税金の基礎

美術品は100万円未満なら減価償却できる?事務所の絵画の扱い

結論

平成27年1月1日以後に取得した美術品等は、1点100万円未満なら原則として減価償却資産で、絵画なら器具及び備品の室内装飾品「その他のもの」として耐用年数8年で償却します。1点100万円以上は原則として償却できません。線は個人事業主も法人も同じで、青色申告の中小企業者等なら40万円未満の絵画は少額減価償却資産の特例でその年に全額を経費にできます。

  • 100万円未満でも、古美術品のように価値が減らないことが明らかなものは償却できない。100万円以上でも、ロビー据付けで転用できないものなどは償却できる
  • 額縁や運賃・据付費も取得価額に含めて1点100万円・40万円の線を判定する(国税庁FAQ Q8)
  • 事業所得800万円の例で1年目に減る税・保険料は、30万円の絵画で個人12.8万円・法人6.4万円、150万円の絵画は0円

事務所や店舗に飾る絵画は、価格によって扱いがはっきり分かれます。1点100万円未満なら備品として毎年経費にでき、100万円以上なら原則として土地と同じく経費になりません。この記事では、通達と国税庁FAQで線引きの例外まで確認したうえで、耐用年数8年の償却額と、30万・80万・150万円の絵画で1年目に減る税が個人と法人でどれだけ違うかを計算しました。

1点100万円が「償却できる・できない」の境目

減価償却資産から除かれるものとして、法人税法施行令13条と所得税法施行令6条は「時の経過によりその価値の減少しないもの」を挙げています。美術品がこれに当たるかを具体的に決めているのが、法人税基本通達7-1-1と所得税基本通達2-14です。2つの通達は同じ内容で、個人事業主も法人も同じ線で判定します。

区分原則例外
古美術品・古文書・出土品・遺物など償却できない—
上記以外で1点100万円未満減価償却資産価値が減らないことが明らかなものは償却できない
上記以外で1点100万円以上償却できない価値が減ることが明らかなものは償却できる

※ 法人税基本通達7-1-1、所得税基本通達2-14、国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」より

国税庁FAQでは、美術品等には絵画や彫刻のほか工芸品なども含むとしています。この取扱いは平成27年1月1日以後に取得したものに適用されます。

以前は「20万円」「年鑑」の基準だった

改正前は、美術年鑑などに載っている作家の作品か、1点20万円(絵画は号当たり2万円)以上かで判定していました。年鑑ごとに掲載基準がばらばらで、20万円は低すぎるという指摘を受けて、平成26年12月の通達改正で100万円の線に変わったとFAQは説明しています。

今でも「有名作家の絵は経費にできない」という話を見かけるのは、この旧基準の名残です。現行の通達には作家名の基準はありません。判定するのは1点の取得価額と、価値が時の経過で減るかどうかです。

100万円以上でも償却できる例外

100万円以上でも償却できる例として、FAQは次の3つを全て満たすものを挙げています。

  • 会館のロビーや葬祭場のホールのような、不特定多数が利用する場所の装飾用・展示用(有料公開を除く)
  • 移設が難しく、その用途にしか使わないことが明らかなもの
  • 他の用途に転用すると仮定した場合に、設置状況や使用状況から美術品等としての市場価値が見込まれないもの

壁に作り付けたレリーフや大型のモザイク画のようなものが想定されています。事務所の壁に掛けてある額装の絵画は、外して売れば値が付くので、通常この例外には当たりません。

逆に100万円未満でも、古美術品のように価値が減らないことが明らかなものは償却できません。オークションで値上がりを見込んで買った作品は、金額だけで判断せずに説明できる根拠を残しておく必要があります。

償却できる絵画の耐用年数は8年

減価償却資産に当たる美術品等の耐用年数は、構造や材質で決まります。FAQ Q7は、室内装飾品に当たる場合の例として次を示しています。

区分(器具及び備品・室内装飾品)例耐用年数
主として金属製のもの金属製の彫刻15年
その他のもの絵画・陶磁器・金属製以外の彫刻8年

※ 国税庁 FAQ Q7、耐用年数省令 別表第一

額縁も運賃も取得価額に含める

FAQ Q8は、額縁は一般に絵画の一部として取得価額に含まれるとしています。購入代価に加えて、引取運賃・運送保険料・購入手数料・据付費なども取得価額に入ります。98万円の絵画に5万円の額縁を付ければ、1点103万円で100万円以上の側に入ります。100万円や40万円の線の近くでは、付随費用まで足して判定することが大切です。

