インボイス・消費税

簡易課税で申告した個人は33%。最も多いのは2割特例の41%

結論

国税庁統計年報の令和6年度分では、消費税を納税申告した個人事業者2,071,808件のうち、簡易課税が33.3%、2割特例が41.2%、一般課税が25.5%でした。法人は一般課税66.6%・簡易課税24.7%・2割特例8.7%で、簡易課税の割合は令和3年度からほとんど動いていません。

  • 個人の簡易課税の割合は令和3年度の59.5%から令和6年度の33.3%へ下がったが、件数は632,700件から690,196件へ9.1%増えている。下がったのは分母が倍になったため
  • 1件あたりの納付税額(国税)は一般課税73.7万円・簡易課税50.2万円・2割特例8.6万円。2割特例は簡易課税の5.9分の1
  • 簡易課税の要件は基準期間(個人は2年前)の課税売上高5,000万円以下。課税事業者になるかどうかの1,000万円とは別の基準

この割合は、国税庁が公表している実数から当サイトで計算したものです。統計年報に載っているのは件数と税額だけで、構成比の表はありません。

数えてみると、個人事業者の申告方法の分布はこの4年で入れ替わっていました。そして簡易課税の割合が半分近くまで落ちたのに、簡易課税で申告した件数は増えています。

令和6年度の内訳は、個人と法人でまるで違う

国税庁統計年報「3 間接税 消費税」の(1)課税状況には、納税申告の件数が一般申告・簡易申告・2割特例申告に分けて載っています。ここから構成比と1件あたりの納付税額を出しました。

申告の方法個人事業者個人の割合個人の1件あたり法人法人の割合法人の1件あたり
一般課税(本則)527,606件25.5%73.7万円1,486,574件66.6%1,472.1万円
簡易課税690,196件33.3%50.2万円551,500件24.7%78.4万円
2割特例854,006件41.2%8.6万円194,556件8.7%22.0万円
納税申告計2,071,808件100.0%39.1万円2,232,630件100.0%1,001.5万円

※ 国税庁「令和6年度 国税庁統計年報 3間接税 消費税」(1)課税状況を当サイトで再集計(scripts/kani-kazei-sentaku-wariai.mjs naiwake)。税額は消費税(国税)のみで地方消費税を含まない。還付申告(個人91,896件・法人214,121件)は納税申告計に含まれない

個人事業者でいちばん多い申告方法は、簡易課税でも本則でもありません。2割特例が41.2%で最多です。本則で計算している人は4件に1件しかいません。

法人は逆で、3分の2が一般課税です。1件あたりの納付税額(国税)も1,472.1万円で、簡易課税の78.4万円の18.8倍あります。申告された消費税額(国税)のうち94.5%は一般課税の法人から出ています。

この表には、もう1つ読み取れることがあります。個人事業者は納税申告の件数では全体の48.1%を占めるのに、申告された消費税額では3.5%しかありません。個人の2割特例に限れば0.3%です。件数の半分を占める層が、税額の3%台しか負っていないという構造になっています。

分母には注意点が1つあります。「納税申告計」に還付申告は含まれません。還付が生じるのは一般課税だけなので、一般課税の件数はその分だけ少なく出ます。還付申告を一般課税に足して数え直すと、個人は一般28.6%・簡易31.9%・2割特例39.5%、法人は一般69.5%・簡易22.5%・2割特例8.0%です。どちらで数えても順位は変わりません。

割合は半減したのに、件数は増えている

簡易課税の件数と割合を令和3年度から並べると、割合だけを見て判断すると読み間違えることが分かります。

年度個人:納税申告計個人:簡易課税個人の割合法人:納税申告計法人:簡易課税法人の割合
令和3年度1,063,741件632,700件59.5%1,857,869件497,174件26.8%
令和4年度1,012,814件595,375件58.8%1,850,399件497,513件26.9%
令和5年度1,940,407件647,868件33.4%2,012,374件517,670件25.7%
令和6年度2,071,808件690,196件33.3%2,232,630件551,500件24.7%

※ 国税庁統計年報「3間接税 消費税」(1)課税状況の各年度版を当サイトで再集計(scripts/kani-kazei-sentaku-wariai.mjs suii)。還付申告を除く納税申告に占める割合。令和5年度から2割特例の内訳が加わり、分母が増えている

個人の簡易課税の割合は、令和4年度の58.8%から令和5年度の33.4%へ一気に落ちました。ところが件数は632,700件から690,196件へ9.1%増えています。

落ちたのは分子ではなく分母です。個人事業者の納税申告は1,012,814件から2,071,808件へ、ほぼ倍になりました。インボイス登録をきっかけに課税事業者になった人が入ってきたためです。そして新しく入ってきた層は、簡易課税ではなく2割特例へ流れました。

