設立の手続き

会社設立を自分でやる手順。実費6万円台と期限つきの届出7つ

合同会社なら実費6万円台で設立できます。ただし登記が終わってからが本番で、5日以内・1か月以内・2か月以内と期限の違う届出が続きます。手順と、自分でやるか代行に頼むかの分かれ目を整理します。

会社設立の実費は、合同会社なら6万円台です。設立代行に払う数万円を節約できます。

ただし本番は登記が終わってからです。5日以内、1か月以内、2か月以内と、期限の違う届出が7つ続きます。ここを落とすほうが、登記でつまずくより痛手になります。

登記の前に決めることが7つある

書類作成に入る前に、次の7項目を確定させます。ここが決まれば残りは作業です。

決めること判断のポイント
商号(会社名)同一住所に同一商号があると登記できない。ローマ字も使える
本店所在地賃貸なら契約で事業利用が可能か確認する。登記情報は公開される
事業目的現在やっていない事業も入れておける。許認可が必要な業種は文言が指定される
資本金1,000万円未満にする。 理由は後述
事業年度設立月の前月末を決算月にすると1期目が最長になる
出資者・役員合同会社は「社員」。ひとりなら自分が代表社員
会社の印鑑実印(登記所届出印)は最低限必要。銀行印・角印は任意

資本金1,000万円未満にする理由

金額の設定で唯一、明確な線があるのがここです。

  • 資本金等の額が1,000万円を超えると、法人住民税の均等割が年7万円から18万円に上がる
  • 資本金が1,000万円以上だと、設立1期目から消費税の課税事業者になる

通常、新設法人は基準期間(2期前)が存在しないため、基準期間の課税売上高1,000万円という判定を受けずに設立から2期は免税事業者になれます。この特例には「事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円未満であること」という要件があります。

ひとり社長の会社で資本金を1,000万円以上にする実務上の理由は、ほとんどありません。詳しくは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円。誰がいくら払うのかをご覧ください。

事業年度の決め方

設立月の前月末を決算月にすると、1期目がおよそ12か月になります。たとえば9月設立なら8月決算です。

短くする選択肢もあります。1期目を短くすれば法人住民税の均等割が月割で減りますが、消費税の免税期間も同じだけ短くなります。 インボイス未登録で免税のメリットを取りたいなら、1期目は長いほうが有利です。繁忙期と決算作業が重ならないかも見ておいてください。

合同会社を自分で設立する手順

  1. 基本事項を決める(上の7項目)
  2. 印鑑を作る(会社実印。ネット発注で数千円から)
  3. 定款を作成する(合同会社は公証人の認証が不要
  4. 資本金を払い込む(発起人個人の口座に振り込み、通帳のコピーを取る)
  5. 登記申請書を作成し、法務局へ申請する
  6. 登記完了後、印鑑カードと登記事項証明書を取得する
  7. 各役所へ届出をする(次章)

登記申請は本店所在地を管轄する登記所(法務局)に対して行います。法務局はひとり会社について、完全オンライン申請を推奨しています。電子証明書を持っていない場合は、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請という中間的な方法も用意されています。

添付書類は合同会社設立登記申請書のほか、印鑑届書(市区町村長作成の3か月以内の印鑑証明書等を添付)などです。様式は法務局のサイトで公開されています。

登記の審査には、申請からおおむね1週間から10日かかります。この間、登記事項証明書は取れないため、法人口座の開設や取引の開始はその後になります。

株式会社は定款認証が挟まる

株式会社の場合、手順3と4の間に公証役場での定款認証が入ります。合同会社にはこの工程がありません。

認証手数料は資本金の額等で変わり、100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以上は5万円です。ただし令和6年12月1日から、資本金100万円未満で発起人が3人以下の自然人であるなど一定の要件を満たす場合、1万5,000円まで下がりました。

実費はいくらか

費目合同会社株式会社
登録免許税6万円(資本金×0.7%、最低6万円)15万円(資本金×0.7%、最低15万円)
定款認証手数料不要1万5,000円〜5万円
定款の収入印紙4万円(電子定款なら0円4万円(電子定款なら0円
印鑑作成3,000円〜3,000円〜
登記事項証明書・印鑑証明書1,000円程度1,000円程度
合計(電子定款)約6万4,000円〜約17万円〜

形態の選び方は合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円。判断が変わる4点で扱っています。

自分でやるかどうかの分かれ目は電子定款

紙で定款を作ると収入印紙4万円が必要です。PDFなどの電磁的記録で作った電子定款には印紙税がかかりません。

ただし電子定款には電子署名が必要で、マイナンバーカード・ICカードリーダー・対応ソフトウェアをそろえる手間がかかります。一度きりの設立のためにこの環境を用意するかどうかが判断の分かれ目です。

