税金の基礎

決算賞与を未払いで今期の損金にする3要件。役員には使えない

決算月に利益が出たとき、従業員への決算賞与は支払いが翌期でも今期の損金にできます。各人別通知・1か月以内の支払・損金経理の3要件と、賞与にかかる社会保険料が今期の損金にならない理由、役員に同じ手が使えない理由を計算つきで整理します。

3月決算の会社で、3月末に予想外の利益が出た。従業員に決算賞与を出したいが、資金は4月の入金を待ちたい。このとき、支払いが翌期になっても今期の損金にできる取扱いがあります。

ただし条件は3つあり、1つでも欠けると全額が翌期送りになります。しかも同じことを社長自身に対してはできません。役員給与は別の条文で縛られているからです。

決算間際に使える手と使えない手を、要件と金額の両面から分けます。

使用人賞与が損金になる時期は3つに分かれる

国税庁のタックスアンサーNo.5350は、使用人に支給する賞与の損金算入時期を3つの区分に分けています。どの区分に当たるかで、経費になる事業年度が変わります。

区分内容損金になる事業年度
1労働協約または就業規則で定められた支給予定日が到来している賞与(支給額を通知し、支給予定日または通知日の属する事業年度に損金経理したものに限る)支給予定日と通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
2下記の3要件をすべて満たす賞与支給額の通知をした日の属する事業年度
31と2以外の賞与支払をした日の属する事業年度

決算賞与の未払計上が問題になるのは、区分2です。要件は次の3つで、すべてを満たす必要があります

  1. その支給額を、各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
  2. 通知した金額を、通知したすべての使用人に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
  3. その支給額につき、通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

3月決算なら、支払期限は4月30日です。この日を1日でも過ぎると要件2を満たさず、区分3に落ちて翌期の損金になります。

なお区分1は、賞与規程で支給予定日が決まっている定例賞与を想定した区分です。支給予定日をあらかじめ定めていない決算賞与は区分1に当たらないため、区分2の3要件を満たすかどうかで判定します。

通知でつまずく2つの型

3要件のうち、実務で崩れやすいのは要件1の「通知」です。国税庁は通達で2つの論点を示しています。

「支給日に在職する人だけ」と決めていると、通知に該当しない

法人税基本通達9-2-43は、法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合、その支給額の通知は要件1の通知に該当しないとしています。

理由は債務の確定にあります。支給日の在職を条件にすると、通知の時点では誰にいくら払うかが確定していません。決算日時点で金額が確定していない以上、その事業年度の債務として損金にはできないという整理です。

賞与規程や決算賞与の通知書に在職要件を入れているかどうかは、決算前に確認しておく論点です。

パートタイマーを分けている場合は、区分ごとに判定できる

通達9-2-44は、パートタイマーや臨時雇い等の身分で雇用している者と、その他の使用人とを区分して賞与を支給している法人は、その区分ごとに通知を行ったかどうかを判定できるとしています。

ただし、雇用関係が継続的で他の使用人と同様に賞与の支給対象としているパートタイマーは、この区分から除かれます。名目上パートでも、正社員と同じように毎回賞与を出しているなら、同じグループとして扱うことになります。

要件2も見落とされがちです。通知した金額を「通知したすべての使用人」に払う必要があるため、1人でも支払いが漏れたり減額したりすると、その事業年度の損金算入が成り立ちません。

決算賞与で減る税金は、利益の水準で1.4倍変わる

では、決算賞与を今期の損金にできると税額はいくら変わるのか。当サイトの計算エンジンで、賞与を出す前の税引前利益ごとに法人税等を計算しました。賞与の額は100万円としています。

決算賞与100万円を損金にできた場合の法人税等(東京都・資本金1,000万円以下)

賞与を出す前の税引前利益賞与なしの法人税等賞与ありの法人税等減る税額賞与額に対する割合
300万円71.0万円49.7万円21.4万円21.4%
500万円115.2万円92.4万円22.8万円22.8%
700万円161.6万円138.4万円23.2万円23.2%
800万円184.8万円161.6万円23.2万円23.2%
900万円213.3万円184.8万円28.6万円28.6%
1,000万円246.9万円213.3万円33.6万円33.6%
1,200万円314.1万円280.5万円33.6万円33.6%
1,500万円414.8万円381.3万円33.5万円33.6%

