税金の基礎
ホームページ制作費は経費か、ソフトウェア5年か。分かれ目は中身
結論
会社案内や商品紹介のように内容を更新しながら使うホームページは、実務上は広告宣伝費として支出した年の経費にする扱いが一般的です。予約・決済・会員管理などプログラムとして機能する部分は、ソフトウェア(耐用年数5年・定額法)として償却します。100万円の場合、1年目の税・保険料の差は個人事業主で約19万〜39万円ですが、5年間の合計ではほぼ同じになります。
- ソフトウェアの耐用年数は、複写して販売する原本と研究開発用が3年、それ以外が5年(国税庁 No.5461)
- 公開後の修正は、障害の除去や現状維持なら修繕費、新機能の追加や機能向上なら資本的支出(法人税基本通達7-8-6の2)
- 事業所得500万円以下の一人社長の法人では、役員報酬で所得が圧縮されているため、1年目の法人税の差は0〜1万円にとどまる
ホームページ制作費には、国税庁のタックスアンサーで「ホームページ」を名指しした項目がありません。そのため判断は、ソフトウェアの規定と、支出の効果が1年以上に及ぶかどうかという一般的な枠組みに当てはめて行います。この記事では判断軸を3つに整理したうえで、100万円の制作費を一時の経費にした場合と5年で償却した場合の差を、当サイトの計算エンジンで個人事業主と法人に分けて計算しました。
判断軸は「中身」「効果の期間」「金額」の3つ
ホームページ制作費の扱いは、支払った総額ではなく何に払ったかで分かれます。整理すると次の3つです。
| 判断軸 | 一時の経費に寄る | 資産計上に寄る |
|---|---|---|
| 中身 | デザイン、文章、写真、ページの作成 | 予約・決済・会員管理・検索などのプログラム |
| 効果の期間 | 内容を随時更新しながら使う | 更新しないまま1年を超えて使う |
| 金額(資産になる部分) | 10万円未満、または少額の特例の範囲 | 特例の枠を超える |
1つ目の「中身」が最も大きな分かれ目です。国税庁 No.5461 は、ソフトウェアを減価償却資産(無形固定資産)として扱い、取得価額と耐用年数を定めています。ホームページの中でも、利用者の入力を受けて処理を行う仕組みはプログラムであり、ソフトウェアに当たり得ます。
一方、会社案内や商品紹介のページは、広告の原稿に近い性質です。国税庁職員が編集に関わる実務書『減価償却実務問答集』は、こうしたホームページの制作費を、内容が頻繁に更新されるため支出の効果が1年以上に及ばないとして、原則は支出時の損金とする解説を載せています。ただしこれは通達ではなく、更新しないまま1年を超えて使う場合は前提が崩れる点も同書は指摘しています。
社歌やCMソングは通達で即時損金が明記されている
参考になるのが、法人税基本通達7-1-10です。社歌やコマーシャルソングの制作費は、支出した事業年度の損金にできると明記されています。長く使うものでも、広告宣伝の性質が強い制作物は一時の損金とする考え方が通達の中にもあります。ホームページの「広告」部分の扱いは、この考え方と整合します。
プログラム部分はソフトウェア、耐用年数は5年
資産になる部分の耐用年数は、国税庁 No.5461 で次のとおりです。
| ソフトウェアの区分 | 耐用年数 |
|---|---|
| 複写して販売するための原本 | 3年 |
| 研究開発用のもの | 3年 |
| その他のもの | 5年 |
自社の予約システムやネットショップの機能は「その他のもの」に当たるため、5年です。無形固定資産なので償却方法は定額法で、1年目の償却費は取得価額の5分の1です。年の途中に公開した場合は、使い始めた月からの月割りになります。
取得価額には、制作会社に払った代金に加えて、事業に使うために直接かかった設定費用なども含めます(No.5461)。外注せずに自社で作った場合は、材料費・人件費・経費の合計が取得価額です。
見積書を「一式」で受け取らない
1つの見積書にデザインとシステム開発が混在していると、どこまでが資産かを後から説明しにくくなります。発注の段階で、ページ制作・原稿作成と、プログラム開発・CMS構築を分けた内訳をもらっておくと、区分の根拠が残ります。法人の創立費・開業費の記事でも触れたとおり、一式のまま経理するのが最も後で困るパターンです(法人の創立費・開業費は任意償却)。
資産になる部分にも10万・20万・40万円の枠がある
ソフトウェアも減価償却資産なので、取得価額が小さければ次の扱いが使えます。
| 資産になる部分の取得価額 | 扱い | 青色申告の要件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額を経費 | なし |
