税金の基礎

法人の減価償却は届出なしだと定率法。300万円で比較

法人の機械・車両等は届出がなければ定率法が法定方法です。設立第1期の届出期限と、300万円・耐用年数5年の定額法・200%定率法を比較します。

法人が機械装置、車両運搬具、器具備品などの償却方法を届け出なければ、原則として定率法が法定償却方法になります。個人事業主の法定方法が一般に定額法であることと逆です。

新設法人が別の方法を選ぶ届出期限は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。定率法は初期に多く費用化できますが、耐用年数全体の償却総額が増えるわけではなく、法人税の発生時期が動きます。

届出がないと機械・車両・備品は定率法

法人の減価償却方法は、資産の種類ごとに選びます。主な区分を簡略化すると次のとおりです。

資産の種類2016年4月1日以後取得の主な方法届出がない法人の法定方法
建物定額法のみ定額法
建物附属設備・構築物定額法のみ定額法
機械装置定額法または定率法定率法
車両運搬具定額法または定率法定率法
工具器具備品定額法または定率法定率法
ソフトウェアなどの無形資産資産別の法定方法定額法等

建物、建物附属設備、構築物は2016年4月1日以後の取得分について定率法を選べません。すべての固定資産を一括して「定率法にする」と届けるのではなく、選択可能な資産区分ごとに記載します。

届出をしないこと自体が無申告の違反になるわけではありません。選定しなければ法定償却方法が適用されます。「会計ソフトで定額法を選んだ」だけでは、税務上の選定届を出したことになりません。

同じ構造の届出が棚卸資産にもあり、こちらは届出がなければ最終仕入原価法になります(棚卸資産の評価方法は届出なしだと最終仕入原価法)。在庫を持つ業種は、設立第1期に出す届出書が2枚あることになります。

300万円・5年では初年度の償却費が2倍

取得価額300万円、耐用年数5年の機械を事業年度の初日に取得して使い始める例で、定額法と200%定率法を比較します。

5年の償却率は、定額法0.200、定率法0.400、改定償却率0.500、保証率0.10800です。scripts/houjin-genka-shokyaku-houhou.mjs で国税庁の算式を再現しました。

年度定額法の償却費定率法の償却費定率法の期末簿価
1年目600,000円1,200,000円1,800,000円
2年目600,000円720,000円1,080,000円
3年目600,000円432,000円648,000円
4年目600,000円324,000円324,000円
5年目599,999円323,999円1円

定率法は初年度に120万円を償却し、定額法の60万円より60万円多く費用化します。2年間の累計も定額法120万円に対し定率法192万円で、72万円前倒しです。

一方、3年目以後は定額法の償却費が多くなり、5年間の合計はどちらも299万9,999円です。資産を最後まで保有する単純例では、費用の総額ではなく計上時期が違うと分かります。

定率法の4年目は、通常の計算額64万8,000円×0.400=25万9,200円が償却保証額32万4,000円を下回るため、改定取得価額64万8,000円×改定償却率0.500=32万4,000円へ切り替わります。

中古資産を買った場合は、この耐用年数そのものが短くなります。4年落ちの普通乗用車なら耐用年数は2年、定率法の償却率は1.000です。年落ち別の耐用年数と、期首以外に取得したときの月割りは4年落ちの中古車は耐用年数2年にまとめました。

初年度赤字なら定率法の前倒しが効かないこともある

創業初年度に大きな設備を買うと、「定率法なら節税になる」と考えがちです。しかし、もともと欠損金が出る会社では、初年度の償却費を増やしても当期の法人税はそれ以上減りません。

青色欠損金として翌期以後へ繰り越せる場合でも、利益が出るまでの期間、繰越控除限度、将来の税率を考える必要があります。法人の青色申告申請期限を逃すと、創業赤字の繰越自体に影響します。

反対に、第1期から黒字が大きく、設備が早く陳腐化する事業では、定率法の前倒しで初期の納税を抑え、資金を会社に残せます。ただし後半の償却費は少なくなるため、永久的な減税ではありません。

設立第1期の届出期限は確定申告期限まで

国税庁の「減価償却資産の償却方法の届出」は、新設普通法人の提出時期を設立第1期の確定申告書の提出期限までとしています。

3月31日が第1期末で通常の申告期限が5月31日なら、届出も原則5月31日までです。申告期限の1か月延長の適用を受ける場合は、実際の第1期確定申告期限との関係を確認します。

届出書では、次の単位で方法を選定します。

  • 建物、建物附属設備、構築物など資産の種類
  • 機械装置は設備の種類
  • 船舶は船舶ごと
  • 事務所が複数ある場合は事務所ごとに選定できる区分

第1期に固定資産を買っていなくても、将来の取得を見込んで選定する場合は届出内容を確認します。設立後、まだ方法を選んでいない新しい資産区分を初めて取得した場合は、その取得事業年度の確定申告期限までが届出時期です。

一度選ぶと翌年自由に変えられない

既に選定した償却方法を変える場合は、単なる届出ではなく「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出します。期限は、新しい方法を採用する事業年度開始日の前日までです。

法人税基本通達は、現行方法を採用して3年を経過していない変更申請について、合併・分割など特別な理由がなければ、相当期間を経過していないものとして扱うとしています。3年を過ぎれば自動承認という意味でもなく、合理的な変更理由が必要です。

「利益が出た年だけ定率法、赤字の年は定額法」のように毎年切り替えることはできません。取得時の資金計画と利益見込みを踏まえて、第1期の届出で選びます。

税務上は損金経理した金額が上限内で認められる

法人の減価償却費は、税法上の償却限度額が自動で全額損金になる仕組みではありません。原則として会社が決算で損金経理した金額のうち、償却限度額までが損金算入されます。

定率法の限度額が120万円でも、会社が60万円しか減価償却費を計上しなければ、原則として120万円全額を申告書だけで損金にすることはできません。会計の固定資産台帳と法人税申告書の別表十六を一致させます。

また、30万円未満の資産には中小企業者等の少額減価償却資産特例、10万円未満には即時損金、20万円未満には一括償却資産など別制度があります。対象資産を先に判定し、通常の定額・定率計算へ入れるかを決めます。個人と法人の減価償却の違いでは、償却を計上しない選択の違いまで扱っています。

まとめ

  • 法人の機械装置、車両、器具備品は、届出がなければ原則として定率法です
  • 建物、2016年4月1日以後取得の建物附属設備・構築物は定額法のみです
  • 新設法人の償却方法届出は、設立第1期の確定申告期限までです
  • 300万円・5年の例では、初年度償却費は定額60万円、定率120万円です
  • 5年間の償却総額は同じで、定率法は費用を前倒しします
  • 方法変更は事業年度開始日前日までの承認申請で、原則として継続適用が前提です
  • 税務上の損金は、会社が損金経理した額と償却限度額の範囲で計算します

よくある質問

法人が減価償却方法を届け出ないとどうなりますか?

機械装置、車両運搬具、器具備品などは原則として法定償却方法の定率法になります。建物等は取得時期に応じ定額法のみです。

新設法人の減価償却方法の届出期限はいつですか?

設立第1期の確定申告書の提出期限までです。第1期から機械等を定額法にしたい場合は、その期限までに資産区分ごとに届け出ます。

定率法と定額法では最終的な経費総額が変わりますか?

同じ取得価額と耐用年数なら、耐用年数全体の償却総額は原則同じです。定率法は前半に多く、定額法は毎期おおむね均等になるため、費用計上の時期が変わります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。