個人は定額法、法人は定率法で1年目の額が倍違う

償却方法を届け出ていなければ、器具及び備品は個人が定額法、法人が定率法で償却します。同じ絵画でも、1年目に落ちる額は法人が個人の2倍です。

取得価額50万円の絵画

年個人(定額法)法人(定率法)
1年目62,500円125,000円
2年目62,500円93,750円
3年目62,500円70,312円
4年目62,500円52,734円
5年目62,500円39,551円
6年目62,500円39,630円
7年目62,500円39,630円
8年目62,499円39,392円
合計499,999円499,999円

取得価額90万円の絵画

年個人(定額法)法人(定率法)
1年目112,500円225,000円
2年目112,500円168,750円
3年目112,500円126,562円
4年目112,500円94,922円
5年目112,500円71,191円
6年目112,500円71,334円
7年目112,500円71,334円
8年目112,499円70,906円
合計899,999円899,999円

※ 耐用年数8年。定額法の償却率0.125、定率法の償却率0.250・改定償却率0.334・保証率0.07909(耐用年数省令 別表第八・第十)。期首に取得し12か月使用、残存簿価1円まで。当サイトで計算(scripts/bijutsuhin-genka-shokyaku.mjs)

定率法の6年目から金額が均等になるのは、償却額が償却保証額を下回った時点で改定償却率に切り替わるためです。8年間の合計はどちらも同じで、違うのは経費になる時期だけです。届出の有無で償却方法がどう決まるかは法人の減価償却は届出なしだと定率法にまとめています。

期の途中で買った場合は、その年の償却額が使った月数で按分されます。国税庁FAQ Q3も、事業年度の中途で取得した美術品等は月数按分になるとしています。

40万円未満なら、その年に全額を経費にできる

美術品等も減価償却資産である以上、少額の資産を一度に経費にする3つの枠が使えます。

1点の取得価額扱い要件
10万円未満使い始めた年に全額を経費なし
20万円未満3年で3分の1ずつ経費(一括償却資産)なし
40万円未満使い始めた年に全額を経費(少額減価償却資産の特例)青色申告の中小企業者等・年合計300万円まで
40万円以上100万円未満8年で償却—
100万円以上原則として償却しない—

※ 40万円未満の枠は令和8年4月1日以後に取得等をした資産が対象(それ以前は30万円未満)。適用期限は令和11年3月31日。国税庁 No.5408 ほか

国税庁FAQのQ4も、美術品等に中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使えることを前提にしています。40万円の枠への引上げと、税込経理だと税抜36万3,637円以上で外れる点は少額減価償却資産の特例は40万円未満へで詳しく計算しています。

絵画を複数まとめて買っても、判定は1点ごとです。ただし額縁は絵画と一体で数えるので、額縁代を分けて40万円未満に収めることはできません。

30万・80万・150万円の絵画で、1年目に減る税

金額によって扱いが3段に分かれるので、1年目に減る税もはっきり差が出ます。事務所に期首から飾った場合で、絵画を買わなかった場合との差を計算エンジンで出しました。

事業所得(青色控除前)800万円/法人の役員報酬 月54万円

絵画の取得価額個人:1年目の経費個人:1年目に減る税・保険料法人:1年目の損金法人:1年目に減る税
30万円(少額特例で全額)30.0万円12.8万円30.0万円6.4万円
80万円(8年で償却)10.0万円4.3万円20.0万円4.3万円
150万円(非減価償却資産)0.0万円0.0万円0.0万円0.0万円

事業所得(青色控除前)500万円/法人の役員報酬 月36万円

絵画の取得価額個人:1年目の経費個人:1年目に減る税・保険料法人:1年目の損金法人:1年目に減る税
30万円(少額特例で全額)30.0万円10.1万円30.0万円1.1万円
80万円(8年で償却)10.0万円3.4万円20.0万円1.1万円
150万円(非減価償却資産)0.0万円0.0万円0.0万円0.0万円

事業所得(青色控除前)1,200万円/法人の役員報酬 月54万円

絵画の取得価額個人:1年目の経費個人:1年目に減る税・保険料法人:1年目の損金法人:1年目に減る税
30万円(少額特例で全額)30.0万円14.6万円30.0万円6.9万円
80万円(8年で償却)10.0万円4.9万円20.0万円4.6万円
150万円(非減価償却資産)0.0万円0.0万円0.0万円0.0万円

