事業年度は1年以内で決める
- 設立月の前月を決算月にしても、設立日が月初でなければ丸12か月にはならない
- 東京23区の小規模法人の均等割は月割。8月20日設立・翌年7月決算なら11か月分の6万4,100円
- インボイス未登録で免税要件を満たす会社は、第1期を長く取る価値がある
- 売上年1,200万円・経費年200万円の例では、第1期1か月と11か月で免税額が90万円違う
- インボイス登録済みなら免税差は0円。繁忙期、決算2か月後の資金、期首の見通しで決める
- 短期決算では、青色申告承認申請の期限も早く来る
決算月は、登記書類へ慣例的に書き込む項目ではありません。インボイス登録の有無を最初の分岐にし、設立日と入金日をカレンダーへ置いてから決めてください。
よくある質問
法人の決算月は何月にするのがよいですか?
インボイス未登録で新設法人の消費税免税要件を満たすなら、設立月の前月を候補にして第1期を長く取ります。登録済みなら免税効果はないため、繁忙期を避け、決算の2か月後に納税資金を用意しやすい月を優先します。
設立月の前月を決算月にすると、第1期は必ず12か月ですか?
必ずではありません。たとえば8月20日設立・7月31日決算なら第1期は約11か月です。事業年度は設立日から始まり、均等割の月数計算では1か月未満の端数を切り捨てるため、均等割も11か月分になります。
第1期を1か月にすると法人住民税の均等割も1か月分ですか?
東京23区の小規模法人を前提にすると、年7万円を月割した5,800円です。期間全体が1か月未満でも月数は1か月として扱い、100円未満を切り捨てます。ただし短期決算でも法人税等の申告作業は一式必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。