税金の基礎

クラウドファンディングの課税は購入型と寄付型で別物。個人と法人の違い

結論

購入型の支援金はリターンの対価なので、個人なら事業所得、法人なら益金で、消費税も課税です。寄付型は対価がないため消費税は不課税で、受け取るのが個人なら贈与税(年110万円の基礎控除後、200万円以下は10%)、法人なら受贈益として法人税の対象になります。

  • 購入型で300万円を集め、リターン原価等が120万円なら、売上800万・経費200万の個人事業主の手取りは427.3万円から529.3万円へ(東京23区・単身の概算)
  • 寄付型で個人が年300万円を受け取ると、贈与税は(300万−110万)×10%=19万円。事業所得には入らない
  • 購入型の収入は、入金時ではなくリターンを引き渡した日の年分(事業年度)に計上する

課税関係を分けるのは「クラウドファンディング」という呼び名ではなく、支援者が見返りとして何を受け取るかです。商品やサービスを受け取るなら売買で、何も受け取らないなら贈与です。この区別が、所得税・法人税・贈与税・消費税のどれがかかるかを順に決めていきます。

さらに、受け取る側が個人事業主か法人かで、寄付型の税目が入れ替わります。法人化を検討している人にとっては、同じ300万円の支援でも、個人で受けるか会社で受けるかで課税の仕組みそのものが変わるということです。

類型ごとの課税を1表で整理する

国内で個人事業主や小規模な会社がよく使うのは、購入型と寄付型の2つです。株式型・融資型(ファンド型)は出資や借入れなので、受け取った資金がそのまま所得になる取引ではありません。この記事では購入型と寄付型に絞ります。

購入型(リターンあり)寄付型(リターンなし)
取引の性質リターンの販売・役務提供の対価対価のない贈与
受け手が個人事業主事業所得の総収入金額個人からの分は贈与税
受け手が法人益金(売上)受贈益として益金
消費税課税売上不課税
計上時期リターンを引き渡した日受け取った日

この表の左右を分けているのは「対価があるかどうか」の1点です。国税庁は、寄附金や祝金を「一般的に対価を得て行う取引ではない」として消費税の不課税取引に挙げています(タックスアンサーNo.6157)。逆に言えば、リターンという反対給付がある購入型は、通常の商品販売と同じく課税取引です。

「支援」「応援」という言葉が使われていても、リターンを約束していれば購入型です。ページの文言ではなく、支援者との約束の中身で判断されます。

購入型は「売上」。計上は入金時でなくリターンを渡した日

購入型の支援金は、個人事業主なら事業所得の総収入金額、法人なら益金です。ここまでは直感どおりですが、つまずきやすいのは計上する年です。

入金の年と売上の年がずれる

プラットフォームからの入金は、募集終了の直後にまとめて来ます。一方でリターンの発送は、製造を経て数か月後になることが多いはずです。

所得税基本通達36-8は、棚卸資産の販売による収入金額を「その引渡しがあった日」に計上するとしています。役務の提供なら、その提供を完了した日です。法人も、法人税法22条の2で、目的物の引渡しまたは役務の提供の日の属する事業年度の収益とされています。

つまり、12月に入金があってリターンの発送が翌年3月なら、その支援金は翌年の売上です。入金時点では前受金として負債に置いておきます。反対に、入金の年に売上として計上すると、リターンの原価(製造費・送料)が翌年に落ちるため、1年目だけ所得が膨らみます。

購入型300万円で手取りはどれだけ増えるか

購入型の利益は、ほかの売上と区別なく累進課税と社会保険料の計算に入ります。売上800万円・経費200万円の個人事業主が、購入型で300万円を集め、リターンの原価・送料・プラットフォーム手数料に120万円かかった場合を、当サイトの計算エンジンで試算しました。

売上経費個人事業主の手取り法人化した場合の手取り(最適報酬時)
クラファンなし800万円200万円427.3万円409.7万円
購入型300万円を計上1,100万円320万円529.3万円524.0万円

※ 東京23区・単身・40歳未満・青色申告(e-Tax)・インボイス登録あり・合同会社。法人側は税理士報酬を差し引いた2年目以降の比較。2026年(令和8年)分基準の概算。

増えた利益180万円のうち、個人の手取りに残るのは102万円です。残りは所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料の増加に回ります。法人化した場合との差は37.6万円から25.3万円に縮みますが、この条件ではまだ個人のほうが手取りは多い計算です。

購入型の支援が一時的なものなら、1年だけ所得が上がっても法人化の判断材料にはなりにくい点に注意が必要です。単年の売上の跳ね上がりで判断を誤るパターンは、売上が年によって変動する場合の法人化の考え方で整理しています。

消費税は「課税売上高」にも入る

購入型の300万円は課税売上なので、消費税の納税額に影響します。インボイス登録をしている事業者は、売上の規模にかかわらず課税事業者です。インボイス未登録の免税事業者なら、購入型の売上は2年後の免税判定に使う基準期間の課税売上高に入ります。クラファンの売上で1,000万円を超えると、その2年後は課税事業者になります。インボイス登録と法人化の関係はインボイス登録済みなら、法人化しても消費税の2年間免税は受けられないを参照してください。

