設立の手続き

法人の決算期変更で均等割は減らない。縮むのは軽減税率の枠

決算期を変えると事業年度が12か月未満になります。均等割は月割なので通算では変わりませんが、法人税15%が使える年800万円の枠も月割で縮みます。手続きと税額への影響を計算しました。

決算期の変更を「均等割の節約になる」と説明されることがあります。当サイトの計算では、東京23区・年7万円の会社が24か月を6か月+12か月+6か月で区切っても、均等割の合計は14万円で、12か月×2期のときと同額でした。

代わりに縮むものがあります。法人税15%の軽減税率が使える年800万円の枠です。この枠も事業年度の月数で按分されるため、短い期に所得が集中すると税額が増えます。所得800万円の期を6か月に区切った場合、法人税・地方法人税・法人住民税法人税割の合計は38.5万円増えました。

決算期の変更は、定款の変更と届出で完結する

法人税法上の事業年度は、定款などに定めた会計期間です。決算期を変えるということは、この定款の定めを変えることを指します。設立時に決算月をどう選ぶかは法人の決算月の決め方で扱いました。ここでは、動き出した後に変える場合を見ます。

変更したら、国と地方の両方に届出が必要です。期限の書き方が国と地方で違います。

提出先書類提出時期添付書類
所轄税務署(異動前の納税地)異動届出書異動等後速やかになし(異動事項の確認のため定款等の写しを求められる場合あり)
都税事務所(東京都の場合)異動届出書変更の日から10日以内異動事実が確認できる書類(決算期変更なら株主総会の議事録または変更後の定款等)

※ 下段は東京都都税条例の定めです。東京都以外の道府県・市町村にも同じ届出が要りますが、期限と添付書類は各自治体の条例によります。

国税庁の手続案内では、異動届出書の対象に「事業年度等の変更」が明記されています。手続の根拠は法人税法15条・20条、法人税法施行令18条です。提出時期は「異動等後速やかに」で、日数の定めはありません。

一方、東京都の異動届出書は「廃止又は変更の日から10日以内」と日数が切られています。決算期変更の場合の添付書類として、東京都は「株主総会の議事録又は変更後の定款等」を挙げています。税務署も都税事務所も求めているのは定款や議事録であって、登記事項証明書ではありません。

「みなし事業年度」は決算期変更のことではない

決算期変更を調べると「みなし事業年度」という言葉に行き当たりますが、これは別の制度です。

みなし事業年度は、解散、合併、継続といった法人税法14条が定める事実が起きたときに、定款の会計期間の途中で事業年度を区切る仕組みです。法人税基本通達も、この条文に沿って「解散の日」「合併の日」「継続の日」の判定を示しています。

決算期の変更で生じる短い期間は、これに当たりません。定款で定めた会計期間そのものが変わった結果として、変更後最初の事業年度が12か月未満になるだけです。用語を取り違えると、解散法人向けの説明を自分の会社に当てはめてしまいます。

均等割は月割なので、通算では1円も減らない

法人住民税の均等割は、事業年度が1年に満たない場合、年額を月数で按分します。東京都主税局は「(年額×事務所を有していた月数)÷12」と示し、月数は暦にしたがって計算して1月未満の端数は切り捨て、ただし期間の全部が1月未満なら1月とし、税額に100円未満の端数があれば切り捨てるとしています。

この按分は比例計算なので、区切り方を変えても通算額は動きません。24か月を4通りに区切って計算しました。

24か月の区切り方申告回数各期の均等割合計
変更しない(12か月×2期)2回70,000円 + 70,000円140,000円
6か月に短縮して変更(6+12+6)3回35,000円 + 70,000円 + 35,000円140,000円
3か月に短縮して変更(3+12+9)3回17,500円 + 70,000円 + 52,500円140,000円
決算日を月の途中にして端数が出た(5か月20日+12+6か月10日)3回29,100円 + 70,000円 + 35,000円134,100円

※ 資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下・東京23区(年額70,000円) ※ 月数は1月未満切捨て。最終行は端数の20日と10日が切り捨てられ、通算23か月分になる

上の3行は合計が同じです。変更した期の均等割は確かに下がりますが、その分だけ次の期が早く始まります。均等割が本当に減るのは、月末以外に決算日を置いて端数の日数が切り捨てられたときだけで、差は5,900円でした。

この5,900円のために申告が1回増えます。均等割の区分そのものは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円、期中に所在地が変わる場合の月数の数え方は法人の本店移転は管轄内3万円、管轄外6万円で扱っています。

縮むのは、法人税15%が使える年800万円の枠

中小法人は、所得のうち年800万円以下の部分に法人税15%の軽減税率を使えます。ここでいう800万円は法人税(国税)の軽減税率の区切りです。法人事業税の所得割にも年400万円・年800万円という区分がありますが、別の税の別の区分なので、以下の表には法人事業税を含めていません。

この800万円は年額なので、事業年度が1年に満たない法人では「800万円を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」になります。法人税基本通達16-4-1は、この金額に1,000円未満の端数があるときは切り捨てるとしています。