※ 法人税・地方法人税・法人住民税(均等割7万円を含む)・法人事業税・特別法人事業税の合計。東京都の税率で計算しています

同じ100万円の賞与でも、税引前利益800万円のときは23.2万円しか税金が減らないのに、1,000万円なら33.6万円減ります。差は1.4倍です。

理由は2つあります。1つは法人税の軽減税率で、資本金1億円以下の法人は課税所得のうち年800万円以下の部分に15%、超える部分に23.2%がかかります。もう1つは法人事業税で、所得を年400万円以下・400万円超800万円以下・800万円超の3つに区分し、区分が上がるほど税率も上がります。利益が低い会社ほど、賞与1円あたりの節税効果は小さくなります。

表の800万円と900万円の間で割合が動いているのは、法人事業税と特別法人事業税を差し引いた後の金額が課税所得になるためです。税引前利益が900万円でも、課税所得は800万円台の前半まで下がります。計算の前提は計算ロジックの説明にまとめています。

賞与にかかる社会保険料は、今期の損金にならない

見落とされやすいのがここです。法人税基本通達9-3-2は、健康保険料・厚生年金保険料のうち会社が負担すべき部分の金額を、その保険料の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金にできるとしています。

賞与にかかる保険料は、賞与を支払った月の分として計算されます。日本年金機構も、賞与にかかる保険料は賞与支払月の翌月の納入告知書で通知されるとしています。つまり4月に決算賞与を払うなら、その保険料の計算対象月は4月であり、会社負担分は翌期の損金です。

東京都の会社(40歳未満の従業員)で賞与100万円を払う場合、会社負担分は次のとおりです。

  • 健康保険料率9.85% + 子ども・子育て支援金率0.23% + 厚生年金保険料率18.3%
  • このうち会社負担は労使折半分で、合計14.19%
  • 標準賞与額100万円に対し141,900円(従業員負担分を合わせると283,800円)

今期に落とせるのは賞与本体の100万円だけで、141,900円は翌期に回ります。従業員が40歳から64歳なら介護保険料率1.62%が加わり、会社負担分は15.00%・150,000円になります。

なお標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円です。2つの制度で単位も金額も違うので、混同しないよう注意してください。賞与を支払ったら、支給日から5日以内に被保険者賞与支払届の提出が必要です。

源泉所得税も同じく支払時に発生します。未払計上と源泉徴収の時期のずれについては、役員報酬を未払いにしたときの扱いで整理しています。

役員に決算賞与は使えない

ここまでは使用人の賞与の話です。社長自身に同じことはできません。

法人税法上、役員に対して支給する給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当しないと損金になりません(No.5211)。決算間際に決めた賞与は、このどれにも当たりません。

事前確定届出給与として損金にするには、原則として次のいずれか早い日までに届出書を提出している必要があります。

  • 株主総会等の決議によりその定めをした日(決議日が職務執行開始日より後の場合は開始日)から1か月を経過する日
  • その会計期間開始の日から4か月を経過する日

3月決算の会社なら、遅くとも7月末までに「いつ、いくら払うか」を決めて届け出ておく計算です。決算を締めてから利益に応じて金額を決める、という使い方はできません。届出をした場合の社会保険料の動きは事前確定届出給与で社会保険料は下がるかで計算しています。

定期同額給与の側も同様です。改定できるのは原則として会計期間開始の日から3か月を経過する日までで、それ以降は臨時改定事由または業績悪化改定事由が必要です。No.5211は、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは業績悪化改定事由に含まれないとしています。

例外は使用人兼務役員に支給する使用人としての職務に対する賞与ですが、こちらにも制限があります。通達9-2-26は、使用人分の賞与を他の使用人への支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払った場合、「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に該当するとしています。この場合は過大な役員給与として損金になりません。

そもそも代表権を持つ役員は使用人兼務役員になれず(通達9-2-3)、同族会社の役員のうち一定の株主に当たる者も除かれます(通達9-2-7)。一人会社の社長や、株式を持つ家族役員は、この入口で外れることが多い区分です。家族への給与がどこから役員扱いになるかはみなし役員の3条件にまとめています。

