税金の基礎
4年落ちの中古車は耐用年数2年。全額落ちるのは期首に買った法人だけ
中古車の耐用年数は簡便法で計算します。4年落ちなら2年、定率法の償却率は1.000です。300万円を初年度に全額損金にできる条件と、決算月に買うと12分の1しか落ちないこと、2年目以降に反動が来る仕組みを、耐用年数省令の償却率で計算しました。
普通乗用車の法定耐用年数は6年です。4年落ちの中古車を買うと、この6年が2年になります。耐用年数2年の定率法の償却率は1.000なので、300万円の車なら初年度に299万9,999円を損金にできます。
ただしこれが成り立つのは、期首に取得して12か月使った法人の場合だけです。買う月と、法人か個人事業かで、落とせる額は12分の1まで小さくなります。
年落ち別の耐用年数
中古資産の耐用年数は、本来は「使用可能期間として見積もられる年数」で決めます。国税庁の通達1-5-4は、その見積りのために技術者等が特別の調査をしなければならない場合などを「見積もることが困難なもの」とし、そのときに簡便法を使えるとしています。簡便法は原則ではなく、見積りが困難なときの代替という順序です。
簡便法の算式は2つです。
| 状況 | 算式 |
|---|---|
| 法定耐用年数の全部を経過した資産 | 法定耐用年数 × 20% |
| 一部を経過した資産 | (法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20% |
計算した年数に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。普通乗用車(法定耐用年数6年)に当てはめると、こうなります。
| 経過年数(年落ち) | 簡便法の計算 | 端数処理後の耐用年数 | 定率法の償却率 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|---|---|
| 1年 | (6年 − 1年) + 1年 × 20% = 5.2年 | 5年 | 0.400 | 0.200 |
| 2年 | (6年 − 2年) + 2年 × 20% = 4.4年 | 4年 | 0.500 | 0.250 |
| 3年 | (6年 − 3年) + 3年 × 20% = 3.6年 | 3年 | 0.667 | 0.334 |
| 4年 | (6年 − 4年) + 4年 × 20% = 2.8年 | 2年 | 1.000 | 0.500 |
| 5年 | (6年 − 5年) + 5年 × 20% = 2.0年 | 2年 | 1.000 | 0.500 |
| 6年 | 6年 × 20% = 1.2年 | 2年 | 1.000 | 0.500 |
| 7年 | 6年 × 20% = 1.2年 | 2年 | 1.000 | 0.500 |
償却率は減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第八(定額法)・別表第十(平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法)から取っています。データは
data/official/taiyo-nensu-shokyakuritsu/に保存し、scripts/chuko-sha-taiyo-nensu.mjsで再生成できます。
「4年落ち」が話題になるのは、ここが耐用年数2年に到達する最初の地点だからです。5年落ちでも6年落ちでも耐用年数は2年で変わりません。年落ちを増やしても償却の速さは変わらず、車としての価値だけが落ちます。
なお軽自動車(総排気量0.66リットル以下)の法定耐用年数は4年です。4年落ちなら4年×20%=0.8年で、2年未満なので2年になります。2年落ちなら(4−2)+2×20%=2.4年で2年です。軽自動車は2年落ちで耐用年数2年に届きます。
300万円の車を、新車と年落ち別で比べる
取得価額300万円、期首に取得して12か月使った場合の償却費です。法人が届出をしていないときの法定償却方法である200%定率法で計算しています。
| 定率法・取得価額300万円 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 新車(6年) | 999,000円 | 666,333円 | 444,444円 | 297,334円 | 297,334円 | 295,554円 |
| 2年落ち(4年) | 1,500,000円 | 750,000円 | 375,000円 | 374,999円 | — | — |
| 3年落ち(3年) | 2,001,000円 | 666,333円 | 332,666円 | — | — | — |
| 4年落ち(2年) | 2,999,999円 | 0円 | — | — | — | — |
新車なら初年度99万9,000円、4年落ちなら299万9,999円。差は200万999円です。