| 20万円未満 | 3年で3分の1ずつ経費(一括償却資産) | なし |
| 40万円未満 | 使い始めた年に全額を経費(年300万円まで) | 必要 |
※ 40万円未満の枠は、令和8年4月1日以後に取得等をした資産が対象(それ以前は30万円未満)。国税庁 No.2100・No.5408
判定の単位は資産として計上する部分の金額です。プログラム部分が35万円なら、青色申告の中小企業者等は少額減価償却資産の特例で1年目に全額を経費にできます。税込経理か税抜経理かで判定が変わる帯や、法人成りの年に300万円の枠が月割りになる点は、少額減価償却資産の特例は40万円未満へで計算しています。
公開後の修正は、障害対応か機能追加かで分かれる
ホームページは公開して終わりではなく、修正が続きます。ソフトウェアとして資産計上した部分の修正は、法人税基本通達7-8-6の2で次のように整理されています。
- プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持 → 修繕費(その年の経費)
- 新たな機能の追加、機能の向上 → 資本的支出(資産に加えて償却)
予約フォームの不具合を直す費用は修繕費、オンライン決済の機能を新たに加える費用は資本的支出、という分け方です。文章や写真の差し替えのような更新作業は、そもそもプログラムの修正ではないため、その年の経費として扱うのが通常です。
毎月払う保守料やサーバー代は、その月の役務の対価なので、支払った期間の経費になります。保守契約の中で機能追加を受けた場合だけ、その部分を切り分けて検討します。
100万円で計算すると、1年目の差は個人のほうが大きい
一時の経費にするか、ソフトウェアとして5年で償却するかで、税・保険料がどれだけ変わるかを計算しました。制作費100万円(税抜)、期首に公開した前提です。償却する場合の1年目の経費は20万円なので、一時の経費にすると1年目の経費が80万円多くなります。
| 事業所得(青色控除前・制作費を引く前) | 個人:1年目の税・保険料の差 | 法人:1年目の税の差 | 法人:役員報酬(月額) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 18.9万円 | 1.0万円 | 20万円 |
| 400万円 | 23.3万円 | 0.0万円 | 28万円 |
| 500万円 | 25.7万円 | 0.0万円 | 36万円 |
| 600万円 | 34.8万円 | 0.9万円 | 42万円 |
| 800万円 | 35.2万円 | 8.4万円 | 54万円 |
| 1,000万円 | 33.1万円 | 17.1万円 | 54万円 |
| 1,200万円 | 34.5万円 | 17.5万円 | 54万円 |
| 1,500万円 | 39.0万円 | 18.5万円 | 54万円 |
※ 制作費100万円(税抜)。一時の経費にした場合と、ソフトウェア(5年・定額法)で1年目に20.0万円を償却した場合の差。期首に公開。個人は所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険、法人は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税。東京23区・40歳未満・単身・青色65万円・インボイス登録あり・合同会社。経費は別に200万円。法人で所得が0円を下回った部分は欠損金として繰り越す(1年目には現れない)。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/homepage-seisakuhi-taiyo-nensu.mjs)
個人事業主は、増えた経費80万円がそのまま所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料の計算に効くため、1年目の差が約19万〜39万円になります。
法人では、手取りが最大になる役員報酬を選ぶと、事業所得500万円以下では課税所得がもともと小さく、経費を増やしても減る法人税はほとんどありません。差が10万円を超えるのは事業所得1,000万円以上の行です。役員報酬で所得を圧縮している法人ほど、資産計上か一時の経費かで1年目の税が動きにくいということです。
5年で見ると、合計の差はほぼ消える
1年目の差は大きく見えますが、償却する場合も2年目以降に残りの80万円が経費になります。個人事業主について、毎年同じ売上・経費が5年続く前提で、5年間の税・保険料の合計を比べました。
