インボイス・消費税

キャンセル料に消費税はかかる?時期で金額が変わるなら不課税

結論

キャンセル料のうち、予約の取消しで失った利益を埋める損害賠償金の性格のものは消費税の不課税、解約等の時期にかかわらず一定額を受け取る事務手数料の性格のものは課税です(消費税法基本通達5-5-2、国税庁 No.6253)。両方を区分せず一括して受け取っているときは、全額を不課税として扱います。年30万円のキャンセル料を誤って全額課税売上にしていれば、原則課税で年2万7,272円の消費税を余分に納めることになります。

  • 取消しの時期で金額が変わるキャンセル料は損害賠償金として不課税、時期に関係なく一定額の手数料は課税(国税庁 No.6253の航空運賃の例)
  • 不課税のキャンセル料は課税売上高に入らないため、免税事業者かどうかを決める1,000万円の判定にも入らない
  • 所得税・法人税では、課税・不課税にかかわらず事業の収入(益金)になる

予約制のサロン、撮影やイベントの請負、研修の講師など、直前のキャンセルに対してキャンセル料を受け取る事業者は多くいます。このキャンセル料に消費税がかかるかどうかは、受け取り方によって決まります。

国税庁 No.6253 は、キャンセル料を「事務手数料」と「損害賠償金」の2つの性格に分け、課税と不課税を分けています。この記事では、その線引きと、誤って処理したときの金額を確認します。

時期で金額が変わるなら不課税、一定額なら課税

消費税法基本通達5-5-2は、予約の取消しや変更に伴って予約を受けていた事業者が受け取るキャンセル料や解約損害金は、逸失利益等に対する損害賠償金であり、資産の譲渡等の対価に当たらないとしています。一方で、解約手数料・取消手数料・払戻手数料のように、解約等の請求に応じて対価を得て行う役務の提供は、資産の譲渡等に当たるとしています。

キャンセル料の性格見分け方の例消費税
逸失利益に対する損害賠償金取消しの時期や区間などで金額が変わる不課税
解約に伴う事務手数料約款や契約で、解約等の時期にかかわらず一定額を受け取る課税
両方を区分せずに一括して受け取る内訳の定めがない全額を不課税として扱う

国税庁 No.6253 は、航空運賃のキャンセル料を例に、時期にかかわらず一定額の部分は事務手数料として課税、区間や時期で金額が異なるものは損害賠償金として不課税としています。区分せず一括して受け取るキャンセル料の例として、ゴルフ場の予約のキャンセル料も挙げています。

名称ではなく実質で判断する

国税庁 No.6257 は、損害賠償金が資産の譲渡等の対価に当たるかどうかは、名称ではなく実質で判断するとしています。「キャンセル料」という名前でも、中身が役務の対価なら課税ですし、「手数料」という名前でも、時期で金額が変わる損害の補填なら不課税として扱われ得ます。

典型的なキャンセル規定は、ほぼ不課税になる

個人事業主や小さな会社がよく使うキャンセル規定に当てはめると、次のようになります。

キャンセル規定の例性格消費税
前日50%、当日100%時期で金額が変わる損害賠償金不課税
理由・時期にかかわらず一律2,000円の事務手数料一定額の事務手数料課税
一律1,000円の手数料+当日は残額の100%、と内訳を分けて定めている手数料部分は事務手数料、残りは損害賠償金手数料部分だけ課税

時期に応じて率が上がっていく一般的なキャンセル規定なら、受け取るキャンセル料は不課税です。会計ソフトで売上と同じ税区分(課税売上10%)のまま記帳していると、納めなくてよい消費税を納めていることになります。

誤って課税にしていると、いくら余分に納めているか

原則課税で申告している事業者が、不課税のキャンセル料を課税売上にしていた場合に余分に納める消費税を計算しました。

年間に受け取るキャンセル料全額を課税にした場合の消費税全額を不課税にした場合差
100,000円9,090円0円9,090円
300,000円27,272円0円27,272円
600,000円54,545円0円54,545円
1,200,000円109,090円0円109,090円

※ 当サイトのスクリプト(scripts/cancel-ryo-shohizei.mjs)で計算。受け取ったキャンセル料を税込額とみなし、10/110で消費税を計算した。簡易課税の場合は、みなし仕入率の分だけ差が小さくなる

年30万円のキャンセル料なら、年2万7,272円です。簡易課税で申告している場合は、課税売上に入れた額にみなし仕入率を差し引いた分の差になります。区分ごとの率は簡易課税のみなし仕入率6区分。2割特例の次にどちらを選ぶかで確認できます。なお、2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終了し、個人事業者は令和8年分が最後です。

1,000万円の判定にも入らない

不課税のキャンセル料は課税売上高に含まれません。そのため、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判定にも入りません。キャンセル料を課税売上に入れて集計していると、本来は1,000万円以下なのに超えたと誤って判断するおそれがあります。不課税の売上と1,000万円の判定の関係は海外向け売上は消費税1,000万円の判定に入る?不課税と輸出免税で逆でも扱っています。

インボイスと、払う側の扱い

適格請求書の交付義務は、課税資産の譲渡等について生じます。不課税のキャンセル料には交付義務がありません。事務手数料として課税される部分を受け取る場合は、相手が課税事業者なら適格請求書の交付を求められます。

キャンセル料を払う側から見ると、不課税のキャンセル料は課税仕入れにならず、仕入税額控除はできません。会場や外注先へのキャンセル料を課税仕入れとして処理していないかも確認が必要です。

所得税・法人税では、どちらも収入になる

消費税で不課税であっても、キャンセル料は事業の収入です。個人事業主なら事業所得の総収入金額、法人なら益金になります。消費税の区分と所得の計算は別の話なので、不課税だからといって売上から外して所得を計算しないように注意してください。

まとめ

  • キャンセル料は、逸失利益の損害賠償金なら不課税、解約の時期にかかわらない一定額の事務手数料なら課税
  • 両方を区分せず一括して受け取っていれば、全額を不課税として扱う。判断は名称ではなく実質
  • 前日50%・当日100%のような一般的な規定のキャンセル料は、不課税になる
  • 年30万円を誤って課税売上にしていれば、原則課税で年2万7,272円を余分に納めている。1,000万円の判定にも入らない
  • 不課税でも所得税・法人税では収入(益金)になる

消費税の区分を正しくしたうえで、インボイス登録の有無や法人化で手取りがどう変わるかを、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

不課税のキャンセル料にも、インボイスを発行する必要がありますか?

適格請求書の交付義務は課税資産の譲渡等について生じるものなので、資産の譲渡等の対価に当たらない不課税のキャンセル料には交付義務がありません。事務手数料として課税になる部分を受け取る場合は、相手が課税事業者なら適格請求書の交付を求められます。

キャンセル料を払う側は、仕入税額控除できますか?

支払ったキャンセル料が逸失利益の損害賠償金として不課税なら、課税仕入れではないので控除できません。事務手数料として課税されるものなら課税仕入れで、相手の適格請求書等が必要です。

予約金(前受金)をキャンセル料に充てた場合はどうなりますか?

予約金をそのまま受け取りっぱなしにしてキャンセル料に充てる場合も、その金額が逸失利益の補填か事務手数料かで判断します。名称ではなく実質で判断するのが原則です(国税庁 No.6257)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。