ただし4段どの行も、合計すると299万9,999円で同じです。備忘価額1円を残すところまで償却する点も同じです。変わるのは総額ではなく、どの年に寄せるかだけです。
減る税金はいくらか
初年度の償却費が200万999円多いと、その年の法人税等はいくら減るのか。東京23区・資本金1,000万円以下の法人で計算しました。
| 償却前の税引前利益 | 新車(6年)の1年目 | 4年落ち(2年)の1年目 | 償却費の差 | 法人税等の差 | 実効的な軽減率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4,000,000円 | 999,000円 | 2,999,999円 | 2,000,999円 | 427,300円 | 21.4% |
| 6,000,000円 | 999,000円 | 2,999,999円 | 2,000,999円 | 442,300円 | 22.1% |
| 8,000,000円 | 999,000円 | 2,999,999円 | 2,000,999円 | 463,800円 | 23.2% |
| 10,000,000円 | 999,000円 | 2,999,999円 | 2,000,999円 | 517,600円 | 25.9% |
| 15,000,000円 | 999,000円 | 2,999,999円 | 2,000,999円 | 672,000円 | 33.6% |
利益800万円までは法人税の軽減税率が効くため、軽減率は21〜23%の帯にとどまります。800万円を超えると税率が上がるので、同じ200万999円の償却費でも効き方が変わります。利益1,500万円なら67万2,000円です。
200万円多く落として、戻るのは43万〜67万円。 300万円の車を買って減る税金がこの範囲だという順序で見ると、税金のために車を買う話ではないことが分かります。
決算月に買うと、12分の1しか落ちない
償却費は事業の用に供した月からの月割りです。ここを外すと、耐用年数2年でも初年度はほとんど落ちません。3月決算の会社が4年落ち300万円の車を買った場合です。
| 取得した月(3月決算の会社) | 事業に使った月数 | 初年度に落とせる償却費 | 残り |
|---|---|---|---|
| 4月(期首) | 12か月 | 2,999,999円 | 0円 |
| 7月 | 9か月 | 2,249,999円 | 750,000円 |
| 10月 | 6か月 | 1,499,999円 | 1,500,000円 |
| 1月 | 3か月 | 749,999円 | 2,250,000円 |
| 3月(決算月) | 1か月 | 249,999円 | 2,750,000円 |
利益が出そうだと気づくのは決算が近づいてからです。そこで車を買っても、初年度に落ちるのは24万9,999円にとどまります。残りの275万円は翌期の損金です。「決算対策で車を買う」がうまくいかないのは、耐用年数ではなく月割りが理由です。
個人事業主は届出をしないと定額法
同じ4年落ち・耐用年数2年でも、償却方法が違うと初年度の額が変わります。個人事業主の法定償却方法は定額法です。
| 定額法・取得価額300万円 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 新車(6年) | 501,000円 | 501,000円 | 501,000円 | 501,000円 | 501,000円 | 494,999円 |
| 2年落ち(4年) | 750,000円 | 750,000円 | 750,000円 | 749,999円 | — | — |
| 3年落ち(3年) | 1,002,000円 | 1,002,000円 | 995,999円 | — | — | — |
| 4年落ち(2年) | 1,500,000円 | 1,499,999円 | — | — | — | — |
個人事業主のまま4年落ちの車を買うと、初年度は150万円です。 法人の299万9,999円の半分になります。届出をすれば個人でも定率法を選べますが、その届出は取得した年の翌年3月15日までです。
法人と個人で法定償却方法が逆になっている理由と、届出の期限は法人の減価償却は届出なしだと定率法にまとめています。
2年目からは、逆に損金が減る
4年落ちの車を期首に買った法人は、1年目に299万9,999円を落とします。2年目の償却費は0円です。新車なら2年目も66万6,333円が落ちていたので、2年目の損金は66万6,333円少なくなります。
3年目以降も同じです。6年間の通算では損金の総額が一致するので、初年度に節税した分は後の年に戻ってきます。課税の繰延べであって、税額の減少ではありません。
繰延べに意味があるのはこういう場合です。
- 今期だけ利益が大きく、来期以降は小さいと見込まれる(税率の高い年に損金を寄せられる)