一人社長が役員報酬で同じことをすると、手取りは減る

役員賞与が使えないなら、期首に役員報酬を高めに設定して利益を圧縮しておけばよい、という発想が出てきます。実際にどうなるかを計算しました。

売上1,800万円・経費600万円(事業所得1,200万円)の場合

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円738.7万円102.8万円635.9万円33.4万円
月20万円759.0万円196.3万円562.7万円68.1万円
月30万円773.7万円289.1万円484.6万円102.2万円
月40万円777.8万円378.8万円399.0万円139.6万円
月50万円784.2万円468.6万円315.6万円170.3万円
月54万円 ←最適787.6万円504.8万円282.9万円180.5万円
月60万円779.4万円547.8万円231.6万円200.9万円
月70万円772.6万円625.4万円147.2万円228.6万円
月80万円773.5万円704.8万円68.7万円238.3万円
月90万円770.0万円784.4万円-14.4万円249.2万円
月100万円719.7万円860.2万円-140.4万円261.3万円

個人事業主のままの手取りは 774.2万円。最適な役員報酬は月54万円で、そのときの手取り合計は 789.0万円。

※ 経費600万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

読み取れるのは、利益を役員報酬へ振り替えても手取りは増えないことです。月54万円から月80万円へ上げると、年間の報酬は312万円増えて法人に残る額は284.3万円から70.5万円へ減ります。法人の課税所得はたしかに圧縮されます。ところが社会保険料が180.5万円から238.3万円へ57.8万円増えるため、手取り合計は789.0万円から775.2万円へ13.8万円下がります

決算賞与が「利益が出た年だけ後から乗せられる」のに対し、役員報酬は期首に決めた額が1年間そのまま結果を決めます。しかも報酬を増やす方向の調整は、社会保険料の増加とぶつかります。従業員のいない会社では、決算間際に打てる手が構造的に少ないということです。

役員報酬の水準そのものをどう決めるかは最適な役員報酬はいくらかに、従業員を雇ったときに増える固定費は初めて従業員を雇う費用にまとめています。数字は会社の売上・経費・自治体で動くので、判定ツールに自分の条件を入れて確かめてください。

まとめ

  • 使用人賞与の損金算入時期は3区分。決算賞与の未払計上は、各人別かつ全員への通知・事業年度終了の日の翌日から1か月以内の支払・通知した事業年度の損金経理という3要件をすべて満たす場合に限られます
  • 支給日に在職する使用人のみに支給する定めがあると、その通知は要件を満たす通知に該当しません(通達9-2-43)
  • 賞与100万円で減る法人税等は、税引前利益800万円で23.2万円、1,000万円で33.6万円。利益の水準で1.4倍変わります
  • 賞与にかかる社会保険料の会社負担分(東京都・40歳未満で14.19%)は、賞与を支払った月が属する事業年度の損金です。翌期に払えば税効果も翌期になります
  • 役員に対する賞与は事前確定届出給与の届出が前提で、届出期限は会計期間開始の日から4か月を経過する日などのうち早い日。決算後に金額を決める使い方はできません

よくある質問

決算賞与は決算日までに支払わないと今期の損金になりませんか?

3つの要件をすべて満たせば、支払いが翌期でも通知した事業年度の損金になります。要件は、各人別かつ同時期に支給を受けるすべての使用人へ支給額を通知すること、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払うこと、通知した事業年度に損金経理することです。

就業規則に「支給日に在職する者に支給する」と書いてある場合はどうなりますか?

法人税基本通達9-2-43は、支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合の通知は、未払計上の要件でいう「通知」に該当しないとしています。この場合は原則として支払った日の属する事業年度の損金になります。

社長にも決算賞与を出して今期の損金にできますか?

役員に対する給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当しないと損金になりません。事前確定届出給与の届出期限は原則として会計期間開始の日から4か月を経過する日などのうち早い日なので、決算間際に決めた役員賞与は届出期限を過ぎています。

決算賞与にかかる社会保険料の会社負担分も今期の損金になりますか?

法人税基本通達9-3-2は、健康保険料・厚生年金保険料のうち会社が負担すべき部分を、保険料の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金にできるとしています。賞与の保険料は賞与を支払った月の分なので、支払いが翌期なら会社負担分も翌期の損金になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。