設立の手続き
株式会社の決算公告は義務。官報なら年74,332円、自社サイトなら0円
会社法440条で株式会社には毎年の決算公告が義務づけられ、怠ると100万円以下の過料の対象です。合同会社にこの義務はありません。官報の実際の掲載料金と、自社サイトに載せて費用をゼロにする方法、判定への影響を数字で示します。
株式会社には、毎年の決算公告が義務づけられています。会社法440条1項で「定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない」と定められているためです。
合同会社にこの義務はありません。 440条は「株式会社は」と書かれており、持分会社である合同会社は対象外です。
官報に載せると、非大会社・非公開会社の決算公告は2枠で年74,332円かかります。ただし自社のウェブサイトに載せる方法を選べば、この費用はゼロにできます。
義務の中身は「貸借対照表の公告」
会社法440条1項が求めているのは、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告することです。大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は損益計算書も必要ですが、一人会社が大会社に当たることはまずありません。
公告方法が官報または日刊新聞紙の場合は、要旨の公告で足ります(440条2項)。全文を載せる必要はありません。
対象は株式会社です。法務省も、いわゆる決算公告を「株式会社、一般社団法人又は一般財団法人が行う貸借対照表の公告」と説明しています。合同会社は入っていません。
合同会社と株式会社のコスト差は設立時だけではないという話は合同会社と株式会社の費用にまとめました。決算公告は、その毎年かかる差のひとつです。
官報に載せると年74,332円
官報の掲載料金は全国一律で、会社等の公告は1枠あたり37,166円(普通掲載)です。ページ指定にすると49,981円になります。行単位の場合は1行3,589円です。
決算公告に必要な枠数は会社の区分で決まります。全国官報販売協同組合が公開している原稿ひな形では、非大会社で非公開会社は2枠、大会社は8枠とされています。
| 区分 | 枠数 | 掲載料金(年) |
|---|---|---|
| 非大会社・非公開会社(一人会社はここ) | 2枠 | 74,332円 |
| 大会社 | 8枠 | 297,328円 |
※ 会社等の普通掲載1枠37,166円で計算。料金は消費税込み・全国一律
一人会社の株式会社なら年74,332円です。法人住民税の均等割7万円とほぼ同額が、もうひとつ毎年の固定費として乗る計算になります。均等割の性格は法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で扱っています。
自社サイトに載せれば0円にできる
ここが実務上いちばん効く点です。公告方法が官報や日刊新聞紙のままでも、決算公告だけはウェブサイトに載せる方法を選べます。
会社法440条3項は、貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができると定めています。この措置をとった場合、1項と2項は適用されません。つまり官報に載せなくてよくなります。
法務省も、公告方法を官報または日刊新聞紙としている場合であっても決算公告のみをホームページに掲載できると明示しています。
条件は2つです。
1つ目は、掲載するウェブページのURLを登記すること(会社法911条3項26号)。登記しないとこの方法を使えません。変更登記が必要になるので、登録免許税と手続きの手間はかかります。
2つ目は、5年間載せ続けること。 決算のたびに追加するので、5年目には5期分が並びます。途中で消したりURLを変えたりすると、公告をしていないことになります。
なお、この決算公告用のページは、他の公告事項のページとリンクのない別アドレスでも構いません(会社法施行規則220条2項)。
電子公告に切り替える場合の注意
「公告方法そのものを電子公告にする」のは、上とは別の話です。こちらには2つ注意点があります。
要旨では済まなくなります。 電子公告を公告方法とする会社が決算公告をする場合、官報や日刊新聞紙と違って要旨の公告は認められず、必ず全文を公告しなければなりません(会社法440条2項の反対解釈)。
ただし決算公告に限っては、電子公告調査は不要です。 通常、電子公告で法定公告をするときは、法務大臣の登録を受けた電子公告調査機関の調査を受けなければなりません(会社法941条)。決算公告はこの調査の対象外とされています。合併公告などを電子公告でやる場合は調査費用がかかるので、そこは分けて考える必要があります。
期限は「定時株主総会の終結後遅滞なく」
条文が定める時期は日付ではありません。定時株主総会の終結後遅滞なくです(440条1項)。
一人会社では株主総会が形式的になりがちですが、決算公告の起点はこの総会です。決算日から2か月以内という法人税の申告期限とは別に、総会をいつ開いたかが基準になります。総会の開催時期そのものは定款で定めるのが通常で、多くは事業年度末から3か月以内です。
つまり実務の順番はこうなります。
- 事業年度が終わる
- 決算を組み、計算書類を作る
- 定時株主総会で計算書類を承認する
- その後遅滞なく決算公告を出す