- 手元資金が薄く、今期の納税額を減らして資金を回したい
逆に、毎期の利益が横ばいなら、繰り延べても税額の合計はほとんど変わりません。法人は償却を任意に止められるので調整の幅がありますが、その扱いは減価償却を止められるのは法人だけで扱っています。
売ったときに、まとめて戻る
もう1つ見落とされやすいのが売却です。耐用年数2年で償却しきると、帳簿価額は1円になります。3年目にその車を150万円で売れば、帳簿価額との差はほぼ150万円です。その額がその期の利益に乗ります。
初年度に299万9,999円を落として、3年目に150万円が戻る。通算で損金になるのは、実際に価値が減った150万円分だけです。中古車が値崩れしにくい車種ほど、この戻りが大きくなります。
中古資産の耐用年数は、初年度に決めなければならない
見落とすと取り返しがつかない決まりがあります。国税庁の通達1-5-1は、見積法または簡便法による耐用年数の算定について、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから、当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができないとしています。
つまり、4年落ちの車を法定耐用年数6年で申告して1年目を終えると、2年目に「やはり2年で」と変えることはできません。中古車を買った期の決算では、必ず年落ちを確認します。
経過年数が分からない場合について、通達1-5-5は、構造・形式・表示されている製作の時期等を勘案して適正に見積もるとしています。初度登録年月は車検証で確認できます。
簡便法が使えない場合
もう1つの制限が資本的支出です。耐用年数省令3条1項ただし書きと通達1-5-2は、事業の用に供するにあたって支出した資本的支出の額がその資産の再取得価額の100分の50に相当する金額を超えるとき、簡便法によらず法定耐用年数によるとしています。
再取得価額とは、その中古資産を新品で取得した場合の価額です。100万円の中古車を買って、新車価格の半分を超える改造や修理をした場合が該当します。修繕費と資本的支出の分かれ目は修繕費と資本的支出の判定にまとめました。
車を買うかどうかは、按分率のほうが効く
社用車を法人化の判定に入れると、分岐点を動かすのは車の値段ではなく個人事業のときの按分率でした。もともと家事按分で7割を経費にできていたなら、法人に移しても新しく増える損金は3割分だけです。その計算は社用車を経費にすると法人化の分岐点はどう動くかにあります。
中古車の耐用年数は、その3割分をどの年に寄せるかという話です。判定そのものを動かす力は、按分率ほど大きくありません。当サイトの判定ツールの前提は計算方法についてに置いています。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 中古資産の簡便法は「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」、1年未満切捨て・最短2年。普通乗用車は4年落ちで耐用年数2年
- 耐用年数2年の定率法の償却率は1.000。300万円なら初年度に299万9,999円を損金にできる
- ただし月割り。3月決算の会社が決算月に買うと初年度は24万9,999円しか落ちない
- 個人事業主の法定償却方法は定額法なので、同じ4年落ちでも初年度は150万円
- 償却できる総額は変わらず、2年目以降は逆に損金が減る。売却すれば帳簿価額1円との差が利益に乗る
- 耐用年数の算定は事業の用に供した事業年度に限られる(通達1-5-1)。初年度に6年で申告すると後から2年に変えられない
よくある質問
4年落ちの中古車は本当に1年で全額経費になりますか?
条件がそろえばなります。簡便法で耐用年数が2年になり、200%定率法の償却率は1.000だからです。ただし償却は事業に使い始めた月から月割りなので、期首に取得して12か月使った場合の話です。決算月に取得すると12分の1しか落とせません。個人事業主は届出をしなければ定額法なので、耐用年数2年でも初年度は半分です。
中古車を買うと税金は減りますか?
買った年の損金は増えますが、耐用年数の全期間で損金にできる総額は取得価額から1円を引いた額で変わりません。早い年に寄せるだけなので、繰り延べであって減額ではありません。さらに帳簿価額1円まで償却した車を売れば、売却代金がほぼそのまま利益になります。
中古資産の耐用年数はいつ決めますか?
事業の用に供した事業年度です。国税庁の通達1-5-1は、その事業年度に見積法または簡便法による算定をしなかったときは、その後の事業年度においては算定できないとしています。初年度に法定耐用年数の6年で申告してしまうと、翌期に2年へ変えることはできません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。