※ 期首に取得して事務所に12か月展示。個人は定額法、法人は定率法(耐用年数8年)。30万円は中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用。個人は所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険、法人は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税。東京23区・40歳未満・単身・青色65万円・インボイス登録あり・合同会社。経費は別に200万円。法人の役員報酬は絵画を買わない場合に手取りが最大になる額で固定。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/bijutsuhin-genka-shokyaku.mjs tax)

読み取れることは3つあります。

1つ目は、150万円の絵画は何年飾っても税が減らないことです。非減価償却資産は売却するまで帳簿に取得価額のまま残ります。100万円を少し超える作品を選ぶと、それより安い作品より税の面では不利になります。

2つ目は、同じ80万円でも1年目の経費は法人が個人の2倍になることです。定率法の効果で、事業所得800万円の例では個人と法人の減る税が4.3万円で並びました。

3つ目は、法人は役員報酬で所得をすでに圧縮しているため、同じ30万円を経費にしても減る税が個人より小さいことです。事業所得500万円の例では、法人の課税所得がもともと小さく、30万円でも80万円でも減る税は1.1万円にとどまりました。個人は増えた経費が国民健康保険料や個人事業税にも効くので、減り方が大きくなります。

いずれも「税が減る」のは、絵画を買うためのお金を払ったうえでの話です。30万円を払って減る税は最大でも十数万円で、手元の現金は必ず減ります。

社長の自宅に飾る絵画は経費にならない

法人税法施行令13条は、減価償却資産から「事業の用に供していないもの」を除いています。個人事業主の減価償却費も、業務に使っている資産が対象です。自宅のリビングに飾る絵画は、会社名義で買っても償却できません。

会社が買って社長の自宅に置いた場合は、会社の資産として償却できないだけでは済まない可能性があります。役員が私的に使う資産を会社が負担すれば、役員への経済的利益(給与)として扱われ得るからです。同じ構造の論点はスーツ代は経費になる?でも扱っています。

一方で、事務所のエントランス・会議室・役員室に飾る絵画は、通常、事業の用に供していると考えられるとFAQ Q9は説明しています。展示を休んで倉庫に保管していても、必要な維持管理をしていつでも展示できる状態なら、事業の用に供していることになります。自宅兼事務所の場合は、来客が出入りする事業スペースに飾っているかを説明できるようにしておくと判定しやすくなります。

償却資産税の申告も忘れない

8年で償却する絵画や、少額減価償却資産の特例で全額を経費にした絵画は、固定資産税(償却資産)の申告対象です。10万円未満で全額を経費にしたものと、20万円未満の一括償却資産は対象外です。免税点の考え方は償却資産税は150万円未満でも申告で計算しています。

まとめ

  • 平成27年1月1日以後に取得した美術品等は、1点100万円未満なら原則として減価償却資産、100万円以上なら原則として償却できない。個人も法人も同じ線
  • 絵画・陶磁器は室内装飾品「その他のもの」で耐用年数8年。額縁・運賃・据付費も取得価額に含めて判定する
  • 40万円未満なら、青色申告の中小企業者等は少額減価償却資産の特例でその年に全額を経費にできる
  • 事業所得800万円の例で1年目に減る税・保険料は、30万円の絵画で個人12.8万円・法人6.4万円、150万円の絵画は0円
  • 自宅に飾る絵画は事業の用に供していないので償却できない

絵画1枚で変わる税は、あなたの所得の水準と、個人か法人かで大きく変わります。経費の見込みを入れて、個人のままと法人化した場合の手取りをシミュレーターで比べてみてください。

よくある質問

100万円ちょうどの絵画は減価償却できますか

原則としてできません。通達の基準は「1点100万円未満」が減価償却資産、「1点100万円以上」が原則として非減価償却資産です。100万円ちょうどは後者に入ります。額縁や運賃も取得価額に含めて判定します。

平成26年以前に買った絵画も100万円基準で判定し直せますか

国税庁FAQによれば、法人の場合、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度で再判定した美術品等に限り、その年度から償却できました。その年度に再判定しなかったものは従前の取扱いのままで、後から償却を始めることはできません。

社長の自宅に飾る絵画を会社で買うと経費になりますか

減価償却資産は事業の用に供しているものに限られるため、自宅に飾る絵画は会社の資産として償却できません。役員の私的な利用とみなされれば、役員への経済的利益として扱われる可能性もあります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。