寄付型は、受け手が個人か法人かで税目が入れ替わる

寄付型には対価がないため、消費税はかかりません。問題は所得課税の側で、ここは個人と法人で仕組みがまったく異なります。

個人事業主が受け取ると贈与税

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です(タックスアンサーNo.4402)。寄付型の支援者は大半が個人なので、個人が受け取った寄付は贈与税の対象です。この場合、事業所得には入りません。

暦年課税では、1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残りに税率をかけます。支援者が何百人いても、受け取った人の側で1年分を合計して計算します。家族以外からの贈与なので、一般税率を使います(タックスアンサーNo.4408)。

寄付型で受け取った額(年)基礎控除後一般税率贈与税
100万円0円—0円
300万円190万円10%19万円
500万円390万円20%(控除25万円)53万円

※ 国税庁の一般贈与財産用の速算表による。ほかに同じ年の贈与がない場合。

110万円を超えると、受け取った年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告と納税が必要です。確定申告とは別の手続きなので、所得税の申告だけ済ませて終わりにしないよう注意が必要です。

なお、支援者が法人の場合は話が変わります。法人から贈与を受けた財産には、贈与税ではなく所得税がかかります(タックスアンサーNo.4405)。業務に関して受けるものや継続的に受けるものを除けば一時所得で、特別控除は最高50万円です(タックスアンサーNo.1490)。企業の協賛が混じる寄付型では、個人分と法人分を分けて集計しておく必要があります。

法人が受け取ると受贈益として法人税

贈与税は個人にかかる税金なので、会社が寄付を受けても贈与税はかかりません。その代わり、法人税法22条2項は「無償による資産の譲受け」に係る収益を益金に含めています。寄付型で会社が受け取ったお金は受贈益として、売上と同じく法人の所得に入ります。

ここで110万円の基礎控除のような非課税枠はありません。一方で、その事業年度に赤字があれば受贈益と相殺されます。個人の贈与税が「寄付だけを切り出して課税する」のに対し、法人は「事業の損益と合算して課税する」という違いです。

寄付型300万円の行き先課税される税目事業の赤字との相殺非課税枠
個人事業主贈与税(一般税率)できない年110万円
法人法人税等(受贈益)できるなし

事業の利益が大きい会社では、受贈益に法人税等が上乗せされます。赤字の立ち上げ期にある会社では、受贈益が赤字を埋めるだけで税負担がほとんど生じないこともあります。どちらが軽いかは、受け取る年の事業の損益で決まります。

判断が分かれやすいケース

ここまでの整理は、購入型と寄付型の典型的な形を前提にしています。実際には、次のような境界のケースがあります。

リターンが支援額に比べて極端に小さい

1万円の支援にお礼のメールだけを返す、といった形です。形式上はリターンがありますが、対価として釣り合っていない場合、支援額のどこまでが対価でどこからが贈与かの線引きが問題になり得ます。支援者との契約内容に即して個別に判断することになります。この線引きは結論が変わる論点なので、募集前に専門家に確認しておく価値があります。

個人で集めて、あとから会社を作る

個人事業主として募集し、リターンの発送前に法人化するケースです。前受金として受け取った債務を誰が履行するのか(個人が渡すのか、会社に引き継ぐのか)で、売上を計上する主体が変わります。個人事業の資産・負債を会社に移すときの課税は、個人の資産を会社に売るときの時価と受贈益でも触れています。

寄付の目的が事業そのもの

「店舗の改装資金を応援してほしい」という寄付型でも、受け手が個人であれば贈与税の枠組みで考えます。事業のために使うからといって、事業所得になるわけではありません。逆に、購入型で集めたお金を設備投資に使っても、売上であることは変わりません。設備は減価償却を通じて費用化します。

まとめ

  • 購入型はリターンの対価なので、個人なら事業所得、法人なら益金で、消費税は課税
  • 購入型の売上は入金時ではなく、リターンを引き渡した日の年分・事業年度に計上する
  • 寄付型は消費税が不課税。個人が受け取れば贈与税(110万円控除後に一般税率)、法人なら受贈益
  • 売上800万・経費200万の個人事業主が購入型で利益180万円を上乗せすると、手取りの増加は102万円(概算)

クラファンの売上を乗せた年に法人化が有利になるかは、売上と経費の組み合わせで変わります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

購入型クラウドファンディングの入金がリターン発送より前の年になったら、いつの売上ですか?

物品を販売する場合、個人事業主の収入すべき時期は原則として引渡しがあった日です(所得税基本通達36-8)。入金の年ではなく、リターンを引き渡した年の売上になり、それまでは前受金として扱います。

寄付型クラウドファンディングで集めたお金に所得税はかかりますか?

個人から受けた寄付であれば、所得税ではなく贈与税の対象です。法人から受けた分は贈与税ではなく所得税の対象になり、業務に関して受けるものや継続的に受けるものを除けば一時所得に区分されます。

寄付型の支援金に消費税はかかりますか?

寄附金は対価を得て行う取引ではないため、消費税の課税対象外(不課税)です。購入型はリターンの対価なので課税売上になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。