月数別に枠を計算し、その期の所得ごとに法人税・地方法人税・法人住民税法人税割の合計を出しました。

事業年度の月数軽減税率(15%)が使える上限所得400万円所得600万円所得800万円所得1,000万円
6か月4,000,000円70.4万円124.8万円179.2万円233.7万円
8か月5,333,000円70.4万円112.0万円166.4万円220.8万円
9か月6,000,000円70.4万円105.6万円160.0万円214.4万円
10か月6,666,000円70.4万円105.6万円153.6万円208.0万円
11か月7,333,000円70.4万円105.6万円147.1万円201.6万円
12か月(通常)8,000,000円70.4万円105.6万円140.8万円195.2万円
所得12か月との差(6か月の事業年度)
400万円+0.0万円
600万円+19.2万円
800万円+38.5万円
1,000万円+38.5万円

※ 法人税・地方法人税・法人住民税法人税割(東京23区・不均一課税適用法人の税率7.0%)の合計。法人事業税と均等割は含まない ※ 2026年(令和8年)分 基準/中小法人の軽減税率15%・超過部分23.2%

読み取れることが2つあります。

1つは、所得400万円の行だけ差がゼロだということです。6か月の枠がちょうど400万円なので、所得がそこに収まるかぎり全額が15%のままです。短い事業年度が常に不利なのではなく、所得がその期の枠を超えたときにだけ不利になります。

もう1つは、所得800万円と1,000万円で差が同じ38.5万円で止まっていることです。6か月に区切ると枠は800万円から400万円へ縮みますが、はみ出す額は最大でも縮んだ分の400万円までです。400万円に軽減税率と超過部分の差8.2ポイントを掛け、地方法人税と法人住民税法人税割を乗せた金額が上限になります。所得がさらに増えても、この論点による差はここで頭打ちです。税率の重なり方は法人税は15%では済まないで分解しています。

この論点が効くのは、法人に利益を残している会社

800万円の枠が問題になるのは、法人側に相応の課税所得が残る規模からです。当サイトの計算エンジンで、事業所得別に最適な役員報酬とそのときの手取りを出しました。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

このときの法人側の課税所得は、事業所得1,500万円で719.3万円、2,100万円で785.2万円でした。12か月なら800万円の枠にぎりぎり収まる水準が、6か月に区切ると枠400万円の倍近くになります。

事業所得800万円では法人の課税所得が58.9万円しか残らず、枠の話は起きません。決算期変更で税額が動くかどうかは、売上規模ではなく「役員報酬を払った後に法人にいくら残しているか」で決まります。計算の前提は計算の考え方にまとめています。

変更した期の翌期は、予定申告の額が変わる

短い事業年度をはさむと、その次の期の中間申告にも影響します。東京都主税局は、法人事業税・特別法人事業税の予定申告額を「前事業年度の税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6」と示しています。

前事業年度が6か月なら、月数が6になるので前期の税額がそのまま予定申告額になります。通常の12か月決算では前期税額の半分ですから、短い期の翌期は、前期に納めた地方税と同額を予定申告で納めることになります。中間申告の要否そのものは法人税の中間申告は前期の税額20万円からで整理しました。

申告期限も前倒しになります。確定申告は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内なので、決算日を早めればその分だけ申告と納付が早く来ます(法人の確定申告は決算から2か月)。

消費税にも波及します。国税庁は基準期間を「事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度」と定義し、特定期間についても「前事業年度が1年未満である場合には、特定期間が異なる場合があります」と注記しています。免税や簡易課税の適用を前提に資金繰りを組んでいる会社は、決算期を動かす前にこの判定を確認する必要があります。

まとめ

  • 決算期の変更は定款の変更と異動届出書で行い、税務署は「異動等後速やかに」、東京都は「変更の日から10日以内」と期限の定め方が違う
  • 均等割は月割なので、24か月を6+12+6で区切っても合計14万円で変わらない。減るのは端数の日数が切り捨てられた場合だけで、差は5,900円だった
  • 法人税15%が使える年800万円の枠も月割で縮む。6か月の期に所得800万円が出ると、法人税等は38.5万円増える
  • ただし所得が枠に収まる規模では差はゼロで、はみ出す額にも上限がある。効くのは法人に利益を残している会社
  • 「みなし事業年度」は解散や合併のときの仕組みで、決算期変更とは別物

決算期をいつにするかは、税額だけでなく繁忙期や資金繰りとの兼ね合いで決まります。まずは一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で法人にいくら残るのかを確かめてください。

よくある質問

決算期を変更するのに登記は必要ですか?

税務署の異動届出書には添付書類の定めがなく、異動事項の確認のため定款等の写しを求められる場合があるとされています。東京都に出す異動届出書の添付書類も、株主総会の議事録または変更後の定款等です。求められるのは定款や議事録で、登記事項証明書ではありません。

決算期を変えると均等割は安くなりますか?

変更した期の均等割は月割で下がりますが、その分だけ次の期が早く始まります。東京23区・年7万円の会社では、24か月を12か月×2期で区切っても6か月+12か月+6か月で区切っても、合計は14万円で同じです。

決算期変更で生じる短い事業年度は「みなし事業年度」ですか?

別のものです。みなし事業年度は、解散や合併など法人税法14条が定める事実が起きたときに事業年度を区切る仕組みです。決算期の変更は、定款で定めた会計期間そのものを変えた結果として短い事業年度が生じます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。