設立代行の料金が「実質無料」とうたわれることがあるのは、この印紙代4万円の差を原資にしているためです。代行手数料が3万円なら、紙で自分でやるより安くなる計算です。自分でやるほうが必ず安い、とは限りません。

登記後の届出。期限が7つ並ぶ

ここが本番です。期限の短い順に並べます。

届出提出先期限
健康保険・厚生年金保険 新規適用届年金事務所事実発生から5日以内
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設から1か月以内
個人事業の廃業届出書税務署廃業の日から1か月以内
法人設立届出書税務署設立の日から2か月以内
法人設立届出書都道府県税事務所・市区町村自治体ごとに定められた期限
青色申告の承認申請書税務署設立の日以後3か月を経過した日設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署期限なし(承認は申請月の翌月末日の翌日から)

最も落としやすいのが青色申告の承認申請書です。 期限が2つの日付の早いほうという変則的な決まり方をしていて、しかも「設立の日以後3か月を経過した日」ではなくその前日までです。

1期目を短く設定した会社は特に危険です。たとえば10月1日設立・12月31日決算なら、事業年度終了の日(12月31日)のほうが3か月を経過した日(翌年1月1日)より早いので、期限は12月30日になります。

出し忘れると1期目は白色申告です。設立初年度は赤字になりやすく、その赤字を翌期以降に繰り越せなくなります。 青色申告なら欠損金を10年間繰り越せます。

源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の場合に使えます。役員報酬から源泉徴収した所得税の納付が、毎月から年2回にまとまります。ひとり社長なら申請しない理由がほぼありません。

社会保険の手続きは法人化すると社会保険は強制加入。ひとり社長に例外はないで詳しく扱っています。

登記後3か月以内に役員報酬を決める

届出とは別に、役員報酬の決定にも期限があります。

役員報酬を損金に算入するには、原則として事業年度開始の日から3か月以内に決議し、その事業年度内は毎月同額を支給する必要があります(定期同額給与)。設立初年度なら、設立の日から3か月以内です。

この期限を過ぎてから支給を始めた場合や、途中で金額を変えた場合、損金に算入できない部分が出ます。 法人税を計算するうえで経費にならないのに、個人側では給与所得として課税されます。最も避けたいパターンです。

いくらに設定するかは役員報酬はいくらが最適か。96通り計算して分かった決め方を参考にしてください。設立してから考える時間はあまりありません。 登記の準備と並行して試算しておくことをおすすめします。

まとめ

  • 実費は合同会社で約6万4,000円から。株式会社は約17万円から。差の大半は登録免許税(6万円と15万円)と定款認証
  • 資本金は1,000万円未満にする。均等割が年7万円で済み、設立2期の消費税免税の余地も残る
  • 合同会社は定款認証が不要。手順が1工程少ない
  • 自分でやるか代行に頼むかの分かれ目は電子定款。紙だと印紙代4万円がかかるため、代行のほうが安くなることがある
  • 登記後の届出は7つ。社会保険の新規適用届は5日以内、法人設立届出書は2か月以内
  • 最も落としやすいのが青色申告の承認申請書。期限が変則的で、1期目を短くした会社ほど危ない
  • 役員報酬は設立の日から3か月以内に決議する。過ぎると損金に算入できない部分が出る

なお、ここまでは法人側の手続です。個人事業の側にも畳むための届出が5つ残っています。 期限と、出し忘れると実害が出るものは法人成りしたら、個人事業の店じまいに5つの期限があるにまとめました。

設立を自分でやった人が次に向き合うのは、毎年の決算申告です。何を作ることになるのか、税理士に頼む前提を外すと判定がどれだけ動くのかは法人の決算申告を自分でやると、分岐点は404万円手前に来るで計算しています。

登記の準備を始める前に、自分の売上と経費で最適な役員報酬を試算しておいてください。

よくある質問

設立日は自分で決められますか?

登記申請書を法務局が受け付けた日が設立日になります。窓口に持参すればその日、郵送なら到着日、オンライン申請なら送信した日です。大安に合わせたい場合や、月初にそろえたい場合は、申請日を逆算して準備してください。

自宅を本店所在地にできますか?

制度上はできます。ただし賃貸住宅の場合、契約で事業利用が禁じられていることがあります。また登記した住所は誰でも閲覧できるため、自宅の住所が公開されます。バーチャルオフィスを使う選択肢もありますが、金融機関の口座開設で不利に働くことがあります。

資本金はいくらにすればよいですか?

法律上は1円から設立できます。ただし資本金が1,000万円以上だと法人住民税の均等割が上がり、設立1期目から消費税の課税事業者にもなります。当サイトのシミュレーターは資本金1,000万円未満を前提にしています。金額は当面の運転資金と、取引先や金融機関から見た体裁の両面で決めることになります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。