- 決算日から2か月以内に法人税等を申告する(法人の確定申告は決算から2か月)
4と5は別の手続きです。申告さえすれば公告は要らない、という関係にはなっていません。
官報に載せる場合は申込みから掲載まで日数がかかるので、総会の日程が決まった時点で取次店に相談しておくことになります。自社サイトなら総会後にページを更新するだけです。
貸借対照表の「要旨」に何を書くか
官報や日刊新聞紙で公告する場合は要旨で足ります(440条2項)。要旨の記載事項は会社計算規則で定められており、資産・負債・純資産の部をそれぞれ主要な区分で示し、当期純損益金額を注記する形になります。
ここで気にする人が多いのが、中身が公開されることそのものです。決算公告は不特定多数に対する公告なので、貸借対照表の要旨は誰でも見られます。売上や利益の細目までは出ませんが、資産規模と純資産、当期純損益は外から分かります。
合同会社にはこの開示がありません。持分会社の計算書類は、社員や債権者の請求があったときに閲覧させる仕組みで、公告の義務はないためです。一人会社で外部に数字を出したくない場合、この差は費用以上に効くことがあります。
会社形態の選択は、設立費用・役員の任期・決算公告・信用力をまとめて見る必要があります。費用側の比較は合同会社と株式会社の費用にまとめました。
怠ると100万円以下の過料
会社法976条は、取締役などが次のいずれかに該当する場合に100万円以下の過料に処すると定めています。2号がこれに当たります。
二 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰で、前科にはなりません。また、決算公告を出していない中小企業は実際には多く、それだけで直ちに過料が科される運用にはなっていないと言われます。ただし義務であること自体は動きません。裁判所が過料を科す仕組みが法律上用意されている以上、放置を前提に会社形態を選ぶのは筋が悪い判断です。
同じ976条1号には登記を怠った場合も挙げられています。株式会社は役員の任期満了ごとに重任登記が必要で、こちらも放置すると同じ条文に当たります。役員登記の期限は役員変更登記の期限にまとめました。
判定への影響は分岐点74万円ぶん
官報で決算公告を出す前提にすると、法人化の判定はどう動くか。年74,332円を毎年の固定費として上乗せして計算しました。
| 前提 | 損益分岐となる事業所得 |
|---|---|
| 株式会社(決算公告の費用を見込まない) | 1,265万円 |
| 株式会社(官報の決算公告74,332円を上乗せ) | 1,339万円 |
| 合同会社(決算公告の義務なし) | 1,266万円 |
※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額がプラスに転じる事業所得。当サイトの判定ツールは決算公告の費用を計算に含めていません
分岐点が74万円ぶん後ろへ動きます。 年7万円台の固定費が、事業所得にして74万円ぶんの重さを持つということです。設立費用の差(合同会社10万円・株式会社25万円)が一度きりなのに対し、決算公告は毎年です。
ただしこれは官報を選んだ場合の話で、自社サイトに載せれば費用はゼロになり、分岐点は動きません。株式会社を選ぶこと自体が不利なのではなく、公告方法の選び方で年7万円が変わるという構造です。
まとめ
- 株式会社は毎年の決算公告が義務(会社法440条1項)。合同会社にこの義務はない
- 官報に載せると非大会社・非公開会社は2枠で年74,332円。法人住民税の均等割とほぼ同額の固定費になる
- 公告方法が官報のままでも、決算公告だけを自社サイトに載せて費用をゼロにできる(440条3項)。条件はURLの登記と5年間の継続掲載
- 公告方法自体を電子公告にすると要旨では済まず全文が必要になる。ただし決算公告は電子公告調査の対象外
- 怠ると100万円以下の過料の対象(976条2号)
- 官報を選ぶ前提だと、法人化の分岐点は1,265万円から1,339万円へ74万円後退する
判定ツールは決算公告の費用を含めていません。株式会社で官報を選ぶ場合は、年7万円台の固定費を別に見込んで確かめてください。
よくある質問
決算公告をしないとどうなりますか?
会社法976条2号により、公告をすることを怠ったとき、または不正の公告をしたときは100万円以下の過料の対象になります。過料は前科のつく刑罰ではなく行政上の秩序罰ですが、義務であることに変わりはありません。
合同会社にも決算公告の義務はありますか?
ありません。会社法440条は「株式会社は」と定めており、持分会社である合同会社は対象外です。法務省の説明でも、決算公告は株式会社・一般社団法人・一般財団法人が行うものとされています。
官報に載せないと違法ですか?
いいえ。公告方法が官報や日刊新聞紙であっても、決算公告だけは自社のウェブサイトに貸借対照表を載せる方法を選べます(会社法440条3項)。この場合、掲載するURLを登記する必要があります。
ウェブサイトに載せる場合、いつまで載せ続けますか?
定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までです(会社法440条3項)。5年分が並ぶことになるので、途中で消したりURLを変えたりしないよう注意が必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。