| 事業所得(青色控除前・制作費を引く前) | 一時の経費:5年間の税・保険料 | 5年償却:5年間の税・保険料 | 5年合計の差 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 207.3万円 | 205.0万円 | -2.4万円 |
| 400万円 | 347.9万円 | 348.0万円 | 0.1万円 |
| 500万円 | 506.9万円 | 505.7万円 | -1.2万円 |
| 600万円 | 712.7万円 | 713.2万円 | 0.5万円 |
| 800万円 | 1,145.1万円 | 1,146.0万円 | 1.0万円 |
| 1,000万円 | 1,566.2万円 | 1,568.3万円 | 2.1万円 |
| 1,200万円 | 1,977.1万円 | 1,972.6万円 | -4.5万円 |
| 1,500万円 | 2,703.0万円 | 2,703.0万円 | -0.0万円 |
※ 個人事業主。毎年同じ売上・経費が5年続き、税率・保険料率も2026年分のまま変わらない前提。正の値は一時の経費にしたほうが5年合計で少ないことを示す。東京23区・40歳未満・単身・青色65万円・インボイス登録あり。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/homepage-seisakuhi-taiyo-nensu.mjs total)
5年合計の差は、どの所得でもプラスマイナス5万円未満でした。符号も所得によって入れ替わります。累進税率や国民健康保険の賦課限度額のかかり方で、1年に寄せたほうが得な所得帯と、分けたほうが得な所得帯が混在するためです。
つまり、資産計上か一時の経費かの違いは、主に税を払うタイミングの違いです。1年目に手元資金を残せるかどうかは大きく変わりますが、本来資産にすべき部分を一時の経費にしても、長い目で見た税額はそれほど変わりません。区分を誤った場合に税務調査で否認されると、過少申告加算税や延滞税が上乗せされます。迷う部分は根拠を残して処理しておくほうが、得られる差に比べて安全です。
なお、法人には個人にない調整手段もあります。ソフトウェアを含む減価償却資産で、法人が償却費の計上額を限度額の範囲で抑えられる仕組みは減価償却を止められるのは法人だけで扱っています。
法人成りの前後に作る場合の注意
法人成りに合わせてホームページを作り直すケースは多いですが、誰が発注し、誰の事業に使うかで経費になる事業体が変わります。個人事業の時代に作ったホームページを法人がそのまま使う場合、個人から法人への資産の引継ぎや売買として整理が必要です。設立前に法人のために払った費用は、創立費・開業費として扱う余地があります。
1年目の差の表で見たとおり、同じ100万円でも個人事業主のほうが1年目の税・保険料への効き方が大きくなります。ご自身の売上と経費で、個人のままと法人化した場合の差を一度確かめてみてください。
まとめ
- ホームページ制作費は、国税庁のタックスアンサーに専用の項目がなく、ソフトウェアの規定と支出の効果の期間で判断する
- 広告宣伝の性質が強く随時更新するページは一時の経費、プログラムとして機能する部分はソフトウェア(耐用年数5年・定額法)
- 資産になる部分も10万・20万・40万円の枠で判定でき、公開後の修正は障害対応なら修繕費、機能追加なら資本的支出
- 100万円で計算すると、1年目の差は個人で約19万〜39万円、法人では役員報酬で所得を圧縮していれば0〜18.5万円
- 5年合計の差はプラスマイナス5万円未満で、違いの大部分は税を払うタイミング
よくある質問
ホームページ制作費の勘定科目は何にすればよいですか
一時の経費にする部分は広告宣伝費として処理するのが一般的です。プログラムとして機能する部分を資産にする場合は、無形固定資産のソフトウェアとして計上し、耐用年数5年の定額法で償却します。
WordPressなどの無料CMSでホームページを作った場合もソフトウェアになりますか
無料のCMS本体に対価を払っていなければ、その部分の取得価額はありません。制作会社に払った費用のうち、CMSの導入・設定やテーマの作り込みがどこまで「プログラムとして機能する部分」に当たるかは、見積書の作業内訳を見て判断することになります。
毎月払っているホームページの保守料やサーバー代は資産になりますか
毎月の保守料やサーバー代は、その月の役務の対価なので、通常は支払った期間の経費です。保守作業の中で新しい機能を追加した場合は、その部分が資本的支出になる可能性があります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。