つまりこの下落は「簡易課税を選ぶ人が減った」のではなく、**「簡易課税を選ばない人が増えた」**という形の下落です。簡易課税そのものは、件数では静かに増え続けています。

法人側は割合が26.8%から24.7%へ動いただけで、ほとんど変化がありません。法人はもともと課税事業者が多数で、インボイス制度で新たに課税事業者になった層が薄いためです。

法人の2割特例が2.1倍になった理由は、制度側にもある

法人の2割特例は令和5年度の94,244件から令和6年度の194,556件へ、2.1倍に増えています。ただしこれを「法人の利用が倍になった」とだけ読むのは正確ではありません。

令和5年度の集計対象は、令和5年4月1日から令和6年3月31日までに終了した課税期間です。一方、2割特例が使えるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間です。決算期が令和5年9月以前に終わる法人は、この年度の集計に入っていても2割特例の対象になりません。令和5年度に集計される法人のうち、対象になり得るのは決算期が令和5年10月以降に終わる法人、つまり12か月のうち6か月分だけです。

個人事業者は課税期間が暦年なので、令和5年分(10月〜12月)が全件そのまま対象になります。この違いが、個人の伸び(808,935件→854,006件)と法人の伸びの差になって出ています。

1件あたりの納付税額は、そのまま売上規模の違い

2割特例の納付税額は、売上に係る消費税額の2割です。国税だけを見れば「課税売上 × 7.8% × 20%」なので、1件あたりの税額から課税売上を逆算できます。簡易課税は事業区分ごとのみなし仕入率が混ざるため、区分を仮定したときの相当額として並べました。

申告の方法想定した控除割合1件あたり(国税)地方消費税込み相当する課税売上
2割特例(個人)売上税額の80%を控除8.6万円11.0万円550万円
簡易課税・第5種(個人)みなし仕入率50%50.2万円64.4万円1,288万円
簡易課税・第2種(個人)みなし仕入率80%50.2万円64.4万円3,221万円
2割特例(法人)売上税額の80%を控除22.0万円28.2万円1,409万円
簡易課税・第5種(法人)みなし仕入率50%78.4万円100.5万円2,011万円

※ 国税庁「令和6年度 国税庁統計年報」(1)課税状況の1件あたり税額から当サイトで逆算(scripts/kani-kazei-sentaku-wariai.mjs gyakusan)。課税売上=1件あたりの国税額÷(7.8%×控除後に残る割合)。軽減税率の売上が混ざっている事業者では実際の売上はこれより大きくなる

2割特例で申告している個人の平均像は、課税売上550万円前後です。地方消費税を含めた年間の納付額は11.0万円になります。

同じ表で目を引くのは法人の行です。2割特例を使っている法人の平均像は課税売上1,409万円相当で、個人の2.6倍あります。2割特例の要件は「基準期間(法人は原則2事業年度前)の課税売上高が1,000万円以下」なので、当期の売上が1,000万円を超えていても使えます。法人側の2割特例は、2年前にはまだ小さかった事業者——直近で売上が伸びた法人や設立から日の浅い法人が中心だということです。

みなし仕入率の6区分と、自分がどの事業区分に当たるかは簡易課税のみなし仕入率の記事にまとめてあります。

申告方法の分布は、法人化の分岐点との距離の分布でもある

逆算した課税売上を、そのまま当サイトの法人化判定の計算エンジンに入れてみました。経費は統計年報に載っていないため、当サイトの標準条件(200万円)を置いています。

申告している層相当する課税売上事業所得個人のまま法人化(最適報酬)実質差額(年)判定
2割特例の平均像(個人)550万円350万円267.4万円240.3万円−47.1万円個人のまま有利
簡易課税・第5種の平均像(個人)1,288万円1,088万円711.2万円717.9万円−13.3万円ほぼ互角

※ 1件あたりの納付税額から逆算した課税売上を当サイトの計算エンジンへ渡した結果(scripts/kani-kazei-sentaku-wariai.mjs houjinka)。経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。統計年報に経費のデータはないため、経費は当サイトの標準条件を置いた仮定

申告方法の分布は、そのまま法人化の分岐点との距離の分布になっています。簡易課税で申告している層の平均像は事業所得1,088万円で、損益分岐となる1,266万円のすぐ手前です。2割特例の層は350万円で、分岐点の3分の1にも届きません。

所得別に見ると、この距離がどれだけあるかが分かります。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)最適な役員報酬実質差額(年)判定
400万円303.1万円274.5万円月28万円−48.6万円個人のまま有利
600万円427.3万円409.7万円月42万円−37.6万円個人のまま有利
800万円540.7万円536.6万円月54万円−24.1万円個人のまま有利
1,000万円657.1万円662.4万円月54万円−14.7万円ほぼ互角
1,200万円774.2万円787.6万円月54万円−6.6万円ほぼ互角
1,500万円928.2万円972.0万円月54万円+23.9万円法人化が有利
1,800万円1082.1万円1149.1万円月90万円+47.0万円法人化が有利
2,100万円1232.0万円1332.6万円月95万円+80.6万円法人化が有利
2,500万円1395.0万円1551.1万円月100万円+136.1万円法人化が有利
3,000万円1599.6万円1816.8万円月100万円+197.2万円法人化が有利

