インボイス・消費税

2割特例を使った個人は81.7万人。令和9年分から消費税は1.5倍、その後2.5倍へ

結論

国税庁によると、令和7年分に2割特例を適用した個人事業者は81.7万人で、インボイス登録して消費税を申告した193.9万人の42.1%です。個人の2割特例は令和8年分で終わり、税抜売上500万円なら納税額は令和8年分の10万円から、3割特例の令和9・10年分に15万円、簡易課税(第5種)に移る令和11年分に25万円へ増えます。

  • 3割特例は個人事業者だけで、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることが条件。法人化すると使えない
  • 2割特例・3割特例の翌年に簡易課税へ移る場合は、その年分の申告期限までに届出を出せばよい(令和8年度改正)
  • 個人事業者の消費税の納税額は令和7年分で8,416億円(前年比+5.1%)、1件あたり41万円

インボイス制度が始まってから3年、登録して消費税を申告する個人事業者の多くを支えてきたのが2割特例です。売上に係る消費税額の2割を納めればよい、という措置でした。

これを実際に使った人が何人いるのかは、国税庁が毎年の確定申告状況で公表しています。令和7年分の数字と、2割特例が終わったあとの納税額の変化を整理します。

2割特例を使った個人は81.7万人、申告した人の42%

国税庁の報道発表資料(令和7年分の確定申告状況)の参考表から、インボイス発行事業者(個人)の申告状況を並べます。

年分インボイス登録した個人うち消費税を申告うち2割特例を適用申告した人に占める2割特例の割合
令和6年分221.0万人190.7万人81.1万人42.5%
令和7年分229.1万人193.9万人81.7万人42.1%

※ 国税庁「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」の(参考)インボイス発行事業者の消費税の申告状況を当サイトで整理(scripts/nizuwari-tekiyo-jinin.mjs)。登録事業者数には、課税取引がなく申告義務のない人も含まれる

令和7年分に2割特例を適用した個人は81.7万人でした。インボイス登録をして消費税を申告した193.9万人のうち42.1%にあたります。登録する前は免税事業者だった人が、2割特例のおかげで比較的軽い負担で申告してきた、という構図が数字に表れています。

個人事業者全体の消費税の申告状況も見ておきます。

年分個人事業者の消費税の申告件数うち納税申告納税額1件あたり
令和6年分212.0万件202.9万件8,004億円39万円
令和7年分216.8万件207.7万件8,416億円41万円

※ 同資料(表5)を当サイトで整理。申告は翌年3月末日までに提出されたもの

個人の2割特例は令和8年分で終わる

2割特例は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間が対象です。個人事業者の課税期間は暦年なので、令和8年分が最後になります。

その後の2年間については、令和8年度税制改正で3割特例が設けられました。国税庁の「令和8年度税制改正特集」によると、要件は次のとおりです。

  • 個人事業者であること(法人は対象外)
  • 基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること
  • インボイス発行事業者の登録を受けていること
  • 対象は令和9年分・令和10年分の申告で、納付税額を売上税額の3割とすることができる

令和11年分からは、一般課税か簡易課税のどちらかです。制度の経緯と法人化との関係は2割特例は令和8年で終了。後継の3割特例は法人が使えないで扱っています。

売上別に、納税額はこう増える

2割特例→3割特例→簡易課税(または一般課税)と移ったとき、納税額がどう変わるかを売上別に計算しました。

税抜売上経費2割特例(令和8年分まで)3割特例(令和9・10年分)簡易課税・第5種一般課税3割特例で増える額
300万円60万円6.0万円9.0万円15.0万円26.4万円+3.0万円
500万円100万円10.0万円15.0万円25.0万円44.0万円+5.0万円
500万円250万円10.0万円15.0万円25.0万円35.0万円+5.0万円
700万円150万円14.0万円21.0万円35.0万円61.0万円+7.0万円
900万円200万円18.0万円27.0万円45.0万円78.0万円+9.0万円
1000万円200万円20.0万円30.0万円50.0万円88.0万円+10.0万円

※ 売上税額=税抜売上×10%(標準税率のみ)。簡易課税の第5種はサービス業等(みなし仕入率50%)。一般課税は経費の60%が課税仕入れとした概算(当サイトの計算エンジンと同じ)。当サイトで計算(scripts/nizuwari-tekiyo-jinin.mjs zei)

2割特例から3割特例への切り替えで、納税額は1.5倍になります。売上500万円なら年5万円、1,000万円なら年10万円の増加です。

大きいのはその次です。令和11年分から簡易課税(第5種)に移ると、2割特例の2.5倍になります。フリーランスに多いサービス業は経費に課税仕入れが少ないので、一般課税ではさらに重く、売上500万円・経費100万円なら44.0万円(2割特例の4.4倍)です。多くの人にとって、令和11年分以降は簡易課税が現実的な選択肢になります。業種ごとのみなし仕入率は簡易課税のみなし仕入率6区分で扱っています。

簡易課税への届出は「申告期限まで」でよい

簡易課税を選ぶには、原則として適用を受けたい年の前年中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。

ただし、2割特例・3割特例の適用を受けた年の翌年に簡易課税を使う場合は、その年分の申告期限までに届出を出せば、その年から簡易課税を適用できます(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。令和10年分まで3割特例を使った人は、令和11年分の確定申告の期限までに出せばよいので、1年分の実績を見て一般課税と簡易課税を比べてから決められます。

注意したいのは、3割特例が使えない人です。令和7年の課税売上高が1,000万円を超えていた人は、令和9年分から3割特例がありません。この場合、令和9年分は簡易課税か一般課税で、簡易課税を使うなら令和9年分の申告期限までの届出が必要です。

登録を続けるか、やめるか、法人化するか

納税額が上がる区切りの年を前に、登録そのものを見直す人も出ています。国税庁の公表データでは、令和9年1月1日付でインボイス登録が失効する個人が、令和8年8月末の時点ですでに1万5,097人決まっていました(インボイス登録をやめた個人は21.5万件)。

選択肢ごとの論点は次のとおりです。

法人化すると、令和9・10年分に3割特例で抑えられたはずの消費税を、簡易課税か一般課税で納めることになります。その差は売上500万円で年10万円(簡易課税)です。ただし法人化の損得は、所得税・法人税・社会保険を含めた全体で決まります。自分の売上と経費で、インボイス登録の有無を切り替えてシミュレーターで確かめてください。

まとめ

  • 令和7年分に2割特例を適用した個人は81.7万人で、インボイス登録して申告した人の42.1%(国税庁)
  • 個人の2割特例は令和8年分で終わり、令和9・10年分は3割特例(個人・基準期間の課税売上高1,000万円以下が条件)
  • 納税額は3割特例で2割特例の1.5倍、簡易課税(第5種)で2.5倍。売上500万円なら10万円→15万円→25万円
  • 2割特例・3割特例の翌年に簡易課税へ移る届出は、その年分の申告期限まででよい
  • 3割特例は法人が使えないため、令和9・10年分に法人化すると消費税の軽減を1つ失う

よくある質問

売上が1,000万円を超えたら3割特例は使えませんか

判定するのは適用を受ける年の2年前の課税売上高です。令和9年分なら令和7年、令和10年分なら令和8年の課税売上高が1,000万円を超えていると使えません。その年の売上が1,000万円を超えても、2年前が1,000万円以下なら使えます。

2割特例をやめて登録を取り消すと、どうなりますか

登録をやめると免税事業者に戻れる場合がありますが、取引先から値引きを求められたり取引を見直されたりする可能性があります。登録取消届出書は翌課税期間の初日から起算して15日前の日(個人なら12月17日)までに出す必要があります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。