税金の基礎

法人税率は25.5%→23.2%に下がったが、法人化の分岐点は動いていない

結論

法人税の基本税率(所得800万円超の部分)は25.5%から23.9%、23.4%、23.2%と下がりましたが、法人税率以外を令和8年の制度に固定して計算すると、法人化の損益分岐となる事業所得はどの時期の税率でも1,266万円で変わりませんでした(東京23区・独身・40歳未満)。最適な役員報酬を取ると法人に残る所得が800万円以下に収まり、基本税率がかからないためです。差が出るのは事業所得3,000万円以上で、5,000万円なら年55.5万円でした。軽減税率15%が本則19%に戻る場合は、分岐点が1,435万円まで上がります。

  • 事業所得2,000万円でも、最適報酬(月90万円)を取ると法人に残る所得は748.1万円で、800万円超の部分がない
  • 法人化の判定を動かすのは基本税率ではなく、800万円以下の部分の軽減税率15%(令和9年3月31日までに開始する事業年度が期限)
  • 地方法人税と法人住民税の法人税割は法人税額に掛かるので、法人税率と連動して動く

法人税の税率が下がった、というニュースを見ると、法人化の損得も変わったように感じます。しかし一人会社の場合、下がった税率がかかる所得がそもそも少ない、という事情があります。過去の税率をいまの制度に当てはめ、損益分岐がどれだけ動くかを計算しました。

法人税率の推移

財務省「法人課税に関する基本的な資料」によると、法人税の税率は次のように変わってきました。

時期基本税率(年800万円超の部分)中小法人の軽減税率(年800万円以下の部分)
平成21年4月〜平成24年3月に終了する事業年度—18%
平成24年4月〜(平成26年度=改革前)25.5%15%
平成27年度改正23.9%15%
平成28年度改正23.4%15%
平成30年度〜(現行)23.2%15%

※ 軽減税率15%は平成24年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度の特例。令和7年4月1日以後に開始する事業年度で所得が年10億円を超える場合は17%

基本税率は6年で2.3ポイント下がりました。一方、中小法人の軽減税率は平成24年度から15%のままです。15%は租税特別措置法による特例で、本則は19%です(法人税15%はいつまでか)。

税率だけを差し替えて、損益分岐を計算する

当サイトの計算エンジンで、法人税の税率だけを各時期の値に差し替え、それ以外(地方法人税の率、法人住民税、法人事業税、個人側の所得税・住民税・社会保険料)は令和8年の制度に固定しました。地方法人税(法人税額×10.3%)と法人住民税の法人税割(東京23区7.0%)は法人税額に掛かるので、法人税率に連動して変わります。

時期基本税率軽減税率損益分岐となる事業所得事業所得1,200万円の実質差額1,500万円2,000万円3,000万円5,000万円
平成24年度〜25.5%15%1,266万円−6.6万円+23.9万円+67.3万円+181.1万円+362.9万円
平成27年度改正23.9%15%1,266万円−6.6万円+23.9万円+67.3万円+192.3万円+401.5万円
平成28年度改正23.4%15%1,266万円−6.6万円+23.9万円+67.3万円+195.8万円+413.6万円
現行23.2%15%1,266万円−6.6万円+23.9万円+67.3万円+197.2万円+418.4万円
(参考)軽減税率が19%に戻った場合23.2%19%1,435万円−21.7万円+5.3万円+42.0万円+167.2万円+388.4万円

※ 東京23区・40歳未満・独身・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。実質差額は税理士報酬の差と均等割を差し引いた3期目以降の値。平成24年4月〜平成26年3月の復興特別法人税は含めていない。表は scripts/houjinzei-ritsu-suii-bunkiten.mjs で再生成できる

基本税率が25.5%でも23.2%でも、損益分岐は1,266万円で変わりません。事業所得2,000万円までは実質差額も同じです。

なぜ基本税率の引下げが効かないのか

理由は、一人会社では法人に残る所得が800万円を超えにくいことです。最適な役員報酬を取ると、事業の利益の多くが役員報酬として個人に移り、法人には一部しか残りません。

事業所得最適役員報酬法人に残る所得(課税所得)法人税(25.5%のとき)法人税(現行23.2%)手取りの差
1,200万円月54万円437.5万円65.6万円65.6万円0円
1,500万円月54万円717.2万円107.6万円107.6万円0円
2,000万円月90万円748.1万円112.2万円112.2万円0円
3,000万円月100万円1,546.7万円310.4万円293.2万円+16.1万円
5,000万円月100万円3,371.7万円775.8万円716.6万円+55.5万円

※ 当サイトの探索は役員報酬 月100万円までのため、事業所得3,000万円以上では報酬が上限に張り付き、法人に残る所得が大きくなっている

事業所得2,000万円でも法人に残る所得は748.1万円で、すべて軽減税率15%の範囲に入ります。基本税率がかかる「800万円を超える部分」がないので、その税率が何%でも税額は同じです。国税庁の統計でも、黒字の中小法人の6割強はこの範囲に収まっています(黒字の中小法人の所得の分布)。

裏返すと、一人会社の判定を左右するのは軽減税率の水準です。15%が本則の19%に戻ると、損益分岐は1,266万円から1,435万円へ169万円上がります。

法人化の判断への読み方

税制改正のニュースで「法人税率の引下げ」が出ても、事業所得2,000万円程度までの一人会社には影響がないと考えてよい、というのがこの計算の結論です。注目すべきは、令和9年3月31日に期限を迎える軽減税率15%の扱いです(令和9年度税制改正の要望と大綱)。

法人に残る所得にかかる税の全体像は法人税は15%では済まない|利益別の実効税率で計算しています。自分の売上と経費で、現行の税率での損益分岐を確かめてください。

まとめ

  • 法人税の基本税率は平成24年度25.5%から平成30年度23.2%へ、2.3ポイント下がった
  • 税率だけを差し替えても、損益分岐となる事業所得はどの時期も1,266万円で変わらない
  • 一人会社は最適な役員報酬で法人に残る所得が800万円以下に収まり、基本税率がかからないため
  • 差が出るのは事業所得3,000万円以上で、5,000万円なら年55.5万円
  • 判定を動かすのは軽減税率。15%が19%に戻ると分岐点は1,435万円に上がる

よくある質問

法人税率はいつ23.2%になりましたか。

財務省の資料では、基本税率は平成26年度(改革前)25.5%、平成27年度改正で23.9%、平成28年度改正で23.4%、平成30年度から23.2%です。資本金1億円以下の中小法人でも、年800万円を超える部分には23.2%がかかります。

中小法人の軽減税率15%はいつからですか。

財務省の資料では、年800万円以下の部分の税率は平成21年4月1日から平成24年3月31日までに終了する事業年度が18%、平成24年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度が15%です。

法人税率が下がれば、法人化したほうが得になる人は増えますか。

基本税率の引下げでは、ほとんど増えません。一人会社は役員報酬で所得を移すため法人に残る所得が800万円以下になりやすく、基本税率がかかる部分がないからです。判定を動かすのは軽減税率の水準です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。