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額

ここから言えることは1つです。2割特例が終わって3割特例に移ると、課税売上550万円の層の納付税額は地方消費税込みで年5.5万円増えます。簡易課税の第5種(みなし仕入率50%)になれば、2割特例と比べて年16.5万円です。一方、同じ層が法人化した場合の実質差額は年47.1万円のマイナスです。

消費税の増加分と、法人化で動く金額は桁が違います。消費税が増えるから法人化するという順番では、判断が合いません。計算の前提は計算の根拠に載せてあります。

売上別に納付税額がどう増えるかは2割特例を使った個人は81.7万人の記事で計算しています。

令和9年分からどちらに動くか。期限は制度ごとに別

2割特例が使えるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間です。個人事業者は令和8年分の確定申告が最後で、法人は令和8年9月30日を含む課税期間(3月決算なら令和9年3月期)までです。

その後の行き先は、個人と法人で分かれます。

  • 個人事業者:令和9年分・令和10年分は3割特例を適用できます(納付税額を売上に係る消費税額の3割とする措置)
  • 法人:3割特例は使えません。簡易課税か一般課税のどちらかになります

ここで混同しやすい数字が2つ並びます。どちらも「基準期間の課税売上高」で判定するのに、効き方が違います。

数字何の基準か
1,000万円基準期間の課税売上高。これを超えると課税事業者になる。2割特例・3割特例の要件でもある
5,000万円簡易課税の要件。基準期間(個人は前々年、法人は原則前々事業年度)の課税売上高がこれ以下の課税期間だけ簡易課税を適用できる

簡易課税を適用するには「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。原則の期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。

ただし2割特例・3割特例の適用を受けた事業者には例外があります。その適用を受けた課税期間の翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間から簡易課税を適用できます。原則より1年近く遅くまで判断を保留できる形です。出し忘れたときの救済は簡易課税の届出を出し忘れたときの記事にまとめています。

一度選ぶと簡単には戻れない点にも注意が必要です。事業を廃止した場合を除き、届出書の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を提出できません。

なお国税庁は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡について消費税率が引き下げられ、これに合わせて飲食料品の譲渡を行う事業者を対象に簡易課税制度の計算方法の特例が設けられると案内しています。第2種事業や第3種事業に関わる人は、確定した取扱いを国税庁の特設サイトで確認してください。2割特例の終了と後継措置の全体像は2割特例は令和8年で終了の記事で扱っています。

まとめ

  • 令和6年度に消費税を納税申告した個人事業者2,071,808件のうち、簡易課税は33.3%、2割特例が41.2%、一般課税は25.5%。最も多いのは2割特例
  • 法人は一般課税66.6%・簡易課税24.7%で、簡易課税の割合は令和3年度から2.1ポイントしか動いていない
  • 個人の簡易課税の割合が59.5%から33.3%へ落ちたのは、分母の申告件数がほぼ倍になったため。件数は9.1%増えている
  • 1件あたりの納付税額から逆算すると、2割特例の層は課税売上550万円相当、簡易課税の層は第5種なら1,288万円相当。申告方法の違いは売上規模の違いでもある
  • 2割特例から3割特例への移行で増える額は年5.5万円(課税売上550万円の場合)。法人化で動く金額とは桁が違うので、消費税の負担増を理由に法人化の順番を決めることにはならない

自分の売上と経費で、法人化した場合の差額がいくらになるかを確かめてください。一般論の平均像ではなく、自分の数字で見たときにどちら側にいるかが判断の起点になります。

よくある質問

簡易課税を選んでいる事業者の数は、公表されていますか

選択届出書を出している事業者数そのものは公表されていません。国税庁統計年報には、消費税の納税申告のうち簡易課税で計算した申告の件数が載っています。令和6年度分は個人事業者690,196件、法人551,500件です。

統計年報の税額には地方消費税が含まれますか

含まれません。消費税(国税)の表と地方消費税の表は分かれています。地方消費税は国税額の22/78で連動するため、国地方を合わせた負担は国税額の約1.28倍になります。

2割特例と簡易課税の第2種は、納める額が同じですか

売上に係る消費税額に対する割合は、どちらも20%で同じです。ただし2割特例は事業の種類を問わず使える一方、第2種事業(小売業など)のみなし仕入率80%は事業区分の判定を前提にします。また2割特例には適用できる期間の制限があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。